前回 の続きで、考察となります。

 

36項目52話分の、脚本担当ランキングは

①横山保朗、②西沢治、③元持栄美、④小川記正、の順

監督担当ランキングは

①龍伸之介、②吉川一義、③天野利彦、④北村秀敏・田中秀夫、の順

 

地方ロケというと、どうしても予算がかかるため、スポンサーへの説得、そしてロケ先企業等への気配りが欠かせません。そこで、スポンサーには「視聴者受けの良いストーリー」から説明しやすい脚本家の起用、ロケ先企業等へは「上手く映像に宣伝出来得る演出」という点からロケ撮影に秀でた監督の起用、ここいらあたりを考えたのではないでしょうか。

脚本の点では、デビュー間もない横山保朗だと、作品は違えど特捜隊でも 第7の男 #13 バラのに香水を のような脚本であっても、【第3回再放送】直前作品の頃には、まとまりのある脚本づくりをマスターしていたと思えます。監督の点でも、龍伸之介監督はロケ得意の印象が強いので、ロケ先企業には宣伝しやすかったのだとも思えます。

 

ところで、三大都市とは東京、名古屋、大阪のことをいいますが(あるいは、これに京都、横浜、神戸を加えて六大都市ということも)、東京(あるいは近郊の横浜も含め)を除いた都市に、【第3回再放送】の197話では、地方ロケをした形跡が無いことも特徴です。

詳しくはわかりませんが、これはテレビの世界でいうキー局、ローカル局のテリトリーというか、縄張があることに起因しているのでしょうか? 【第1回再放送】、【第2回再放送】の回では地方ロケを実施したかもしれないのですが、未見なので何とも言えません。#481 追憶の街 のように、「仁義なき戦い」のリアル・第三次広島抗争直後に、県警の強力無しでも広島ロケを敢行する強者揃いの製作陣です。それが、大阪、名古屋近郊での地方ロケを避けたというのは、それ相応の理由があったのでしょう。

 

あとロケ地については、前回 の36項目を観るとわかるのですが、静岡ロケが圧倒的に多いのです。静岡とはいっても伊豆地方が大半なのですが、やはり1970年以降に交通の便が大きく様変わりしたこと、特に東名高速道路が完全に開通したことが一因でしょう。

1960年代は、東海道非常警戒 でみられるように一般道オンリーでしたから、たとえば一泊二日の地方ロケは考えられませんでした。ところが、東映東京撮影所から環状8号線(一般道)で用賀まで下り、東名高速道路に乗れるのですから、機材運搬も楽であったと推察されます。あるいは製作陣、出演陣のお偉方が、このコース途中に居住しており、途中で拾ったり降ろしたりする事情もあったからかも(笑)

 

さらに、レギュラー陣の出演については、#498 女の縮図 (立石班最終話)#497 人生試験地獄 (藤島班最終話) により、【第3回再放送】の4分の1経過くらいで、立石班、藤島班が終焉を迎えているので、三船班のロケ頻度が高い。人物的にいえば、立石班、藤島班での経歴も含めて、関根部長刑事を演じた伊沢一郎が出演回数が多いということにもなります。

伊沢一郎という俳優さんは、映像で観ていてもムードメーカーの印象が強いのもあり、地方ロケの風景には欠かせない存在であったともいえます。

 

ただ、地方ロケの場合には、時折触れていますが「ストーリー分散破綻型」の傾向に陥りがちであることがいえます。予算上の問題から「視聴者受けの良いストーリー」をつくり、ロケ先企業等への気配りから「上手く映像に宣伝出来得る演出」を心がければ、どうしても呪縛撮影となってしまいます。結果的に映像には、意味が読めない場面、無関係な場面、ストーリーと合致しない場面が目立つことになります。

たとえば、#642 女ざかりの女 が、ロケのオーソリティーとまで思える龍伸之介監督とは思えない作品に仕上がっていることが挙げられます。これは、#650 二億円の謎 で触れましたが、この2作については、プロデューサーがストーリーの原材料を脚本家に与え、出来た脚本については相性の良い監督に演出させるというのを、監督の頭ごなしというか一方的にさせたのではないかと推測しました。それくらい「らしくない演出」になっていたわけです。もっと勘繰れば、#642 女ざかりの女 はそもそもロケを組む予定では無かったのに、ゴリ押しがあって急遽千葉県南房総へロケに向かったとも考えられます。当時のスタッフなり出演者から「こぼれ話」が聞けるなり、ムックなり出版してくれればありがたいのですが。

 

さて、個人的に36項目52話分のロケ作品のうち、絞りこむのに苦労しますが、秀作、佳作の区分とは別に「面白い」ものを取り上げれば、以下の10作品です。

#462 幸せになりたい**(脚本)元持栄美 (監督)龍伸之介

#469 絶望の詩**(脚本)西沢治 (監督)中村経美

#470 苦い十五年**(脚本)横山保朗 (監督)田中秀夫

#485 蒸気機関車と女**(脚本)鹿谷裕一 (監督)北村秀敏

#524 ドルショック**(脚本)元持栄美 (監督)龍伸之介

#554 悪女の季節**(脚本)小川記正 (監督)北村秀敏

#562 真夏の逃亡者**(脚本)横山保朗 (監督)田中秀夫

#565 誘拐**(脚本)横山保朗 (監督)田中秀夫

#588 南海の復讐**(脚本)横山保朗 (監督)吉川一義

#614 死刑囚の プレゼント**(脚本)横山保朗 (監督)松島稔

 

この中でも、#524 ドルショック での高倉主任(里見浩太朗)と畑野刑事(宗方勝巳)との思想上の違い、#562 真夏の逃亡者 でのスピーディーな展開、#588 南海の復讐 での吉川一義監督が天野利彦、田中秀夫、北村秀敏らの監督諸氏を超えたと感じた演出、などが印象に残りました。なお、天野利彦監督作品が有りませんが、これも個人的な見方になりますが、地方ロケよりもどっしりと腰を据えて撮るタイプだからとも思えました。