過去問集の解説を読み、記載されている数式を見て、確かにこの金額(回答)に
なるけれど、「なぜ、この数字を使うのか。」「なぜ、この計算式になるのか。」
等が、腑に落ちない方、もやもやしている方向けに、これ以上詳しく書けない解
説を書いてみます。

問題文
問4
島根建材株式会社は、新製品である製品Pを新たに生産・販売する案(P投資案)
および新製品である製品Qを新たに生産・販売する案(Q投資案)を検討してい
る。製品Pと製品Qの製品寿命はいずれも5年であり、各年度の生産量と販売量
は等しいとする。次の<資料>に基づいて、下の設問に答えなさい。なお、すべ
ての設問について税金の影響を考慮すること。・・・・現状の生産状況との比較
ではなく、新規案件2種類の比較なので、比較対象が似通っている。(さらに製
品寿命まで同じ。)「すべての設問について税金の影響を考慮すること」に注意。
割引計算の有無による比較(正味現在価値によるか否かという比較)は、あるだ
ろうと予想。

1.各製品に関する各年度の損益計算(単位:千円)
製品P   製品Q
売上高         4,020,000  1,060,000
変動売上原価      1,900,000  330,000
変動販売費        275,600  100,060
貢献利益        1,844,400  629,940
固定製造原価      1,294,000  350,000
固定販売費及び一般管理費 150,000  64,000
営業利益         400,400  215,940
・・・・「各製品に関する各年度の損益計算」とあるので、固定製造原価の中に
減価償却費は含まれている。(償却方法が定額法なので、減価償却費は固定費。)
キャッシュ・アウト・フローとなる金額は、次のとおり。製品P(1,294,000-4,
500,000÷5年=394,000)   製品Q(350,000-1,200,000÷5年=110,000)

営業利益の金額は製品Pを製造するほうが高いが、利益率(貢献利益、営業利益
ともに)は、製品Qを製造するほうが高い。

2.設備投資に関する資料
製品Pを生産する場合は設備Pを、製品Qを生産する場合は設備Qをそれぞれ購
入し使用する。設備Pの購入原価は4,500,000千円、設備Qの購入原価は1,200,
000千円である。各設備の減価償却は、耐用年数5年、5年後の残存価額ゼロの
定額法で行われる。各設備の耐用年数経過後の見積処分価額はゼロである。なお、
法人税の計算では、減価償却費はすべて各年度の損金に算入される
・・・・各新商品製造のための設備購入(キャッシュ・アウト・フロー)と減価
償却費による税金節約額を計算する条件が示されている。
設備P購入のためのキャッシュ・アウト・フロー 0年度末(1年度当初)4,500,
000千円
設備Pの減価償却費に伴う税金節約額 4,500,000千円÷5年×30%=270,000千円
(設問3(3)により実効税率30%)
設備Q購入のためのキャッシュ・アウト・フロー 0年度末(1年度当初)1,200,
000千円
設備Qの減価償却費に伴う税金節約額 1,200,000千円÷5年×30%=72,000千円
(設問3(3)により実効税率30%)

3.その他の計算条件
(1) 設備投資により、現金売上、現金支出費用、減価償却費が発生する。・・・・
減価償却費以外の費用は、すべて現金支出であり、売り上げは全て現金収入であ
る。(キャッシュフローの増減につながる)
(2) 各製品の各年度にかかわるキャッシュ・フローは、特に指示がなければ各年
度末にまとめて発生するものとする。・・・・設備の購入費用以外は、年度末に
発生。5年間の年金現価係数が利用可能。
(3) 今後5年間にわたり黒字が継続すると見込まれる。実効税率は30%である。・
・・・減価償却費による税金節約効果は、5年間変わらず継続する
(4) 加重平均資本コスト率は8%である。計算に際しては、次の年金現価係数表
(5年間)の中から適切なものを選んで使用すること。
1%   2%   3%  4%   5%  6%  7%   8%   9%
4.8534 4.7135 4.5797 4.4518 4.3295 4.2124 4.1002 3.9927 3.8897
5 解答に際して端数が生じるときは、金額については千円未満を切り捨て、年数
については年表示で小数点第2位を四捨五入し、比率(%)については%表示で
小数点第1位を四捨五入すること。・・・・金額の端数処理に注意(年数と比率
%が四捨五入なのに、金額は切捨てを指示しており、意地悪な設問になっている。


問題1
各投資案の1年間の差額キャッシュ・フローを計算しなさい。ただし、貨幣の時
間価値を考慮する必要はない。・・・・1年間の「差額キャッシュ・フロー」と
は何か。入ってくるキャッシュ・フローと出ていくキャッシュ・フローの差、す
なわちネット・キャッシュ・フローのことなのだろう。問題文にあった「すべて
の設問について税金の影響を考慮すること」という条件を忘れないこと。なお、
「1年間の」という限定があるので、各設備の購入に係る、キャッシュ・アウト・
フローは考慮しないこと。(設備の購入による支出は、1年度当初の支出といえ
ないこともないが、設問の中に、「すべての支出は年度末に発生」とあるので、
0年度末の支出ととらえるべき。)
設備Pのネット・キャッシュ・フロー
(貢献利益1,844,400-原価償却費を除く固定製造原価〔1,294,000-900,000〕
-固定販売費及び一般管理費150,000)×0.7+減価償却費に伴う税金節約額(4,
500,000÷5年)×0.3=1,180,280
設備Q
(貢献利益629,940-原価償却費を除く固定製造原価〔350,000-240,000〕-固
定販売費及び一般管理費64,000)×0.7+減価償却費に伴う税金節約額(1,200,
000÷5年)×0.3=391,158

問題2
貨幣の時間価値を考慮しない回収期間法によって、各投資案の回収期間を計算し
なさい。ただし、各年度の経済的効果が年間を通じて平均的に発生すると仮定し
て計算すること。
設備P
設備P の購入額4,500,000÷1年間のネット・キャッシュ・フロー1,180,280=3.
812654・・・・年=3.8年
設備Q
設備Q の購入額1,200,000÷1年間のネット・キャッシュ・フロー391,158=3.
067814・・・・年=3.1年

問題3
平均投資額を分母とする単純投資利益率法(会計的利益率法)によって、各投資
案の投資利益率を計算しなさい。
・・・・平均投資額は、設備購入額の半分。(初年度:満額投資、最終年度:原
価償却の結果0、各年度を平準化すると5年間で設備購入額の半分を投資してい
たことになる。)
単純投資利益率(会計的利益)とは、キャッシュ・フローに注目するのではなく、
損益計算書上算出された営業利益そのものである。ただし、問題文にあるように
「すべての設問に税金の影響を考慮する」ので、営業利益の70%が分子の金額
となる。分母が平均投資額(設備購入額の半分)なので計算式は、次のとおりと
なる。
設備P
税引後の営業利益400,400×0.7÷均投資額(設備購入額の半分)4,500,000÷2=0.
12456888・・・=12%
設備Q
税引後の営業利益215,940×0.7÷均投資額(設備購入額の半分)1,200,000÷2=0.
25193=25%

4.正味現在価値法によって、各投資案の正味現在価値を計算しなさい。
設備P
設備P購入費-4,500,000+1年間のネット・キャッシュ・フロー1,180,280×8%か
つ5年間の現価係数3.9927+0(5年後の設備の評価損益なし)=212,503.956=
212,503
金額の端数処理に注意(年数と比率%が四捨五入なのに、金額は切捨てを指示し
ており、意地悪な設問になっている。)
設備Q
設備Q購入費-1,200,000+1年間のネット・キャッシュ・フロー391,158×8%かつ
5年間の現価係数3.9927+0(5年後の設備の評価損益なし)=361,776.5466=361,
776
金額の端数処理に注意(年数と比率%が四捨五入なのに、金額は切捨てを指示し
ており、意地悪な設問になっている。)