※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

☆・・・#735  あるニッポンの悲劇

 

 

 

(本放送)・・・1975年12月10日

(再放送)・・・2020年1月2日

(脚本)・・・佐々木武観

(監督)・・・中村経美

協力)・・・無し

(協賛)・・・無し

(捜査担当・オープニング表記)・・・矢崎班

田中係長(山田禅二)、鑑識員(田川勝雄)、鑑識員(西郷昭二)、

谷山部長刑事(和崎俊哉)、岩本刑事(萩原信二)、桂刑事(佐竹一男)、

笠原刑事(伊達正三郎)、田坂刑事(倉石功)、矢崎主任(亀石征一郎)

 

(出演者)・・・

八代順子、戸沢祐介、津野哲郎、山科志子、ひろ新子、小田まり、会津あんく、

杉山元、六本木真、柴田秀勝、水木梨恵、森山周一郎、見明凡太朗、星十郎

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

・・・(女性たちが、シュプレヒコールをしている場面)

女性たち 「直ちに奥さんに謝罪し、誠意を示せ!、誠意を示せ!、誠意を示せ!」

・・・・・・・・・・(ナレーションに移る)

夫と、その愛人から踏みつけにされ、離別を迫られた人妻。

だが彼女には、夫への断ちがたい未練があった・・・。

そこへ大勢の助っ人が現われたが、

この闘いはいたずらに傷口を広げ、人妻を破滅へと走らせた!

・・・(取調室で、矢崎主任・谷山・笠原から訊問される、ある人物の場面)

(中略)

・・・(以下、ナレーション)

男のエゴを糾弾して、さらにエスカレートしていく女たち!

そして、第2の悲劇が!

次回、特捜隊、「あるニッポンの悲劇」、御期待ください。

 

※予告篇の取調室場面を、(中略)する。

 

 

(備考)・・・

・笠原刑事を演じる伊達正三郎は、#646 嘆きの天使 (高倉班最終話) 以来、リアルタイムでは1年半以上経っての、特捜隊同役出演となる。また、「高倉班で別件捜査中」との発言場面があることから、高倉班はまだ存続、矢崎班へ協力する設定となっている。

・なお、記者(註・準レギュラーであった毎朝新聞総武日報記者役かは判断困難)を演じる柴田秀勝も、#496 闇の中 以来、リアルタイムでは4年半以上経ってからの特捜隊出演となる。

・【第3回再放送】で、似た題名の#529 日本の悲劇 (脚本・元持栄美、監督・田中秀夫)という作品があったが、当作とは関連が無い。

 

 

(視聴録)・・・開始約9分半ばまで

 

ひがしおか産業前では、女性権利を訴える市民団体・女権連が集まり、リーダー・河本雅江(八代順子)、中堅幹部2人(小田まり?・会津あんく?)ほか数人が、周囲を取り囲んでいた。開発課係長・平松祥司(戸沢祐介)が、妻・昭子(アキコ、山科志子)に行なった仕打ちへのものだったが、駆けつけた昭子はここまでお願いした覚えは無いと取り止めるよう申し出る。が、弱い立場にある女性全体の問題もあり、雅江は首を縦に振ることは無かった。

 

その平松は部下・安部(津野哲郎)に、面会申込があっても断るよう逃げの態勢。女権連は、受付嬢(松本松江)から出張中だと聞き腰砕けになるが、雅江は、ならば平松の上司でもある専務・瀬戸山(見明凡太朗)への面会を申し出る。しかし、瀬戸山は急な来訪ということもあり、日を改めるよう面会を拒絶する。そこで、女権連は会社前でシュプレヒコールを行なうこととするが、それに困惑する昭子を、見つめている派手服女(ひろ新子)の姿があった。。。

 

翌朝6時、矢崎班はいしがみ公園に出動する。2時間前の午前4時に、女の声で「助けてくれ」「人殺し」と公衆電話BOXから110番通報があったからだが、たまたま別件捜査中の笠原の協力もあり、派手服女の死体を発見する。後頭部に裂傷、首を絞めた跡が有り、詳細は解剖してからとなるが、遺留品のハンドバッグの中のアドレス帳にメモが挟んであった。そこには「すみれ荘」「平松昭子」の文字とともに、通報で口走っていた「さたけ町、すみれ荘」と一致した住所も書かれていたので、矢崎主任は谷山・田坂をすみれ荘に向かわせる。さらに、少し離れたところで岩本が派手服女のボタンを発見、足跡が乱れていることもあり、ここで襲われたものと推察された。

 

すみれ荘では、管理人・吉川幸三(星十郎)が、昭子の部屋を叩いているところに、谷山・田坂が訪れる。ガス臭さに気づき、吉川に頼み合鍵で入ることになるが、意識不明の昭子を発見、救急搬送の事態となる。搬送後、矢崎主任もすみれ荘に到着、昭子の部屋に向かう。谷山は、室内から昭子の遺言を発見したことを報告。矢崎主任は、ハンドバッグから派手服女の名刺を発見、バーのホステス・にったはつ代であることが判明、桂・岩本をバーに向かわせたあと、情報を交換する。と、そのとき、吉川が「あいつが、あいつが、平松さんを殺したんだ」と口走る。あいつとは、昭子の亭主を指し、「亭主が、平松さんを死ぬよう仕向けたんだ」と声を振り絞りながら、叫ぶのであった・・・。

 

※実見した人ならわかりますが、ストーリーの整理もあり、上記では、序盤はつ代が昭子を見つめたあと、はつ代の勤務先のバーの場面を省略しています。昭子が店ではつ代と面会となり、「主人を返してください」と封筒を渡そうとしますが、はつ代は水割りをかけて拒否。「男の仕事場を荒らすとは何!?」「あんた、それでもあの人の奥さん?」「だから、あの人に逃げられたんだわ、誰が返すものか!」と叫び、昭子に襲いかかるのを、マダム・ともべ佐和子(水木梨恵)に止められます。つまり、平松の仕打ちとは、はつ代との関係であることがここでわかり、直後に部屋でガスが開栓、ベッドで昭子が寝ながら「あなた」と呟く場面がありました。

なお、その後の解剖所見で、はつ代の死亡推定時刻は午前4時前後、直接の死因は扼殺(註・劇中では絞殺と表現)で首に相当の爪が食いこんだ跡が有りましたが、後頭部の裂傷については倒れた時に受けたものと推定されました。またハンドバッグからは、はつ代以外の指紋が検出されたものの、前科リストには無く誰のものかは不明という結果も出ました。

 

 

ストーリーはその後、会社前でシュプレヒコールを行なう女権連を取材する記者(柴田秀勝)、カメラマン(杉山元)を映しながら、専務室で瀬戸山と平松が話し合う場面となり、平松の辞意を瀬戸山が遮り、平松の私生活はともかく、有能にして代えがたい部下であると評価。むしろ、女権連の抗議に屈し、平松を辞めさせた方が会社の体面にかかわると語ります。

 

そして、シュプレヒコールを見つめる2人の男、設計会社社員・河本(六本木真)と上司(森山周一郎)が車から降り、上司は女権連リーダーが河本の妻・雅江であることに気づき指摘します。しかし河本はうつむき黙ったまま、上司は現在ひがしおか産業と契約交渉中ということもあり、今日は引き上げるよう河本を促します。

 

また、雅江のもとに中堅幹部の1人が駆け寄り、昭子の緊急入院を伝え、このまま活動を続けるか話すところに、矢崎主任・田坂が会社前に到着。雅江・中堅幹部2人は、ひがしおか産業が女権連の活動を止めるため呼んだものだと抗議しますが、矢崎主任は、殺人事件の捜査に来たと一喝。そして、矢崎主任がどのような態度で平松に向き合うのか? 平松を擁護する瀬戸山の対応は? というところに興味を持たせながら、後半へとストーリーは展開します。

 

 

当作は意外な拾い物。脚本・佐々木武観、監督・中村経美とオープニング表記であったとき、正直、「あーあ」という先入観を持ったのですが、特捜隊の宿命ともいえる「時間不足」という点が有りながらも、ラストまで観ることが出来る小品です。

ある殺人事件を通して

・夫に浮気され、悩む人妻の女→昭子

・理解ある夫のもと、市民団体活動をする人妻の女→雅江

・男運が無くホステスを続ける中、所帯持ちの男を愛した女→はつ代

・バーという水商売の店を運営することに汗を流す、マダムの女→佐和子

の女性像を描き、背後に何が関わっているのかをコンパクトにまとめています。

 

ただ、コンパクトというのも考えもので、前述した「時間不足」の壁が、これらを深く掘り下げることを阻害していることは避けられず、意味深な瀬戸山の発言

>本当に、平松君が、本心(?註・背信か?聞きとれず)で捨てたかどうか、

>男の本心が見抜けなくて墓穴を掘った女もいますからね。

>男女平等の権利ってやつは、本当に女を幸せにするものですかね?

>権利を主張するほど、女は不幸に見えるんだが・・・。

が、上手く昇華しきれなかったのは惜しい。上記の4女性の背後の掘り下げ、昭子は上手く出来たとしても、残り3女性については浅すぎるのが気になります。

 

テーマ自体は上手く脚色・構成されており、演出も中村経美監督にしては中々スムーズ。女性全体のための市民団体活動とはいっても、相談を無視しての街宣、出来事を上手く勢力誇示に利用することにも少し触れ、その実態を風刺するのもサビが効いています。助監督をみると青木弘司とあり、後年監督に昇進、深見弘の別名でアニメにも活躍されているようですので、三村道治(三ツ村鐵治)と並びスタッフに恵まれたようにも思えます。

 

これは刑事ドラマとしての視点からでも同様で、どんどん網を狭めるように事件を追及、そしてそこには「伏線」も交えたり、「まさか、この人物が関連していたのか?」とフェイントなのか違うのか、という思わせぶりな展開も面白い。当作が小品でありながらも成功した要因は、これら以外にも見受けられる「伏線」の使い方が巧みなのも一因でありましょう。

そして、ラストでは特捜隊車両の通り過ぎる中、ある人物の本音を映像と回想で表現、その余韻をうら哀しいエンディングテーマに繋げるのも、ベタかもしれませんが印象的でありました。

 

さて、当作では特捜隊常連女優のひとりでもある水木梨恵が出演しています。店のカウンターにいる姿、あるいは和服のイメージが大きいのか、あるいは顔立ちもあるのか、水商売風の女が絵になる女優さんです。さらに脇役だろうと高を括っていたら、【第3回再放送】での和歌山ロケ2作品、#472 南紀州を張込め 、#475 限りなき逃亡 での落差ある役柄も印象的です。以前触れましたが、特捜隊最終回作品特別機動捜査隊(最終回(第801回))浮気の報酬 は同窓会的な作品で、数々の常連男優・女優が出演したようですが、エンディング表記に水木梨恵の名はありませんでした(詳細は特別機動捜査隊・#801最終回 のゲスト出演者 )。

今年中で【第4回再放送】は終了すると思われるので、水木梨恵の最後の特捜隊作品がどれになるのか、興味ある方は、それを考えての視聴もアリだと思います。