鉄道探偵の、都営現代篇、京王過去篇のあとの、特捜隊視聴録の本篇となります。

一応、京王過去篇から3時間置いての更新設定をしております。

これが本来のブログ本篇なのですが、鉄道探偵に興味のある方にも、箸休めになってくれれば幸いです<(_ _)>

 

 

※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#757  霊柩車を撃て!

 

 

 

(本放送)・・・1976年5月19日

(再放送)・・・2020年3月19日

(脚本)・・・横山保朗

(監督)・・・鈴木敏郎

協力)・・・無し

(協賛)・・・無し

(捜査担当・オープニング表記)・・・日高班

田中係長(山田禅二)、鑑識員(田川勝雄)、鑑識員(西郷昭二)、

関根部長刑事(伊沢一郎)、木塚刑事(藤山律子)、片桐刑事(笠達也)、

田代刑事(日高晤郎)、笠原刑事(伊達正三郎)、日高主任(葉山良二)

 

(出演者)・・・

多々良純、津野哲郎、秋元羊介、神田正夫、野路きくみ、稲川善一、田村元治、

佐藤まもる、石川敏、井上三千男、藤竹修、山田貴光、大堀早苗、長島隆一、

北城寿太郎、外野村晋、島宇志夫

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

特捜隊・日高班、新着任の日高主任警部補は、白昼、霊柩車に6発の拳銃弾を発砲!

現職警官にあるまじき異常事態を引き起こした。

なぜ、彼がそのような行動を起こしたのか!?

3日前の深夜、日高主任着任当日、西多摩署管内においてパトロール中の警官2名が、

何者かに射殺されるという事件が発生。

日高班、初動出動の事件として、しかも被害者が現職警官とあって、

日高主任の捜査に対する熱の入れようは、一方(ヒトカタ)ならぬものがあった!

日高主任警部補に、好漢・葉山良二を迎え、

颯爽(サッソウ)とスタートする特捜隊・日高班!

いかなる活躍を魅せるか!?

次回、特捜隊、「霊柩車を撃て!」、御期待ください。

 

 

(備考)・・・

・当作が以前の特捜隊作品の焼き直しであるかは不明だが、当作自体は約6年後、後継番組の特捜最前線・#216 レスポンスタイム 3分58秒! でリメイクされている(監督は、鈴木敏郎→村山新治と変更)。

・日高主任を演じる葉山良二は、非情のライセンスで警視庁特捜部・四方刑事も演じており、第2シリーズ #058  兇悪の雨に濡れて(本放送・1975年11月20日)で降板以来の刑事役レギュラー。なお、非情のライセンスでは、吉田刑事を演じた多々良純とも共演していた。

・日高班第1作目作品だが、検証本428頁の「伊達正三郎扮する笠原刑事が久々に『特捜隊』に登場」というのは誤りか? 笠原は、高倉班所属で矢崎班に協力という形で#735 あるニッポンの悲劇 に出演していた。そこから約半年経っての当作登場というよりも、#646 嘆きの天使 (高倉班最終話) 以来、約1年半以上経ってから#735 あるニッポンの悲劇 への登場の方が、「久々」という表現にふさわしいため、羊崎文移には#735 あるニッポンの悲劇 への認識が薄かったと判断できる。

・木塚刑事を演じる藤山律子は、#699 春の色 泥棒伝 以来の出演。同配役名なので、特捜隊へ人事異動されたと考えられるが、劇中では全く触れられていない。なお、上記作品では、泥棒紳士を演じた葉山良二と共演していた。

・片桐刑事を演じる笠達也は、#646 嘆きの天使 (高倉班最終話) 以来の同配役名出演である。

・田代刑事を演じる日高晤郎も、#646 嘆きの天使 (高倉班最終話) 以来の出演だが、配役名が日高刑事から変更された別人キャラであり、日高刑事のときの芸名も「日高吾郎」であった。

・関根部長刑事を演じる伊沢一郎も、トレードマークのメガネ、パイプが無い別キャラの雰囲気を漂わせている。

エンディング表記に、杉村「巡査部長」とあるが、劇中では表記・発声とも杉村「巡査長」なので、それにしたがう。

・劇中での時刻表現は混在しているが、午前・午後表記で以下本文を統一する。

・かつてwikiには、日高班の項目に、

>立石班のオマージュ的な存在、最後の一年のみの出演。

とあったが(現在は削除されている)、エンディング表記の「ナレーター=島宇志夫」復活も、そのひとつである(後述)。

(追加)R2.4.23

当作以降の作品で、上記の出演者に「島宇志夫」とエンディング表記されるのは、すべてナレーターとしてのものである。

 

 

(視聴録)・・・開始約11分後半まで

それは、5月11日午後2時20分の出来事だった。警察生活を40年勤め退職したばかりの速水(多々良純)に降りかかった不幸であった。2浪中の長男・貴広(佐藤まもる)急逝の葬儀で、遥々やって来た長女(大堀早苗)、その夫の医師・本間(津野哲郎)だけでなく、速水が所属した西多摩署・署長(長島隆一)、副署長(?北城寿太郎)一同も参列した大規模なものだったが、なぜか日高班の関根・片桐の姿もあった。棺を乗せた霊柩車は火葬場へと出発、お供車もそれに続くが、突如、特捜隊車両が正面から霊柩車を強引に停車。特捜隊車両から出てきた日高主任は、霊柩車の観音開きリアドアを開け、棺に拳銃を向け6発乱射したのだった。怒りに燃えた速水は日高主任に掴みかかるが、西多摩署・日高班関係者が2人を分け、日高主任は緊急逮捕で西多摩署に連行、遺体は司法解剖へと回すことになった。。。

それは3日前の深夜、日高主任が特捜隊着任当日に遡る。西多摩署管内でパトロール中の、杉村巡査長(秋元羊介)、西川巡査(石川敏)が射殺される事件が発生、日高班は現場の造成地で初動捜査を行なう。杉村は、パトカーの助手席ドアから中に入り、無線マイクを握っており、背中に2発の銃痕が有った。西川は、建築中住宅の側で心臓部を2発撃たれていた。そして、杉村の拳銃からは4発発砲され、西川の拳銃からも1発発砲されていた。また関根は、絶命した西川の前方に血痕・足跡が認められたことで、西川の拳銃からの1発は犯人に被弾した可能性を指摘。さらに木塚が、下着姿で婦女暴行され倒れた女性を発見、意識はかすかに残っていたので救急病院へと搬送、回復後に片桐・木塚で聞きとりをすることになった。

女性は、商事会社勤務のOL・きくち今日子(白川みどり)と判明、帰宅途中の午後11時20分前後に、つけてきた20歳前後の男2人に造成地に連れ込まれ気を失ったという。さらに片桐の拳銃音の有無の問いに、耳元ですごい音が鳴ったので意識が戻りかけたが、誰かに首を絞められたようで再び気を失ったと証言。首筋にも、紐か何かで締められたような跡も残っていた。

翌朝、日高班は再度現場で鑑識を含めての捜査。片桐はこれまでのいきさつから、杉村は婦女暴行犯2人を逮捕の際、争って拳銃を奪われ射殺され、次いで西川も射殺されたと推察。鑑識は、杉村の拳銃からの4発はすべて両巡査に被弾、拳銃から指紋が拭い取られた跡を指摘、さらには関根の指摘した血痕は両巡査の血液型と不一致のため、犯人1人に被弾したものと断定。そこで日高主任は、犯人が脅迫して周辺医院で治療したことを考え、西多摩署刑事(田村元治・井上三千男)と合流しての聞きこみを指示をするのだが・・・。

 

 

ストーリーはその後、進捗の無い状況に、日高主任は両巡査の足どり捜査に着手、関根を連れ再々現場に戻り、逆行してみることにします。そして現場に着くと、無線で西多摩署の通信指令室次長・高木(外野村晋)に、両巡査の死亡推定時刻は午後11時50分前後と伝え、両巡査の最終通信時刻を問い合わせます。すると通信指令室の昨夜の担当巡査・市原(藤井敏夫)が代わり、午後11時5分に、なかひろ町やなぎ通りのスナック・ノンノンで発生した客2人の喧嘩騒ぎに両巡査が向かい収束、その報告が午後11時20分にあったというものでした。

そこで、ノンノンでマダム(野沢有紀)に聞きこむと、いつもは仲の良い客2人(山田貴光・松田章)がいきなり喧嘩を始め、両巡査が到着して仲裁してもらったということでした。そして、その報告を杉村が市原に行なったのですが、杉村の妻(野路きくみ?)は出産前で桜台病院に入院中、出生連絡が病院から署に入るため、市原から無線連絡することになっていました。

これらから、また現場に戻ることにした日高主任に、関根は出生が午後11時30分であり、そのことを杉村に知らせたかったと悔やみながら話します。これに日高主任は、午後11時50分に市原から出生を無線連絡したものの、事件に巻き込まれ杉村から応答が無かったのではと推察します。つまり、前述の片桐の推察に加え、両巡査はまだ息があり、西川は逃げた犯人2人のうち1人に1発発砲してから絶命。杉村はパトカーの無線連絡音を聞き、息絶え絶えに辿り着くも報告もままならず、市原からの出生報告を聞きながら無言で絶命したのではないかと、日高主任は悲愴感に溢れます。

そして現場に戻ると、鑑識から、男2人のほかに新たに血痕を踏みつけた短靴の足跡が発見されたとの報告を受け、さらに片桐・木塚が駅前のタクシー運転手(神田正夫)を連れてきます。事件当夜の午前0時近く、現場付近の電話BOX脇で、2人の男が1人の男を車の後部座席へ乗せ同乗、その車をさらに別の1人の男が運転していったことを、タクシーですれ違いに目撃したというものでした。これに日高主任は、犯人は4人と確信を持ちますが、ここまで開始約18分前半です。後半は、どのように日高主任は捜査に挑んでいくのか、画面に見入りながらストーリーは展開します。

 

 

これは、面白い!

特捜最前線・#216 レスポンスタイム 3分58秒! がリメイク作(以下、リメ作と略)とわからずの当作視聴だったのですが、日高主任初登場だけでなく、ナレーター=島宇志夫の復活、ここのところ欠けていた「迅速(スピード)、科学(サイエンス)、秘密(シークレット)の3S」が戻ったような構成、まさに立石主任(波島進)率いる立石班、藤島主任(中山昭二)率いる藤島班の頃を思い出す(自分としては【第3回再放送】の初期)作品です。かつてwiki にあった「立石班のオマージュ的な存在」の表現も、納得できます。

序盤の日高主任の乱射場面からでは、どこがオマージュだと思われますが、これは非情のライセンスの四方刑事の記憶冷めやらぬ時期の作品で、さらには吉田刑事を演じた多々良純と絡ませることでのインパクト狙いなのでしょう。その後の展開は、立石主任をスリムにしたような日高主任の振る舞いで、ストーリーも懐かしさを感じさせる内容です。

 

リメ作について、かつて視聴録を掲げたため比較していただいても結構ですが、自分は当作の方が面白く感じました。本当なら、自分もリメ作を再見して比較した方が良いのですが、ある事情のため、リメ作を当ブログ記事を作成中は観れません。なので記憶に頼るところになりますが、リメ作は現実離れしている場面が見受けられますが、当作はある程度納得できる場面になっていることです。

一例を挙げれば、犯人がなぜ現場に出くわしたかという原因ですが、リメ作だといくら「いいかげん警官」の設定でも、その原因を作り出すことに不自然さがあります。ところが当作であれば、警官であろうとやはり人間、「情」があれば原因を作り出しても不思議ではないという理解になります。これは、日高主任が事件に深入りするのは、実は西多摩署刑事からの特捜隊主任抜擢という後半の展開にも関連することで、興味を惹かれます。

 

それに、なんといっても乱射場面でインパクトを与え、三船主任の「剛」の部分を醸し出しつつ、徐々に立石主任の「柔」の部分へとひきつける日高主任こと、葉山良二の魅力にも繋がる効果を出しているのは斬新。これは、リメ作の紅林刑事(横光克彦)には出せなかった魅力であり、これが画面に見入る理由のひとつでもあります。

さらに、西多摩署内で、黒板に図を用いて事件経過、これからの方針、自分の推理などを説明する日高主任は、かつての立石主任そのものであります。スピーディー一辺倒ではストーリーは展開しにくい、これを立石主任のキャラを上手く活用して、当作を脚色したのではないかとも考えられます。

ただ、時刻表記について、24時間単位と午前午後単位とが混在しており、当作自体がリメイク作という可能性もあるため断言はできません(となれば、特捜最前線・#216 レスポンスタイム 3分58秒! が再リメ作という位置づけにもなります・・・)。

 

笠原・田代の両刑事の場面は少ないのですが、片桐・木塚・関根が全面に出る場面、特に関根のシリアスな風貌や台詞廻しは、今までの「三船班専属」のイメージから一新。秀作#515 私は許せない (奇しくも、当作の大堀早苗と共演)の頃を思い起こす存在感をみせてくれます。さらに終盤登場の田中係長の、いつもの昼行燈キャラはどこへやら、厳格な雰囲気を漂わせて登場するなど、よそ行きというより「いつもと違う緊張感」の日高班の印象です。

また、ナレーター=島宇志夫の復活も、立石班・藤島班時代、あるいは三船班初期の、今までの捜査の積み重ねに、継ぎ足すように出てくるタイミングの良いナレーションは健在。名物の島宇志夫ナレーションは、三船班中盤期からみられた飛び道具のような証拠発見ナレーション構成が続いたためか、徐々にフェイドアウトしていったのですが、個人的には、このナレーションこそが特捜隊とも捕えているので、懐かしい思いがしました。

 

ある事件の裏にそのまた裏がある、それを暴き出すのが序盤の日高主任乱射場面であり、「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」を実践したもので、これは犯人の「捨てた身」とは大きく異なり、正義への追求という点で尊いものがあります。これを序盤・終盤に挙げ、中盤で事件経過、そして事件解決ということになるわけですが、日高主任の死者への冒涜ともいえる行為への鉄槌は如何に・・・というのもポイントのひとつ。これには、殺害現場での杉村の死体確認の際、日高主任のとったある行動の場面と、冒涜ともいえる行為の直前場面との対比で「なるほど」と考えさせるなと、構成も上手く仕上がっています。

後年のリメ作で、自分が

>特捜隊でのスピーディーさを追及するあまり、人間を描くのを怠ってしまった

と評しましたが、少なくとも当作ではこのような欠陥は見当たりません。当作は秀作に近い出来であり、これを特捜最前線では、1981年当時やたら報道された警察の不祥事を反映させる指示なのか(まあ、テレビ朝日の社是なら納得もするのですが)、無理な設定にしたため、作品としては面白さを欠いてしまったのかとも考えます。

 

初登場の日高主任は個人的にはお気に入りの部類で、今までの特捜隊出演歴のある葉山良二の役柄の中でも好印象を持てます。しかし、時代の流れなのか、特捜隊はこれからリアルタイムで1年近くしてから、NETとともに終焉を迎えます・・・。