悲鳴も聞いてもらえない
高い代償を払わなきゃ
舞い上がっていた時に
君の冷たい言葉の
一刺し
落ち込んでいた時に
君の軽い冗談の
一押し
操られているように
浮き沈みした
あの頃
僕はまだ求めているのか
君のまなざしを
足りない「あと一つ」を
通り抜ける街のあちこちに
君が現われて
僕は不幸にも幸せにもなれない
十一月の空はきっと
覚えていないだろう
燃えさかる太陽を
抱いていたこと
叫び終えた蝉を
羽ばたかせたこと
十一月の空はきっと
覚えていないだろう
騒がしい台風を
連れてきたこと
あの飛行機を
横切らせたこと
十一月の僕はきっと
覚えていないだろう
足元に転がる
蝉たちの死を
線香の香りの中で
つぶやいた言葉を
そして見上げるだろう
蝉たちの知ることのない
十一月の空を
切り替わらない場面
何だか乗らない気分
停滞する前線
予報では明日も降るらしい
突然の豪雨に
慌てて買ったビニール傘
馴染めずも使い続ける
行き当たりばったりの性
乾く間もなく濡れて
もはや水たまりとなった靴
ユウウツ漂う帰りの駅に
ふやけた足で着く
未だ全貌を見せない夏
花火を吹き消す梅雨
消えてしまった熱の行方
電車の窓が吐息で曇る
覚悟なく入り込んだ
長い雨をさまよってる
この気持ちの出口はどこか
明日の空に聞いてくれ
雨の午後
感傷が掻き集める
取るに足らない出来事の数々
窓の外
打たれる土の音
香り立つ木の葉
戻れない時間が
戻ってきた
少しの狂おしさを乗せて
あの温もりに近づけば
あの痛みが付いてくる
地面はだんだんぬかるんでゆく
思い出が先に濡れて
眺めるばかりの
僕を誘ってる
眩しい光が
闇に溶けて
夜全体を
柔らかく包む
掴み損ねたと
思っていたものすら
幻だったのだと知る
霧の中で
寄り添うように
水は触れ
花々たちは
密やかに潤う
絶え間ない流れ
止めどない迷い
霧は閉ざす
切りがない夜を
ぼやけてゆく
透き通ってゆく
映さないことさえ
美しい世界で
部屋に横たわる
無意識が
掴んでしまった
こんな真夜中に
迷惑でしかない
ほんとうの気持ち
遅すぎたくせに
急かそうとする
ほんとうの気持ち
どうせ朝が来れば
収まりの良い
嘘になるのに
ただ心はこぼれて
寝付けない世界に
充満する
寂しさにもたれかかっていた
無力さに身を任せて
沈んでいたかった
悲しみと無意識の間を行ったり来たり
生きているのか死んでいるのか
分からないくらい逆らえない眠気
いつから眠っていたのだろう
朦朧として見上げた天井に
手放した心が見える
いつまで眠っていたのだろう
覚めた目に差し込む光は
何時のものなのかと戸惑う