ラヴェル 「ラ・ヴァルス」 | 翡翠の千夜千曲

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音楽を学びたい若者で困難や悩みを抱えている人、情報を求めている人のための資料集

Maurice Ravel La Valse

Myung-Whun Chung 

Orchestre Philharmonique de Radio France

 

Ravel, La Valse - Poeme choregraphique for two piano, Lugansky - Rudenko

 

 

 

 

 どだいワルツとは何ぞやと言う問いがあります。簡単そうで面倒くさいところの定義については、以前の記事「ワルツを聴こう」に書いてありますのでご覧ください。大体この手のことにはハプスブルグ家が一枚噛んでいます。日本では、ワルツと言うと比較的ゆっくりとした踊りのイメージがありましたが、ワルツ(waltz、valse、Walzer)円舞曲とはテンポの良い淡々とした舞曲、それに合わせて踊るダンスを言います。舞曲は3拍子が一般的です。
 以前に示した様な変遷の中からオーケストラでワルツを作曲すると言うことは、ウイーンの街の中にウインナワルツと言う形で根付いていきます。ラヴェルもまた、オーケストラのためにワルツを作曲するという考えは、「スペイン狂詩曲」よりも古くからあり、ラヴェルは友人への手紙に、ヨハン・シュトラウス2世へのオマージュとして交響詩風のウィンナワルツを書くという考えを伝えています。

 その後、1914年頃には、交響詩「ウィーン」という題名を考え付いていたようですが、おそらく第一次世界大戦のごたごたのため未完に終わっています。この間に「高雅で感傷的なワルツ」はオーケストラによるワルツにはなっていますが、シューベルトにならった連作ワルツの体裁のピアノ曲を、バレエ「アデライード、または花言葉」のために管絃楽曲に編曲したというものです。
 ラヴェルは第一次世界大戦中に健康を害し、更には母の死というショックに見舞われ、この頃は「クープランの墓」を除けば3年間新作は書けないでいました。ラヴェルが再び創作に取り組むのは「・ヴァルス」に本格的に着手してからなのです。
 ダンサーだったセルジュ・リファールによれば、1917年、バレエ・リュスの主宰者セルゲイ・ディアギレフはラヴェルを訪ねて新しいバレエ音楽の作曲を依頼し、ラヴェルはこれを了承したとされていますが、曲はすぐには完成せず、「ラ・ヴァルス」の作曲は1919年から1年と言う時間を要しました。
 さて、苦労を重ねたこの作品には、またまた不幸が訪れます。ラヴェルは完成した舞踊詩「ラ・ヴァルス」の2台ピアノ版を、ミシア・セールの邸宅において、マルセル・メイエールとともに演奏してディアギレフに聴かせます。その場にはバレエ・リュスの振付家・ダンサーのレオニード・マシーンや作曲家イーゴリ・ストラヴィンスキー、フランシス・プーランクが居合わせました。誠に絵になるではありませんか。プーランクの証言によれば、演奏を聴き終わったディアギレフは、「ラ・ヴァルス」が傑作であることは認めましたが、バレエには不向きな「バレエの肖像画、バレエの絵」であるとして、作品の受け取りを拒否したのです。当然、ラヴェルは「カチン」ときたはずです。これ以来ラヴェルとディアギレフは不仲となってしまいます。まあ、この手の話は、事欠きません。

ラヴェルは初版に、次のような標題を寄せている。

渦巻く雲の中から、ワルツを踊る男女がかすかに浮かび上がって来よう。雲が次第に晴れ上がる。と、A部において、渦巻く群集で埋め尽くされたダンス会場が現れ、その光景が少しずつ描かれていく。B部のフォルティッシモでシャンデリアの光がさんざめく。1855年ごろのオーストリア宮廷が舞台である。

 この文章が示唆するように、曲はまず低弦のトレモロによる混沌とした雰囲気に始まり、徐々にワルツのリズムとメロディが顔を出す。一旦賑やかにワルツとしての形を整えた後、ゆったりとした新たな主題が出て、いかにもワルツらしい雰囲気を積み重ねていく。

 しかし展開が進むに連れて徐々にワルツらしいリズムが崩れ始め、テンポが乱れてくる。転調を繰り返し、リズムを破壊して進み、冒頭の主題が変形されて再現された後、最後の2小節で無理やり終止する。

<演奏者>

 ニコライ・リヴォヴィチ・ルガンスキー(1972年4月26日 - )は、ロシアのピアニスト。
楽譜が読めるようになる前の5歳の時、彼は完全に耳で覚えたベートーヴェンのピアノソナタを弾いた。モスクワ中央音楽学校とモスクワ音楽院でピアノを学ぶ。彼の教師には、タチアナ・ケストナー、タチアナ・ニコライエワ、セルゲイ・ドレンスキーがいた。
 1980年代から1990年代初頭にかけて、ルガンスキーは数多くのピアノコンクールで入賞し、特に1994年のチャイコフスキー国際ピアノコンクールで銀メダルを獲得した(優勝はなし)。同時に、Melodiya(ソ連)とVanguard Classics(オランダ)のレーベルでレコーディングを始めた。その後、日本のレーベルからのレコーディングも増え、ワーナー・クラシックス、エラト・レコード、ペンタトーン、オニキス・クラシックス、ドイツ・グラモフォン、ナイーヴ・レコードなどからレコーディングを行っている。

 ヴァディム・ルデンコ(Vadim Rudenko、1967年⒓月8日 - )は、ロシアのピアニスト。モスクワ音楽院在学中、1992年エリザベート王妃コンクール、パロマ・オシェイ国際コンクール最終選考に残った。卒業後、1994年にチャイコフスキー国際コンクールに参加。第1なし、ニコライ・ルガンスキーに次ぐ第2位(ヘソン・パイクと共演)を授与された。ルデンコはXI版で2位を獲得した。それ以来、ルデンコは国際的に活躍しています。

 

※ お知らせ

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ネットでも各社予約受付中です(ネット発売日は11月1日です)

 

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デュラン社

ラヴェル:ラ・ヴァルス 【輸入:ピアノ】

Valse, La/Arr. Garban ラヴェル, モーリス RAVEL, Maurice

 

ラヴェル:ボレロ―ラ・ヴァルス―スペイン狂詩曲(クラシック・マスターズ)

アンドレ・クリュイタンス (アーティスト)  形式: CD

1 ボレロ
2 スペイン狂詩曲 I.夜への前奏曲
3 スペイン狂詩曲 II.マラゲーニャ
4 スペイン狂詩曲 III.ハバネラ
5 スペイン狂詩曲 IV.祭り
6 ラ・ヴァルス