受け継がれし一族の魂



16世紀のフランドル
(現在のベルギーにほぼ相当する地域)を
代表する画家ピーテル・ブリューゲル1世。

現実世界を冷静に見つめ、
人間の日常生活を何の偏見もなく、
ありのままに表現した革新的な画家でした。

この観察眼は、子から孫、ひ孫へと受け継がれ、
150年間に渡り一族から画家を輩出し続けました。





「ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜」
Brueghel: 150 Years of an Artistic Dynasty

稽古終わりに行ってきました。
今回も虎彦くんと一緒です。


実は以前行われていた
ブリューゲル「バベルの塔」展
も観に行っていたので
ずっと気になっていました。



旧約聖書に登場する
「バベルの塔」の物語。

当時の建築技法だったり
材料となるレンガや漆喰を運んだ後
塔を建築する人々、塔に暮らす人…

ブリューゲル「バベルの塔」展





美術への関心、知識も成長して
またやってきたのだと。





「ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜」


【期間】
2018年1月23日(火)~4月1日(日)

【会場】
東京都美術館

【チケット料金】
一般:1,600円
大学生:1,300円
高校生:800円
65歳以上:1,000円
中学生以下:無料


【巡回先】

[愛知展] 
2018年4月24日(火)~ 7月16日(月・祝)
豊田市美術館

[北海道展]
2018年7月28日(土)~ 9月24日(月・祝)
札幌芸術の森美術館

※上記の会期終了後、
 広島県、福島県に巡回予定。





九州ほどの小さな面積に、
芸術と美食がいっぱいに
詰まった国ベルギー。

その中でも、

よく耳にする「フランドル地方」は
ベルギーの約北半分を占める地域のこと。
(ブリュッセル、アントウェルペン、ゲント等)


ブリューゲルの描く風景は
そんな地元フランドルの景色と、
平地に住む人々が憧れたアルプスの山々を
合成した作品もあるので
何だか旅にやってきた気分に…!?


会場入り口がまた面白くて。
こんな感じになっていました。

<出典 ブリューゲル展HP

ズラリと並んでいますね…!

一族の祖であり《バベルの塔》の作者
として知られるピーテル・ブリューゲル1世

多くの画家が活躍した家系の初代で
あることから「大ブリューゲル」や
「ブリューゲル(父)」などと
記名されることが多いそうです。

<出典 ブリューゲル展HP

息子のピーテル2世、
ヤン1世も父と同じ道を歩みました。

長男のピーテル2世は
人気の高かった父の作品の
忠実な模倣作(コピー)を描き、

次男のヤン1世は父の模倣にとどまらず、
花など静物を積極的に描き、
"花のブリューゲル"などと称され
名声を得てお金持ちにも好まれた。

農民の世界を描き貧しいまま
亡くなった長男と対象的で
ここでもまた色々と考えさせられる。



系統立てて展示されているので
とてもわかりやすかったし、
100点以上展示されている作品のうち
2,3点を除く全てがプライベート
コレクション(個人蔵)ということで、
世界中の美術館を巡っても
今回の作品はほとんど観ることが
出来ない。貴重な機会なのです…。
(しかもほとんど日本初公開)



僕が今回特に興味を持ったのが
ピーテル・ブリューゲル2世の
《鳥罠》です。


<©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18>

この題材はおそらく
ピーテル1世が考案し、
一族が類型化したもの。

雪景色のフランドルの農村を舞台に、
凍った川の上でコマ回しやスケートに
興ずる人々が画面左半分に描かれています。

そ し て 、

右側の少し小高い岸辺の
大きな木の傍らに鳥罠が
仕掛けられています。

人々と鳥罠は無関係に
見えるのですが実は同じ
危険にさらされています。


というのも凍った川の上には
水汲み用の穴が開けられており、
注意を怠りこの穴に落ちてしまう
可能性があるからです。


ブリューゲルの絵は教訓じみて
解釈されることが多いですが、
この絵は特にそうですよね。

ブリューゲルは人間も鳥も
大差はないということを強調するために、
鳥と人間をほぼ同じ大きさで
描いたとする説もあり深いです。


また、「第5章 寓意と神話」も
僕は好きだったなぁ~


寓意画や神話画は、
抽象的な概念や実体を持たないものを
理解するための効果的な手段として、
17世紀に好んで描かれたそうなのですが
ヤン・ブリューゲル2世の
《嗅覚の寓意》、《聴覚の寓意》は
それがわかりやすくて面白かった。

<ヤン・ブリューゲル2世《聴覚の寓意》1645-1650年頃 Private Collection>

絵の中央では、
聴覚の擬人像が楽器を弾き、
耳がいいとされる鹿が
その音色に聞き入っています。

様々な声で鳴く鳥のほか、
画面右奥の部屋にも合奏する
人々の姿が描かれており、
左側の柱では貝殻を顏に見立てる
といった画家の遊び心も。



さらに先へ進むとこんなモノが…!



【作品撮影 期間】
1月23日(火)から2月18日(日)まで、
一部の作品が撮影可能です。


今まで載せてこなかったけれど
今回の展示の何が良いかって
作品名と一緒に親子関係を
わかりやすく表示して下さる点。



画家一族であるブリューゲル家の
親からひ孫まで入り混じって
展示されています。(1世、2世と…)

だんだん混乱してくるわけです←

綾切が締切も綾切に見える
なんて事を言ったら締切が
綾切に見えるのは勿論のこと
締切も新切も堀切も踏切も
全部綾切に見えてきたって
言うのと同じです。(違う)

《ガラスの花瓶に入った花束》

ブリューゲル一族の描く絵は
小さいサイズが多くて、
コピー用紙のA4サイズとか
小さいものだと絵葉書ぐらいの
モノもあるのですがどれも
めちゃくちゃ繊細なタッチで
近付けば近付くほど発見が…。



順番が前後しましたが
ヤン・ブリューゲル2世の
《ガラスの花瓶に入った花束》も
並んで展示されていたので
比較しながら楽しむ事が出来ます。





美しい花々に目も心も
奪われてしまいます。


印象的だった作品…
ヤン・ブリューゲル2世
《籠と陶器の花瓶に入った花束》



僕は絵を見る時は必ず
額縁も含めて鑑賞するように
しているのですが、
自分だったらどう額装するか
考えるのも楽しくて…。



ピーテル・ブリューゲル2世
《野外での婚礼の踊り》



宴の主役である新婚の2人のうち
花婿はどこにいるかわかりませんが
花嫁は画面奥の特別席に座って
祝儀を受け取っています。




最後はグッズ販売のコーナー!



"ブリューゲル街道"

農民たちの労働や祝祭、
遊びなどを描いた「農民画」を
テーマに数多くの作品を残した
ピーテル・ブリューゲル1世。

文化的エリートでありながら、
生き生きと生活する農民たちに
共感していたブリューゲルは、
近郊の農村に出掛けては
農民たちと飲食を共にし、
祭や婚礼などにも参加したそうです。





ベルギー生まれの人気キャラクター
「スマーフ」とのコラボもありました。

一緒に婚礼の踊りに参加できる
フォトスポットはダンサーとして
力を発揮すべきだったのですが
めちゃくちゃエンターテイメント性に
欠けるポーズで済ましてしまいました←





受け継がれし一族の魂。


【公式HPはこちら】
http://www.ntv.co.jp/brueghel/


本当に楽しい時間だったな…
次はもう少しゆっくり見て
まわりたいと考えております。
細密描写を隅々まで覗くのだ!(笑)




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それでは、またね~!