炙っても

透かしても

見えない私

 

二重線でも

修正液でも

消せない私

 

暗闇まで

伝えようとする

欲張りな心で

 

光まで

飾ろうとする

空っぽの心で

木々から剥がれ落ちてゆく蝉たち

始業式へと向かう子どもたち

涼しい風に急かされて夏じまい

 

窓際から消えた風鈴の音

夜どこからか点りだす鈴虫の音

耳の中で季節は移り行く

 

老いの兆しを見せる山の緑

水浴びせ合いはしゃぐ声が

まだ聞こえる気がする川の浅瀬

500mlのペットボトルから

あっという間になくなる水と

それでも乾く喉と

たぷついたお腹と

 

扇風機のない路地で

かよわい風を

何度も頬に手招きしてる

 

蝉の声が耳に焦げ付く

遮るもののない陽が眼に焼き付く

行き先は分かっているのに

さまよっているかのような夏

いっそ忘れてしまおう

くだらない真相など


今日は眠ってしまおう

明日に戻って

同じ謎解きを楽しめばいい


ヒントをあげよう

明日の自分に

今日よりも素敵な真相に

たどり着くように


目を覚まそう

昨日起きたことなど

何もなかったかのような

無垢な瞳で

解けかけの魔法が

時を溶かしはじめる


借り物の翼が

背中から剥がれようとしている


待って

せっかく描いた未来が

幻になるなんて許せない


待って

理想ばかりが美しい世界に

私はきっと絶えられない


消えかけの魔法を

かき集めて

まだ夢の続きを


取れかけの翼を

接着剤でくっつけて

まだ先へ

退屈な現実の向こうへ

行けるところまで

大人ぶって過ごした

日々は無惨に砕け散り

初めての恋の前で

赤子のように泣きじゃくる


求めるままの体

赴くままの心

触れても残る虚しさが

露にする命の姿


恋に落ちて

恋に溺れ

浮き上がってきたのは

私の知らない私

誰にも俯瞰できない空に

重たい雲が広がっていく

地面に吸い込まれていくように
雨が急いで窓を通り過ぎる

部屋の中にいる

濡れるのが嫌な訳じゃない


動き出せない旅人たちも

思いがけない病人たちも

窓からこの景色を見ているだろうか

似たようなもどかしさに

押し留められているだろうか


積み上げた時間を

見失ってしまいそうな長雨

空よどうか

姿を見せてくれないか

濁りゆく水面を

照らしてくれないか

君の肌のない日々が過ぎ

花の香りのない春が過ぎ

ぼんやりと画面を見つめるばかりで時は流れ
今日のシャツに吹き抜けるのは
少しぬるくてたるんだ風

僕らは引き離されることで
繋がっていた
マスクの下で
必要以上に感情を潜めてきた
同じ運命で
括りつけられた人質のように

抱きしめたい
たとえ電話越しでも
触れ合いたい
せめて文字の中でも
こんな回りくどい夜を
僕らはあとどれだけくぐるのだろう
まだ見つけられない
「死にたい」という
強い言葉で覆われた
とても小さくて
情けない願いを

まだ見つけられない
「死にたい」という
乱暴な言葉にさらわれた
とても切実で
みっともないわがままを

聞かせてくれないか
重く閉ざされた扉を
勢いよく開くような
場違いな声を

まだ見つけられない
「死にたい」という
重たい言葉に繋がれてもなお
もがこうとする足の音を
掻き分けようとする手の先を

至るところに隠れては
問い掛けようとする
その声の正体を
僕はまだ見たことがない
僕の見てないところで
桜が咲いていて

僕の見てないところで
地球がなおも青いということ

暗闇にこの街が包まれる夜も
どこかの街に陽が差していて
それは寂しくもあり
ただ一つの救いでもある

僕のいないところで
大型トラックは走っていて

僕のいないところで
世界が平然と続いていくこと

巡る季節を宛てにして
僕も廻り続けるのだろう
心の中で選りすぐった
過去の桜たちの花束を抱いて

待ってて
いつか行くから