特別機動捜査隊に関連する作品、映画・Vシネ・テレビドラマ・動画に限定せず、あるいは脚本・監督にこだわらず、主観的に関連性がありそうと判断したものを取りあげました。

 

 

【第7の男 #13  バラの柩に香水を】

 

 

(公開日・本放送日)

1965年1月9日・フジテレビにて本放送

2012年12月3日・ファミリー劇場にて再放送

(脚本)横山保朗

(監督)山崎大助

(出演者)*レギュラー

葵伸太郎(今井健二)、雨宮早智子(三瀬滋子)

(出演者)*ゲスト

富田仲次郎、北川恵一、梶健司、神山卓三、佐藤一郎、林京子、都築克子、

小川知子、永井玄哉、市原清彦、飯田和平、加藤修、溝呂木但、丸山英二、

中島元

 

 

(特捜隊関連事項)

テレビドラマデータベースによると、横山保朗が特捜隊脚本に関わりを持ったあと、当作で脚本を担当したようす。

また、監督の山崎大助は、#646 嘆きの天使  高倉主任のラスト作品のほかにも、当シリーズの #11 赤い醜聞スキャンダル(脚本・横山保朗)を演出している。

 

 

(備考)

・三瀬滋子は、後の応蘭芳、應蘭芳で、プレイガールのレギュラーとなる。

・小川知子は、東映入社、歌手デビューする以前の出演となる。

・北川恵一、佐藤一郎の見分けがつかないため、以下は暫定で?をつけて特定。

・都築克子は、検索すると、後の阿久津克子とある。

 

 

(私的あらすじ)  

※資料が全く見当たらないため、配役名は当方で当て字を用いました

 

ある組織の一室、柩の周りにバラを置き香水が振り撒かれていた。そして、隣接した映写室では、コラムニスト・葵伸太郎、葵の友人で警察庁特信局(外国が絡む機密事件を担当する部署)警部・板倉とおる(梶健司)の映像が流れていた。5日前、テレビ放送された「職業探訪・とんぼ返りダンプ」という葵の番組で、地方の食堂に葵、ダンプ運転手の老年男(佐藤一郎?)と中年男(神山卓三)が潜入、労働の合間の食事の場面が問題とされた。労働者に扮した板倉が、組織の一員で髭男・杉江一郎(未詳)にマッチ箱を差し出したところ、「この次の連絡は11日正午・・・」というメッセージが映し出されのだった。これは、組織に加入するための、映像室来訪者へのテストでもあり、杉江の処分、葵を社会的に葬ることが要請された。

 

一方、葵のホテル事務所でも、この場面が注目されており、助手・早智子が映像を写真に焼き付け葵に手渡していた。早智子は、特信局・板倉が乗り出す案件ゆえ、介入に警戒を呼び掛けるが、葵には聞こえないようだった。と、ドアを叩く音がして早智子が開けてみると、隣室のスチュワーデス・美佐代(都築克子)が立っていた。スカンジナビアから帰ってきたばかりで、香港で知り合った女優・リン・ビホウ(林京子)を連れており、日本で活動したいので顔の広い葵に紹介を頼みたいからでもあった。聞き耳を立てていた葵は出てきて、気持ちよく返事をするが、板倉の案件もあり早々に話を切り上げ出かけて行った。

 

葵は老年男、中年男と食堂を訪れ、撮影時一緒にいた店主(富田仲次郎)、店員・景子(小川知子)、その他の労働者に、映像写真を見せて聞きこむと、景子から髭男は日東交通で働く杉江だという証言を得る。葵は早智子に日東交通を当たるよう依頼、すると杉江は3日前退職したが、未払い分の給料を本籍地に送金したら、そこは刑務所であったことが判明する。

 

さらに、葵は板倉から、犯罪者の杉江は組織の脅迫で戸籍を別の男に売り、その男が死刑となった話を聞く。そして、杉江は組織から逃れるため、板倉に保護を求めてきたという。板倉は葵に、この案件から手を引くよう要請しに来たのだが、葵にはその気は毛頭なかった。

 

その夜、老年男、中年男が食堂で店主、景子に管を巻いたあと仕事に出発するが、仕事中に密輸品の腕時計を多数身体に巻かれた杉江の死体を発見する。駆けつけた板倉、所轄刑事(北川恵一?)は、食堂にいたときにダンプに杉江の死体が積まれたと判断、さらに食堂のダンプの近くに停車中の外車がコルセア(註・葵の所有車)であることで、葵に疑いを持つ。

そして、事務所で仕事中の葵に、特信局の刑事2人(未詳)が訪れるのだが・・・。

 

 

(視聴録)

 

上記は、開始約19分までをまとめたものです。その後、葵に降りかかる出来事、両脚のくるぶし辺りにバラの刺青を入れた女の存在、その葵を救おうと動く早智子、老年男、中年男とドラマは流れます。そして、景子の話からヒントを得た葵が単身乗り込んだ先での、(どちらかというと視聴者にとって)ショッキングな映像からの葵の危機、さらに開始37分過ぎからのどんでん返しに次ぐどんでん返しと、目まぐるしい展開となります。

 

 

ここまで書くと、後の特捜隊での脚本・横山保朗の萌芽を見るようですが、実見すると、あにはからんや、ストーリーがまとまっているとは思えない出来になっています。例えば組織加入のテストの件はどこへいったのか(これは開始34分過ぎ、葵が単身乗り込み目撃した場面と整合性が無いことにも繋がる)、死刑囚・杉江の件はどうにも有り得ない案件であること、テレビ番組でも組織が気になるのは杉江・板倉なのになぜ葵の方に向けられたのかなど、これが特捜隊でのメイン脚本・横山保朗の仕事かと思うほどであります。

 

これは、監督デビューしたての山崎大助の問題かとも思ったのですが、#11 赤い醜聞(スキャンダル)でも同じ脚本、監督で、出来も当作より首をかしげる状態だったので、両者(脚色・演出)ともチカラを出しきれなかったと解釈できそうです。

しかし、欠点ばかりではなく、目を見張るところもあるのです。ある人物たちの顔を見せず、発声させず、といったところにどんでん返し的要素を見出したり、まさか「あの人」が裏切ったのかと思わせる場面など、光るところは見られます。後者は、多分演出上の問題ですが、よくよく見れば空振りかなと思われるものの、脚色上の意気込みは感じられます。

 

当作は、製作=フジテレビ、東北新社というところから、東映アクションものというわけにはいかず(むしろ、スタッフからは新東宝らしさが感じられます)、特捜隊と関連づけるのはそもそも難しいでしょう。しかし、まだ自身が視聴出来ていない【第1回再放送】【第2回再放送】のころの、テレビのアクションものの雰囲気を味わうには、同時代ものとしての評価は可能でしょう。その雰囲気が濃厚なのは、むしろ特捜隊メンバーとは無関係に近い、#09 湖上にかける橋(脚本・磯村正夫、監督・石川義寛)だったりもするのですが、そちらは機会が有ったらまた。

 

さて、当シリーズでは、悪役として名高い今井健二が、主演・葵伸太郎を演じています。自分自身、善役として今井健二を見たのは、テレビのサスペンス劇場で安部徹と共演したとき(2人とも善役でしたが、時期・題名とも失念)以来ですが、どうしてもイメージは悪役となってしまいます。近年は舞台が主流とのことですが、2010年8月30日の北島三郎公演の記事くらいしか見当たりませんでしたので、現在どうされているのかはわかりませんでした。