さむらい飛脚
人気番組だった「素浪人花山大吉」の後番組となるのが「さむらい飛脚」(71年)である。
主演は往年の剣戟スター大友柳太朗である。映画では「丹下左膳」「怪傑黒頭巾」を始め、多くの主演作があるが、テレビでは基本ゲスト出演で、シリーズでの主役は本作のみではなかろうか。1912年(明治45)生まれで、当時59歳。35年に新国劇入りし辰巳柳太郎に師事。37年の映画デビューの際、師匠から「柳太郎」の名を貰い、芸名を大友柳太郎とした。正確には「友」の字は右上に「丶」が付与されている。50年に「郎」の字を「朗」に変えたが、戦後に中々主役の座に帰れず、師匠の名を名乗るのはおこがましいと考えたからだという。
その大友とは新国劇ではずっと後輩にあたる若林豪(古吟鹿之助)、紅一点の佐藤友美(お紺)、一番若手の川口恒(井戸勘兵衛)、そして「花山大吉」から引き続きの出演となる品川隆二(神坂精四郎)の五人がレギュラーメンバー。「焼津の半次」から一転して、ニヒルでクールな浪人を演じているが、元々が二枚目路線だった人である。本人も半次のようなコミカルな役は嫌いで、無理にやっていた部分があるという。まあ当時の視聴者はかなりの違和感を感じていたと思うけれども。
この五人がやっている商売が、命を狙われている人物やいわくつきの荷物を目的地まで送り届けるというもので、タイトルにもある「飛脚」なのである。
品川はクールな役と言っても、第3話では将軍家の弟君と瓜二つということで、二役を演じたり、回によっては変装したり、12話などは川口の夢の中で「焼津の半次」のようなキャラを演じたりと、完全な二枚目をやらせてもらえないようであった。
OPとEDのクレジット登場順だが、第3話までは大友がトップで、品川が五番目だったのだが、4話以降はこの二人が入れ替わる。これだと品川が主演のように思えてしまうのだけれども。
まあ、中々面白そうな設定の番組だったのだが、わずか1クール13話で終了してしまう。若林などは9~11話まで登場せず、12話に出たと思ったら、最終話にも登場しない。おそらくだが同時期に放送されていた「大忠臣蔵」(大友も出ている)や映画「暁の挑戦」への出演の為だろうと思われるが、若林も1クールで終わるとは思ってなかったのではないだろうか。
ちなみに、本作の放送時間は土曜の夜8時。そう前回の「二人の素浪人」と同じで、裏番組が「8時だヨ!全員集合」だったのである。「花山大吉」は「全員集合」より前から放送されていたので持ちこたえていたのだろうが、逆に新番組では太刀打ちできなかったのだろう。放送局は本作はNET(テレビ朝日)、「二人の素浪人」はフジである。だた、このタイミングで「全員集合」が一旦休止され、クレージーキャッツの「8時だヨ!出発進行」が半年間放送されている。こうして、大友柳太朗主演ドラマは1クールで終了する。年齢的なこともあってかこの先、主演となることはなかった。とか言いながら、本作と時間帯は違うが入れ替わるように始まった「軍兵衛目安箱」(71年)の主演は片岡千恵蔵、当時68歳である。大友より9歳上で、なんならその師匠辰巳(1905年生まれ)よりも年上だったりする。
晩年の大友はセリフ覚えに苦労していたと言い、それを苦にしてか自宅マンションより飛び降り自殺。前日には遺作となった「タンポポ」(85年)の監督・伊丹十三に電話をかけ、自分の出番が全て終わったことを確認していたという。その伊丹も、数年後に同じように自社のあるマンションから飛び降りてしまうのだが。
二人の素浪人
前回までとは、ガラリと変わり「二人の素浪人」(72年)である。
二人と言いながら、OPには四人の男。平幹二朗(流月之介)、浜畑賢吉(柴源之進)、品川隆二(きっかけの三次)、河原崎長一郎(東ノ小路道麿)。
名前からわかると思うが、素浪人というのは平と浜畑の二人で、平は「三匹の侍」を思い出させるようなキャラで、浜畑は月代を剃っているので、浪人という感じは薄い。元勘定奉行の配下だったという設定。
品川隆二は、ほぼ「素浪人月影兵庫」「素浪人花山大吉」で演じた焼津の半次を踏襲したキャラ。渡世人だが、元岡っ引きらしい。河原崎は京都で医者をやっていたという人物。医者としての腕は確かなようで、戦う時は素手で相手の関節をはずしたりできる。第1話では川谷拓三がやられている。「用心棒シリーズ」の万平(左右田一平)を思い出させるようなキャラである。
つまりは、「三匹の侍」と「素浪人シリーズ」と「用心棒シリーズ」を合わせたような番組ということになるのだろうか。
第1話は紹介編で、流と柴は元々知り合いだが、三次や道麿との出会いを描いている。悪役として高品格、深江章喜、そして葉山良二が登場。柴の独特の構えは、文章にするとわかり憎いが、刀を左手で逆手に抜き、左手を順手に持ち変えて右手で柄を押し上げるというもの。それはともかく馬上の葉山をジャンプ一番、飛び越えて斬り捨てている。
第2話では、流を父の敵と狙う姉弟(鮎川いずみ、加賀爪清和)が登場。流と彼らの父・高品(市川男女之助)は親しかったがある日斬られて死亡する。現場に流がいたことで、下手人だと思い込んでいたのである。下手人は田口計であることは出てきた瞬間にわかる。その黒幕も姉弟の伯父である稲葉義男であることも見え見えである(他に怪しいやつ出てこないし)。加賀爪少年は「わんぱく砦」から5~6年で随分でかくなったなあ、と思っていたらそっちは芳和で、こっちは清和だった。名前から明らかに兄弟だろう。清和は知らんなあと思って調べたら、前述の「月影兵庫」や「用心棒シリーズ」にもゲストで出ていた。
基本はメインが女性ゲストであることが多く、上原ゆかり、早瀬久美、東山明美、菊蓉子、松岡きっこ、佐藤友美、麻田ルミ、松山容子などの名が並んでいる。
音楽は富田勲を起用。アニメとかの印象が強いが、時代劇もちょっと前に触れた「文吾捕物絵図」(67年)なども担当している。
さて、本作だが73年1月6日を持って終了。全19回という半端な話数や正月明けに終了とかを考えると打ち切りだったのだろうと思われる。これには明確な理由がある。本作は土曜日8時からの放送だったのだ。そう、裏番組はドリフの「8時だヨ全員集合」である。自分も小学生であったが、「全員集合」の裏で何をやっていたかとか全く記憶にない。
怪物番組の裏でなかったらどうなっていたかは知る由もない。
新選組(73年版)
もう一つだけ、新選組ものだがタイトルはずばり「新選組」(73年)である。
これは、原作ものではなく結束信二の全話オリジネル脚本である。土方歳三役は「燃えよ剣」以来、当然の様に栗塚旭だったのだが、今回は主役ではない。鶴田浩二演じる近藤勇が主役なのである。まだ映画スターといった感じが強く、連続ドラマの主演は「上方武士道」(69年)以来、二度目だったと思われる。格上のスターが出てくる以上、栗塚も今回は脇役に回らねばならないのである。というより「商魂」(72年)というドラマを最後に栗塚が主役を張ることはほぼなかったのだ。実際、自分はリアルタイムで栗塚を見た記憶が全くないのである。70年代前半くらいで引退した人だと思っていたくらいだ。「暴れん坊将軍」に山田朝右衛門役で準レギュラーだったようだが、ほぼ見ていないので。
話を「新選組」に戻すと鶴田浩二が沈着冷静な近藤を演じる以上、土方が血気にはやるタイプになるしかないのである。お馴染みの栗塚土方を期待した人には不満だったかもしれない。また沖田総司役は意外にも有川博。どちらかと言えば悪役が多く、「必殺商売人」では中村主水(藤田まこと)の上司である与力の役をやっていたりしていた。他にも山城新伍(山崎烝)、伊吹吾郎(永倉新八)、河原崎長一郎(原田左之助)、田崎潤(井上源三郎)、日下武史(山南啓助)、待田京介(大石鍬次郎)、中山克己(藤堂平助)、後新選組ではないが、田村高廣、中丸忠雄、大川栄子、そして菅原文太(桂小五郎)などネームバリューの高い役者が多く出ている。
今回は企画に俊藤浩滋(藤純子の父)の名があり、東映任侠映画色の濃いキャスティングともいえる。一方で結束キャスティングとでも言ってもいい、左右田一平(斎藤一)、島田順司(中村半三郎)、小田部通麿(浅井又兵衛)、西田良(目明し富五郎)らも顔を揃える。左右田は「新選組血風録」時と同じ斎藤役で、島田は途中から登場するようだ。
もう一人「新選組血風録」時と同じ役を演じるのが遠藤辰雄(芹沢鴨)だ。これが第1話のゲストで、相方の新見錦役は成田三樹夫が演じた。今回は第1話から芹沢一派を粛清する話なのである。芹沢の持つ人脈を利用して新選組は結成された経緯があり、芹沢が筆頭局長で、新見と近藤が局長に着いたのだが、芹沢や新見は金に女にやりたい放題。我慢していた近藤だが、彼らが不正をしている証拠を掴み、新見や芹沢を斬り捨てるのだった。芹沢一派には志賀勝、国一太郎など。また、藤岡弘がオリジナルの藤田という新選組隊士を演じたが、彼は5話にも登場した。続く2話では、有名な池田屋事件が描かれる。
全19話という半端な話数だが、放送期間はぴったり半年だったようなので、木曜20時だし、野球中継とかで潰れた週も多かったのではないだろうか。
結束信二の全話脚本とかは本作が最後だったようで、以後は「桃太郎侍」や「暴れん坊将軍」などにゲスト的に参加するに留まった。ちなみに本作では「けっそくしんじ」とよみがなが付いていた。ちなみに、いつも彼とコンビを組んでいたプロデューサー上月信二は「こうづきのぶじ」と読み「しんじ」ではない。
燃えよ剣(66年版)/映画版
「燃えよ剣」は、70年の東映版が有名だが、それより先の66年に東京12チャンネル(現・テレビ東京)でドラマ化されたことがあったのである。
まあ開局まもない関東ローカルの12チャンで、1クールの30分ドラマということもあり、これを見ていた人は非常に少ないのではないだろうか。映像も恐らく存在しないのではと思われる。
出演者はそれなりに名のある役者を使っており、主演の土方歳三には内田良平、近藤勇に小池朝雄、沖田総司に杉良太郎となっている。他に判明しているところでは、瞳麗子(佐絵)、睦五郎(七里研之助)、佐藤慶(土方為次郎)、小松方正(原田左之助)、高木二朗(山岡鉄太郎)、城所英夫(清河八郎)等である。
杉は65年に歌手としてデビューしたばかりだった。実際、本作の主題歌「燃えよ剣」も杉が歌っている。
ナレーターはお馴染みの芥川隆行だが、その芥川から杉に連絡があったという。「時代劇に出て見る気はありますか?」。当時の杉は歌のことしか考えて考えておらず、迷いに迷った末、とりあえず挑戦してみようと引き受けたのだという。当然これが杉のドラマ初出演ということになる。12チャン初の時代劇スタジオドラマだったらしいがVTRかフィルムか、はたまた生ドラマだったのかは不明だ。
ちなみに、本作は毎週金曜日の放送だったようだが、第12話が4月1日に放送されると、続く最終13話は翌4月2日に放送されたらしい。
杉によれば、特に反響のようなものはなかったというが、日活と専属契約することになったのは本作のおかげだろうと語っている。また、翌67年にはNHKの時代劇「文吾捕物絵図」の主役に杉は抜擢されることになる。
話は変わるが、この66年には「土方歳三 燃えよ剣」のタイトルで松竹で映画化されている。土方役は当然のように栗塚旭が演じたが後はテレビとは全く違う配役となった。
和崎俊哉(近藤勇)、石倉英彦(沖田総司)、戸上城太郎(芹沢鴨)、高宮敬二(新見錦)、天津敏(清河八郎)、北村英三(佐藤彦五郎)、水上保広(藤堂平助)、玉生司朗(井上源三郎)、高野真二(外島機兵衛)、小林哲子(佐絵)、そして前述の12チャンネル版で土方を演じた内田良平が宿敵である七里研之助を演じている。沖田役の石倉は基本的には悪役がほとんどで、「桃太郎侍」「暴れん坊将軍シリーズ」「水戸黄門シリーズ」「必殺シリーズ」など東映、松竹の時代劇を中心に数多く出演している。Vシネマ等でやくざを演じることも多い。佐絵役の小林哲子は俳優座の所属で、東宝特撮「海底軍艦」(63年)のムウ帝国皇帝役が有名である。水上保広の父はあの阪東妻三郎で、田村高廣、正和、亮とは異母兄弟である。北村英三や玉生司朗は70年版の「燃えよ剣」でも役は違うが、新選組の一員を演じている。ちなみに栗塚も北村も玉生も「劇団くるみ座」の所属である。
ちなみに、本作のソフト化の際のタイトルは土方歳三のつかない「燃えよ剣」である。
燃えよ剣
時間帯は月曜から水曜に移ったが、実質的な「天を斬る」の後番組が「燃えよ剣」(70年)である。
司馬遼太郎原作による新選組ものだが、「新撰組血風録」(65年)も司馬遼太郎の原作を結束信二の全話脚本でやったものだが、本作も同じパターンとなる。「血風録」と同じキャストなのは、栗塚旭(土方歳三)、島田順司(沖田総司)、舟橋元(近藤勇)、北村英三(井上源三郎)、飯沼慧(新見錦)だけのようで、後は初参加はもちろん、別の役に移動のパターンもある。左右田一平などは、前回は斎藤一役だったのが、本作ではオリジナルであろう裏通り先生(町医者)という新選組ではない人間(兼ナレーション)を演じている。
今回の第1話は新選組結成前から始まるのだが、個人的には新選組関連のことは近藤とか土方とか、それぞれの名前を知っている程度なので、シャレではないが新鮮であった。近藤も土方も武家の出ではなく豪農つまり裕福な農家の出身というところが同じである。近藤が幼少期より通った道場「試衛館」の養子となり、その道場主となる。土方も若い頃から試衛館に通っており、二人は無二の親友となったのである。沖田は武士の子だが、天真爛漫という感じのキャラ。好青年だが、剣術の腕は土方や近藤に劣らない。というように主要三人の関係性は既に出来上がっているのだが、江戸で疫病(はしか、コロリ)が流行って、道場に誰も来なくなったところから物語が始まる。
道場には三人の他、近藤家に仕えている井上源三郎(北村英三)や、居候状態である永倉新八(黒部進)、原田左之助(西田良)、斎藤一(玉生司朗)、藤堂平助(平沢彰)が集っていた。道場に誰も来なければ、収入もないということで、途方に暮れていたところに山南啓助(河上一夫)が耳よりな話を持ってくる。
京都では刃傷沙汰が横行し、幕府は過激志士達の跳梁に頭を痛めていた。庄内藩の清河八郎(御木本伸介)はその鎮圧のため浪士たちによる護衛部隊「浪士組」を組織するという。その話を聞いた試衛館の面々も京都に行くことを決意するのだった。この時点で新選組の面子となる九人が揃っており、清河の話を聞くときにいた無礼な集団、つまり芹沢一派ともそこで出会っている。ちなみに芹沢鴨(名和宏)、新見錦(飯沼慧)、平山五郎(出水憲司)、平間重助(森章二)、野口健司(松田明)の五人組だ。
第1話では、その彼らが京都に旅立つところで終わるが、原作や映画版では重要となる七里研之助という宿敵キャラがあっさりと斬られてしまうのである。ちなみに映画では内田良平、今回は亀石征一郎が演じていた。かつて歳三と恋仲だった佐絵(赤座美代子)も登場するが、実は今や研之助と通じており、歳三を誘い出す役だったのである。その辺のオリジナルキャラは今回は重視しないということなのだろう。
第2話で京へ着いたものお、清河の言うことは江戸と変わっていた。実は彼は討幕派であり、試衛館の面々は清河の話に乗るのを辞めた。このままでは京都まで来た意味がないので、歳三は新しい党をつくることを提案する。その為に芹沢らと手を組むことが必要になるという。歳三はいつの間にか、芹沢の本名やその背景を調べていたのである。歳三の思惑通り、武装警察「新選組」が結成されることになったのである。そんな背景もあり、当初は芹沢たちを立てていたものの、あまりに乱暴狼藉な振る舞いが目立つため、彼らを粛清するのである。こうして、近藤勇局長、土方歳三副長というお馴染みの新選組が誕生するのだった。
ちなみに近藤役の舟橋元は当時既に糖尿病に侵されていたという(74年没)。
天を斬る
「用心棒シリーズ 俺は用心棒」の後番組となったのが「天を斬る」(69~70年)である。
本作からこの時間帯(NET、月曜夜8時)はカラー放送となっている。出演者は前作までの栗塚旭、島田順司、左右田一平で変わらないのだが、人物設定は用心棒でも新選組でもなく、何とお役人なのである。
島田は京都東町奉行所与力・桜井四郎、左右田は京都西町奉行所与力・権田半兵衛、そして栗塚は元江戸講武所頭取・牟礼重蔵となっており、彼等三人が幕末の京都を舞台に公儀の密命により、悪人を取り締まるという内容になっている。「非常火急の場合、各自の判断でこれを処理すべし」という権限、つまり斬っても構わないということである。一貫してアウトローを主人公としてきた結束信二が、ある意味王道な時代劇を描いたということになろうか。ただ本作は用心棒シリーズでも新選組関連でもないので、意外と知られていないのでは、と思っていしまう。
栗塚演じる牟礼の経歴である江戸講武所とは、幕末に幕府が設置した武芸訓練機関である。その「頭取」だったという設定だが、今や銀行の社長にあたる人物を表すくらいしか使われないが、幕末や明治初期は様々な機関の名称に使用されていたようだ。ただ、講武所においては、上が総裁で、各部門に師範、教授方が置かれていたとあり、頭取の文字は出てこないが、まあ正確なところはわからない。
その牟礼が江戸で何かをやらかし閉門の身であることは明かされるが、何をしたのかは不明だ。今までのような無口なキャラではなく、他の二人と違い江戸から来たばかりで顔を知られていないことも武器になる。桜井は堅物で正義感が強く、権田は万平に近いキャラで刀を抜かずに戦う。彼等に加え、レギュラーとなるのが、用心棒シリーズではお馴染みの三人。香月涼二演じる西町奉行所の同心・大沢孫兵衛、小田部通麿演じる東町奉行所の目明し・万五郎、二話からの登場になるが、西田良演じる無宿人の百太郎である。
第1話のゲストは前作でも初回のゲストだった桜町弘子。冒頭でうどん屋を開く場面があるが、それから30分以上出てこない。やはり序盤で西町の目明し(波多野博)が御用盗の浪士に斬られて命を落とすのだが、その女房が桜町だったのである。その事件の犯人たちは三人によって成敗されるが、桜町は亭主の後を追っていたという空しい結末だ。
第2話でも冒頭で京へ向かう旅の父娘(柳川清、桂麻紀)がいるが、その後出てこない。刀剣屋で桜井は同僚である井上(永井秀明)とその息子に会うのだが、その夜、井上親子の首なし死体が発見される。その犯人の浪士たちの居場所である旅籠を突き止め牟礼らが乗り込むのだが、浪士の一人(蔵一彦)が旅籠の客を人質にする。その人質が冒頭の父娘だったのである。娘が背後から浪士を押さえつけ、牟礼が浪士に一太刀浴びせるが、浪士が倒れ込む際に娘は斬られてしまうのだった。二話見ただけなのだが、基本的にこういう空しい結末を迎えるのだろうなという気がした。
ちなみに、OPの歌唱は栗塚、島田、左右田の三人が担当している。結構、上手である。
用心棒シリーズ 俺は用心棒
「帰って来た用心棒」の翌週から始まったのが「用心棒シリーズ 俺は用心棒」(69年)である。「俺は用心棒」だと、シリーズ1作目と同じタイトルなのだが、第2作「待っていた用心棒」からタイトルバックに「用心棒シリーズ」の但し書きが付いているので、本作の正式タイトルは「用心棒シリーズ 俺は用心棒」ということになっているのである。出演者もメインの三人は同じだし、1作目と4作目を混同している人も多いかもしれない。
「帰って来た用心棒」の最終回で、動乱の京都を捨て旅に出た謎の浪人(栗塚旭)、田島次郎(島田順司)、品田万平(左右田一平)の三人だが、各地を旅するロードムービー形式になるため、レギュラーもこの三人だけである。時代設定も幕末の動乱期ではなく、1作目「俺は用心棒」より前の安政年間ということになっているらしい。まあそこまで気にしている視聴者はあまりいなかったと思うけれども。ちなみに、主題歌、挿入歌は4作とも全て同じフォーコインズの「おとこ独り」「野良犬がゆく」なので、このエピソードはどの作品だったかと思い出すのも難しい気はする。
第1話の時点で三人は別行動となっている。工藤堅太郎がゲストだが、彼の場合大概は被害者側であったり、善人役だったりするのだが、今回は江戸で高官を殺害し、逃走中の浪士という役。農家に旅人二人と子供二人を人質に立てこもる。目付役(小美野欣二)は、人質を無視して踏み込もうとするが、そこへ田島が通りかかる。丸腰で、家へ入り込み、何とか人質の救出に成功。浪士も捕方たちに捕まる。この事件はストーリー的にはメインではなく、人質になっていた二人(早川純一、松川純子)と今回のメイン悪役である目付が重要だったのである。小美野欣二は、60~70年代の時代劇の悪役としてたまに見かける程度だが、俳優座養成所の10期生で、中野誠也や長谷川哲夫が同期だという。
結束信二時代劇は主人公たちが、沢山の悪人たちを斬りまくるという王道イメージだったのだが、第2話で斬られるのは三人だけである。田島が森でこれから1対1の果し合いに臨むという山田(水木達夫)という侍に出会う。結果的に山田は死亡するが、それは明らかに複数の人間に斬られたものだった。妹のさと(岩井友見)は藩の目付役(外山高士)に仇討を申し出る。こういう役での外山高士は大体悪人なのだが、今回は実にまともな人物だったのである。真相は決闘相手の佐藤(成田次穂)が頼んでいないにも関わらず、井田道場の井田源三郎(穂高稔)と門弟二人が山田を殺害したのである。真相を知った栗塚扮する浪人と田島がその三人を斬り捨てる。その事を知らない妹のさとは下男と共に仇討の旅に出ていくのである。
このシリーズにおいては、大物と言われるようなゲストはあまりいないようである。男優では河原崎建三、坂口祐三郎、森次康嗣、亀石征一郎、柳生博、近藤正臣、石橋蓮司、女優では花園ひろみ、磯村みどり、長内美那子、岩本多代、八木昌子、三原有美子、河内桃子といったところ。
用心棒シリーズは本作を持って終了となったのだが、次回作はまたしても栗塚、島田、左右田のトリオによるものである。
帰って来た用心棒
「待っていた用心棒」の後番組が用心棒シリーズの第3弾「帰って来た用心棒」(68~69年)である。何が帰って来たのかというと栗塚旭がこのシリーズに復帰したのである。
実はこの時点で、栗塚が主演していた松竹、TBS系の「風」はまだ放送中であった。というより放送期間延長によって終わらなかったのである。これは、TBS側の妨害とも言われているが、栗塚の掛け持ち出演によって事なきを得ている。
栗塚は今回、「俺は用心棒」時の「野良犬」ではなく「謎の浪人」が役名となっているので、呼び名がないのである。前作と衣装も同じで同一人物にしか見えないが、別人という設定のようだ。左右田一平は今まで通り品田万平役なので、面識があるはずだが、この第1話で初めて会ったということになっているのだ。もう一人のメイン島田順司は沖田総司から「捨て犬」と来て、田島次郎という爽やかで生真面目な性格の若い浪人を演じている。
第1話は田島が京都にやってくるところから始まる。ものを尋ねた女性(尾崎奈々)が、彼が探している浅川(永田靖)の娘だったのだが、その時点ではわからない。田島が出会った浅川はただの飲んだくれ老人と言った感じで一旦別れたが、夜中に寺の境内に浅川が四人の侍に追われ逃げ込んできた。すぐに田島がその間に割って入り、にらみ合う。そこに現れたのが栗塚扮する「謎の浪人」である。「おぬしらにその若侍は斬れん。何なら助成するぞ」と侍たちに言うが、一人が「素浪人の助けなどいらん」と答えているうちに、他の三人は田島に斬られ、残る一人は逃げてしまう。田島がその浪人に向かって「何なら相手をするぞ」と息巻くが、「もう終わった、それより介抱してやれ」と浪人が指さすと浅川が苦しんでいた。とまあ、田島と謎浪人の出会いは最悪のものだったのである。
田島が町に医者を呼びに行くと、そこに現れたのが万平であった。医者自身がケガをして万平が介抱していたのである。田島が万平を連れて戻ると寺の周辺は侍たちに取り囲まれていた。二人は様子を窺うが、浅川は倒れたままで、浪人の姿はなかった。
田島は浪人を疑うが、実は彼は浅川の遺言を聞き、一人で問題を解決していたのであった。初回の悪役は遠藤辰雄(太津朗)と織本順吉だ。
第2話は田島と松山容子との出会いから始まるなどメインゲストが女性であることが多いようだ。本作は2クール26話ではなく、全36話となっている。ゲスト女優陣は鳳八千代、小山明子、桜町弘子、富士真奈美、牧紀子などで、男優陣は月形龍之介、里見浩太朗、中野誠也、近藤正臣、青木義朗、細川俊之などで、ほとんどが二回は出演している。
レギュラーは三人以外に、香月涼二演じる同心・青木与兵衛が三たび登場し、小田部通麿、西田良がそれぞれ目明しの千造、十吉として登場することになる。
待っていた用心棒 その2
前回に続いて「待っていた用心棒」である。
前回のような事情により急遽作られた第1話が「剣を抱いた十人の客」である。以下、ネタバレ。
とある城下の旅籠に十人の浪人が集まってくる。九人は二階の大部屋に通され、その中の一人が島田順司演じる「捨て犬」だ。ちなみに他の八人は河上一夫、伝法三千雄、月形哲之介、山本弘、平沢彰、波多野博、宮城幸生、五里兵太郎だ。いずれも「くに殿」の依頼で、数両の手当を条件に集められたものだった。八人は仲間意識を持つようになるが、「捨て犬」だけは離れたところで背を向けて寝転がっていた。そして、十人目としてやって来たのが伊藤雄之助演じる「野良犬」だった。彼のみすぐ向かいの小部屋に一人で入ったのである。
一階には旅籠の主人と女房とその子供、番頭と女中がいるが、客として泊まっていたのが左右田一平演じる品田万平である。旅籠の子供が怪我をしたので、万平はその治療にあたっていた。浪人たちを集めた小島という侍は中々現れず、じびれを切らした野良犬、捨て犬を除く八人が小島の屋敷に行ってみようと部屋から出たところに現れたのが高橋俊行演じる「狂犬」である。狂犬は小島某が死に、計画はすべて水に流れたので、そのまま解散してくれという小島の最後の言葉を伝えに来たのであった。その後、狂犬は一階の台所に行き、酒を飲み始める。これで主役の四人がその旅籠に集結したのだが、それぞれ別の場所にいて顔を合わせないのがミソ。
この話は9割がた旅籠の中で繰り広げられる密室劇のようになっているが、後の1割が前述の小島某の屋敷である。屋敷には彼の妹(佐々木愛)が一人で居たのだが、その前に謎の浪人(中野誠也)が現れる。彼もまた、小島の死に際に立ち会い、妹を藩外に脱出させて欲しいと頼まれていたのである。
旅籠の八人の浪人は居る理由もなくなり、三組に分かれて旅籠を出て行こうとするが、最初の三人(河上、伝法,波多野)は豹変し、金品を奪おうとする。そこに野良犬が立ちふさがり、二人を斬り捨てる。残る一人は子供のいる部屋に逃げ込むが万平が現れ浪人を投げ飛ばす。一方で二人(月形、宮城)は台所で女中と番頭に襲い掛かるが、傍にいた狂犬に斬られる。二階の残る三人は行がけに捨て犬の高価だという刀を奪おうとするが、察知した彼にあっという間に斬られてしまうのだった。
夜が明けると、主役の四人は一人ずつ旅籠を出ていく。結局、それぞれ一度も直接顔を合わせることはなかったのである。次回が初顔合わせする話なので、ここで会うわけにはいかなかったのである。首謀者の「くに殿」も小島某も画面に登場することはないという、非常に変わった構成の話だと感じたので紹介してみたのだ。
第五の浪人として「俺は用心棒」でもセミレギュラーだった中野誠也が登場するが、彼もレギュラーかと当時思った人もいたのではないだろうか。あくまでも今回のみのゲストだ。
浪人たちは決して悪人というわでけはなかったのだが、最後に魔がさして斬られてしまったという感じだ。
目立つのは月形哲之介だろうか。名前が示す通り月形龍之介の息子だが、東映の大部屋俳優である。悪人にしか見えないし。膨らんだ頬はどうやら宍戸錠と同じで、シリコンを入れる手術をしたものらしい。
待っていた用心棒
「俺は用心棒」に続く用心棒シリーズの第2弾が「待っていた用心棒」(68年)である。前回少し触れたとおり、三カ月間「みんな世のため」というドラマを挟んでからの再開だったため、みんなが「待っていた」という意味でこのタイトルになったかどうかは知らない。
東映とNET(現テレビ朝日)の制作サイドは恐らく前作同様にに栗塚旭、島田順司、左右田一平を中心にやりたかったと思うが、栗塚が出演できなくなってしまったのである。松竹、TBS製作の時代劇「風」の主役に抜擢されたためである。
代わりに主演に抜擢したのは何故かベテランの伊藤雄之助であった。当時48歳で、長い顔が特徴の怪優だ。三兄弟の真ん中だが、兄の沢村宗之助と弟の沢村昌之助(伊藤寿章)は丸顔なのに雄之助のみ突然変異的な顔立ちなのだ。悪役、脇役のイメージが強いが、映画では「プーサン」(53年)「気違い部落」(57年)等で主演の経験もある。
栗塚の代わりとしては、あまりにも違い過ぎると感じていたのか、もう一人新人である高橋俊行が抜擢された。高橋は41年生まれで、実は高城丈二ならぬ高城裕二の名で64年にデビューし、東映東京の作品数本に脇役で出演している。一度役者から離れたが、67年に復帰し、本名の高橋俊行で活動再開したところに今回の出演となったのである。
この二人にお馴染みの左右田と島田を加えたカルテットが本作の主役なのである。左右田は前作と同じ品田万平だが、島田が演じるのは通称「捨て犬」。結束信二時代劇では、好青年をを演じることの多い島田だが、本作ではいつも金儲けの事を考えているような浪人である。高橋が演じるのは通称「狂犬」。その呼び名に反して、割合冷静で無表情な浪人だ。
そして、伊藤は前作を受け継いでか「野良犬」を名乗る。つまり、三人は正体不明な謎の浪人なのである。ただ、伊藤に関しては1話と2話で明らかに性格というか演技が別人なのである。ファンの間では割合、有名な話のようだが、第2話として放送された「町の中の野火」は本来は第1話の予定だったのだ。2話での伊藤は腕は立つが、語り口は優しい感じだ。ただ、これを試写で見たスポンサーが「弱弱しくて優しい感じの主人公ではシリーズのイメージが狂う」とのクレームを入れたのだ。そこで、この話は2話に回して急遽代わりの第1話を製作したのである。見た目が十分怖い伊藤だが、「野良犬」のキャラも不敵で厳しい語り口のキャラへと変更を余儀なくされているのだ。当然伊藤は激怒し、折角の主演なのに早期の終了を望んだという。実際、18話限りで舞台の仕事を理由に降板してしまうのである。
局側は「集団ドラマなので四人が三人になっても影響はないでしょう」と呑気なものであった。19話に若山富三郎演じる夏山大吉朗という浪人が登場するのだが、彼は25~26話にも登場。事実上、伊藤の代役だったわけである。
また、前作に登場した香月涼二演じる同心・青木与兵衛、西田良演じる目明し十吉、小田部通麿演じる飯屋の主人・作次郎が数回づつ登場している。以下次回に続く。