【概要】
裁判所の手続きでは、調停・審判・裁判に大きく分かれる。まず調停とは話し合いをする場である。家族関係(家事事件手続法)の話であれば、訴訟の前に前置主義(前もって話し合いによる解決)が望まれるため、調停を通すことになる。このとき法律的な助言を裁判官が行うこともあるが、基本的に調停委員を挟んで対話する。申立人と相手方については顔を合わせることなく進めることもできる。審判は、裁判官が出席する審判室で進められることが多い。双方同席することになるが、場合によっては非対面方式やパーティション方式などで実施されることもある。また訴訟になれば、裁判として法廷にて争うことになる。訴訟は、裁判官による白・黒の判断であり、請求事項について容認するか否かというジャッジが下される。
誰もが経験することではない。どのように裁判所で行動したらよいのかということがかなりのストレスになる。そこで裁判所での振る舞いについては、以下のように纏める。
【内容】
[調停]
●自分が正しいと言い過ぎない
相手方がどのように思って調停を申し立てしたのかということを聞くために、初めから正しいかどうかということを言い過ぎない。全体的に相手の主張は、筋道が合っているかどうかということを調停委員へ話をする。
●相手の主張を聞く(相手に寄り添う)
同調とは違って、「相手はそのように思っているのですね。私は、・・・」「相手はそのように考えているのですね。私は、・・・」「その気持ちになるのも理解する部分はありますが、・・・」ということをまず一言目に言うようにする。
●挨拶や感謝、明るい言葉を使う
これまで生活をして家庭を築いてくれたことに感謝を伝える
●自分の気持ちを伝え、相手の心情を聞く場でもある
どのように感じているのか気持ちを伝え、相手がどのように感じているかということを聞くこともできる。審判や裁判とは異なるため、なぜそのような主張をしているのかということを調停委員経由にて聞くことができる。
●家族の写真をファイリングした1頁目に持ち込んでも良い。
●心理的状況で答えが出せないときは、無理して答える必要はなく次回までにきちんと考える時間が欲しいと伝えてもよい。
※調停委員に初めて会うときの挨拶の例
「今後の家族の生活と社会を思い、真摯に向き合っていきたいと思います。よろしくお願いします。」
→調停委員は選択することができませんが、あまりに中立的ではなかったり、事実誤認が多かったりと進行がスムーズではないときは、理由を書記官に説明し、裁判官によって調停委員を変更していただくようにしましょう。
●試行的親子交流(面会交流)の実施後において、無事に実施できたとしても同居親の批判は避けましょう。
[審判]
●同居中の子供との関係や子育ての関与はどうであったかということを冷静に振り返り、別居を敢行したことへの非難に終始することなく、自身の感情を統制して子どもの視点に立つこと。
●裁判官から質問があったときに、手短く事実を淡々と述べること。
「相手方の主張(書面)では、〇〇ということを受け止めていますが、一方で△△ではないかという認識です。」
●相手方の主張に反論できそうなときは、口頭で説明するか、「この場だと長くなってしまうので、簡潔に整理して陳述(or 証拠or 意見)書面回答したい」と答えることもできる。
[裁判]
●傍聴する人もいるので、提出書面については直接聞かれることが余りない。書面同士で主張しあうことが多い。ただし反論箇所が多い場合については、事実確認として口頭で聞かれることがある。
●尋問では、相手方がイエスセット話法による誘導をかけることがある。簡単なハイ、イイエの質問から、ハイと答える質問をひたすら繰り返し、そのうち論点をずらして心情的なバイアスでもハイといえるような見解を導くような圧力をかける弁護士がいる。早口かつ大きめの声でテンポ良く聞くタイプの弁護士である。そこでの対処方法は、『そう思う方もあるといるかもしれませんが、私はこのとき○○と感じていました。』『手元に資料がないので、確認したいのですが、どの時系列で具体的に聞いた質問ですか?』『記憶が曖昧でしっかり思い出せていない部分があり、定かではありません』と回答することもできる。また尋問点がずれてきた場合、『質問には答えるべきところですが、確認すべき点は書面に記載された項目のことでしょうか。それとも新たな論点でしょうか』と意味合いを聞いてもよい。
●相手方の主張に反論できそうなときは、「事実と根拠にもとづき、次回の期日までに反論書面にて提示し、相手方の確認をして見解をいただきたいと思うがどうか」と提案することもできる。
【婚姻費用・養育費】
●裁判所の算定表にしたがって支払うことが多い。しかし、この算定表については、あくまで早見表であるため、個人の住宅ローンや家賃の支払い金額については考慮されていない。そこで重要なのは、標準的に定めた金額よりも大小の支払いがあるときは、そこの算定表にしたがって見直されるべきところである。まずは標準的な算定表についてドキュメントを以下のように作成することができる。
→手動の計算方法としてについても養育費相当分について計算方法を説明する。
(1)親の基礎収入(源泉徴収票または直近3か月+前回の賞与)
(2)子どもの生活費指数を定める
①親:1
②子(0歳~14歳):0.62
③子(15歳~18歳):0.8
(3)子供の生活費を定める
義務者の基礎収入×(子供の生活費指数÷(養育費を支払う親の生活費指数+子供の生活費指数))=子供の生活費
(4)養育費を定める
子の生活費×(養育費を支払う側の基礎収入÷(養育費を受け取る側の基礎収入+支払う側の基礎収入))=1年間の養育費
1年間の養育費÷12=1カ月の養育費
[支払い方法]
裁判所は、金額を決めるのであって、振込口座までは決めるという義務がありません。したがって費用を渡すということが大切であるので、わざわざ法定代理人に送付しなくてもよいと考えます。全ては子どものための養育費として使ってほしいということであれば、そこで現金書留に送付するということも良いと思います。そのときに親からの想いとして、子どもへのメッセージも同封するとよいでしょう。
▼応用しよう
▼判例
●相手方書面はわざと別居親を批判するときがあるので避ける方法
●【海外から学ぶ】家庭を壊さない弁護士倫理や裁判官研修を導入せよ