【発達支援②】ASD児の「共同注意」&「社会的参照」 | 宝塚発達心理ラボ <臨床心理士たちの研究会> 情報提供・発達支援・アセスメント・教材研究・不登校・ひきこもり支援

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いつもたくさんの方に見て頂き、ありがとうございますニコラブラブ

宝塚発達心理ラボのラボ子です。

 

 

またまた長文にになりますが、

発達障害の子どもたちの

社会性について書いてみます。

今日は「共同注意」&「社会的参照」についてです。

 

長文です。すみません。

でも社会性を考える際には

とても大事なことを書きました。

 

<ラボ子の新連載>  

発達障害の子どもたちの社会性を育てるために

 

第2回 共同注意から社会性を考える     

 

 

1目が合わない子どもたち

「○○ちゃん、おはよう!」

特別支援学校の朝はスクールバスの到着とともに、明るい挨拶ではじまります。

 

自分のほうから「先生、おはよう!」と言ってくれる生徒もいれば、先生の存在などまるで物の一部のように通り過ぎてしまうお子さんもいます。呼びかけても話しかけてもすっと目線をそらしてしまうお子さんもいます。

 

 授業で「見て!あそこに大きなボールがあるよね。」と指さしながら言っても、全ての生徒がその指の先の「あそこ」の「大きなボール」を見てくれているわけではありません。

 

一日中一緒にずっと過ごしているのに、生徒とわかりあえていないと感じたり、気持が伝わっていないと感じたりすることは、特に自閉症のお子さんが通う特別支援学校(級)で働く先生方ならば一度や二度の経験ではないでしょう。

 

 2 共同注意行動と社会性

共同注意(joint attentionとは、広い意味でとらえると、複数の生物個体が同一の対象に対して、同時に注意を向けている状態のことを指します。

 

人の赤ちゃんでは9カ月~10カ月ころから「相手が指さししたり、視線を向けたりした方向を見る」行動が始まります。これが共同注意行動です。非言語コミュニケーションの基礎とも言われています。

 

他人の指さした方向から、その意図を感じて、他者との原始的なコミュニケーションが始まるからです。

 

人のこころの発達に深く関わるたくさんの事柄が、この共同注意出現とほぼ時を同じくして現れることから、この時期のことを「奇跡の9か月」と言う人たちもいます。

 

発達に障害がないお子さんであればこの共同注意は生後1歳半くらいまでに急激な発達曲線を描きます。

 

相手が指さししたり視線を向けたりした方向を見ることが、人のこころの発達になぜ大切なのでしょう。指さししないことがどうして社会性の発達においてハンディキャップになるのでしょうか。

 

3 社会的参照

社会的参照(social referencingを“意味の不確かな対象と遭遇した際に生じた不安定な情動状態を、他者が発する情報を活用し、その対象の意味を知る(情報探索)ことによって立て直し(情動調整)、さらにはその対象に対する自らの行動を決定・実行する(行動調整)という一連のプロセス”と定義することにします。

 

発達に問題のない生後12カ月頃の赤ちゃんは、お母さんが対象を指さすと、その対象に自分も注意を向けてくれます。これが12カ月を過ぎるとお母さんが対象を指さすと、その対象に自分も注意を向けた後、さらにお母さんがその対象を見ているかどうかも再びチェックします。

 

お母さんの情動表出から、自分に対して大切な存在である人が、その対象に対してどのような心理的スタンスを持っているのかを知ることで、対象と自分との関係を再確認するかに見えます。

 

自閉症のお子さんでは、指さしができるレベルの発達段階のお子さんであっても、指さしの後、相手を振り返ったり視線を合わせたり、相手の情動表出をうかがう生徒は少ないです。

 

ましてや、相手の表情によって自分の決定が揺らぐといった行動をとれる生徒は多くはありません。

 

4 目はメッセンジャー

相手が「怒っている」とか「悲しんでいる」ということを私たちはどうやって理解するのでしょうか。

 

多くの場合、相手の表情や雰囲気で推測しています。その際、大きなカギをにぎっているのは、目、つまりまなざしです。

 

例えば、自分に対して相手からの「睨まれている」目線を感じれば、我々は直感的に「相手は怒っている」のだと感じます。それによって相手と距離を置いたり、謝ることで、自分を守り不要な争いから身を遠ざけることができます。

 

通常のお子さんにとっては、この「見つめる視線」への理解は注意を払うべきものであり、特別なものであるわけです。

 

ところが自閉症のお子さんはこの見つめる視線に対する応答メカニズムは残念ながら備わっていないようです。

 

5 教育の可能性  

このような自閉症の子どもたちが持つ基本的なハンディキャップの理解、そしてそれは生涯持続するという根本的な認識は絶えず持ちながらも、外部からの何らかの働きかけは彼らの社会性の育成のためには必要となるでしょう。

 

もちろん療育の効果を過大評価してはいけませんし、彼らの負担になるような取り組みも本末転倒です。

 

もし自閉症の子どもたちが、人の顔刺激に対して選択的に反応するという傾向を発達の早い段階で欠落させているのだとしても、人が人に発する情報の刺激、それは多くの場合、表情やまなざしを通じてノンバーバルなメッセージを送っていることが多くなりますから、それらに注意を向ける取り組みはコミュニケーション力を育てていくためにも有効です。

 

自閉症児は人の発する刺激に対して注意を向けにくいという障害を持っているにも関わらず、MA(精神年齢)、DA(発達年齢)で健常児や知的障害児より遅れながらも、応答の共同注意行動(すなわち指さしの確認)を発達の中で獲得していきます。

 

この事実は、彼らが彼らなりのやり方で共同注意行動を形成している可能性を感じさせます。

 

自閉症児は他者理解に障害を持つものの、他者と状況や注意などを共有することを拒否しているわけではないというところに日々の教育の可能性を感じます。

 

 <引用・参考文献>

 

遠藤利彦編(2005)  読む目・読まれる目 

東京大学出版学出版会

 

遠藤利彦・小沢哲史(2001)  乳幼児期における社会的参照  参照の発達的意味およびその発達プロセスに関する理

論的検討  心理学研究 第71号 第6号 498-514

 

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