畠山記念館で「酒井抱一・琳派の華」展(前期)を観た! | とんとん・にっき

畠山記念館で「酒井抱一・琳派の華」展(前期)を観た!



畠山記念館で「酒井抱一・琳派の華」展を観てきました。今年は、酒井抱一生誕250年の年だそうです。ここ最近、「琳派」を取りあげる展覧会が目につくようになってきました。出光美術館でも「琳派」を取りあげています。俵屋宗達、本阿弥光悦、尾形光琳とその弟乾山、そして酒井抱一、鈴木基一という流れは、日本の美術史上、大きな山のような存在です。しかし、ひとくちに「琳派」と言っても、長い年月があり、各人各様、個性豊かで、それぞれ異なります。


僕が纏まって「琳派」を観たのは、尾形光琳生誕350周年記念と銘打った「大琳派展 継承と変奏」展でした。2008年に東京国立博物館で開催されました。その図録を見ると、次のようにあります。「琳派は、狩野派のような世襲による画派ではなく、光琳が本阿弥光悦、俵屋宗達に私淑し、その光琳を、酒井抱一らが慕うという特殊な形で継承されてきました。たとえば、宗達作品を光琳画模し、それをさらに抱一、鈴木基一が模した『風塵雷神図』のように、宗達の作品に誘発され、同じ題材の作品を描いている展は、琳派の特徴のひとつといえるでしょう」。


江戸時代後期、江戸琳派の創始者・酒井抱一、生誕250年を記念して、畠山記念館が所蔵する抱一作品を一挙公開するという、太っ腹な企画です。「酒井抱一・琳派の華」展、会期の前半と後半に分けて書画作品はすべて入れ替わります。やはり目玉は「十二ヶ月花鳥図」でしょう。新宮水野家旧蔵本シリーズ、芍薬(四月)、百合(六月)、木槿(八月)、山茶花(十月)というモチーフは珍しい。僕が観に行ったのは2月8日でしたから、「十二ヶ月花鳥図」は一月から六月までが展示されていました。間近で観られるのも畠山記念館の特徴です。


抱一作品のなかに、十二ヶ月花鳥図と呼ばれる十二図一組の作品群がある。現在、銃に幅揃いのものが、宮内庁三の丸尚蔵館、米国プライス氏所蔵本、米国ファインバーグ氏所蔵本、当館の四組と、十二図を六曲一双の押絵貼屏風に仕立てられたものが二例知られているほか、かつては十二幅一組として制作されたと思われる一群の存在も知られている。各月にちなんだ花と鳥を十二図に描く十二ヶ月花鳥図のテーマは、「定家詠十二ヶ月花鳥歌絵」として伝統的な画題であり、狩野派や土佐派を中心に、光琳、乾山らも手がけている。しかし抱一は、その伝統を基本としながらも、自由な十二ヶ月花鳥の取り合わせを行い、自身の画風を生かした情緒豊かな作品を作り上げている、と図録の解説にあります。


それはともかく、畠山記念館は、通常の展示では「図録」らしきものは出されていないので、いつもは2~3枚の絵はがきを購入して、画像を載せていました。今回はすべての展示品が載っている図録、「與衆愛玩 琳派」(発行:財団法人畠山記念館、発行日:平成19年4月3日)がありましたので、購入して帰りました。それによると畠山記念館の創設者畠山一清(号即翁・1881-1971)は、株式会社荏原製作所を設立し業界に重きをなしました。一方、日本趣味に深く傾倒、即翁と号して能楽や茶の湯を嗜み、茶道具を中心に生涯東洋古美術の蒐集に努めました。チラシにも「畠山記念館は茶と数寄を体感できる美術館です」とあります。


そうそう、書名にある「與衆愛玩」は、即翁の所蔵茶道具の蔵印「即翁衆と愛玩す」を典拠としています。数寄者がその蒐集品を独占するのではなく、共に楽しむ精神が脈々と継承されていることも見出せる意図から、その名を冠しました。平成19年4月に「琳派展」を催したときの、図録のようです。それにしても畠山記念館は、いいものを多数持っています。自前の所蔵品で「琳派展」を開催できるのですから、素晴らしいとしか言いようがありません。


もう一つの目玉は四曲一隻の「四季花木図屏風」です。この屏風の主役は右隅に配された桜の大木です。太い幹に苔が生え、樹齢を重ねた様子が窺われます。左に大きく延ばした枝には、満開の桜が咲き誇っています。その下には、四季の草花が季節毎に配されています。「扇綿月兎画賛」は新古今和歌集巻第12藤原秀能の「藻塩焼く海人の磯屋の夕煙立つ名もくるし思ひ絶えなで」を描いた、いかにも琳派のもの、扇面の右半分の金箔は月に見立てて、扇面の特長を生かした大胆な構図で、光悦絵画の独壇場です。


「小督局図」は、平家物語の説話を画題とするものです。豪華な「小謡本」は、金銀泥による下絵を施した豪華な料紙に、流麗な書を配したもので、宗達と光悦によるものです。酒井抱一の「富士見業平図屏風」、伊勢物語第9段のうち、「東下り」の場面を描いた屏風です。「時しらぬ山は富士の嶺いつとてか鹿の子まだらに行きの降るらむ」、東下りの一行が富士山を眺めて、山肌に雪が残っているのに驚き、さらに比叡山を20ほども積み重ねしたほどの高さに驚く、というくだりです。がしかし、ここには富士山が描かれていません。


酒井抱一の「乙御前図」、ふくよかに全身を描き、つま先をちらりと見せ、顔を袖で少し隠しながら、愛嬌のある微笑を浮かべています。着物には松竹、帯には梅の吉祥模様が描かれています。鈴木基一の「曲水宴図」、中国古代周時代に始まるとされる「曲水宴」は、日本では宮中の五節句の一つとして3月3日に催された詩歌の遊びで、いかにも宮中らしい雅な趣を描いています。以下、畠山記念館お得意の分野、お茶にまつわる品々です。茶碗、香合、茶杓、蓋置、手鉢、そして硯箱などです。















「酒井抱一 琳派の華」

江戸時代後期の琳派を代表する画家酒井抱一(1761~1828)。本年は抱一が生まれて250年を迎えます。これを記念して畠山記念館が所蔵する抱一作品を一挙公開します。代表作とされる「十二ヶ月花鳥図」をはじめ「風神雷神図」や「月波草花図」など、江戸の地に開いた琳派の華・抱一の美の世界をご堪能ください。併せて琳派の祖として仰がれる本阿弥光悦や俵屋宗達から、後世の尾形光琳・乾山兄弟、そして抱一の一番弟子鈴木其一の作品をご紹介いたします。 なお、会期の前半と後半で書画作品はすべて入れ替わります。展示期間にご注意ください。


「畠山記念館」ホームページ


とんとん・にっき-hata25 「與衆愛玩 琳派」
発行部:平成19年4月3日

編集・発行:財団法人畠山記念館


とんとん・にっき-shiritai







アート・ビギナーズ・コレクション

「もっと知りたい 酒井抱一 生涯と作品」

2008年9月25日初版第1刷発行

著者:玉蟲敏子

発行所:株式会社東京美術










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