燃えよ剣
時間帯は月曜から水曜に移ったが、実質的な「天を斬る」の後番組が「燃えよ剣」(70年)である。
司馬遼太郎原作による新選組ものだが、「新撰組血風録」(65年)も司馬遼太郎の原作を結束信二の全話脚本でやったものだが、本作も同じパターンとなる。「血風録」と同じキャストなのは、栗塚旭(土方歳三)、島田順司(沖田総司)、舟橋元(近藤勇)、北村英三(井上源三郎)、飯沼慧(新見錦)だけのようで、後は初参加はもちろん、別の役に移動のパターンもある。左右田一平などは、前回は斎藤一役だったのが、本作ではオリジナルであろう裏通り先生(町医者)という新選組ではない人間(兼ナレーション)を演じている。
今回の第1話は新選組結成前から始まるのだが、個人的には新選組関連のことは近藤とか土方とか、それぞれの名前を知っている程度なので、シャレではないが新鮮であった。近藤も土方も武家の出ではなく豪農つまり裕福な農家の出身というところが同じである。近藤が幼少期より通った道場「試衛館」の養子となり、その道場主となる。土方も若い頃から試衛館に通っており、二人は無二の親友となったのである。沖田は武士の子だが、天真爛漫という感じのキャラ。好青年だが、剣術の腕は土方や近藤に劣らない。というように主要三人の関係性は既に出来上がっているのだが、江戸で疫病(はしか、コロリ)が流行って、道場に誰も来なくなったところから物語が始まる。
道場には三人の他、近藤家に仕えている井上源三郎(北村英三)や、居候状態である永倉新八(黒部進)、原田左之助(西田良)、斎藤一(玉生司朗)、藤堂平助(平沢彰)が集っていた。道場に誰も来なければ、収入もないということで、途方に暮れていたところに山南啓助(河上一夫)が耳よりな話を持ってくる。
京都では刃傷沙汰が横行し、幕府は過激志士達の跳梁に頭を痛めていた。庄内藩の清河八郎(御木本伸介)はその鎮圧のため浪士たちによる護衛部隊「浪士組」を組織するという。その話を聞いた試衛館の面々も京都に行くことを決意するのだった。この時点で新選組の面子となる九人が揃っており、清河の話を聞くときにいた無礼な集団、つまり芹沢一派ともそこで出会っている。ちなみに芹沢鴨(名和宏)、新見錦(飯沼慧)、平山五郎(出水憲司)、平間重助(森章二)、野口健司(松田明)の五人組だ。
第1話では、その彼らが京都に旅立つところで終わるが、原作や映画版では重要となる七里研之助という宿敵キャラがあっさりと斬られてしまうのである。ちなみに映画では内田良平、今回は亀石征一郎が演じていた。かつて歳三と恋仲だった佐絵(赤座美代子)も登場するが、実は今や研之助と通じており、歳三を誘い出す役だったのである。その辺のオリジナルキャラは今回は重視しないということなのだろう。
第2話で京へ着いたものお、清河の言うことは江戸と変わっていた。実は彼は討幕派であり、試衛館の面々は清河の話に乗るのを辞めた。このままでは京都まで来た意味がないので、歳三は新しい党をつくることを提案する。その為に芹沢らと手を組むことが必要になるという。歳三はいつの間にか、芹沢の本名やその背景を調べていたのである。歳三の思惑通り、武装警察「新選組」が結成されることになったのである。そんな背景もあり、当初は芹沢たちを立てていたものの、あまりに乱暴狼藉な振る舞いが目立つため、彼らを粛清するのである。こうして、近藤勇局長、土方歳三副長というお馴染みの新選組が誕生するのだった。
ちなみに近藤役の舟橋元は当時既に糖尿病に侵されていたという(74年没)。