※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

 

【#562  真夏の逃亡者】

 

(本放送)1972年8月9日

(再放送)2016年4月21日

(脚本)横山保朗

(監督)田中秀夫

(協力)新潟県長岡市、新潟県中郷村、新潟県山北町

(協賛)無し

(捜査担当)三船班

関根部長刑事(伊沢一郎)、石原刑事(吉田豊明)、白石刑事(白石鈴雄)、

水木刑事(水木襄)、畑野刑事(宗方勝巳)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)

高野ひろみ、清水京子、木村豊幸、石川アンリー、児玉裕一、土屋靖雄、

三島一夫、藤山竜一、南川直、田代美奈子、中井啓輔、村田知栄子、寺島達夫

 

 

(あらすじ・予告篇から) 

※当時のナレーションをそのまま聞き写しています

 

ある夜、突然に目撃した殺人の現場(ゲンジョウ)、

彼女はあまりの恐怖に立ち尽くした。

迫りくる殺人者の手は、彼女の口をふさいだ・・・。

ドラマは、ここから始まる!

見知らぬ同士の女と男、裏街から裏街を逃れ、

かろうじて東京脱出に成功したが、

特捜隊・三船班の追跡は厳しく、逃亡につぐ逃亡・・・。

泣く女・・・、苦しむ男・・・。

北国、新潟県の全域を、縦断300㎞のロケーションを敢行!!

スピードある物語は・・・、

憎しみあう二人は、いつしか愛の泉に浸る。

傷つきあった女と男の、儚(ハカナ)き花火の恋。

次回、特別機動捜査隊、「逃亡者」に御期待ください。

 

 

(備考)

・予告篇での告知題名「逃亡者」は誤り、「真夏の逃亡者」が正しい。

・立石班で橘部長刑事を演じた南川直が、所轄刑事役でゲスト出演しているが、なぜか声は別の俳優(声優)による吹き替えのようす。

・「#557  芸者雪子の場合」と「#562  真夏の逃亡者」とは、共通した出演者が多いところもあり新潟ロケのまとめ撮りと思われる。

 

 

(視聴録)

 

仁科玲子(高野ひろみ)は子・稔(児玉裕一)と東京を離れ、新潟県長岡駅近くのキャバレー富士に、友人・典子(清水京子)と勤務している。しかし義母・のぶ子(村田知栄子)がやって来て、稔を東京に連れ戻してしまう。上機嫌ののぶ子は、かえで荘2階の自室で、隣室のモグリの競輪予想屋・服部功雄(土屋靖雄)、その情婦・いしざき利枝子(石川アンリー)、1階の牛乳販売員・安岡(木村豊幸)と麻雀三昧。夜中でも稔に酒を買いに行かせる始末で、酒屋の主人(藤山竜一)も複雑な表情だった。

 

そんなとき玲子がのぶ子宅に到着、服部、利枝子は明日からの弥彦競輪に備え今晩最終で新潟に向かうこともあり席を立ち、安岡も席を立った。2人きりになったが、玲子も稔を追いかけようと席を立とうとすると、のぶ子に阻まれ小競り合いになり、のぶ子は麻雀卓の角に頭をぶつけてしまう。玲子は慌てて部屋から逃げるが、その直後、隣室から服部、利枝子が出てきて、玲子に気づくことなく駅に向かって行った。

 

稔は帰る途中、酒の瓶を割ってしまい佇んでいたが、そこに服部、利枝子が通りかかり母親が帰ってきたことを告げると、稔はかえで荘に向かった。稔と入れ違いの玲子の耳に、いきなり悲鳴が聞こえた。振り返ると、逃げる利枝子、服部を刺している中年男が目に入り、玲子も追いかけられる羽目になり、その中年男の車に連れ込まれてしまう。

 

しかし、逃げ通した利枝子はこの状況を110番通報。中年男は都築まさお(寺島達夫)、翌朝から所轄刑事(南川直)、三船班が捜査に加わるが、これは、これから始まる大逃走劇の序盤にすぎなかった・・・。

 

 

まず、当作は、予告篇にもあるように「北国、新潟県の全域を、縦断300㎞のロケーションを敢行!!」が、「看板に偽りなし」にふさわしく、北は村上市、南は上越市に至るロケーション作品です。それも、今までのように、ロケ分散によるストーリー破綻を避けるため、ストーリー自体を簡略化。しかし、1つの動きが次の動きを呼ぶ、#451以降では今のところ、一番のスピーディー作品と思われます。時代劇風に言うなら、雲は龍を呼び、龍は雲を呼ぶという、剣雲・坤龍両刀の争奪戦を描いた「新版大岡政談」(いわゆる丹下左膳)を彷彿とさせるようです。

特に、車と車、人と人のすれ違いでストーリーの流れが変わり、効果的な省略法で話を大きく広げ膨らますところなど、45年前の作品とは思えないほどです。

 

傑作だと確信した初見から1年以上、自分の鑑定眼が誤っていたかもと再見するのが怖かったのですが、やはり面白い作品です。当作は検索してもヒットしませんし、「掲示板特捜隊 6」でも、称賛する書きこみはごくわずかというところもありました。

確かに、行き先を新潟市から上越市に変更したのがなぜわかったのかという疑問もありますが、後半で、ある人物同士の関係がわかればなるほどと思うところ。また、東京を脱出する部分や乗り捨ての部分が描ききれていないという点も、これから起こる大逃走劇からすれば小さな波にすぎないので、関根部長刑事からの報告で軽く流したと思えば納得はできます。ただ、三船主任の「囮」と「人質」に言い間違いは笑えましたが、これとて「囮」「人質」を前面に出していないので、正直、再見時になって気づくレベルでした。

 

さらに、蛇足画面と思われるボウリング場レストランで、支配人(中井啓輔)と関根部長刑事、石原刑事と語る場面も、ある人物たちを暗示しているようなアングルであり、ホテルでのおもちゃの機関車の場面も、ラストで一役買っているようで、個人的には無駄な場面が少なく内容の濃い作品と感じました。出演者の中での功労者は見当たらず、作品全体が出演者を喰ってしまった稀有な作品でもありますが、なぜか、自分が良いと思った作品の多くが、高野ひろみ出演作というのが、気になるところではあります。

 

#553 悪魔の囁くとき」ではいただけないと評した横山保朗脚本でしたが、当作では完全復調しており、さらに田中秀夫監督が目立たせることのない省略法により、早い流れで見せるテクニックを用いたことで、面白さは深まったといっても過言ではないでしょう。これは、再々放送でご覧いただくことをお勧めしたいですね。

この2人の組み合わせは、3作先の「#570  誘拐」で再度見ることができます。その作品では、最後に三船主任が石原刑事(?)に問いかけた謎があったような気がしますが、それが何であったのか、自分自身も記憶から飛んでいるので再見を楽しみにしています。

 

(2017年12月31日 全面追加)