ずっと 見とれていよう
見とれるだけで
満たされてゆくから
昼の
おぼろげな光と
夜の
あからさまな光と
心 奪われていよう
奪われることで
満たされてゆくから
厳しくも
大らかな波と
群れをなす
鳥の一羽一羽と
霜を帯び始めた
田園と
いつもよりくっきり映る
山肌と
この年を走り終えようとする
車のランプの列と
走り終えた後の
街の静けさと
まだ他にも…
冬に見とれて
見とれているうちに
踏み越えてしまおう
あの境界線を
もう一日、
もう一日、と数えていた時間が
あと何日、
あと何日、となり
どこを向いて走っているのか
分かってやしないのに
ゴールテープが見えてくる
生きている間に
たくさんの「終わり」がある
その切なさに救われて
特別なエンディングなど
用意してやしないのに
歩を進める高揚感
変わり続ける
変わりない日々たちを
さっぱり洗い流す瞬き
くぐり抜けた新しい一年に
そりゃおめでとうの一つも
言いたくなる
甲高い笑い声が
刺さる
ためらいのない鋭さで
落ちてゆく陽の光が
刺さる
痛みに付け入る角度で
残せなかったのか
残してしまったのか
ふと考える駐車場
かつての自分の言葉が
刺さる
赤らむほどの青さで
気付かずに育てていた
あらかじめ刺さるのを
待っていたかのような傷口
葉を失くした分
裸の木は
命の力がよく見える
見えない根っこの太さを
想像させる幹
伸びて行こうとする空を
指し示す枝々
根は風を受け
枝は土を受け
それでも無邪気に
まだ広がろうとしている
風と土を貫くその力を
人は木と呼ぶ
根に蓄えられている
枝たちの未来
その続きは春にて
僕の命は
日記だった
僕が読み返すばかりの
僕の命は
叫びだった
そこで消えてしまうだけの
たくさんの人と出会って
別れた
何も渡せないまま
何も譲れないまま
手紙にも
話にもなれなかった
僕の昨日が
まだつぶやいている
風の強い砂浜で
今日も拾い集める
誰にあげるでもない
ちいさな喜びと
ささいな悲しみを
闇の中にはもう
冬が沁みている
風の中にはもう
冬が混じってる
忘れることで
澄んでいるように見せる
過去の濁り
すぐに冬は行き渡る
陽の当たる午後にも
僕の臓器にも
かわせるはずもない
心に訪れる
荒涼とした風景
差し迫った感じのない師走の空気を
終わる気がしない一年をどう思えばいいか
問いたい
寒い冬を想定して
書き溜めた詩をどうすればいいのか
問いたい
春とは裏でも繋がっているのか
実は貴様 まだ夏なんじゃないのか
問い詰めたい
じわじわと変わりゆく四季に
ついてこれない詩情が
歯がゆい
こんなことを書いているうちに
寒気の予報が飛び込んでくるから
この愚痴も消すべきかどうか悩む
仕事帰りに寄った
コンビニで買って食べた
あんまんが優しくて
たどり着いた家の
タイル張りの浴室の
シャワーが優しくて
こわばった体を
なだめる感触が
際立つ季節
朝からベランダに
干してあった優しさを
取り込んでくるまる
優しい夢を夢見て
踏ん張ったまぶたを解く