「私ども通信制の大学で現在もラジオを使う実験をやっておりますけれども、学力の面では、通信制で普通に勉強した学生と通信制プラス放送で勉強した学生と優位な差は出なかったんですが、ドロップアウト率といいますか、途中脱落率は放送をプラスした者がいいというようなわずかの資料でございますが、そういうことが出ておりまして大変心強く思っております」
こちらは昭和56年4月21日の第94回国会参議院文教委員会からの本日現在の引用です。(そのうち訂正が入るかもしれません)
昔のもののため現在の表記ルールとは異なっているんですが、そもそも1か所日本語としての間違いがあります。
まあタイトルを見てお分かりかと思いますが、「優位」です。ここは正しくは「有意」になります。
これ、議事録で非常によく見る間違いです。
それぞれの意味は、文字そのままですが、「有意」は「意味のあること。意義のあること」「統計上、偶然ではなく必然である可能性があると推測されることをいう」、「優位」は「位置・地位などが他よりまさること。また、そのさまや、そのもの」でありまして、「有意」という言葉の存在をそもそも知らず、「優位」としても激しく間違っている感じはしないので、ついスルーしてしまうんだろうと思います。(意味は全てデジタル大辞泉より)
が、例に挙げた「優位な差」というのは、ちょっと考えると意味がおかしいですよね?
それに対して「有意な差」というのは、「意味のある差」ということですが、これはどういうことかといいますと、例えば何か分析をして、平均値で50と100という結果が出たとします。これは数字だけ見ると差がありますが、その50という値が15~75の間でばらついた値の平均で、100という値が50~125の間のばらついた値の平均だったとすると、値がかぶっている部分があって、本当にこの二つの平均値の間に差があるかというとちょっと微妙だと思います。こういうのが本当に差があるかどうか確認する手法があって、これを有意差検定というんですけど、これで本当に差がある場合は「有意な差がある」などと表現されます。これに関連して、「有意差」「有意水準」などという言葉もよく使われます。
私はこれを高校のときの統計学で学んで、大学のときに卒論で実際に用いたりしたんですけど、統計学を取っていない、統計処理をしたことがないなどの場合、知らない方が多いように思います。確かに日常会話で出てくるような言葉ではないです。
ただ、大分昔に記事にした「試料」や「対照」と同じく技術的な会議では普通に出てきます。私の請けている仕事では、「優位」よりも「有意」のほうが圧倒的に多いです。テープ起こしをするなら知っていたほうがよい言葉だと感じます。
まあ根本的には、やはり意味をしっかり考えて作業して、少しでも違和感があればネット検索することが大事ですね。それでこういう間違いはほとんどなくなると思います。(ゼロとは言えない。人間だもの)