個性豊かな恐怖!



どうして人は
絵を描くのでしょうか?

一体何が僕たちを
惹きつけるのでしょうか


どうしてその絵は
恐ろしいのでしょうか?

画家はその絵に
何を託したのでしょうか





「怖い絵」展に行ってきました。


なんかタイトルだけ見ると
「あ、これ私無理なんじゃね?」
って思うかもしれないけど、
チキンハートな僕でも大丈夫だったので
きっとアナタも大丈夫です ご安心を←


なんて言ったらいいんだろう?
「もう見るからに怖いよ~!」みたいな
直接的な怖さを感じるというよりは
ある観点から物事を考えて、
その意味を理解した瞬間に「あ、やべぇ…」
みたいな"気付きの怖さ"です。


なんなら僕の顔面パックの方が
見た瞬間の怖さは感じられるので
展示に出品を検討すべき。



って冗談はさておき…
「怖い絵」展についての記事を。





【期間】
2017年10月7日~12月17日
※会期中無休

【会場】
上野の森美術館

【チケット料金】
一般      :1,600円
高校生・大学生 :1,200円
小学生・中学生 :600円
小学生未満   :無料




雨もあがり 開幕初日!
ということもあってか
美術館の前には長蛇の列が…。





しかも、今日は休日なんだよね…。
入場まで約50分待ち、大盛況です!
(恐ろしいでしょう)


混雑状況の確認は「怖い絵」展
公式Twitterで確認出来ました。

→(@kowaie_ten)


展示はめちゃくちゃ面白いので
混雑状況も見ながらどうぞ快適に!




実際50分も待たずに入場出来たかな?
(体感的には早かったです)



今回も虎彦くんと一緒に来ました。
"怖い絵"ということで大丈夫かな?
と心配もしたのですが、彼はちゃんと
この目で見たいって言いそうだなと。

(ボトル型なのでお守りっぽい←)







展示の第1章は
「神話と聖書」ということで…

ギリシャ神話やキリスト教が
背景にあっても、恐怖は洋の東西を
問わないのが面白いですね。

西洋版・三途の川
《ステュクス川(エスキス)》や

2人の女性がわが子を主張する
《ソロモンの判決》は、
元祖・大岡裁きと言われています。


<出典 公式サイト

2人の女性が1人の子を
連れてやってきたのですが、
お互いに「自分こそこの子の本当の母親です」
と言って一歩も退きません。

そこで、ソロモンは「私の子だ!」と
主張する2人の母親を見比べ、
隣に立っていた兵士にこう告げました。

「その子供を真っ二つに切り裂け!」と。

すると、偽物の母親は
「あの女にあげるくらいなら裂いて!」
と叫んだのに対し、本物の母親は
「あの女にあげるから助けて!」と叫んだのです。

こうして子どもは本物の母親の元にいきました。




このように、
まずは絵をじっと見てから
解説なんかでその背景を知ると
その絵が全く違うものに感じられます。






そのまま展示の奥へと進むと
第2章「悪魔、地獄、怪物」に。

特に僕がゾッとした絵は
ヘンリー・フューズリの《夢魔》


<出典 WIKIMEDIA

なんか見てはいけないようなものを
見てしまった感覚になりませんか?


解説にはこうありました。


眠りはある意味、こま切れの死だ。夜がその黒々とした翼を拡げるたび、幾度も幾度も自我を完全喪失させねばならない。そして疑い続けねばならない―――眠っている間、何か恐ろしいことが我が身の上で営まれているのではないか、と。

『中野京子's eyeより』


確かに人間が寝ている間は
"こま切れの死"という見方も
出来るのかもしれません。

でも、

僕は睡眠と食事は大好きなので
やっぱりその間も全力で
生きているのかなぁと(笑)






第3章は「異界と幻視」

我々人間にとって最大の異界は
死の世界ですが、日常の場面に突如
その姿を表す異界としての死について。


僕が面白いなぁと思ったのは
ジョセフ・ライト《老人と死》です。


<出典 公式サイト

骸骨が死の表象であることは、
世界中のどの文化圏でも共通認識。
なぜなら骸骨と化し生きていられる者は
この世に存在しないからです。

粗末な身なりの老人、
足元には柴の束があります。

そして、

座っていた岩から腰を浮かすと
驚愕と恐怖の表情で、「寄るな」
とばかりに左腕を伸ばしています。

しかし、

そもそも死神を呼び寄せたのは
この老人自身なのです。



ブラックジョークみたいな感じ(?)
意味がわかるとなるほどな~って。






さらに展示会場を奥に進むと
エドヴァルド・ムンク《マドンナ》も。


<出典 http://paradjanov.biz/

ムンクといえば《叫び》が有名で
正直あまり《マドンナ》については
知らなかったのですが実際に見ると
不気味だけど何か惹かれる…
その場でじーっと見つめていました。


半身の裸体の女性が描かれており
版画版では女性の周辺を精子が、
装飾的なフレームが作られています。
左下には胎児の姿が描かれ特徴的です。
今回の「怖い絵」展ではフレーム付き。

1893年の絵画版にも
当初は版画版とよく似た装飾的な
フレームが描かれたいましたが、
後に取りのぞかれたとか。


この展示のすぐ横に
"回遊する生死"と書かれており
生死と精子をかけたのかな。
なんだろう…色々と考えさせられました。






さらに進んで第5章
「崇高の風景」にきました。

歴史画の背景として発達した
理想的風景や特定の場所をありのままの姿を
描写する地誌的風景に加えて、
なんらかの感情や気分を暗示的に表現する
主情的・主観的な風景画が生み出された
18世紀から19世紀にかけてのロマン主義時代。


こちらの作品は《嵐の海》
クロード=ジョセフ・ヴェルネ


<出典 GATAG

僕は美術作品を鑑賞しながら
いつも手元でメモを取っているのですが、
隣の男性が「穏やかな海の絵なんて
見ててもつまんないもんね」と言ったのです。
思わず自分のメモに書き留めました。


《嵐の海》は突然の嵐に襲われて
陸を目の前に難破した船の姿。
そこから命からがら小船に乗って
逃れようとする人々の姿が描かれています。


でも、絵画としては波一つない
穏やかな海より荒れる海ほど
見つめていたくなるものなのでしょうか。


ハッとした瞬間でした。
…すごく怖かったです。






最後は第6章「歴史」です。

歴史を彩る悲劇的なエピソードや
運命に翻弄された人々の姿を描いた作品の
特集となっていました。

印象的だったのが
ジョン=ポール・ローランス
《フォルモススの審判》です。


<出典 Wikipedia(フォルモスス)

審判も何も、相手はもう骸骨…
これ以上の裁きとは一体?

僕もゲームでよくモンスターを
オーバーキルし経験値は変わらないのに
ただただ自己満の世界に浸るのだけど、
やってることはそれに近いよなぁ。

あと、目の前を歩いていた
カップルの女性が独り言を漏らしていた。
「どうしても許せないことってあるよね」
いやいや、マジで怖かったです。






そして、本展最大の注目作!

縦2.5m、横3mにもおよぶ
ポール・ロラロージュの大作
《レディ・ジェーン・グレイの処刑》



数奇な縁でイングランド史上
初の女王として即位したけれど、
在位わずか9日間で
メアリー1世により廃位され、
その7か月後に大逆罪で斬首刑に処された
ジェーン・グレイの最期を描いた作品。


ロンドン・ナショナル・ギャラリーでは
錚々たる画家の名画が展示されていますが、
その中でも、あまりの迫力に圧倒され息を飲み
必ずここで人が立ち止まる。とまで言われる作品。


潔白を主張するかのような
純白のドレスと真新しい婚約指輪。
首を置く台を探す透き通るような
美しい手に鳥肌が立ちました!



この絵は一度見たら忘れがたい力がある。主役の圧倒的存在感で成功する舞台劇のように、ジェーン・グレイの清楚な魅力が画面の全てを決している。
残酷な運命に動揺するでなく、怯えるでなく怒るでなく、周りの悲嘆にも動揺するでなく、覚悟を決めて従容と死につこうとしている少女。その儚い一輪の白い花のごとき姿、散る寸前の匂いたつ美しさに、胸を打たれずにおれない。手探りしている首置台に触れれば、彼女は司祭の助けをかりて身を伏し、処刑人の大きな斧の一撃を受けるのだ。下に敷かれた藁は、夥(おびただ)しい血を吸いとるためのもので、首がころがる様をも想像させ、戦慄である。

『中野京子's eyeより』



大きな斧を持った死刑執行人。
ギロチン発明前の斬首は失敗が多く、
ナイフで首を切り落とすことも
あったそうです。(腰にナイフが見える)


そして、後ろには取り乱した侍女が
柱にすがって泣き崩れています。


首置台へと優しく導く聖職者の姿も
その優しさが逆に悲しく感じられて…。





発注者や鑑賞者と同じく、
画家もさまざまな思惑の中にいる。
その思惑で描いている。という言葉が
深く印象に残っております。


展示看板に書かれたフレーズ
「どうして。」


ここにきて、
言葉の重みを感じました。





記念のフォトスポットを発見!



差し出す杯に手を出した者は
動物の姿に変えられてしまうという。

そんな妖艶なキルケーと一緒にパシャリ!



鏡に自分を映して撮影するのですが
これがなかなか難しくて…(笑)



グッズ販売コーナーもありました。



「怖い絵」展のオリジナルチョコレート
その名も「黒い恋人」です。

怖いほどのサクサク感だとか…。



すぐ横にはお洒落にボトルが並ぶ。



ただ「黒い恋人」の隣りだから
なんだか怖く思えてしまう←





購入しました。

展示会を観て、読んで、知ったからこそ
怖さに気が付けるクリアファイル。









人間は傍観者として
怖いものを見たいという
欲求があります。


この「怖い絵」展に足を運ぶ僕たちは
自身の恐怖は嫌だけど、他人の恐怖に関しては
進んで観に行くという人間の心理そのもの。


もちろん絵画も怖いのだけど
やっぱり1番は人間なのかな?





「恐怖」に焦点をあてた展示、
本当に濃い時間でした。



【公式サイトはこちら】
http://www.kowaie.com/


また時間を見つけて
じっくり鑑賞したいな
と考えております。




チキンハートでも大丈夫です←
僕もメチャクチャ楽しめたから。


みなさまも是非~!




【虎彦くんと行く美術館ブログ】

岡本太郎記念館

ティツィアーノとヴェネツィア派展

ミュシャ展 2017

ブリューゲル「バベルの塔」展

アルチンボルド展

Point-Rhythm World-モネの小宇宙-

「怖い絵」展

オットー・ネーベル展

「北斎とジャポニスム」展

ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜


【美術館や展示会の記事一覧】
http://ameblo.jp/t-ayagiri/theme-10101315658.html



それでは、またね~!