「さとりをひらいた犬/ほんとうの自分に出会う物語」無料公開です。

 

(お知らせ)

「さとりをひらいた犬」が Audible になりました。

予約販売が開始されました。

ジョンやゾバック、クーヨやシャーレーンなどのキャラクターたちが、音声になって飛び出してくるということを想像するだけで、言葉にできない思いが湧き上がってきます。

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もう読んだ方も、そうでない方も、お楽しみいただければ嬉しいです。

 

最初からお読みになりたい方は、こちらからお読みくださいね。

本で読みたい方は。

 

「さとりをひらいた犬」はこちらから

第1章「旅の始まり」

第2章「三つの存在」

第3章「恐れ」

第4章「エゴ」(いまここ)

 

本で読みたい方は。

 

 

前回㉝は…

 

 

㉞皇帝シーザー

 

尾行し始めて三日目の夜、少しでも情報を得ていたほうがよいと考えて、思い切って犬たちに近づいてみることにした。

 

僕は眠って休んでいる集団の中に注意深く入って行った。

 

犬たちはそれぞれ数匹づつの集団に別れて、身体を寄せ合って寝ていた。

 

僕は丸くなって寝ている犬たちの間を気づかれないように静かにぬけていった。

 

いくつかの集団を通り抜けたところで、突然、後ろから鋭い声が響いた。

 

 

 「待っていたぞ」

 

 

振り向くと、精悍な風貌をした身体の大きな犬が身体を起こして僕を見ていた。

 

 

 「……」

 

 

その犬は、猟犬らしい鋭い目を光らせながら言った。

 

 

 「お前が我々をつけていることは気づいていた。いずれ我々に接触してくるとの予想もしていた」

 

 

 僕の尾行は、今までどんな動物にも気づかれたことがなかったのに…

 

 

 「私の名前はマリウス。この部隊の副官だ。今から我々の司令官に会わせる。ついて来い」

 

 

マリウスは立ち上がると、寝ている犬たちの間を抜け、集団の先頭に向かって歩き始めた。

 

 

 どんな犬だろう?

 

 あの犬だろうか?

 

 

集団に適切な指示を出していた、あの黒い犬の姿を思い浮かべた。

 

 

マリウスが歩みを止めると同時に、マリウスの前に自信と威厳に満ちた黒い犬が、鋭い目つきとともに現れた。やはり、あの犬だった。

 

 

 「おっしゃるとおり、接触してきました」

 

 

マリウスはそう言うと、横にすっと退いた。

 

僕の目前に立っている黒い犬は、今まで出会った他の犬たちとは明らかに様子が違っていた。

 

数々の戦いの経験が作り出す自信と威厳、そして落ち着きを感じさせた。

 

全てを見抜く氷のような鋭い目が僕を見据えていた。

 

 

 「なぜ、我が部隊のあとをつけるのだ?」

 

 

黒い犬はゆっくりと聞いた。その声は低く、しかしとても艶のある声だった。

 

 

 僕は瞬間、悟った。ウソやごまかしは通用しない…

 

ほんとうのことを言おう。

 

 

「僕はレグードゥの森に向かっているんだ。

 

君たちもおそらくそこに向かっているんだろうと思ったから、ついて歩いていたんだ」

 

 

 

「それにしては、ずいぶんと慎重につけていたな。相当な訓練を積んでいるようだ。

 

お前は何者だ?」

 

 

そして鋭い目を細め、矢で射貫くように、僕を見つめた。

 

 

 

 「僕は“元”猟犬だ。だからやり方を知ってるだけだ」

 

 「ほう、お前の名前を教えてもらおう」

 

 「僕の名前は、ジョン」

 

 

 

黒い犬は一瞬、さらに眉間をシワを寄せ、しばらく黙ってから言った。

 

 

 「お前、鷹の羽のジョンか…」

 

 

 

 「僕を、知っているのか?」

 

「うわさは聞いている。「ガルドス」や「白帝」を倒した武名は我々のところまで届いている。

 

突然人間の所からいなくなった、とのうわさもな」

 

 

 

 そんなことまで、うわさになっているんだ…

 

 

 「私はシーザー。この集団の指揮官だ。会えて光栄だ」

 

 シーザーは初めて目元を緩めた。

 

 

 

 「君が『皇帝』シーザーか…」

 

 

 「いかにも、そう呼ばれることもある。君が知ってくれているとは、なおさら光栄だ」

 

シーザーは“お前”を“君”に言い換えて答えた。

 

マリウスがいぶかしげに聞いた。

 

 

 「司令官、こいつの言うことを信用してもいいんでしょうか?」

 

 「君も彼の尾行を見ただろう。あのような動きが出来るものはそうは多くない。

 

少なくとも、私の部隊にはいない。

 

眉間の傷、半分のしっぽ、全て私の想像していたとうりだ」

 

 

 

 そして今度は僕に言った。

 

 「ジョン、どういう理由で人間のもとを離れたかは知らないが、もし良かったら我々の部隊に合流してくれないか? 君が我が部隊に入ってくれれば、こんなに力強いことはない」

 

 

 「シーザー、申し訳ないがそれは出来ない。僕はレグードゥの森に大事な用事があるんだ」

 

 「どのような用事なのだ? 差し支えなければ聞かせてくれないか?」

 

 「僕にもよく分からないんだ。しかし、レグードゥの森に行けば必然的に分かると思う」

 

 「必然的に分かる? 私には意味が分からないが…」

 

 

 僕は、思い切って言ってみた。

 

 

 「シーザー、僕は自分の『魂の声』にしたがっているんだ。今は分からなくても、きっと“その時”になれば、僕のいる意味、僕の学び、僕のやるべき事、全てがはっきりすると思うんだ」

 

 

 

 「『魂の声』?」

 

 

 

シーザーは不思議そうに繰り返してから、マリウスを見た。

 

マリウスも首をかしげながらシーザーを見返した。

 

 

 

「『魂の声』は心の奥の深いところから聞こえてくるんだ。

 

僕の『魂の声』はこういっているんだ」

 

そこまで言うと、少し話を止めた。

 

 

 

シーザーとマリウスはじっと僕を見ている。

 

シーザーになら、通じるかもしれない!

 

 

そしてゆっくりと、しかしはっきりと、ふたり向かってダルシャが僕に言ってくれた言葉を言った。

 

 

「僕達の本質は自由だ。僕達は人間に飼われ、人間に尽くすために生まれてきたわけじゃない、と」

 

 

 

㉟へ続く

 

 

(お知らせ)

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よくご質問いただくので、以前書いた記事をリンクしておきます。

おすすめのお茶や飲み物など

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オススメの本①(読むと元気になる)

おススメの本②(劇的寛解事例)

おススメ本③(生還者たちの体験記)

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