※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

 

【#565  誘拐】

 

(本放送)1972年8月30日

(再放送)2016年5月5日

(脚本)横山保朗

(監督)田中秀夫

(協力)川治温泉、川治プリンスホテル

(協賛)無し

(捜査担当)三船班

関根部長刑事(伊沢一郎)、石原刑事(吉田豊明)、白石刑事(白石鈴雄)、

浜田刑事(矢吹渡)、畑野刑事(宗方勝巳)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)

森山周一郎、清水京子、矢野間啓二、多田藤憲、里木左甫良、桜田千枝子、

川合伸旺

 

 

(あらすじ・予告篇から) 

※当時のナレーションをそのまま聞き写しています

 

ある郊外の繁華街の路上で、

ひったくりに遭遇した女の難を救った三船主任は、

その女を探し求めた。

しかし、その女の姿は、

白昼の街角から煙のように消えた!

ふりかえた(註・すりかえた?)ペーパーバックの中に

秘められた1千万円の札束、

謎の女、謎の金・・・。

三船の推理は果てしなく広がる、

深追いしすぎた三船に迫る危機!

営利誘拐か? 

脅迫か? 

罠にはまったか? 

三船刑事の命、危うし!!

栃木県川治温泉の景観をバックに、追跡と対決! 

リンチに次ぐリンチ! 

サスペンス! 

スリル!

誘拐された少年(註・備考参照)と、三船刑事の運命は・・・!?

特捜隊・三船班の活躍を描く、

次回、「誘拐」、「誘拐」に、御期待ください!

 

 

(備考)

・「#560 放浪への脱出」から変更されたエンディングの音楽が、以前の音楽に戻っている。

・上記の(あらすじ・予告篇から)の「誘拐された少年」は、劇中では「誘拐された少女」であるため、ナレーションミスと思われます。

・川治プリンスホテルは、1980年11月20日の火災事故ののち、取り壊されました。

 

 

(視聴録)

 

吉祥寺サンロードで買い物をする三船主任、ふとぶつかった着物姿の女性(桜田千枝子)の落とした紙袋を拾って手渡すも、どうにも落ち着きが無い様子。女性はその後何度もサンロードを往復、不審に思う三船主任が見たものは、その女性の紙袋を白い服の男(多田藤憲?)がひったくり逃げていく姿だった。追いかけ、白い服の男は捕まえられなかったが、紙袋を奪い返した三船主任が帰ってくると着物姿の女性は見当たらない。婦人服店店員(未詳)に聞くと知っているようで、井の頭公園近くに住む藤本家の夫人であった。届けに行く途中、黄色の服の男(矢野間啓二)の気配を感じながら、紙袋の中を覗き込むと1千万の現金があった。

 

しかし、藤本家では主人(川合伸旺)は知らぬ存ぜぬで、近所の伊勢屋酒店の店主(里木左甫良)によると、藤本には夫人と幼稚園児・ルリ子(森田結加)がいるということだった。頭によぎるものを感じた三船主任はサンロードを見回り、コインロッカーに紙袋を保管、電話ボックスから藤本家に誘拐犯を偽り電話。そして、誘拐事件だと確信する。

 

三船主任は、酒屋の店主に目立つようコインロッカーの鍵を渡し、追跡者の黄色の服の男が網にかかるのを待つ。そして、黄色の服の男が鍵を奪い、紙袋の中を探しているところを急襲、策は成功したかに思えたが白い服の男が現われ後頭部を殴りつけられてしまった。

 

気絶した三船主任が気づくと、白い服の男、黄色の服の男の他に、赤い服を着た大島たつや(森山周一郎)、派手な服を着た寺山アキ子(清水京子)、そして誘拐されたルリ子がいた。

ここは、人けの少ない栃木県の川治温泉の山の中、さらに相手はナイフ、ライフルを所持しており、三船主任に絶体絶命のピンチが訪れようとしていた・・・。

 

 

当作がリメイクかどうかは不明ですが、後日、特捜最前線で「#209  三千万を拾った刑事!」(横山保朗脚本、天野利彦監督、1981年5月6日放送)として、状況設定は違いますが同じプロットで、逆にリメイクされています。

よく、特捜隊は事件を描き、最前線は人間を描くと言われていますが、当作とリメ作に限って言えば、当作はスーパーマン三船主任を描き、リメ作は犯人と特命捜査課の叡智を絞ったかけひきを描いたものです。両作とも良作といってよく、個人的には、お気に入りの田中秀夫監督と天野利彦監督が、10年近くの時空を超えた演出腕比べにも思えました。

 

最初の場面では「特捜隊の休日」の雰囲気を漂わせ、ある日常的な動きから犯罪の臭いを嗅ぎつけ、そして遠く東京を離れた栃木の山中で危機また危機、そして予告篇にある「特捜隊・三船班の活躍」ではなく「三船主任の活躍」によりストーリーは展開、謎解きよりもアクションに重点を置いた面白い作品です。傑作「#562 真夏の逃亡者」が、東京そして新潟県内300㎞を動き回っているのに比べ、地味ながらも当作は川治温泉山中を舞台に、犯人側4人、ルリ子、三船主任の人間同士の動きを追い続けるのが特徴。

以前、三船主任を描くのが上手いのが田中秀夫監督と評しましたが、当作はまさにドンピシャリで、ラストでルリ子を見つめる「いい顔」がそれを表しています。

 

さらに、三船主任の犯人側へのふるまいが、いつもより人を喰ったというか上から見下ろして、犯人側の平常心を失わせる策士的態度は、日本未公開作品ですがジュリアーノ・ジェンマ主演の「夕陽の用心棒」(1965)を思い出します。この作品は「マカロニウエスタン傑作映画DVDコレクション」の付録シートによると、NETで1971年11月26日に放送されているので、脚本の横山保朗が参考にした可能性は大いにあるでしょう。

 

そして、「#562 真夏の逃亡者」で触れた、三船主任から石原刑事への謎かけが身代金1千万の行方でした。1年前の再放送時にはさっぱりわからず、三船主任のいう「1千万もの大金を、俺が人目につくところに隠すと思っているのか?」というのもわかったようなわからないような、という印象でした。しかし、再見すると、人目につかせないないなら追跡者に隠しているところを見られないところ、また1千万の性質がわかるようなところでないといけない、さらに藤本家がお金のことで慌てていない、というところからようやく「あそこでは?」と考えが及びました。確かに、尾行中にメモを渡すなど用意周到な三船主任ですから、そう簡単に犯人に悟られないよう工夫するのは当然かもしれません。

 

あと、アキ子を演じた清水京子は、検索してもなかなかヒットしません。目の大きさと口元に特徴のある女優さんですから、舞台に出ていれば現在でも活躍していたような気もします。テレビドラマデータベースだと、特捜隊専門女優さんのようにも見受けられますので、美弥たか子のようでもあります。当作で、ルリ子を探している姿を見て、ふと「#539 ある恐怖」での婦人警官役を思い出しましたが、テレビドラマデータベースだと当作が清水京子の特捜隊最終出演作のようです。

 

(2017年12月31日 全面追加)