※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

 

【#469  絶望の詩】

 

(本放送)1970年10月28日

(再放送)2015年6月4日

(脚本)西沢治

(監督)中村経美

(協力)警視庁

(協賛)呼子町観光協会、小城町観光協会、多久町観光協会、川棚町観光協会、

    御船山観光ホテル

(捜査担当)三船班

西本捜一係長(鈴木志郎)、鑑察医(仲原新二)、鑑識課員(上田侑嗣)、

鑑識課員(新田五郎)、事務員(森るみ子)、関根部長刑事(伊沢一郎)、

内藤刑事(巽秀太郎)、山口刑事(山口暁)、荒牧刑事(岩上瑛)、

笠原刑事(伊達正三郎)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)

松本朝夫、浅沼創一、神鳥ひろ子、伊東昭雄、福鎌康隆、小野進也、伊原静江、

日暮里子、春江ふかみ、島田太郎、大阪憲、河原裕昌、箕輪律子、増岡泰之、

新林イサオ、青沙れみ、里木佐甫良、杉幸彦、中村恭子、清水一郎、

筑紫あけみ

 

 

(あらすじ・予告篇から)

 ※ナレーションをそのまま聞き写しています

 

3年前、東京に自分の城をつくる夢をいだいて、

生まれ故郷を捨てた青年が、殺人者の汚名を着せられ、

故郷(フルサト)である九州は佐賀県に逃げ帰ってきた。

捜査に当たった特捜隊・三船班は、

調べれば調べるほど青年の過去は暗く、

その容疑は増していくのだった。

だが三船主任は、なぜか青年の無実を主張し、

科学捜査で育った笠原刑事と激しく対立するのだった。

果たして青年は、本当に無実なのか?

また、科学捜査を絶対に信ずる笠原刑事が正しいのか?

次回の特別機動捜査隊、「絶望の詩」に御期待ください。

 

 

(備考)

・「#464  玄海灘の夕焼け」「#469  絶望の詩」は、出演者・脚本・監督から2本撮りと推察。

 

 

(視聴録)

探偵小説作家であるヴァン・ダイン(1888-1939年)の作品に、いわゆる「ファイロ・ヴァンス」ものがあります。

その初期の作品で(ベンスン殺人事件かカナリヤ殺人事件のどちらかだと思うのですが)、探偵ファイロ・ヴァンスの台詞で

「主観的証拠と客観的証拠があれば、僕は間違いなく前者をとる」

というのがあります(うろ覚えで自信は無いのですが・・・)。それで、いろいろな証拠が挙がっているのに、容疑者と面談だかポーカーだかをして、「容疑者=犯人」と指摘するというものです。さすがに、中後期の作品では、こういうスタンスは影を潜めましたが・・・。

 

当作の(あらすじ・予告篇から)でもわかるように、三船主任と笠原刑事・内藤刑事との捜査上の対立がひとつの焦点になっています。

そして、笠原刑事のいう

>主任は、物証・自供よりも本人の目の色が重大というんですからね!

と吐き捨てる台詞は、思わず前述のファイロ・ヴァンスを思い出しました。

さすがに、視聴している側からしても、いくらなんでも三船主任独走しすぎ、という印象です。

 

東京の吉永秀和(松本朝夫)、美保子(中村恭子)夫妻が、美保子の父親のお見舞いで佐賀に帰郷。用事があるということで秀和は残り、美保子のみが東京へ戻るが、自宅のアパートで美保子は扼殺死体で発見される。隣人の夏木ゆたか(浅沼創一)は美保子と同郷、現場証拠から容疑をかけられるが、既に帰郷していたため三船班主力は佐賀に向かい捜査に当たるというもの。そして、東京、佐賀の協同捜査から真犯人の逮捕に至ります。

 

ゆたかは恋人・田代しのぶ(神鳥ひろ子)に支えられるものの、地元・佐賀でのさまざまな証言も不利になるものばかり。そんな絶望のなかに三船主任の存在があったというわけです。

「鉄の男」三船は、実は「情の男」でもあったということも強調したかったのでしょう、ドラマ上の試みは成功した感があります。冷静に考えると、笠原刑事のいう「自供」が果たして自供かという疑問を(視聴者に)投げかけているような描写であり、絶対的に確信を持てる科学捜査とは何なのか? の点をも、(視聴者に)投げかけているようでもあります。

その一つの回答が、三船主任の主観的視点から出発する立場、ややもすると先走り・思い込み捜査になる危険も秘めていますが、「容疑者をシロとするのも刑事の仕事」とする三船主任からすれば、迷いのない合理的独走なのでしょう。ファイロ・ヴァンスと似ていながらも、「情」の交じる推理・捜査に独創性があります。

 

大崎半島付近でのラストの大団円も、説明的ではありますが2段構えで締め、佐賀ロケ前作「#464  玄界灘の夕焼け」よりも面白く見れました。そして、煙草をねだる三船主任、煙草を差し出す笠原刑事、ライターをつける内藤刑事、紆余曲折ありながらも3人が見せる「いい顔」、これが特捜隊三船班の魅力なんでしょう。

というよりロケ地を凌駕した三船主任の魅力というところかも。特捜隊視聴で三船班に魅かれ始めたのは、この頃くらいかなと思います。ですので、犯行時間が時間経過の点で?がつく点は、この際、目をつむりましょう(笑)

 

(2017年11月21日、全面追加)