※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

【#646  嘆きの天使】 (高倉班最終話)

 

(本放送)1974年3月20日

(再放送)2017年2月2日

(脚本)横山保朗

(監督)山崎大助

(協力)無し

(協賛)無し

(捜査担当)高倉班

松木部長刑事(早川雄三)、片桐刑事(笠達也)、日高刑事(日高吾郎)、

鷲見刑事(柴田昌宏)、笠原刑事(伊達正三郎)、高倉主任(里見浩太朗)

 

(出演者)

原知佐子、木下清、市東昭秀、渡辺ふみ子、町田政則、今井義行、小林操、

須永康夫、三川雄三、榛名潤一、小林テル、筧豊子、恩田美恵子、松下昌司、

森康子、田辺しげお、阿部寿美子、天草四郎

 

 

(あらすじ・予告篇から) 

※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

・・・・・・・(廊下を歩く女教師に聞こえる声)

「先生、助けてくれ! 最終試験はどうなるんだよ!」

・・・・・・・(以下、ナレーション)

自殺未遂の女子高校生と、

スナックのバイト学生の変死体が発見された。

学校きっての秀才2人を最高学府に入れるべく、

異常なまでの執念と情熱を傾ける先生、鵜飼貴子・・・。

事件を追う特捜隊・高倉班の前に、意外な事実が・・・。

進学のための受験勉強に追いまくられ、

抑圧された3年間の高校生活、

信頼すべき教師に薬を飲ませ、暴行に及んだ・・・。

教師と生徒の信頼とは・・?

愛の原点とは・・・?

次回、特捜隊、「嘆きの天使」に御期待ください。

 

 

(備考)

・上記(あらすじ・予告篇から)を作成のため、「うかい貴子」を、検証本引用して「鵜飼貴子」と表記しました。

・エンディング表記に警官=森康子、母親=田辺しげお、と有るのは書き誤りと思われます。

・当作での大学受験は、1次試験、2次試験、最終試験と3回ある設定です。

・監督の山崎大助は、女優・山咲千里の父親で、2007年3月死去されたようです。

 

 

(視聴録)

 

大学の2次試験発表は午前9時なのに、待ちきれず6時から並んでいる人々がいる。その中に、生徒、星川雅夫(木下清)、塚本進(市東昭秀)の合否を気にかける高校教師・鵜飼貴子(原知佐子)がいた。自身の試練と執念の成果を確認したいからでもあったが、そこに、星川、塚本が車で駆けつける。合格も同然と、2人は貴子を車に乗せ、祝杯がてらブランデーを注ぐ。貴子は、発表まで間があるから自宅のマンションで休息しようと提案、2人と向かう。

 

ところが、足がもつれ部屋に着くころには貴子の意識は朦朧としていた。これは、2人が仕組んだことで、ブランデーに睡眠薬を入れていた。2人は、貴子から指導ではなくモルモット代わりのしごきを受けたとの認識で、最終試験も合格する確信があることから、貴子に3年間の代償として体を求め、2人がかりで意識朦朧の貴子に襲いかかるのであった・・。

 

そして、貴子が気づくと時計は午前9時を指し、2人の姿は見当たらず、特捜隊・高倉班の松木部長刑事、日高刑事の訪問を受ける。外回りの午前8時20分前後に鷲見刑事、片桐刑事が、スナック・エリートの前で不審な行動をとる星川、塚本に尋問、店内で生徒・志村和哉(町田政則)の変死体、同じく左手首を切った生徒・かりや悦子(渡辺ふみ子)を発見。急遽、2人を連行したというものだが、黙秘しており貴子に会わせろというだけだという。死亡推定時刻は午前7時30分、その時刻に2人から凌辱された記憶のある貴子は、特捜隊車両に乗せられ所轄の城南署に到着。すでに校長(天草四郎)も待っており、何とか2人を説得して事情を話してもらうよう嘆願され、2人のいる取調室に入る。

 

2人は、貴子から部屋での出来事を話してくれれば、死亡推定時刻のアリバイが成立すると考えていたのだが、内容が内容だけに貴子が到着するまで黙秘していた。しかし、貴子は「なぜ、部屋にいたと作り事を!?」と言い放ち、「庇ってやりたいのですが、今朝私の部屋にいたという事実はありません!」と取調室を出て行く。それを、松木部長刑事、笠原刑事、高倉主任も止めることはできなかった・・・。

 

 

タイトルの「嘆きの天使」とあると、戦前のサイレント映画、マルレーネ・ディートリッヒ主演、ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督の作品を想起しますが、当作とは関連性は無く、大学教授と高校教師のように、教職が主人公となるところは共通しているかもしれません。

上記本文は、開始15分くらいまでの流れで、このあと様々な展開が起こります。悦子の母親(阿部寿美子)から悦子の人物像が語られたり、サッカー部員・よしの(今井義行?小林操?)から事件前夜・深夜12時のスナック前での出来事が語られたり、さらに、志村は縊死であるがザイル(ロープ)や梁に指紋が無かったりと、どんどん流れていきます。

 

 

それでは面白い作品かというとそうとは言い切れず、突発的な事件なのか計画的な事件なのか明確ではなく、それによって動機、犯行に整合性が見られません。特に、真犯人が殺害したかったのは、果たして志村だけだったのかという疑問です。ラスト5分の真犯人の告白を聞いていると、今までの展開がひっくり返ってしまうようで、その犯行もどのようにやったのかが不鮮明です。

また、高倉主任の「これは完全犯罪だ」(ある登場人物からの伝聞)という発言も、だからといって、ラストの飛び道具的な捜査に行くのも、乱暴すぎるような気がします。ここは、せっかく60年安保の話が出たのですから、それに関わる人物の心をときほぐし、事件解決の証言を得る方が、自然なような気がします。ラストでの高倉主任の独り言を聞いていると、その人物の語った言葉からときほぐすやり方を放棄しているようにも見え、らしくないなと感じます。

 

そして、何よりも登場する学生4人、星川、塚本、悦子、志村に感情移入できないところが、当作に魅かれない原因でもあります。まあ星川、塚本、悦子の関係は、1970年公開の「ガラスの部屋」を意識したとも見れそうですが、その割には悦子の行動が理解しがたい。いわゆる「破天荒」に見えるところは、魅かれる人もいるかもしれませんが、個人的にはいただけません。また、開始27分の高倉主任と対峙する場面、開始39分のマンション以降の場面について、悦子の心境がどうして変わったのか、描き切れていません。

 

星川、塚本の行動に至っては呆れるばかり。無軌道な若者を描くことで、視聴者から逆説的、保守的な方向への回帰を表現したかったのかとも考えましたが、その割には受験とは無関係に歩んでいこうとするサッカー部員・よしのの扱いがぞんざいであったりと、どうもバランスが良くありません。さらに、2人の両親が一切出てこないところも共感しづらいところで、これは特捜隊常連脚本の横山保朗にしては、中途半端に終わった感が強いですね。

 

それと、貴子も星川、塚本から2次試験合否発表前、部屋で受けた仕打ちについて述べる場面が、開始36分過ぎにあります。そこでの台詞で

>君たちが、いつから先生を女として見るようになったか、気づかなかった先生

>がいけないわ。それが君たちの心を、あんな歪んだ形での愛情の表現にしてし

>まった

には、失礼ながら吹き出してしまいました。

部屋で2人に言われたことを忘れてしまったのか、と思うくらいの平和な思考で、よく言われるお花畑とは今から44年前にもあったのかとも思います(過去の恋人への評価を聞けば頷けなくもないですが・・・)。

 

さて、当作は高倉班最終話です。当初の帰国したばかりのエリート刑事の面影は無く、畑野刑事と生きざまについての微妙な対立構図も無くなり、刑事ドラマの普通の主人公刑事作品となったのが残念です。

理論の高倉班、実践の三船班と並べての展開は捨てがたかったのですが、これは今だから言えること。当時は、三船班と比較して異端に見えたから、最終話に代表ようなスタイルに落ち着いたとも考えられます。

また、せっかく高倉班メンバーとして定着した、松木部長刑事、笠原刑事、鷲見刑事、片桐刑事、日高刑事もこれで分散となるのも寂しいところ。特に、情熱というか感情の笠原刑事は、「掲示板特捜隊」によれば再登場は日高班までかかるようです。