○特徴(ネタバレなし)
1.背景
①昭和に残る未解決事件「グリコ森永事件」をプロットにした作品。
②第7回山田風太郎賞を受賞
③週刊文春ミステリーベスト10、2016年の第1位となった作品。
2.ストーリー
京都でオーダーメイドのスーツを作っている「テーラー曽根」を営む曽根俊也は、胃潰瘍で入院している母から「アルバムと写真を持ってきてほしい」と言われた。そこで父の遺品を探っていると、透明のプラスチックケースに収まったカセットテープと黒革のノートを見つけた。カセットテープを聞いてみると、自分の声で不思議な言葉が録音されていた。ノートを見てみると、中身は全て英語で書いてあり、意味が理解できなかったが、「ギンガ」「萬堂」という日本語の表記もあった。これを見た俊也は、31年前に関西を騒がせた「ギン萬事件」を思い出した。1984年に起きた事件で、解決されないまま時効が成立してしまった、昭和の大事件の一つだ。インターネットでギン萬事件の事を調べてみると、ホープ食品を恐喝した際に使用したテープが、自分の今持っているカセットテープである事が分かった。俊也は、自分の父が事件に関与していたかもしれないという不安に襲われた。
俊也は母の真由美にも妻の亜美にもこの事を話せずにいた。そこで店の常連でもあり、亡くなった父の親友でもあり、父光雄に俊也の父代わりとなると約束した堀田に相談をしてみた。堀田はこの事を知らなかったが、俊也が真実を追求する事に協力する事、家族には知らせない俊也の考えを支持する事を伝えられた。堀田は、ノートとカセットテープを預かり、伝手をたどって俊也と事件の事を探る事にした。
一方同じころ、大日新聞で文化部の記者をしている阿久津英士は、社会部の鳥居に呼び出された。年末の特集で、昭和・平成の未解決事件を特集するため人手が不足していると言う事で応援として呼ばれたそうだ。阿久津が任されたのは、「ギン萬事件」についてであった。特集するからには、今までにないネタを取ってこいと鳥居に命令され、ハイネケン誘拐事件とつながりがあるとの情報を頼りにロンドンに行かされる。
俊也の父は事件に関わっているのか。ハイネケン誘拐事件とのかかわりは。2人は、自分達の情報と人脈を伝って、ギン萬事件の真相を解き明かしていく。
3.良い点
①テーマがはっきりしており、ベースにしたグリコ森永事件についても良く調べている。
②奇をてらった事をしておらず、しっかりとした文章構成となっている。
4.悪い点
①どんでん返し等はなく、淡々と物語が進んでいく印象であった。
○評価
1.本を選んだ理由
現代ミステリーを読んだみたいと思ったから。
2.評価(各5段階、25点満点)
項目 |
説明 |
点数 |
目的との合致度 |
目的と合致しているほど高い |
B- |
わかりやすさ |
わかりやすいほど高い |
B- |
内容の質 |
質が高いほど高い |
A |
内容の量 |
量が多いほど高い |
B+ |
読み応え |
読み応えがあるほど高い |
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総合 |
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B+ |
※評価はS、A、B、C、Dの5段階。B以上は読む価値あり。