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いつもたくさんの方に見て頂き、ありがとうございます
宝塚発達心理ラボのラボ子です。
休みの日なのでちょっと長文にになりますが、
発達障害の子どもたちの社会性について書いてみます。
今日は「視線回避」についてです。
とってもまじ~めな長文なので
全部読むのにかなり時間がかかります。
でも大事なことを書きました。
先に言っておきますね。長文ごめんなさい。
<ラボ子の新連載>
発達障害の子どもたちの
社会性を育てるために
第1回 顔認識から社会性を考える
1「これは誰かな?」
発達に障害のある生徒、特に自閉症障害を併せ持つ生徒の中には、クラスメイトとして毎日顔をあわせているにもかかわらず名前を覚えていなかったり、友達同士の顔が区別できていなかったりすることがしばしばあります。
ヒトに対する関心が薄いからなのでしょうか。彼らは一体顔のどこを見ているのでしょうか。ちゃんと目を見ているのでしょうか。
2 自閉症児の顔認識
DSM-Ⅳでは自閉症の診断基準は、
①対人的相互反応における質的な障害(対人関係が結びにくいということ)
②意思伝達の質的な障害(コミュニケーションがうまくとれないということ)
③行動・興味・および活動が限定されており、反復的で情動的な様式(想像的遊びの欠如とこだわり) となっていました。。
DSM-5では、
①社会的コミュニケーションおよび相互関係における持続的障害
②限定された反復する様式の行動、興味、活動のふたつの領域にまとめられましたね。
このうち、①のなかには、視線回避(gaze aversion)や共同注意行動の障害(joint attention)の記述があります。
発達に問題のない赤ちゃんであれば、幼いながらも彼らの視覚はすでに大脳皮質の働きが関与しています。赤ちゃんであっても感覚的な刺激同士の違いを識別し、一方よりも他方を好んで注視する一貫した反応を示します。これを選好注視といいます。
赤ちゃんは形のあるものや、パターンのあるもの、時間的空間的に変化に富むものを好みます。例えば、無地よりも縞模様、単純な図形よりも複雑な図形、平面よりは立体図形、静止しているものより動いているものや点滅しているものを好みます。これらはやがて養育者、特に母親の顔を選んで注視することにつながっていきます。
「個人の情緒発達において、鏡の先駆はおかあさんの顔である」という精神分析学者もいるくらい子どもにとって養育者の顔を捉える能力は重要です。
目という臓器は、単に「見る」という役割レベルだけではなく、体と情緒と知能の根っこのところで一番活発に動いている情報収集臓器でもあるわけです。
ところがこういった顔への選好そのものに、生まれつき障害による困難さを抱えている子どもたちがいます。自閉症(autisum)の子どもたちがそうです。
最近の研究に、同じ発達の障害であるウィリアムズ症候群の子どもたちと自閉症の子どもたちの目の動きを調べた研究があります。顔への反応は全く違うものでした。
ウィリアムズ症候群の子どもたちは長い時間の顔の凝視がありましたが、自閉症の子どもたちの顔の凝視は減少しました(Riby DM,Hancock JP .2008)。
映画・漫画を見せて、顔・体・背景への視線の分析をした研究では、キャラクターの顔への関心は、ウィリアムズ症候群は健常児と同じくらい高く自閉症群の関心は低いものでした。またウィリアムズ症候群の子どもたちの関心は、人間の俳優に集中していました
(Riby DM,Hancock JP .2009)。
これらは生まれたときから人への嗜好傾向が遺伝子レベルで存在するひとつの例になるでしょう。
3 人を安全な存在として理解させる
自閉症児・健常児・自閉症でない知的障害のお子さんでの実験があります。
直接ビデオの中から女性に語りかけてもらい、そのときの視線の先や視線在留時間を記録しました。2歳ですでに自閉症の子どもでは他人の目を見るということに著しい減少がありました。(Jones W, Carr K, Klin A.2008)
自閉症児の診断基準に「視線回避」があるように、目を見ないということは自閉症特有の障害です。にもかかわらず、人と交流していく中で、徐々に人の顔を見つめたり相手の目を見る回数が増えてくるのはなぜでしょう。
自閉症児が他者のこころの存在の理解に障害を持っているとしても、その発達の中でコミュニケーション行動を獲得していきます。もちろん彼らなりの方法になりますし、非常にゆっくりしたペースです。
そこから言えることは、自閉症児が他人とのコミュニケーション自体を回避しているのではないということです。このことはとても重要です。
自閉症児が人に対して「恐怖」を感じている状態ではどんなに優れた教材教具を使ったとしてもその効果は半減してしまうでしょう。
自閉症児が人を安全な存在として理解できるようになることこそが、遠回りのように見えても、ゆるぎない指導の基礎になります。
どんな方法がベストであるのかは一人一人違いますのでその子に一番合った形ですすめることになりますが、個人的にはその子の好きなことを見つけて、共有する時間を持つ中で子どもの安心感を育ていくことができればベストかなと思っています。
その際に、大人が子どもの注意対象を敏感に察知して、それをていねいに言語化していくことが発達的に大きな意味を持ちます。
<引用・参考文献>
遠藤利彦編(2005) 読む目・読まれる目 東京大学出版会
Jones W, Carr K, Klin A.(2008) Absence of preferential looking to the eyes of approaching adults predicts level of social disability in 2-year-old toddlers with autism spectrum disorder.Arch Gen Psychiatry. 2008 Aug;65(8):946-54.
大神英裕(2002)共同注意行動の発達的起源 Kyusyu University Psychological Research 2002 Vol.3 29-39
Riby DM, Hancock PJ.(2008) Looking at movies and cartoons: eye-tracking evidence from Williams syndrome and autism. 14. Neuropsychologia. 2008 Sep;46(11):2855-60. Epub 2008 May 14.
Riby D, Hancock PJ.(2009) Viewing it differently: social scene perception in Williams syndrome and autism.Do faces capture the attention of individuals with Williams syndrome or autism?
Evidence from tracking eye movements. 11. J Autism Dev Disord. 2009 Mar;39(3):421-31. Epub 2008 Sep 12.
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