お宝映画・番組私的見聞録 -10ページ目

隼人が来る

高橋英樹は嫌いではないが、高橋英樹主演の時代劇はあまり好みではない。「桃太郎侍」に代表されるように、英樹扮するスーパーヒーローな主人公が斬って斬って斬りまくる、というパターンが多いからである。
隼人が来る」(72年)も、そのパターンに当てはまってはいるのだが、多少毛色が違うが気がする。英樹が扮するのは諸国見廻役・秋月隼人。幕府から任命された権力を持った人物ではあるのだが、通常は浪人の恰好をしており、「水戸黄門」における印籠のような身分を示すものを所持しているわけでもない。お供するのは密偵役の河童の喜八左とん平)一人だけ。第一話の時点で、隼人の存在は既に諸国に知れ渡っており、彼がどういう背景を持つ人物なのか詳しいことは不明なのである。ある程度身分が高く、もちろん腕が立つので選ばれたのだろうがけれども。「隼人が行く」ではなくて、悪人側からの視点で「隼人が来る」なのである。
前述のとおり、レギュラーは二人だけなので、その分ゲストは豪華にできるという感じだろうか。第1話は犬塚弘、大信田礼子、沢井桂子、戸浦六宏、吉田義夫、メイン悪役は大木実である。デビューまもない片桐竜次片桐竜二とクレジットされている。第2話も大原麗子、山形勲、南原宏治、佐藤允などで、南原佐藤大前均、賀川雪絵、阿波地大輔は村を牛耳る犬神兄弟という役。南原、佐藤はそれぞれ、隼人と地決するのだが、どちらも一瞬で勝負がついてしまうのである。「花吹雪抜刀流」というお目出たそうな名前の付いた剣法なのだが、要するに花を散らしながらぶった斬るのだ。ちなみに、とん平扮する喜八は情報収集能力は一流と言って良いが、基本殺陣には参加しないので、そっちの方は駄目なのだろうと思われる。
例によって2話までしか見ていないのだが、全て一瞬で勝負がついてしまうので、少しは鍔迫り合いでもしろよ、と思ってしまう。
3話以降は未見なので、ゲストだけ並べて見ると、3話は内田良平、郷鍈治、高品格、南利明、浜美枝。4話は名和宏、天本英世、河津清三郎、山本麟一、桜木健一。5話は丘みつ子、金田龍之介、天津敏、桜町弘子、近藤正臣というように複数の有名俳優が一話ごとに登場しているのだ。以下は間単に並べるが、水原弘、松原智恵子、江原真二郎、大友柳太朗、辰巳柳太郎、悠木千帆(樹木希林)、財津一郎、大辻伺郎、嵐寛寿郎、天知茂、江守徹、浜木綿子、山城新伍、吉沢京子、芦屋雁之助、島田順司、加賀まりこ、長門勇、渡瀬恒彦、中村竹弥、夏八木勲などだ。
監督は田中徳三、工藤栄一、松尾正武などで、脚本は第1話が結束信二なのだが、その一本だけで、他は宮川一郎、野上龍雄、高岩肇などである。この辺の時代の時代劇ナレーションと言えば、芥川隆行のイメージが強いが、本作は納谷悟朗が担当している。納谷の時代劇ナレーションはあまりなく、本作と「新五捕物帳」くらいのようだ。

駆けろ!八百八町

五街道まっしぐら」が75年いっぱいで終了し、その年明けから始まったのが「駆けろ!八百八町」(76年)である。「五街道~」が打ち切りで、急遽の立ち上げということもあったのだろうが、割合オーソドックスともいえる新米見習い同心が活

躍する捕物帳スタイルにシフトチェンジされている。メインレギュラーメンバーは契約の都合もあってか「五街道~」と同じである。
第1話で、北町奉行所の同心二人(小田正作、和田昌也)が日比木という浪人(石橋雅史)に斬られて殉職する。その二人のそれぞれの息子が風早市之進村野武範)と山吹小太郎桜木健一)である。二人は父の意志を継ぎ、北町見習い同心となる。
二人が斬られるのを目撃したのが八百屋の政吉田中邦衛)である。八百屋というのは昼の顔で、夜の顔は錠前破り、つまりは盗人だ。下手人も目撃しているのだが、盗みの後だった為、申し出ることもできない。その政吉の下に「弟子」として転がり込んでいるのがお雪安西マリア)である。役柄のせいか出番は多くないようだ。
今回は江戸に舞台が定着するため、他にもレギュラーは居る。二人の上司となるのが(おそらく与力)の川上甚左衛門小林昭二)で、先輩同心の山村兵馬(汐路章)は川上の前では優しいが、いないとコロッと態度が変わる。もう一人長谷川文助山本清)というのもいるが、2話には登場しないので、それ以降出てくるかは不明だ(3話以降は未見)。そして北町奉行役が平塚八兵衛(役名も同じ)である。本職の役者ではなく、元警視庁の刑事で「帝銀事件」や「吉展ちゃん誘拐殺人事件」で活躍。「三億円事件」の捜査主任を最後に退職した。最終的な階級は警視。ちなみに「三億円事件」は退職の9か月後に時効が成立した。
本編におけるセリフは口の動きと合ってはいるが、おそらく吹き替えである。
他にも風早父の岡っ引きだったのが勘助北村英三)で、小太郎の姉お園堀越陽子)もレギュラーである。
ゲストに目を向けると1話では長門勇が特別出演として登場。2話は遠藤真理子、勝部演之で、3話以降は火野正平、正司歌江、矢吹二朗(千葉治郎)、長谷川明男、北原義郎、青木義朗、テレサ野田など。実は本放送は8話を持って終了。実際は10話まで制作されており、残る2話に関しては再放送で初披露されたらしい。ゆえに、9話「仇討姉妹」と10話「娘が知らない父の過去」については、サブタイ以外のことは不明のようである。誰がゲストなのかも現状ではわからないのだ。
後番組とされるのは、松方弘樹主演の「人形佐七捕物帳」だが、それは4月からの放送で、76年3月の1カ月に関してはぽっかりと空いた形になっている。恐らくドラマとかではなく、特別編成のスペシャル番組等が放送されたのではないだろうか。
近年では(と言っても30年前)、山崎努版の「雲霧仁左衛門」(95年)がオウム事件等の影響で地上波(フジ)では12話までしか放送されず、次の番組も決まっていたため、そのまま終了。残り3話についてはCSで99年に初放送されたということがあった。
でも、この「駆けろ!八百八町」に関しては、打ち切り感が強い気がする。

五街道まっしぐら

今回は、東映の時代劇いうこと以外に前回とは関連はほぼないが、「五街道まっしぐら」(76年)である。
忍者の活躍の場がほぼなくなった元禄時代が舞台で、伊賀の三人の忍者とその頭領の娘つまりくノ一の合わせて四人が諸国を旅して、先々で事件に遭遇するという話である。
伊賀の里で忍びの技を磨く御堂の小次郎村野武範)と下柘植の木猿桜木健一)は、頭領の一心斎進藤英太郎)に武者修行の旅に出ることを命じられる。その娘であるかがり安西マリア)も同行し、結果いかんで、どちらかが彼女と結婚を許され、跡目を継がせてもらえるというものであった。そこに、先輩忍者である音羽の重蔵田中邦衛)まで便乗し、四人連れの気ままな旅という感じになってしまう。
しかし、行く先々でオカルトチックな事件が起こり、それに巻き込まれていく。大体が、妖怪が現れたり、妖術使いが関わっているのだ。「西遊記」とかなら本物の妖怪だったりするのだが、主人公たちは「化け物なんかいるわけない」と常にクール。実際には、全てにおいてタネがあり、幻灯機を使って妖怪(のようなメイクをして)を大写しにしたり、怪しげな薬を使って、催眠術のように人を操ったりとかしているのである。
村野は「飛び出せ青春」(72~72年)で一躍有名になったが、時代劇は「狼・無頼控」(74年)で主役を張ったこともある。そこでは剣の達人だったが、本作でもそのイメージに近い。、桜木は「柔道一直線」(69~71年)や「刑事くん」(71~76年)のイメージが強いが、時代劇も「熱血猿飛佐助」(72~73年)で主役の佐助をやっていた。今回も小柄で俊敏なイメージが生かされている。安西は当時22歳で、73年にアイドル歌手としてデビューしたが、次第に女優業に重きを置くようになっていた。外国人っぽい顔立ちだが、8分の1だけドイツの血が入っているという。この2年後には失踪事件を起こすのだが、これは移籍した事務所の社長が元暴力団の組長だったことがわかり、実際に暴力もふるわれ怖くて逃げたというものだった。これをきっかけに芸能界を一度引退している。
田中邦衛は本作では、思いっきり田中邦衛である。どういうことかというと、セリフ回しがモノマネでよくされている通りの喋りなのである。本人が誇張したモノマネをしているのかと思ってしまう。小堺一機はまだデビューしておらず、当時田中邦衛のマネをしていた人がいたかどうかは不明だ。
話が逸れたが、第1話の悪人ゲストは名和宏、原良子、千葉敏郎。第2話では沼田曜一、田中浩、大前均。大前は時代劇でもスキンヘッドのイメージだが、今回は普通にカツラをしている。
OPは「いっしょに小石を拾いませんか」という不思議なタイトルの曲だが、作詞は「子連れ狼」などの原作で知られる小池一夫。EDと合わせて峰ひろみという(おそらく)演歌歌手の人が歌っているのだが、3話から堀江美都子(ほりえみつこ名義)に替わるらしい。2話までしか見てないので、聞いたことは無いのだけれども。

とまあ話のネタにはなる本作だが、なんと11話で打ち切りになってしまう。実は本作の放送時間も土曜日の夜8時から。お馴染み「8時だヨ!全員集合」にプラスして「欽ちゃんのドンとやってみよう!」が裏番組では太刀打ちできるはずもなかったのである。しかもわずか11話では存在すら知らない人も多いのではなかろうか。

世なおし奉行

「軍兵衛目安箱」の翌72年、おそらく片岡千恵蔵御大最後の連続主演ドラマとなったのが「世なおし奉行」である。千恵蔵で奉行と言えば、やはり東映映画の遠山金四郎で、「いれずみ判官」シリーズは18作に及んでいる。それが10年ぶりに復活したわけではない。テレビシリーズでは既に中村梅之助による「遠山の金さん捕物帳」(70~73年)が人気を呼んでいた。
もう一人の名奉行といえば「大岡越前」だが、こちらも加藤剛主演によるシリーズが既にスタートしており、知っている人も多いだろうが、千恵蔵はその父・大岡忠高役で出演していたのである。
というわけで、今回千恵蔵が演じたのは二大奉行ではなく、跡部能登守である。創作上の人物と思いきや実在した人物なのである。にもかかわらずほとんど知っている人がいなさそうなのは、後にも先にも跡部を主人公にしたドラマは本作以外にないからだろう。主役でないドラマでも、跡部が歴史上の人物として登場することはほぼなかったようである。
跡部良弼は、水野忠邦の実弟である。30歳で駿府町奉行に就任したが、その後堺奉行、大坂東町奉行を経て、大目付に就任。そして42歳の時に勘定奉行となり、公事方を担当し道中奉行を兼務している。本作はその勘定奉行時代のことを描いているのである。勘定奉行とは、幕府の財政を担当した役職だが、それは勝手方であり、公事方というのは関八州取締出役の総元締だったのである。八州廻りというのは時代劇によく出てくるが、それが勘定奉行の配下だというのは初めて知った。
本作は、千恵蔵演じる跡部が長崎奉行から公事方勘定奉行に就任するところから始まる。実際には跡部が長崎奉行に就任していた事実はないが、大坂奉行からというよりはインパクトが強いかも。その部下として関八州取締出役に任ぜられたのが早瀬主水田村正和)と仲沢要介石山律)である。そして、密偵役としてちょぼいちの辰砂塚秀夫)とお染赤座美代子)が同行し、関八州各地を旅して廻るわけである。田村正和演じる早瀬は普段は浪人の姿をしており、あの眠狂四郎に近い。実は本作終了後に田村が主演の「眠狂四郎」がスタートする。石山律石山健二郎の息子で、石山律雄を名義のイメージが強い。石山律名義だったのは短期間で、後には本名でもある石山輝夫を名乗るようになる。この人の場合、善人顔だが実は悪党だったというようなイメージの悪役が多い。数多くの時代劇に出演しているが、今回のようなレギュラー出演自体が珍しい。他のレギュラーには跡部の妻おくに小山明子)、跡部家に仕える井上三太夫木田三千雄)などがいる。

第1話のゲストは池部良だが、珍しくも悪役である。第2話も伊吹吾郎がが姫(東三千)を暗殺しようとする浪人に一人として登場し、腰元を斬ったりはするが、結局姫は斬れず、密かに匿ったりするのである。
さて、実際の跡部だが、勘定奉行の後は江戸南町奉行に就任する。兄の忠邦が失脚した後も、政治命脈を保ち続け講武所総裁、江戸北町奉行を歴任し、69歳で若年寄になるが一週間で罷免。翌年明治元年に70歳で亡くなっている。

軍兵衛目安箱

前回、名前をちょっと出しので「軍兵衛目安箱」(71年)である。
主演は片岡千恵蔵御大で、当時68歳。67歳となっている資料もあるが、1903年3月30日生まれというのが正しければ、放送開始時点(4月)では68歳ということになる。いずれにしろ千恵蔵初の主演連続ドラマということになるのだ。
原作・脚本は結束信二。まあ千恵蔵主演ということで書いたのだろうから、栗塚、島田、左右田といったいつもの結束キャスティングではなく、ほぼ新たな顔ぶれとなっている。
時代は8代将軍吉宗の頃で、タイトルにもある「目安箱」がキーワードとなっている。目安箱は吉宗が江戸庶民の訴訟の為に設置したものだが、実際に取り上げられるものは少なかったという。その目安箱を担当するのが老中・大久保加賀守で、その江戸上屋敷に詰める馬廻り役番頭・黒田軍兵衛が主君の命を受け、そうした訴えを公的な職分から離れ、部下たちと共に解決していくというお話だ。勿論、その軍兵衛を演じるのが千恵蔵御大で、大久保加賀守を演じるのが柳生博である。当時44歳で、特に重厚感があるわけでもないので意外な気がする配役である。ただし、登場回数は多くない。
千恵蔵演じる軍兵衛自身は身分が高いわけでもなく役人でもないので、その立ち位置が当初わかりづらいのだが、老中に仕えているというだけでも、奉行所の役人よりは大きな顔はできるといった感じだろうか。その軍兵衛の部下となるのが、渡辺篤史宮田兵助)、亀石征一郎榊原伝四郎)、倉丘伸太郎三浦和馬)である。亀石と倉丘は共に東映ニューフェイスの6期生で、千葉真一大地喜和子などが同期である。三人の中では、実年齢も一番上の亀石演じる榊原がリーダー格のようだ。軍兵衛は中間部屋に入りびたり将棋などをしていることが多いが、その中間頭が遠藤辰雄演じる亀蔵で、西田良(虎吉)が小頭である。この辺は結束時代劇ではお馴染みの顔。彼等はいずれも軍兵衛のことを「親分」と呼んでいる。
後、屋敷には永野達雄江戸家老・藤田)海老江寛御用人・白木)、そして大坂志郎筆頭側用人・梅田宗右衛門)がおり、特に大坂演じる梅田は暴走しがちな軍兵衛たちのよき理解者という感じである。
他のレギュラー陣だが、珠めぐみお容・軍兵衛の娘)、磯野洋子おゆう・料理屋の看板娘)、岡田由紀子おぼん・大久保家の女中)、東竜子おはま・料理屋の女将)、松田明善兵衛・黒田家の使用人)、波多野博山田・大久保家家臣)、香月涼二大村文平・評定所番同心)、小山田良樹島崎・奉行所同心)などがいる。岡田由紀子はもちろん、岡田有希子とは別人の女優。香月は結束時代劇でお馴染みの顔だが、今回は同心を途中で退職している。
そして、もう一人セミレギュラーとして登場するのが若山富三郎伴大五郎)。1話で軍兵衛だちと親しくなる謎の浪人だが、裏の正体のような設定はない。娘のお容に一目ぼれし、軍兵衛を「お父さん」と呼んだりすることもある。
ゲストに目を向けると、1話の森次康嗣を皮切りに天知茂、中村玉緒、蜷川幸雄、中野誠也、前田吟、中村敦夫、伊吹吾郎、野川由美子、赤座美代子、河津清三郎、永山一夫など。

さむらい飛脚

人気番組だった「素浪人花山大吉」の後番組となるのが「さむらい飛脚」(71年)である。
主演は往年の剣戟スター大友柳太朗である。映画では「丹下左膳」「怪傑黒頭巾」を始め、多くの主演作があるが、テレビでは基本ゲスト出演で、シリーズでの主役は本作のみではなかろうか。1912年(明治45)生まれで、当時59歳。35年に新国劇入りし辰巳柳太郎に師事。37年の映画デビューの際、師匠から「柳太郎」の名を貰い、芸名を大友柳太郎とした。正確には「友」の字は右上に「丶」が付与されている。50年に「郎」の字を「朗」に変えたが、戦後に中々主役の座に帰れず、師匠の名を名乗るのはおこがましいと考えたからだという。
その大友とは新国劇ではずっと後輩にあたる若林豪古吟鹿之助)、紅一点の佐藤友美お紺)、一番若手の川口恒井戸勘兵衛)、そして「花山大吉」から引き続きの出演となる品川隆二神坂精四郎)の五人がレギュラーメンバー。「焼津の半次」から一転して、ニヒルでクールな浪人を演じているが、元々が二枚目路線だった人である。本人も半次のようなコミカルな役は嫌いで、無理にやっていた部分があるという。まあ当時の視聴者はかなりの違和感を感じていたと思うけれども。
この五人がやっている商売が、命を狙われている人物やいわくつきの荷物を目的地まで送り届けるというもので、タイトルにもある「飛脚」なのである。
品川はクールな役と言っても、第3話では将軍家の弟君と瓜二つということで、二役を演じたり、回によっては変装したり、12話などは川口の夢の中で「焼津の半次」のようなキャラを演じたりと、完全な二枚目をやらせてもらえないようであった。
OPとEDのクレジット登場順だが、第3話までは大友がトップで、品川が五番目だったのだが、4話以降はこの二人が入れ替わる。これだと品川が主演のように思えてしまうのだけれども。
まあ、中々面白そうな設定の番組だったのだが、わずか1クール13話で終了してしまう。若林などは9~11話まで登場せず、12話に出たと思ったら、最終話にも登場しない。おそらくだが同時期に放送されていた「大忠臣蔵」(大友も出ている)や映画「暁の挑戦」への出演の為だろうと思われるが、若林も1クールで終わるとは思ってなかったのではないだろうか。
ちなみに、本作の放送時間は土曜の夜8時。そう前回の「二人の素浪人」と同じで、裏番組が「8時だヨ!全員集合」だったのである。「花山大吉」は「全員集合」より前から放送されていたので持ちこたえていたのだろうが、逆に新番組では太刀打ちできなかったのだろう。放送局は本作はNET(テレビ朝日)、「二人の素浪人」はフジである。だた、このタイミングで「全員集合」が一旦休止され、クレージーキャッツの「8時だヨ!出発進行」が半年間放送されている。こうして、大友柳太朗主演ドラマは1クールで終了する。年齢的なこともあってかこの先、主演となることはなかった。とか言いながら、本作と時間帯は違うが入れ替わるように始まった「軍兵衛目安箱」(71年)の主演は片岡千恵蔵、当時68歳である。大友より9歳上で、なんならその師匠辰巳(1905年生まれ)よりも年上だったりする。
晩年の大友はセリフ覚えに苦労していたと言い、それを苦にしてか自宅マンションより飛び降り自殺。前日には遺作となった「タンポポ」(85年)の監督・伊丹十三に電話をかけ、自分の出番が全て終わったことを確認していたという。その伊丹も、数年後に同じように自社のあるマンションから飛び降りてしまうのだが。

 

二人の素浪人

前回までとは、ガラリと変わり「二人の素浪人」(72年)である。
二人と言いながら、OPには四人の男。平幹二朗流月之介)、浜畑賢吉柴源之進)、品川隆二きっかけの三次)、河原崎長一郎東ノ小路道麿)。
名前からわかると思うが、素浪人というのは浜畑の二人で、平は「三匹の侍」を思い出させるようなキャラで、浜畑は月代を剃っているので、浪人という感じは薄い。元勘定奉行の配下だったという設定。
品川隆二は、ほぼ「素浪人月影兵庫」「素浪人花山大吉」で演じた焼津の半次を踏襲したキャラ。渡世人だが、元岡っ引きらしい。河原崎は京都で医者をやっていたという人物。医者としての腕は確かなようで、戦う時は素手で相手の関節をはずしたりできる。第1話では川谷拓三がやられている。「用心棒シリーズ」の万平左右田一平)を思い出させるようなキャラである。
つまりは、「三匹の侍」と「素浪人シリーズ」と「用心棒シリーズ」を合わせたような番組ということになるのだろうか。
第1話は紹介編で、流と柴は元々知り合いだが、三次や道麿との出会いを描いている。悪役として高品格深江章喜、そして葉山良二が登場。柴の独特の構えは、文章にするとわかり憎いが、刀を左手で逆手に抜き、左手を順手に持ち変えて右手で柄を押し上げるというもの。それはともかく馬上の葉山をジャンプ一番、飛び越えて斬り捨てている。
第2話では、流を父の敵と狙う姉弟鮎川いずみ、加賀爪清和)が登場。流と彼らの父・高品(市川男女之助)は親しかったがある日斬られて死亡する。現場に流がいたことで、下手人だと思い込んでいたのである。下手人は田口計であることは出てきた瞬間にわかる。その黒幕も姉弟の伯父である稲葉義男であることも見え見えである(他に怪しいやつ出てこないし)。加賀爪少年は「わんぱく砦」から5~6年で随分でかくなったなあ、と思っていたらそっちは芳和で、こっちは清和だった。名前から明らかに兄弟だろう。清和は知らんなあと思って調べたら、前述の「月影兵庫」や「用心棒シリーズ」にもゲストで出ていた。
基本はメインが女性ゲストであることが多く、上原ゆかり、早瀬久美、東山明美、菊蓉子、松岡きっこ、佐藤友美、麻田ルミ、松山容子などの名が並んでいる。
音楽は富田勲を起用。アニメとかの印象が強いが、時代劇もちょっと前に触れた「文吾捕物絵図」(67年)なども担当している。
さて、本作だが73年1月6日を持って終了。全19回という半端な話数や正月明けに終了とかを考えると打ち切りだったのだろうと思われる。これには明確な理由がある。本作は土曜日8時からの放送だったのだ。そう、裏番組はドリフ「8時だヨ全員集合」である。自分も小学生であったが、「全員集合」の裏で何をやっていたかとか全く記憶にない。
怪物番組の裏でなかったらどうなっていたかは知る由もない。

新選組(73年版)

もう一つだけ、新選組ものだがタイトルはずばり「新選組」(73年)である。
これは、原作ものではなく結束信二の全話オリジネル脚本である。土方歳三役は「燃えよ剣」以来、当然の様に栗塚旭だったのだが、今回は主役ではない。鶴田浩二演じる近藤勇が主役なのである。まだ映画スターといった感じが強く、連続ドラマの主演は「上方武士道」(69年)以来、二度目だったと思われる。格上のスターが出てくる以上、栗塚も今回は脇役に回らねばならないのである。というより「商魂」(72年)というドラマを最後に栗塚が主役を張ることはほぼなかったのだ。実際、自分はリアルタイムで栗塚を見た記憶が全くないのである。70年代前半くらいで引退した人だと思っていたくらいだ。「暴れん坊将軍」に山田朝右衛門役で準レギュラーだったようだが、ほぼ見ていないので。
話を「新選組」に戻すと鶴田浩二が沈着冷静な近藤を演じる以上、土方が血気にはやるタイプになるしかないのである。お馴染みの栗塚土方を期待した人には不満だったかもしれない。また沖田総司役は意外にも有川博。どちらかと言えば悪役が多く、「必殺商売人」では中村主水藤田まこと)の上司である与力の役をやっていたりしていた。他にも山城新伍山崎烝)、伊吹吾郎永倉新八)、河原崎長一郎原田左之助)、田崎潤井上源三郎)、日下武史山南啓助)、待田京介大石鍬次郎)、中山克己藤堂平助)、後新選組ではないが、田村高廣、中丸忠雄、大川栄子、そして菅原文太桂小五郎)などネームバリューの高い役者が多く出ている。
今回は企画に俊藤浩滋(藤純子の父)の名があり、東映任侠映画色の濃いキャスティングともいえる。一方で結束キャスティングとでも言ってもいい、左右田一平斎藤一)、島田順司中村半三郎)、小田部通麿浅井又兵衛)、西田良(目明し富五郎)らも顔を揃える。左右田は「新選組血風録」時と同じ斎藤役で、島田は途中から登場するようだ。
もう一人「新選組血風録」時と同じ役を演じるのが遠藤辰雄芹沢鴨)だ。これが第1話のゲストで、相方の新見錦役は成田三樹夫が演じた。今回は第1話から芹沢一派を粛清する話なのである。芹沢の持つ人脈を利用して新選組は結成された経緯があり、芹沢が筆頭局長で、新見と近藤が局長に着いたのだが、芹沢や新見は金に女にやりたい放題。我慢していた近藤だが、彼らが不正をしている証拠を掴み、新見や芹沢を斬り捨てるのだった。芹沢一派には志賀勝、国一太郎など。また、藤岡弘がオリジナルの藤田という新選組隊士を演じたが、彼は5話にも登場した。続く2話では、有名な池田屋事件が描かれる。
全19話という半端な話数だが、放送期間はぴったり半年だったようなので、木曜20時だし、野球中継とかで潰れた週も多かったのではないだろうか。
結束信二の全話脚本とかは本作が最後だったようで、以後は「桃太郎侍」や「暴れん坊将軍」などにゲスト的に参加するに留まった。ちなみに本作では「けっそくしんじ」とよみがなが付いていた。ちなみに、いつも彼とコンビを組んでいたプロデューサー上月信二は「こうづきのぶじ」と読み「しんじ」ではない。

燃えよ剣(66年版)/映画版

燃えよ剣」は、70年の東映版が有名だが、それより先の66年に東京12チャンネル(現・テレビ東京)でドラマ化されたことがあったのである。
まあ開局まもない関東ローカルの12チャンで、1クールの30分ドラマということもあり、これを見ていた人は非常に少ないのではないだろうか。映像も恐らく存在しないのではと思われる。
出演者はそれなりに名のある役者を使っており、主演の土方歳三には内田良平近藤勇小池朝雄沖田総司杉良太郎となっている。他に判明しているところでは、瞳麗子佐絵)、睦五郎七里研之助)、佐藤慶土方為次郎)、小松方正原田左之助)、高木二朗山岡鉄太郎)、城所英夫清河八郎)等である。
杉は65年に歌手としてデビューしたばかりだった。実際、本作の主題歌「燃えよ剣」も杉が歌っている。
ナレーターはお馴染みの芥川隆行だが、その芥川から杉に連絡があったという。「時代劇に出て見る気はありますか?」。当時の杉は歌のことしか考えて考えておらず、迷いに迷った末、とりあえず挑戦してみようと引き受けたのだという。当然これが杉のドラマ初出演ということになる。12チャン初の時代劇スタジオドラマだったらしいがVTRかフィルムか、はたまた生ドラマだったのかは不明だ。
ちなみに、本作は毎週金曜日の放送だったようだが、第12話が4月1日に放送されると、続く最終13話は翌4月2日に放送されたらしい。
杉によれば、特に反響のようなものはなかったというが、日活と専属契約することになったのは本作のおかげだろうと語っている。また、翌67年にはNHKの時代劇「文吾捕物絵図」の主役に杉は抜擢されることになる。
話は変わるが、この66年には「土方歳三 燃えよ剣」のタイトルで松竹で映画化されている。土方役は当然のように栗塚旭が演じたが後はテレビとは全く違う配役となった。
和崎俊哉近藤勇)、石倉英彦沖田総司)、戸上城太郎芹沢鴨)、高宮敬二(新見錦)、天津敏清河八郎)、北村英三佐藤彦五郎)、水上保広藤堂平助)、玉生司朗井上源三郎)、高野真二外島機兵衛)、小林哲子佐絵)、そして前述の12チャンネル版で土方を演じた内田良平が宿敵である七里研之助を演じている。沖田役の石倉は基本的には悪役がほとんどで、「桃太郎侍」「暴れん坊将軍シリーズ」「水戸黄門シリーズ」「必殺シリーズ」など東映、松竹の時代劇を中心に数多く出演している。Vシネマ等でやくざを演じることも多い。佐絵役の小林哲子は俳優座の所属で、東宝特撮「海底軍艦」(63年)のムウ帝国皇帝役が有名である。水上保広の父はあの阪東妻三郎で、田村高廣、正和、亮とは異母兄弟である。北村英三玉生司朗は70年版の「燃えよ剣」でも役は違うが、新選組の一員を演じている。ちなみに栗塚も北村も玉生も「劇団くるみ座」の所属である。
ちなみに、本作のソフト化の際のタイトルは土方歳三のつかない「燃えよ剣」である。

燃えよ剣

時間帯は月曜から水曜に移ったが、実質的な「天を斬る」の後番組が「燃えよ剣」(70年)である。
司馬遼太郎原作による新選組ものだが、「新撰組血風録」(65年)も司馬遼太郎の原作を結束信二の全話脚本でやったものだが、本作も同じパターンとなる。「血風録」と同じキャストなのは、栗塚旭土方歳三)、島田順司沖田総司)、舟橋元近藤勇)、北村英三井上源三郎)、飯沼慧新見錦)だけのようで、後は初参加はもちろん、別の役に移動のパターンもある。左右田一平などは、前回は斎藤一役だったのが、本作ではオリジナルであろう裏通り先生(町医者)という新選組ではない人間(兼ナレーション)を演じている。
今回の第1話は新選組結成前から始まるのだが、個人的には新選組関連のことは近藤とか土方とか、それぞれの名前を知っている程度なので、シャレではないが新鮮であった。近藤も土方も武家の出ではなく豪農つまり裕福な農家の出身というところが同じである。近藤が幼少期より通った道場「試衛館」の養子となり、その道場主となる。土方も若い頃から試衛館に通っており、二人は無二の親友となったのである。沖田は武士の子だが、天真爛漫という感じのキャラ。好青年だが、剣術の腕は土方や近藤に劣らない。というように主要三人の関係性は既に出来上がっているのだが、江戸で疫病(はしか、コロリ)が流行って、道場に誰も来なくなったところから物語が始まる。
道場には三人の他、近藤家に仕えている井上源三郎(北村英三)や、居候状態である永倉新八(黒部進)、原田左之助西田良)、斎藤一玉生司朗)、藤堂平助平沢彰)が集っていた。道場に誰も来なければ、収入もないということで、途方に暮れていたところに山南啓助河上一夫)が耳よりな話を持ってくる。
京都では刃傷沙汰が横行し、幕府は過激志士達の跳梁に頭を痛めていた。庄内藩の清河八郎御木本伸介)はその鎮圧のため浪士たちによる護衛部隊「浪士組」を組織するという。その話を聞いた試衛館の面々も京都に行くことを決意するのだった。この時点で新選組の面子となる九人が揃っており、清河の話を聞くときにいた無礼な集団、つまり芹沢一派ともそこで出会っている。ちなみに芹沢鴨名和宏)、新見錦飯沼慧)、平山五郎出水憲司)、平間重助森章二)、野口健司松田明)の五人組だ。
第1話では、その彼らが京都に旅立つところで終わるが、原作や映画版では重要となる七里研之助という宿敵キャラがあっさりと斬られてしまうのである。ちなみに映画では内田良平、今回は亀石征一郎が演じていた。かつて歳三と恋仲だった佐絵赤座美代子)も登場するが、実は今や研之助と通じており、歳三を誘い出す役だったのである。その辺のオリジナルキャラは今回は重視しないということなのだろう。
第2話で京へ着いたものお、清河の言うことは江戸と変わっていた。実は彼は討幕派であり、試衛館の面々は清河の話に乗るのを辞めた。このままでは京都まで来た意味がないので、歳三は新しい党をつくることを提案する。その為に芹沢らと手を組むことが必要になるという。歳三はいつの間にか、芹沢の本名やその背景を調べていたのである。歳三の思惑通り、武装警察「新選組」が結成されることになったのである。そんな背景もあり、当初は芹沢たちを立てていたものの、あまりに乱暴狼藉な振る舞いが目立つため、彼らを粛清するのである。こうして、近藤勇局長土方歳三副長というお馴染みの新選組が誕生するのだった。
ちなみに近藤役の舟橋元は当時既に糖尿病に侵されていたという(74年没)。