【第4回再放送】が終わって市販された、

特別機動捜査隊 スペシャルセレクション<デジタルリマスター版> [DVD]

の作品から抽出しました。

市販品なので、

(あらすじ)などストーリーの本質にかかわるところは伏せ、

スタッフやキャスト、また(備考)・(ネタバレしない範囲での一般的感想のみ

にとどめます。

将来、東映chなどで、一般的視聴されるようになったら書き加えていく予定です。

 

※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

なお、オープニングやエンディングで配役名表記がされない作品については、従来の「発声のみの役名については平仮名表記」の原則だと平仮名だらけの文面となります。そこで役名・地名等は、検証本その他を引用、あるいは当方での当て字により、以下表記します。

 

 

 

☆・・・#128  さすらい

特別機動捜査隊(第128回)さすらい

 

 

 

(収録DVD)・・・VoL3、disc1、2021年2月10日発売

(本放送)・・・1964年4月8日

(脚本)・・・大垣康

(監督)・・・今村農夫也

(協力)・・・警視庁、愛知県.県警本部、岐阜県.県警本部、岐阜観光協会

(協賛)・・・無し

(助監督)・・・天野利彦

(劇中ナレーター)・・・島宇志夫

(捜査担当・オープニング表記)・・・立石班

西本捜一主任(鈴木志郎)、橘部長刑事(南川直)、荒牧刑事(岩上瑛)、

桃井刑事(轟謙二)、岩井田刑事(滝川潤)、立石主任(波島進)

 

(出演者・オープニングまたはエンディング表記)・・・配役名表記無し

伊豆肇、堤真佐子、武藤英司、鬼頭昭夫、杉寛、藤江リカ、柳有、中江隆介、

立石文彦、菊地双三郎、志水辰三郎、片山滉、倉橋宏明、三島一夫、河合絃司、

小藤田正一、相馬剛三、結城三千代、山田甲一、都健二、藤田寛、宮城サチ子、

長谷川平八郎、木元章介、宇野健彦、瀬戸茂樹、森精治、脇真、中西紀久子、

橋本秀男、本間義弘、林純弘、小林実、上田侑嗣

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

時効寸前の男が、東海道を西下したという情報をキャッチした・・・。

昭和39年4月8日24時、残るはあと1時間30分!

時効寸前の男が、何の目的で帰って来たか・・・?

狙う相手は・・・?

娘は?

妻は?

15年ぶりにみる故郷(フルサト)・・・。

中部各県を舞台に、彷徨えるひとりの男を追って、

特捜隊の活躍が続くのである・・・。

 

※ストーリーの本質に触れる部分はボカします。

 

 

(備考)・・・

・(協賛)は無いが、オープニングのゲスト出演者の最後に、名古屋・並木グループとある。

・また、エンディングには(共同企画)として、池田八郎・外山宏次・内田隆・名古屋放送(NBN)、と表記されている。

#127  蜘蛛の巣 と、#128  さすらいは、愛知県と岐阜県にまたがる地方ロケ作品であり、当作冒頭の場面で、それは明らかにされる。

#121 けだもの【スペシャルセレクション】 で、西本捜一主任→西本捜一係長の昇格がオープニング表記されていたが、当作では西本捜一主任の表記に戻っている。なお劇中でも、「主任」と呼ばれているので、単なる誤記とも思われない。

・検証本75頁の(出演者)の藤田幹は、オープニング表記によると藤田寛の誤り。

・滝野の妻については、「たきえ」「さきえ」と混同して発声させられるが、総合判断で後者を優先させ、以下本文では「咲江」の当て字を用いる。

・後年、鑑識課員を演ずる上田侑嗣がオープニング表記され、今までの【スペシャルセレクション】では初登場、役柄は戸田新造と思われるが、判定困難で以下本文では?を付加した。

・時効については、#647 三船の野郎が憎い の(備考)を参照。

・宝石商傷害事件の撮影は、現在の東京駅八重洲口(東口)の八重洲通りと併行して裏手にある、八日通り周辺で行なわれたものと考えられる。

・劇中の「漫華公司」は「マンカサンセキコンス」とは読めず、脚本上は「漫華○○公司」と別の名がついていたものと思われる。以下本文では劇中どおり「漫華公司」と、劇中ナレーションのみ「マンカサンセキコンス」とそれぞれ記述するが、いずれも同一の企業のことである。

・劇中の「混血」という表現は現在では差別用語と見做されるため、以下本文では#212 聞えない町【スペシャルセレクション】 の(備考)に則った表記とする。

・劇中の岐阜県加納町(劇中ではカノウマチと発声するが、正式にはカノウチョウ)は、単独での加納町は存在せず、加納○○町などと町名頭に付くものであるが、以下本文では発声通りとした。なお、愛知県丹羽郡犬山町は現在の愛知県犬山市で、1954年4月に犬山市と改称、#302 悲しい善意【スペシャルセレクション】 では犬山市が協賛していた。

・劇中ナレーションの「岐阜、金華山、稲葉山城」は、一般に岐阜城、金華山城、稲葉山城という呼称をまとめた表記である。なお、「斎藤道三・三代」とは、戦国時代における斎藤道三・義龍・龍興の親・子・孫による、三代の美濃国大名のことをいう。

・伊勢湾台風は、1959年9月26日に上陸、27日にかけて東海地方に甚大な被害をもたらした災害であり、本放送の約5年前に起こったものである。

・所轄署刑事・吉村は、電送された「指名手配用紙」で、丸の内署所属と思われる。

・写真付きで電送された「指名手配用紙」概要は、以下の通り。

>日付=昭和39年4月4日

>事件名=駐留軍雑役夫殺人事件

>宛名=愛知県警察本部長

>発信者=警視庁刑事部長

>手配課署=丸の内署

>被告・出生地=愛知県丹羽郡犬山町五郎丸○○

>被告・氏名=滝野章(註・読みはタキノアキラと発声)

>被告・年令=大正5年8月7日、44歳(註・年齢に合わせると生年は誤りか?)

 

 

(視聴録)・・・開始約分半まで

(ネタバレしない範囲での一般的感想)

配役名表記が無いこともあり、また主な関連人物をまとめますと以下のとおりです。

(演者は・・・の次に、判明出来る俳優名を表記)

 

〇ハイチャンス号船員・滝野章(中国名リン・ハンショウ)   ・・・伊豆肇

〇滝野の妻・咲江・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・堤真佐子

〇滝野の娘・和子・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・藤江リカ

〇ハイチャンス号船員・ハンス

〇宝石店・漫華公司の支配人

〇熱帯魚店店主・葉室軍平

〇丸の内署刑事・吉村・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・山田甲一

〇吉村の同僚刑事

〇丸の内署巡査

〇刑事3課・課長 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・河合絃司

〇刑事3課・刑事(7人)

〇15年前の米軍大村北キャンプ・米兵・・・・・・・・・・・・・・片山滉

〇当時のキャンプ雑役夫・米谷(ヨネタニ)

〇愛知県警・本部長 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・武藤英司

〇愛知県警刑事・宮園

〇愛知県警刑事・坂井

〇愛知県警刑事・大沢

〇愛知県警・事務方巡査

〇稲葉山城の老案内人・高原

〇トラック運転手(2人)

〇犬山鵜飼管理所・管理人

○犬山市の所轄署巡査

〇小牧市の農家・田所勘太・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・相馬剛三

〇小牧市の所轄署巡査

〇大龍寺の住職

〇大龍寺近くの馬方

〇品川ナンバー車の若者

〇同伴する若い娘

〇笠松市の検問警官(3人)

〇提灯屋村瀬商会の番頭・保川(ヤスカワ)

〇保川の孫娘・千香子

〇村瀬商会の従業員

〇岐阜駅の通行人

〇戸田製陶所の社長・戸田隆造

〇戸田の息子・新造・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・上田侑嗣?

〇戸田製陶所の従業員

〇ヌード寄席・カイケイ座の受付老人

〇カイケイ座のストリッパー(2人)

〇カイケイ座の進行係

〇落合医院・医師

〇落合医院・看護婦

 

 

いづみ旅館ライフル事件を解決して、意気揚々と愛知県警本部を出ようとする立石班に,、警視庁から緊急連絡が入る。時効寸前の全国指名手配の男が東海道を西下したとのことで、立石班は早速電送された「指名手配用紙」その他の資料に目を通す(備考参照)。

 

「この事件は、4月4日午後12時30分東京西銀座において、宝石商傷害事件により端を発したものである」

「通行人の証言により、2人の男が事件直前に立ち去ったということであった」

「直ちに、所轄署の吉村刑事が急行した」

(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

宝石店・漫華公司では巡査が、流血し頭を押える支配人に聞きとり。そこに吉村が現われると、支配人は宝石の売買を巡る値段トラブルに過ぎず、単なるかすり傷であり傷害事件に及ばないという。しかし店は横浜元町にあり、ここは事務所だという言葉に、吉村は宝石の売買とは合点がいかず、男たちの人相についての問いにも、思い出せないと落ち着かない返事。

 

「現場の様子に不審をいだいた吉村刑事は、直ちに宝石密輸事件として、警視庁3課に連絡した。その結果、"マンカサンセキコンス"はかねて税関から要注意を受けていることが判明した」(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

3課課長の、2人の男はおそらく船員で、密輸ダイヤの売却を頼んできたものと思われるとの説明に吉村は納得。ダイヤと金額が釣り合わないことで争いになったと、見解が一致する。

そこで3課課長は支配人を出頭させ、取調室で訊問。すると、大して価値も無い石で250万を要求されたことを認め、2人の男はハイチャンス号船員であり、1人はハーフ、もう1人は中国人と自称していたが明らかに日本人だったと供述した。

 

「密輸宝石の線をあたるべく、警視庁3課は横浜港に停泊中のハイチャンス号に急行、混血の船員・ハンスを連行、事情を聴取した」

「その結果、もう1人はリン・ハンショウこと日本名・滝野章と判明、前科の有無を調査した。それによると駐留軍雑役夫殺しの犯人として、かねてより指名手配を受けていた人物であった」

「この事件は、昭和24年、滝野章の妻・咲江が米兵に自宅で強姦され、それを知った加害者・滝野が、米兵に金をもらって手引きをした男・米谷を殺害した。当時日本は占領下のこと、相手の米兵を殺すことも出来ず、恨みは米谷に集中し、犯行を犯してしまったのである」(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

強盗傷害事件から戦後間もない殺人事件にまで辿り着いた吉村は、警視庁の西本捜一主任に報告。そして、この事件は昭和24年4月8日に発生したもので、今日を入れて後3日で時効となることから、愛知県警と合同捜査中の立石班にも緊急連絡することになったのである。

「警視庁では直ちに、滝野の友人その他15年前の関係者をあたることにした」

(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

 

緊急連絡を受けた立石主任は、時効は昭和39年4月8日24時になることを確認、愛知県警本部にて合同捜査会議を行なう。

橘は、滝野の妻・咲江の実家、滝野の出身地の犬山をマークしたいと具申する。そして、本部長は、時効寸前の男がわざわざ危険を冒して、何の目的て帰って来たのかを考える。これに立石主任は同意、さらにダイヤを現金化して250万を持っていることから妻子に会うため、という荒牧の推察に頷く。

「立石班は、直ちに滝野の妻・咲江の本籍地でもある岐阜市加納町を訪ねた。しかし、そこには手がかりを求める術もなく、ただひとり、詳しい事情を知る城の案内人・高原老人がいることが判明。斎藤道三・三代の居城でもあった岐阜、金華山、稲葉山城を訪れた・・・」(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

 

 

当作は、島宇志夫の劇中ナレーションが生きた効果を生み出し、スピーディーな進行でストーリーがあれとあれよという間に展開されます。自分が特捜隊を観始めた【第3回再放送】のときも、島宇志夫ナレーションが存在しており、メリハリが有り、緩急自在なナレーションはストーリーの進行に大きく影響を与え、特捜隊に惹かれた理由のひとつでもありました。

しかし、#500 勇気ある女 (500回記念作品) 以降、島宇志夫ナレーションが徐々にフェイドアウトとなりました。しかし、日高主任(葉山良二)率いる日高班初登場作品#757 霊柩車を撃て! で復活、改めて「立石班へのオマージュ」的存在であり、特捜隊の象徴として、立石主任、三船主任(青木義朗)と並ぶ存在感を醸し出していました。そういった意味では、当作は島宇志夫ナレーションが生きた作品といえます。

このスピーディーさが結集した作品では、傑作#562 真夏の逃亡者 が挙げられますが、ナレーションでスピーディーさを強調した点では、(思い起こせば)今村農夫也監督の近作#125 誘惑者【スペシャルセレクション】 でも同じ技法を用いていました。初期のころからこういう技法があったのかと感嘆する思いでした。

 

しかし、ストーリーの軸ともいえる

(1) 滝野が東海道を西下した理由づけ

(2) 滝野が2つの目的のうち1つを放棄した理由づけ

が明瞭でないことが気になります。

(1)については、立石主任・本部長・荒牧の会話から推察は出来ますが、確定的なものではありません。(2)についても、他の1つに優先順位を譲ったからとも解釈できますが、これとて立石班の知らない場面でなされたことで、怒りの矛を収めるものかどうか。これは、ある人物が滝野にどのような話をしたかが描写されていないのも一因でありましょう。この2点をもってして、せっかく島宇志夫ナレーションで盛り上がったストーリー展開に、水を差したとも思えます。

 

さらに、#127  蜘蛛の巣 (以下、前作と略称)で大きく是正された「今村農夫也監督への先入観」だったのに、当作になって「前半飛ばしの、後半バタバタ」に戻ってしまった感は否めません。前作では、ロケ地撮影が「あくまでストーリー優先であり、観光場面とならなかった」のに、当作では、観光優先場面とみられかねないショットが目立つのもマイナス材料です。

こう考えると、かつて天野利彦監督作品について、「ロケ撮影が2作重なったときは、1作を捨てて、もう1作に全力投球した可能性」と指摘したことと関連あるようでもあります。そういえば当作の助監督は・・・、あくまで可能性の問題ですが(笑)

 

あと、ラスト近くの入院場面ですが、これは身も蓋も無いような場面でいいのかという気がしました。あくまでも人間ドラマとしての見方ですが、これでは誰も救われる者がいない、さりとて結束信二脚本作品のような重厚さは無く、思わず腰を上げるような描写でもない。ただただ、悲劇だけに終わっている感があり、何とも納得しにくいものがあります。ラストは、特に、後年の傑作#462 幸せになりたい に似たようなパターンですが、それでも出来はその域に達していないなど、これまた首を傾げるところです。

まとめますと、前半部のスピーディーな展開がもったいない、前半部の局地的な描写は満足度が高いものの、後半部での軸のブレが目立ち、昭和プロレス的表現で表わすならば「全体的には両者リングアウト」か・・・、そう感じる作品でありました。