○詳細
1.睡眠の常識
眠る為には、睡眠効率を上げなければならない。睡眠効率は睡眠時間÷横になっている時間で計算し、85%以上を目指す。これは睡眠ログをつける事で可視化できる。寝そうになった時間と起きた時間、そして起きた時の感想をメモする事を2週間程度続ける。
睡眠を邪魔する大きな要因は、睡眠時間の義務感である。プレッシャーを与えてしまうと眠れなくなってしまう。これを解消するためには、適度な運動をする事である運動をする。「睡眠圧」という。
また19~21時は「睡眠禁止帯」とも呼ばれる眠りにくい時間。この時間に寝ようとしても眠りにくいため、この時間はウォーキング等をしておくと良い。ちなみに、睡眠時間が7~8時間の人は最も糖尿病が少ないと言うデータもある。
睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠がある。レム睡眠とは、Rapid Eye Movement(急速眼球運動)の略で、筋肉は動いているが目玉はキョロキョロ動いている。この時起こすと、約80%の割合で夢を見ていたと言うデータがある。特徴は、脳が活発に動いている、トイレに起きやすい、物音で目覚めやすい、記憶を固定している、金縛りに遭いやすい等。脳の定期的なメンテナンス時間と考えても良い。ノンレム睡眠は、脳も身体も休んでいる、ストレス解消に効果がある、ホルモンを分泌している等、熟睡の状態。脳の温度が低下して機能もダウンしており、全身のあらゆる部位の「修復」が行われている。レム睡眠とノンレム睡眠の1サイクルは、およそ90分と言われているが、80分や110分の人もいる。どのサイクルなのかは個人によって異なる。
よく自分を不眠症という患者にあうが、これは誤っていることが多い。不眠は、一時的に眠ることができない状態であり、不眠症は、継続的に不眠が続く状態。不眠症は医師に診断されて初めてわかると思っておいた方が良い。
2.起きてすぐ目が覚める為に。
①朝日に当たるのが有効。1日が24時間なのに対して、体内時計は25時間であり、朝日を浴びる事によってこれを調整している。そのため、できるだけ起きたら朝日を浴びる事。
②自分のレム睡眠時に当たりをつけて目覚ましをセットするのも一つ。最近はアプリなどでもあるので、活用するのも良い。
③目覚める動機になる自分が楽しいと思える予定を作る。
④2度寝は、浅いノンレム睡眠の状態。脳が完全に覚醒していないため眠っているが外部の状況を感じる事ができる。そのため、目覚ましをかけてから場所を変えて2度寝をする事で起きやすい状況を作ることも可能。
⑤朝食をとると、身体は「胃・結腸反射」という便意を催すシステムになっている。食べ物が胃の中に入って膨らむとこれがシグナルになり大腸が収縮、便意を催す。これは目覚める為にとても良い。朝食前8時間は食事をとらないことが理想。睡眠時間が少なかったり、夜遅くの食事などによる胃もたれ等は、胃・結腸反射を促さない為、目覚めに悪い。
⑥人は、深部体温が下がると眠りやすくなり、高くなると覚醒しやすくなる。起床後の熱めシャワーは目覚めを促進する。深部体温を上げるためには、太い血管が走っている首や股の付け根の体温を上げると効率的。活発に動くと交感神経が刺激されるため、階段の上り下り等も効果的。
徹夜明けは、ビールを1~2本飲んだ状態と同じ。人は17時間以上起きていると、アルコール濃度0.05%と同じレベルまで作業能率が低下する。
徹夜が必要な時は
①徹夜を決めた瞬間に翌日の予定を変更し、午前中を単純作業に充てる。
②徹夜中に15~20分程度の仮眠をとる。
③翌日、午前中の単純作業を終えたら、昼休みに仮眠をとる
④出来る限り早めに仕事を終え、その夜は十分な睡眠をとる。
3.午後2時~4時の「魔の時間帯」制する。
来る前の居眠り自己は、午後2時~4時に最も多い。1つの重大事故の背景には29の軽微な事故があり、さらにその背景には300の異常事態が存在するという「ハインリッヒの法則」が有名。
①頭をあまり使わない単純作業を行う。
②この時間に眠くなるのは、目を覚ます「オレキシン」というホルモンが抑制される為。
③一定のリズムで生活している場合、午前2時~4時と午後2時~4時は眠くなるピーク。
④20分程度眠ると、眠気が覚める。30分を超えると、熟睡モードに切り替わってしまい、起きた時眠気が続いてしまう。これは睡眠深度では、4段階の3~4にあたる。起きたら5分程度軽く身体を動かす。
⑤睡眠深度3~4は1日に出現する時間数が一定と言われているため、長すぎる昼寝は夜の睡眠を減少させてしまう。
⑥コーヒーのカフェインを摂取すると、「アデノシン」という物質の働きを抑制する。アデノシンは、睡眠誘発作用、心拍数の低下、痛みの誘発作用、血行促進、腎臓血流低下作用を行っているため、眠気が抑えられ、心拍数が上がり、痛みが軽く、血行が緩くなり、尿意を催しやすくなる。アイスは小腸の粘膜の毛細血管を収縮させてしまい吸収が遅くなるため、ホットが効果的。
4.翌日のパフォーマンスを最大化する夜の習慣
①夜遅くの食事は、胃酸分泌を促して逆流性食道炎を引き起こしやすくなる。
②食べてすぐ寝ると、胃や小腸、大腸などの消化器官に負担をかける為、睡眠のパフォーマンスを下げる。就寝3時間前までに脂肪分少なめのものを、腹8分程度に抑えておくのがベスト。
③寝る直前には、脂肪分の多い食べ物や辛い食べ物は快眠を妨げる。
④酒を飲む場合は、水を多く飲む事で、血中アルコール濃度を下げる事が良い。
⑤2日酔いになった日は、スポーツドリンクと糖分を摂取すると良い。アセトアルデヒドを分解するため。
⑥スマホなどのブルーライトは眠気を抑制してしまう。
⑦コンビニは照度が2500ルクス以上と非常に明るく目が覚めてしまうため、寝る前に行くのは避ける。
⑧睡眠時間が不足すると、食欲を抑制する「レプチン」の分泌が低下し、食欲を増進する「グレリン」の分泌が増えていた。
⑨お風呂で汗をかいて新陳代謝を促進する事で、風呂上がりに深部体温を下げる事ができる。お湯が熱すぎると交感神経を刺激して逆効果なので、39℃くらいまでの温めの浴槽に10分程度つかる。
⑩エアコンをつけて眠ると、起床時の体温上昇を妨げるため避ける。
⑪夏に眠れないのは、蒸れるから。寝返りは蒸れるのを解消するために行うため、寝返りが多いとよく眠れていない証拠。扇風機を活用して蒸れなくすると良い。
⑫海外に行く時は、時差障害を生じる。これを解消するためには、アメリカなど東へ向かう場合は少しずつ早く寝るようにし、ヨーロッパ方面に行く時は少しずつ遅く寝るようにして事前に調整する。
5.睡眠自己分析
①睡眠ログを作成する。
②体調を崩さないギリギリの睡眠時間を睡眠ログより導き出す。
③入眠する前のルーティンを決める。著者は、白湯を飲むのがルーティンである。ルーティン化する事で、身体を眠る気持ちにさせる。
④起きている時間でも、眠気を5段階に分けてチェックすると、単純作業を行った方が良い時間がわかる。
6.眠りの質をさらに上げる為に
①身体は、起きてから太陽の光を浴びて約15時間後に眠くなるように身体ができているので、休日に普段と2時間以上睡眠時間に差があると、生活のリズムが崩れる。
②眠れなくても、睡眠薬は医師の導入なしには辞めた方が良い。既に使用している場合は、医師と相談して少しずつ減らすべきで、突然やめるのも身体への変化が大きく進められない。
③アルコールを飲むと眠くなるが、その睡眠はほとんどがレム催眠。利尿作用がある為深い眠りを妨げる。
④眠りは、20年で30分程度短くなる統計データがある。しかし役員並みに早起きをしたい場合、朝イチに予定があると目覚めが良くなる。強すぎるプレッシャーを与えると熟睡できなくなるため、適度な設定をする。
○感想
睡眠というテーマに対して、構造的な説明や具体的な行動方法が記載されていた良書だと思う。人によって必要な睡眠時間が異なる事や、睡眠圧等感覚としてはわかっている事は多い。しかしそれを具体的に説明するとなると、できない事がほとんどである。睡眠のゴールデンタイム論や90分サイクルの睡眠等は、知識がない人間の間違ったにわか知識も訂正している。
印象に残ったのは、睡眠ログ、睡眠効率という方法。行う事はかなり難しいと思うが、できれば効果はあるのだろう。その他にも身体の構造的に19~21時は眠りにくい時間帯である事なども書いてある。眠る時間が30分を超えると熟睡に入ろうとするため、起きた時目覚めが悪いというのもしっくりくる。レム睡眠状態の時に起きる事が一番良いと言っているが、後はこれをどの様に発見するかだろう。自分を知る事が、快眠の第一歩であると感じさせる内容である。眠るだけでも奥が深い。