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ある在宅ワーカーのつぶやき

みそっかす反訳者が、用字用例辞典(日本速記協会)の表記ルールにおける個人的な解釈についての記事を書いています。2020年4月半ばから新訂対応です。たまにテープ起こしについてのそのほかの話も。文中で引用している辞書はこちら→https://dictionary.goo.ne.jp/jn/

以前、このブログについて、私の、私による、私のためのブログである旨記載したことがあります。

それは今も全く変わっていなくて、現在は、主に新訂の変更点を把握するために記事を作成し、実際の作業で書き分けの難しい言葉が出てきたときにそのポイントを確認するために閲覧しています。

というのも、簡単検索できるマイ辞書はエクセルで作っているんですが、既に1万語強を登録していまして、あまりたくさんの情報を載せたくないので、詳しい書き分けについてはそこでは触れていないのです。ですから、「」の記事なんかもう何回見たことか……!!(いいかげん覚えたいんですが脳が白旗を上げています)

 

というわけでこのブログを今最も閲覧しているのは多分私ですが、その回数をさらに増やすことになるであろうのが今日の記事です。

昨日に引き続き、平仮名表記からの使い分けという厄介な、しかも超頻出語の表記変更です。

こういうのの何が厄介かというと、漢字表記に変更になったということまでは何とか覚えても、肝腎の漢字の使い分けが必要であることが頭からすっぽり抜けてしまうことです。

 

いや、そんなあほ私だけかもしれませんが、この「作る」については新旧対照表からの単語登録データ作成とその後のメンテ、納品前のチェックリストで何度も見たはずなのに、しばらくの間全部「作る」にしてしまっていました……。自分の記憶力が残念過ぎて涙が出ます。いや、それを受け取った側も涙が出たかもしれません。(怒りで)

 

まあそれはさておき、この使い分けも超面倒です。

用字用例辞典の用例を見てみますと、「作る」は「薬・米・時計・料理・議事録-を作る」、「造る」は「酒・船・貨幣・建物・道路・庭園・兵器・みそ・ダム・自動車-を造る、石造り、寝殿造り」、「創る」は「神は万物を創る、新しい文化を創る、画期的な商品を創り出す」、「つくる」は「体・国・列・環境・機会・規則・計画・子供・人材・制度・組織・法律・平和-をつくる、まち・村づくり、生けづくり、形づくる」と、ちょっと脳が情報の処理を拒否しそうな感じになっています。

 

仕方ないので辞書を見てみますと、こちらはまた一つの項目として記載されていますが、まず見るべきものとして最後に記載がある補説があります。


[補説]一般的には「作る」が用いられ、「造る」は家や船など大きなものをつくること、また、酒を仕込むことに用いられる。「創る」は創刊・創業・創作・創造・創立などのように、新しい物事をつくりだす意で使うが、製造・製作・育成・栽培などに関しては使わない。(デジタル大辞泉より)

まずは補説ですね。これが用字用例辞典における基本の漢字の使い分けのように見えます。「酒を仕込むこと」の関連で「みそ」も「造る」に含まれるんじゃないかなと思います。貨幣は謎ですが……。ここはもう出てきたら一々用字用例辞典の用例を見るしかないと思います。

 

それで、一番問題となるのが「作る」と「つくる」の書き分けではないかと思います。辞書では「一般的には「作る」が用いられ」という部分が、用例にありますように、用字用例辞典では書き分けが必要なわけです。

 

用例と辞書の意味を見比べてみますと、個人的には、デジタル大辞泉では以下の意味が用字用例辞典では平仮名表記になっているような気がします。

 

3 いままで存在しなかったものを新しく生じさせる。「子供を―・る」「地方に支店を―・る」

(→用字用例辞典の用例「子・組織-をつくる」等に該当?)

4 意図的に工夫して、形・状態を現出する。わざとそのようなようすをする。「口実を―・る」

(→用字用例辞典の用例「機会をつくる」に該当?)

 

全く違うかもしれませんが……。平仮名表記の「つくる」については、具体的に形のある物を作るわけではない場合のような気もします。つまり、形ある「物」のときは「作る」で、「子」は形はあるけど物ではないので平仮名表記ではないかという解釈です。

 

いずれにせよ、こういう厄介なものは用字用例辞典に用例だけではなく何か使い分けのポイントを載せてほしい気持ちでいっぱいです……。

 

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速記協会で新訂用字用例辞典の正誤表が出ています。主に用例部分ですけど、少数ながら項目自体の表記の訂正や頻出語の用例も含まれていますので、新訂の用字用例辞典を使われている方は御確認されたほうがよいかと思います。

 

 

★2021年3月28日追記

令和3年2月に速記協会から発行された「日本の速記2021年冬臨時増刊号 新訂標準用字用例辞典の解説その2」にて、改めて解説されていました。

その書き分けを以下引用しますが、何と、

 

【作る】主として、手作業で規模の小さいもの、抽象的なもの、無形のものをこしらえる

【造る】主として、規模の大きいもの、工業的なもの、有形なものをこしらえる

【創る】創造性のあるものを生み出す

【つくる】「作る」「造る」いずれも当てにくい場合、仮名書きとする

 

なのだそうで。

どういうことなん……。そして何でこれをまず用字用例辞典に書いてくれんのん……。今さら後出し過ぎじゃろう……。

無形のものも「作る」とは……。これ、用字用例辞典本体の用例や、2020年夏に出た1冊目の解説から読み取れた方はいらっしゃいますか?

というか、2020夏の記載の、「「作る」は、主として規模の小さいものをこしらえること。「造る」は、主として規模の大きなものをこしらえること。醸造すること。「創る」は、独創性のあるものを生み出すこと。限定使用。「つくる」は、主として抽象語に使う」と全体的に内容が変わっていないですかね……?

本当何なん……?

ちょっと久しぶりのような気がする、むちゃくちゃ面倒くさい書き分けです。旧ルールでは平仮名表記だったものが、このたびの改訂で何と漢字四つと平仮名での書き分けが必要になりました。しかも、漢字のうち三つは測定関係で意味が似たものです……。

 

さて、「ハカる」を辞書で調べてみますと、いつもこのブログで用いているデジタル大辞泉では一緒くたの項目として書かれています。が、それぞれ意味の冒頭にどの漢字表記をするかが以下のように記載されています。

 
1 (計る・測る・量る)

ア)ある基準をもとにして物の度合いを調べる。特に、はかり・ゲージなどの計測機器で測定する。「体温を―・る」「距離を―・る」
イ)推しはかって見当をつける。おもんぱかる。忖度 (そんたく) する。「己をもって人を―・る」「真意を―・りかねる」

 

2 (図る・謀る)
ア)物事を考え合わせて判断する。見はからう。「時期を―・る」「敵情を―・る」
イ)企てる。もくろむ。「自殺を―・る」

 

3 (謀る)
ア)はかりごとをする。たくらむ。「悪事を―・る」
イ)あざむく。たばかる。「さては―・られたか」

 

4 (図る)
ア)くふうして努力する。「再起を―・る」「利益を―・る」
イ)うまく処理する。とりはからう。「便宜を―・る」

5 (諮る)相談する。「会議に―・って決める」

 

4と5については、今日のお題ではない「図る」「諮る」ですが、こちらは変わらず漢字表記であり、このとおり用字用例辞典のルールでも用います。

というわけで3は「謀る」です。これもそのままですね。

 

それで問題は御覧のとおり一緒くたにされている1のときとよくわからない2のときなんですが、まず1のア)については、これまた辞書の最後に補説の記載がありまして、「「計る」は時間・数、「測る」は長さ・高さ・深さ・広さ・程度、「量る」は重さ・容積を調べる際に使うことが多い」(デジタル大辞泉より)とあります。

用字用例辞典には「計る」は「計時」、「測る」は「測定」、「量る」は「計量」とありますから、この意味でおおむね間違いはないかと思います。

ただし、用字用例辞典の用例の「はかる」の項に、「身長と体重をはかる」とありますので、「量る」と「計る」両方かぶったときなんかは平仮名表記のようです。「叔父」「伯父」の年齢が分からないときと似たような感じの対応ですね。

 

次に1のイ)については、用字用例辞典の「はかる」の項の用例の一部と一致しているので、この「はかる」でよいかと思います。

 

次に2のア)については、辞書の例の「時期をハカる」のほうは、用字用例辞典の「計る」の項に「頃合いを見計らう」とありますから、「計る」でいいのでしょうか……。また、同じく例の「敵情をハカる」のほうは、漢字表記のどれにも該当しなさそうなので平仮名表記の「はかる」でしょうか……。どちらも自信がありません。

本当に何でこれを書き分けるようにしたのかと、担当の方を問い詰めたいです……。

これもこれまであまり出てきていないパターンかもしれません。旧ルールでは全て平仮名表記だったものが、基本は平仮名表記で変わらないものの、一部例外表記が用いられるようになったものです。

一部というか、「度々」と「度重なる」の2語です。

 

これの面倒なところは、「度々」も「度重なる」もそこそこ出てくる言葉ですが基本の表記は平仮名なため、つい漢字に変更になったことを忘れてしまうことと、「度々」などの畳語は、旧ルールで漢字表記のもの、平仮名表記のものいろいろあったんですが、今回の改訂でこの「度々」のほかに「様々」等、一部漢字表記になったもの、「いろいろ」等平仮名表記のままのものがあり、どれが漢字表記になったか頭がごっちゃになってしまうことです。

 

とはいえ、この二つも聞き直し前の一括変換リストに加えてしまえるので、間違いはなくなるはず!です。音が悪くて最初聞き取れず後から文字にしたものは駄目ですが……。そういうことが起きる前に覚えたいです。(多分無理)

多分これまで触れたことのないパターンです。

音が同じ複合語で、後半の漢字が表記変更になった挙げ句に、片方は複合語の送り仮名の特例が適用されてしまったという、混同してしまいそうでたまらないものです。音は同じとはいえ意味は全く違いますから、漢字自体の表記を間違えることはないでしょうが、「て」を入れる入れないは非常に間違ってしまいそうな予感がします。

しかも、複合語の送り仮名の基本ルールどおり、動詞だと普通に両方とも「て」が入りますから、混乱すること間違いなしです。

 

例)庁舎建て替えは来年度以降の予定だ。

  庁舎は来年度建て替えられる。

  財布を忘れてしまったので、ちょっと立て替えておいてくれないか。

  日本では、民事法律扶助制度により弁護士費用等の一時立替えが可能である。

 

さらに言うと、「立替え」は、言葉によっては「え」の表記も要らなくなります。用字用例辞典の「立替え」の項に表記の例外として記載されています「立替金」(※「金」はほかの言葉に置き換えてもオーケー)、単独で項目としてある「立替払い」などです。

ちなみに、「立替え」の用例にありますが、「立替え施行」は「え」が消えないようです。

 

……もう覚えるのを諦めていいですかね?(泣き言)

旧ルールで苦労して覚えたものが、今回の改訂で表記変更になったものです。

旧ルールのとき漢字表記で、お客様の要望で平仮名表記のこともある言葉でしたが、平仮名表記になりました。多分一般的にも平仮名表記のほうをよく見ると思います。

 

ただし、動詞「済む」の表記はそのままであり、その活用形である「済まない」は漢字表記のままです。しかも、「済む」の否定形の「終わらない」という意味だけではなく、「すみません」同様に「相手に謝罪・感謝・依頼などをするときに用いる語。申し訳ない」(デジタル大辞泉より)という意味のときもです。

 

例)すみません、先ほどの発言に間違いがありました。

  彼には済まないことをしてしまった。

 

用字用例辞典では「済まない」の項目が単独であり、その表記の例外として「すみません」の記載がありますが、「済む」と「すみません」の項目だけ確認して「済まない」は漢字であることを見逃してしまいそうで危険な感じがします。