千葉市美術館で「酒井抱一と江戸琳派の全貌」展を、再び観た! | とんとん・にっき

千葉市美術館で「酒井抱一と江戸琳派の全貌」展を、再び観た!



千葉市美術館で開催されている「生誕250年記念展 酒井抱一と江戸琳派の全貌」へ、また観に行ってきました。過去最大規模の抱一・江戸琳派展、と言われているので、前期だけでは済まされません。最初に行ったのは先月の17日、そしてまた行ったのは11月4日でした。なにしろ前期、後期、合わせて338点もの作品が出ていました。酒井抱一だけでなく、鈴木其一や「江戸琳派」の人たちが勢揃いです。なんとかまた千葉へ行く前に、分厚い図録がアマゾンから届きました。これはお買い得です。 と、ここで、千葉市美術館が発行している「C’n vol.60」を見ていたら、何気なく使っている「江戸琳派」という言葉、なんと千葉市美術館館長の小林忠さんが最初に使い出したのだそうです。小林忠の「酒井抱一と江戸琳派への親しみ」には、以下のようにあります。


今年2011年に生誕250年の記念すべき周年を迎えた酒井抱一(1761~1828)は、江戸時代後期、いわゆる化政期(文化・文政年間)を代表する画家であり、文化人でした。在世中は、姫路藩15万石の藩主酒井雅楽頭家の次男として人々から尊崇を受け、絵画、書、俳句や狂歌などの才能がまぶしく仰がれた存在でした。門弟を育てることにも秀でて、その絵所雨華庵から抱一流の画風を継承した画家たちが輩出、さらに孫弟子らによって明治期まで反映する画系の開祖となりました。俵屋宗達や本阿弥光悦、尾形光琳・乾山兄弟らによって育てられた教徒の琳派風に私淑の想いを熱く捧げながらそれとは別種の趣を加えた独自の絵画様式を確立、その流風を愛でて「江戸琳派」という流派名を私がはじめて与えたのも、すでに遠い昔のこととなりました。

「生誕250年記念展 酒井抱一と江戸琳派の全貌」、後期の目玉は、酒井抱一の「夏秋草図屏風」(重要文化財、東京国立博物館蔵)です。図録の解説によると、銀箔地屏風の右隻に夏草を、左隻に秋草を描いたもので、当初、光琳の「風神雷神図屏風」(重要文化財、東京国立博物館蔵)の裏面として制作されたものです。風神の裏に風にたなびく秋草、雷神の裏に夕立の雨にしなだれる夏草を配し、金地に対して銀地で描くなど、表の光琳画を強く意識した構成となっています。文政4年秋から5年にかけて、11代将軍家斉の実父、一橋治濟の注文で描かれました。


当然、この絵には下絵があるというもの、出光美術館蔵の「夏秋草図屏風草稿」が出ていました。下絵を屏風にしたものです。本絵とほとんど同じ大きさで、構図上の変更もないので、これが本下絵だと言われています。この屏風を見て、思い出しました。「琳派芸術―光悦・宗達から江戸琳派」展、平成23年1月に出光美術館で開催されたときに、観ていました。その時に今回出されていた鈴木其一の「三十六歌仙図」(出光美術館蔵)や、「芒野図屏風」(千葉市美術館蔵)も、「琳派芸術・・・」展で観ていました。


また、出光美術館蔵の「風神雷神図屏風」も出ていました。図録の解説には、「やはり光琳と同じ二曲一双の金地屏風で描くことには格別の想いがあっただろう。琳派画風を継承するものにとって、『風神雷神図屏風』の制作は自らの系譜を確認することにほかならない」とあります。ここでは深く立ち入りませんが、「国宝風神雷神図屏風 宗達・光琳・抱一琳派芸術の継承と蔵蔵」(図録)によると、抱一の「風神雷神図屏風」は、光琳のものを丁寧に写してはいるが、宗達の「風神雷神図屏風」は見ていなかった、と言われています。一度模写されたものを再度模写したことによる写し崩れによる不安定さがあること、顔の部分は剽軽さがあり、全体に飄々としていて、威厳がなく、華奢で瀟洒な感じだとされます。また保存状態がいいので、立体感に乏しく、平板に見えてしまっているという。いずれにしても抱一らしい、人間くさい顔立ちになっています。


「風神雷神」といえば、鈴木其一の「風神雷神図襖」が出ていました。東京富士美術館蔵のもので、八面の大画面に風神雷神の図様を、其一は広々と表しました。当初風神雷神は古間の表裏に描かれていたという。黒い雨雲に乗る風神雷神は淡彩で軽やかに描かれ、開け閉めする襖にふさわしく、左右への躍動感があると解説にあります。同じく東京富士美術館蔵の「萩月図襖」もよかったですね。淡彩で描かれた紅白の萩、白く浮かびあがる上弦の月を描いています。輪郭線を用いないで、柔らかな色調の変化を表現しています。萩は英の先までしなやかな曲線で描かれています。襖と言えば、前期に出されていた抱一の「ウサギに秋草図襖」(三井記念美術館蔵)、襖4面全体に、薄い板を斜めに重ね張りして金泥を刷き、地とし、強い秋風を斜めの板字で表しています。左側の兎が草むらから飛田したように跳躍しています。


抱一の「四季花鳥図屏風」(京都・陽明文庫蔵)、光琳百年忌から1年、抱一は56歳、箔や砂子で複雑な輝きをつくる金地に、純度の高い鮮烈な色彩が映えます。小川の流れる述べに、四季の草花が丹念に描かれた抱一の四季花鳥園代表作です。右隻は鮮やかな緑の土坡の上に、蒲公英の花が開き土筆が伸び、雲雀が空と地面で呼応します。左隻は水の流れの中、薄や女郎花、葛が見え、雪の下から藪小路の赤い実が覗いています。

抱一の「新撰六歌仙・四季草花図屏風」(石橋財団石橋美術館)、春夏秋冬が二扇ずつ当てられた草花図の八曲中屏風に、「新六歌仙」(藤原良経・藤原定家・慈円・藤原俊成・藤原家隆・西行)の詠歌を書いた色紙計12枚を貼り込んだものです。非常にていねいに細部までの再現を目指して描かれた、抱一最晩年の作です。


ここでの画像は、後期に展示された主として抱一の屏風と襖を取り上げましたが、もちろんほかにもたくさん、いい作品が目白押しでした。出品総数は約320件、そのうち抱一作品は約160件、其一の作品は約60件です。またチラシにも、抱一の没後も江戸琳派は実に一世紀近く命脈を保ち、特に鈴木其一、池田孤邨らの幕末期の活躍は、近年大きな注目を浴びている、とあります。その他の後継者たち、鈴木守一、市川其融、中野其明、酒井鶯蒲、田中抱二、等々、「江戸琳派」の面々の作品が勢揃いしていました。












「酒井抱一と江戸琳派の全貌」展
酒井抱一(1761-1828)は、譜代大名・酒井雅楽頭家の二男として江戸に生まれました。文芸を重んじる酒井家の家風を受け、若き日より俳諧や書画をたしなみ、二十代で狂歌や浮世絵などの江戸の市井文化にも手を染めた抱一は、三十七歳で出家して自由な立場に身を置きます。そのころから、宗達、光琳が京都で築いた琳派様式に傾倒し、江戸後期らしい新たな好みや洗練度を加えた、今日「江戸琳派」と呼ばれる新様式を確立していきます。風流で典雅な花鳥画を得意としながらも、風俗画や仏画、吉祥画や俳画などさまざまな主題や作風に対応しうる柔軟性を持ち、多くの文化人との関わりながら、独自の世界を作り上げました。抱一の没後も江戸琳派は実に一世紀近く命脈を保ち、特に高弟の鈴木其一(1796-1858)や、池田孤邨(1801-1866)らの幕末期の活躍は、近年大きな注目を浴びているところです。本展は、抱一の生誕250年を記念し、代表作の《夏秋草図屏風》(重要文化財)をはじめとする優品の数々や、琳派展の文脈では視野から外されていた多様な作品を新出資料も含め多数紹介し、その画業を回顧します。あわせて、鈴木其一ら後継者たちの個性も紹介し、江戸琳派の流れと近現代まで伏流となって生きつづけるその美意識を探ろうとするものです。出品総数は300点以上で、うち抱一作品は約160点、其一作品は約60点です。会期中には二回展示替えを行います。酒井抱一展として過去最大の規模、総合的な江戸琳派展としては初めての機会となります。

「千葉市美術館」ホームページ

とんとん・にっき-tiba3

「酒井抱一と江戸琳派の全貌」
図録
発行日:2011年9月25日
発行:株式会社求龍堂




とんとん・にっき-chiba 「C’n Vol.60」
千葉市美術館

「生誕250記念展 酒井抱一と江戸琳派の全貌」特集号
小林忠:酒井抱一と江戸琳派への親しみ

松尾知子:酒井抱一と江戸琳派の全貌
とんとん・にっき-shiritai アート・ビギナーズ・コレクション

「もっと知りたい 酒井抱一 生涯と作品」

2008年9月25日初版第1刷発行

著者:玉蟲敏子

発行所:株式会社東京美術








過去の関連記事:琳派関連
畠山記念館で「酒井抱一 琳派の華」(後期)を観た!
畠山記念館で「酒井抱一・琳派の華」展(前期)を観た!
出光美術館で「琳派芸術 第2部転生する美の世界」展を観た!
出光美術館で「琳派芸術 第1部 煌めく金の世界」展を観た!
日本橋高島屋で「日本の美と出会う―淋派・若冲・数寄の心―」展を観た!
東京国立博物館平成館で「大琳派展 継承と変奏」を観た!
東京国立博物館・平成館で「対決-巨匠たちの日本美術」展を観る!
出光美術館で「国宝・風神雷神図屏風」展を観る!


過去の関連記事:千葉市美術館

千葉市美術館で「酒井抱一と江戸琳派の全貌」展を観た!
千葉市美術館で「帰ってきた江戸絵画 ギッター・コレクション展」を観た!
千葉市美術館で「田中一村 新たなる全貌」展を観た!
千葉市美術館で「江戸みやげ 所蔵浮世絵名品展」を観た!
千葉市美術館で「伊藤若冲―アナザーワールド―」展を観た!
千葉市美術館で「近代日本美術の百花」展を観た!
千葉美術館で「江戸浮世絵巻」展を観た!
千葉市美術館で「パウル・クレー 東洋への夢」展を観た!
千葉市美術館で「大和し美し 川端康成と安田靫彦」展を観た!
千葉市美術館で「芳年・芳幾の錦絵新聞」展を観る!

千葉市美術館で「日本の版画1941-1950」を観た!