逃す

必要そうな顔で

迫ってきた情報を


逃す

撮らねばならぬと

思っていた瞬間を


逃す

言葉にしなきゃと

思っていた心を


逃す

鳥かごを開き

未知の空に


逃す

釣り針を外し

実感の海に


月明かりを

ほのかに感じつつ

爪を切る


すいたお腹に

言い聞かせるように

歯を磨く


明日の予定を

頭で箇条書きしながら

肌を愛でて


午前6時の自分に

目覚ましを

仕掛けて完成


やっと眠ろうとしてたのに

額によぎった

詩に起こされる


僕の知らない悲しみに

はみ出そうとする蔦へ


憂う僕より先に

雲は水をやってしまう


僕の知らない未来に

絡まろうとする蔦へ


戸惑う僕より先に

陽は光で導いてしまう


蔦は伸びる

僕の知らない微笑みへ


ずぶ濡れの庭に

あどけない初夏の風が吹く

誰もが去りゆく街で

あなたは奏で続けた


誰もが忘れた風景と

あなたは暮らし続けた


巡る季節を見つめている

時が止まったかのようなこの場所で


もう語られることもない者たちへ

あなたは何度目かの

春をたむける

何も知らないで

僕らは扉を開ける

何も知らないことを

鍵にして


その先にあるものに

僕らは開かれてしまう

心の奥底にある

禁断の箱を


美しい音が

意味に聞こえる

輝く景色が

情報に見える


ああどうして

開いてしまったのだろう

閉じられない鍵だと

知らずに

宇宙
私の声が響かない宇宙
あなたの声だけが聞こえる宇宙

届かなくても

私はあなたに語りかける

私が私であり続けられるように

祈るように


見下ろした地球が

どんなに美しかろうと

宇宙の沈黙が

どんなに優しかろうと

私の足は

ざわめく大地を求めてやまない


宇宙船は

大気圏を抜け

私の体を地球へ運ぶ

あなたの記憶を地上へ導く


さよなら

そして ただいま

さっきまで

泣いていた

水滴が

微笑み出す

 

仕舞い込まれていた

花々が

軒先で

輝き出す


空は

静けさで

虹を迎える


活気づく街の上

虹は

そっと

そこに

にわか雨の
乾かぬうちに

 

虫の声が

耳に
点滅する
 
筆を止め
伸ばす
 
満月
孤独が
心地よい

どこへ消えた

熟さないうちに

持ち去られてしまった

心の果実は

 

問いかける前に

差し出された答え

あなたが望むものは

おそらくこれです

 

言葉たちは
もう待たない

鈍くさい心など

人のないところで生まれ
話の早い
本能に語りかける

放たれる鳥

収まる鳥

溢れ出す緑

隠し合う緑

 

美しい花が咲く

誰の目にも触れずに

美味しい実がなる

誰の口にも入らずに

 

何かが駆けた音

何かが残した足跡

追いかける瞳

感じられるのは香りのみ


何本切り倒そうと

触れられはしない

捉えようとするほど

見失う森