※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

【#647  三船の野郎が憎い】

 

(本放送)1974年3月27日

(再放送)2017年2月2日

(脚本)横山保朗

(監督)天野利彦

(協力)無し

(協賛)社団法人 中小企業労働福祉協会、サンAランド

(捜査担当)三船班

田中係長(山田禅二)、鑑察医(仲原新二)、鑑識課員(西郷昭二)、

鑑識課員(田川恒夫)、関根部長刑事(伊沢一郎)、水木刑事(水木襄)、

石原刑事(吉田豊明)、松木部長刑事(早川雄三)、畑野刑事(宗方勝巳)、

三船主任(青木義朗)

 

(出演者)

万里昌代、笹原光子、大林隆介、杉山元、園千佳子、岡崎夏子、笠井三規子、

金子勝美、西川敬三郎、菅沼赫、山波浩騎、根本嘉也、川合伸旺

 

 

(あらすじ・予告篇から) 

※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

14年前に自分の妻を殺し、幼い娘を捨てて逃亡した元刑事が、

時効寸前に三船主任の前に姿を現わし、

捨てた娘は自分の子ではなく三船主任のものだといい、

その娘を誘拐してしまった。

そして、三船が憎い、

逮捕できるものならしてみろと挑戦してくるのであった。

果たして、誘拐された娘は、本当に三船主任の子なのか!?

それとも、元刑事の子なのか!?

そして、2人の間には、一体どんないきさつがあるのか!?

次回、特捜隊、「三船の野郎が憎い」に御期待ください。

 

 

(備考)

・「死刑」が最高刑となる犯罪について、1974年当時は公訴時効が「15年」であったが、その後の法改正により、2005年1月1日からは「25年」に延長、2010年4月27日からは「公訴時効無し」となっている。なお、2015年12月3日の最高裁判例で、「当該事案の強盗殺人罪について、公訴時効撤廃は遡って適用できる」として、憲法39条違反ではないとされた。

・山波宏騎は山波宏からの改名か、あるいは血縁類者と思われる。

・エンディングで、「由紀」を演じるのが、笹原光子、渡辺真奈美と二人表記されるが、前者は成人後、後者は幼少期(15年前)のものである。

・劇中では風間の所在を「モーテル・愛愛」と発言も、画面上に映し出されるのが「ホテル・愛愛」のため、下記前段では後者を採る(別途、モーテル・愛愛が出てくる場面もあるものの、これは開始17分のコート男の発言と整合性をとるためと思われる)。

・由紀の苗字が、「風間」「はしづめ」、さらにエンディング表記の「中川」と不一致なところが見受けられるため、以下は名前のみで表記。

・オープニング表記に畑野刑事(宗方勝巳)とあるが、出演場面は見当たらない。

 

 

(視聴録)

 

3月10日のある夜、レジャー施設・サンAランドに呼び出された三船主任、待っていたのは元刑事・風間こうすけ(川合伸旺)で、それを風間の情婦・さくらい理恵(万里昌代)は冷ややかに見つめている。風間は、明11日で時効になる事件について15年弱ぶりに現われ、所在地を「ホテル・愛愛」と明かして、三船主任を挑発する。

 

三船主任は風間と別れ、埼玉県川口市のホテル結婚式場・友愛センターへ出向く。風間の娘・由紀(笹原光子)が、明11日に同僚社員・れいじ(大林隆介)と結婚式を挙げるため、泊っている由紀、母・百合(園千佳子)の兄で由紀の叔父(西川敬三郎)に会うためだった。ところが、叔父が入浴中の30分ほど前、男の声で電話があり、由紀は出かけてしまったという。三船主任は叔父に風間は生きていたと告げると、叔父は百合も一緒にいたのかと期待する。が、三船主任はきっぱりと否定、死体が出なくとも百合は死んでいると断言する。

 

その頃、由紀は、武蔵野線・西浦和駅ホームで、父・風間と母・百合が行方不明後、親代わりの三船主任から貰ったブローチをなでながら、ベンチに座っていた。とそこに、由紀を呼ぶコート男(杉山元)、茶ズボンの寺田(佐々木進)が現われ、父・風間は生きていると告げ、3人で電車に乗る。しかし、風間はホーム下階段でこの光景を眺めており、連れの理恵にこう呟いた、「由紀は俺の娘じゃない、本当の父親は、俺の女房を犯した三船だ!」。

 

その翌朝、都内の住宅建築現場前をパトロール中の警官・田島いちろう(山波宏騎)は、物音に気づき中に入る。すると、人事不省で倒れている女と、声をあげるコート男、茶ズボン男を発見。2人を捕まえようと飛びかかるも、ナイフでコート男に刺されてしまう。それでも、茶ズボン男に手錠をかけ水道蛇口に固定、逃げるコート男を追いかけるも、川原近くで倒れる。

その後、欠勤の三船主任を除く特捜隊が川原に駆けつけるが、松木部長刑事、水木刑事は田島の緊急搬送先の病院に行き、手術完了後の田島に、妻(未詳)、所轄刑事(未詳)同席の元で立ち会う。田島はパトロール中に女が殺されたのを発見、1人に手錠をかけ、1人を追跡したと言い、肝心のパトロール先の現場を言う前にドクターストップがかかる。

 

一方、ホテル・愛愛へ帰った風間、理恵を、部屋で待っていたのは三船主任だった。由紀の行方を聞きに来たのだが、風間は知らぬ存ぜぬで、挑発する態度は変わらない。と、そこへ叔父から三船主任へ呼出電話があり、西浦和駅での目撃情報を知らせに、れいじが式場に駆けつけたという。三船主任は式場に向かうが、帰るのを見届けた風間にも電話が入る。ヴィラ・愛愛に待機中のコート男からで、風間はそこに車で到着してコート男を保護、2人で寺田が手錠で固定されている住宅建築現場へ向かう。

川原の関根部長刑事は、松木部長刑事の報告から警察犬出動を決め、石原刑事、水木刑事が警察犬2匹を手配、ついに住宅建築現場を見つける。が、女の姿は無くブローチが傍らにあるだけで、代わりに田島が格闘した男2人の刺殺死体が発見される・・・。

 

 

上記は開始22分までの出来事をまとめたものです。その後、西国分寺駅で女1人、男2人を乗せたタクシー運転手(未詳)の証言、ブローチを見た石原刑事から三船主任が絡んでいると転換する場面、ホテル・愛愛を見張る埼玉県警の婦人警官・こばやし(笠井三規子)と石原刑事との寸劇場面を挟み、ラスト10分のクライマックスに向けストーリーは展開します。

そして、時効となる事件は何だったのかが、ラスト5分でようやく全容が明らかになり、それが原因で風間は由紀を男2人に誘拐(拉致)させたことにも繋がります。

さらに、クライマックスで三船主任が風間に言い放つ言葉もすごい。関根部長刑事のいう、風間の仕打ちに耐えてきた百合が、15年前にした精一杯のお返し。風間は、そのお返しに15年後に由紀にも「卑怯な仕打ち」を行なったわけですが、三船主任はチカラではなく言葉で風間の心へとどめを刺すお返しをしたわけです。「やったら、やられ返される」単純な構図が、当作では強調されていると感じられます。

 

 

ただ、当作は様々な場面で疑問に思うところが多く、良作であれば勢いでそれらがあっても、包み込んで大団円でラストを迎えるところなのですが、残念ながらそうとはいきませんでした。

肝心の時効なのですが、序盤で風間のいう通り、死体の出ない殺人事件は成立せず、殺人罪に問われなければ時効15年(当時)は発生しません(死体遺棄罪は成立要件が異なるため余地はあるものの、時効は3年なのですでに終了済のはずです)。フィクションとはいえ、何をもって、風間が手配されたのか、説明する箇所でもあればスッキリするのですが・・・。死体の点は「#483 俺は三船刑事だ」でも若干ながら触れていただけに、ということもあります。

 

また、石原刑事がブローチをみて、三船主任が川口市の娘さんへ買ったものという発言から、倒れてた女がその娘さんかと導き出せるものの、この時点で特捜隊に由紀という存在は特定されておらず、由紀が西浦和駅から男2人と電車に乗った情報もありません。それなのに、松木部長刑事が「男たちが武蔵野線を利用したとなると、川口なら浦和のすぐ近くだ」というのが不自然です。この発言で、関根部長刑事が三船主任のところへ向かうきっかけとなったので、ここいらへんは上手くまとめられなかったのかとも感じます。

 

また、キーパーソンの1人でもある入院中の田島のその後、コート男、寺田が刺殺されたこと、何よりも由紀について追及が無いこと、これらがおざなりに見えることが残念なところ。

脚本の横山保朗はどうも見せ場を多くつくろうとしたねらいも見えるわけですが、「あの三船主任が?」というテーマで、予告篇でも煽っているのですから、ここは枝葉部分を最小限にした方が良かったのでは、と個人的には考えます。「#646 嘆きの天使」に続き、せっかくの題材を生かせず、中途半端に終わった感が感が強いですね。

 

「掲示板特捜隊 7」にあるように、青木義朗、川合伸旺の絶妙なキャストというのには同意、台詞のキャッチボールも上手くいっているだけに、その他の枝葉部分がもったいない。天野利彦監督のカメラワークの妙も、それらに埋没してしまったようであり、作品としては佳作に今一歩という評価になると思います。

 

さて、風間を演じた川合伸旺の出演は、特捜隊の【第3回再放送】では、「#565 誘拐」「#583 初笑い トバッチリ三船班」に続き3作目。前2作は客分的な出演のイメージだったのが、当作では三船主任と真っ向戦う役柄を演じ、準主演の扱いです。川合伸旺というと時代劇の悪役を思い出すのですが、現代劇も充分に演じられるオールマイティーな俳優と再認識できます。

残念ながら、2006年6月24日74歳で亡くなられたとのことです、三船主任こと、青木義朗が亡くなられてから6年後のことでした・・・。