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ことしをふりかえって(2023年)
おかげさまで充実した年になりました。
読者の皆様には今年もまた1年間おつきあいいただきありがとうございました。
毎年、新年号で1年の計画を発表して、その1年を前へ前へと進めてきました。
「1年の計」に100%に届いたあと、11月以降のダメオシが強力でした。ここまで完遂できたのは2009年このブログを立ち上げて以来初めてです。
クラシックプロCM5の改造からはじまったこのブログで「改造の中止」をご案内するなどは、この14年、国内外のマイクロホン著しいレベルアップがあってこその進歩です。
そんな意味で年初の予定を200%達成した嬉しい年となりました。
年初目標の2倍の成果でした
!トピック1
CM5の改造中止案内と関連記事すべての削除
!トピック2
MEMSマイク使用マイクの単一指向性化を実現
【EMC問題】※ECMではありません
誰もが手を出したくない「イヤな課題」として「EMC」問題があります。普通にはマイクとは無関係に思えますが、良いマイクかどうかはココが「カナメ」なのです。
この課題には、SMD ED8 マイクロトランスとハンディスポット溶接機の役割が大きく貢献し次元を変えました。
「EMC」(電磁環境両立性)はオーディオ技術とは無関係な、理解しにくいアナログ無線技術をベースに成り立っています。
しかしその耐力の大小はマイクの基本性能に関わる重要課題です。
(単に「シールドすれば良い、アースすれば良い」とは次元が異なります)
今更ながら、今年この問題に集中したことは大正解でした。
EMCは複数要素の「複合技術」だからです。
今だからこそできた後押し条件が今年ほど整った年はありません。
終着点は「ノイズトラブルを起こさないこと」に尽きます。
これに集中し、目標を「完全クリア」できたと思います。
10月27日当日のステージ 於:東京芸術劇場 (ブルガリア大使館公報より)
[障害者週間]東欧音楽家支援 国際親善交流特別演奏会 日本・ブルガリア・ルーマニア文化交流演奏会 ウクライナ緊急人道支援ポーランド難民支援チャリティコンサート
及川光悦指揮 演奏 Mozart Viruoso Festival Orchstra
「ProbeⅡLz」x4によるフィリップス方式マイキング 10/27(於:東京芸術劇場)
(写真使用は主催者様承認済)
昨年に続いて10月27日、当ブログ読者のYO様の録音現場に今年は筆者も参加させていただきました。マイクロホンはEMCを強化した「ProbeⅡLz」4本使用 ブーム長 3m。
ノイズなど一切許されない国際コンサートの一発録り、このマイクの作者としてヘッドホンをして最高に緊張しましたね。
演奏会は大好評のうちに終了、後日この録音の素晴らしいCDをいただきました。
YOさん ありがとうございました。
「マイクロホンのEMC」など、普段語られることはない。
要素が多岐にわたるため難解で、それは一般的には中途半端な理解とマト外れな「対策」のまま、問題を起こすたびに「原因不明」として低い次元で「アース」に逃げ込もうとする。まるで20世紀未満のような処置がまかり通っている現状に筆者は異論をとなえてきました。
最近、5年前その国際評価法も現れたが、それはマイク個体だけの話。接続機器・設備との関わりで使用される「マイクロホンシステム」はそれでいいのだろうか。
ホールの衛星部に吊ったマイク(200~300m以上延伸)が、何の異常もなく近距離での試聴と同じ音と安定性を得られているだろうか・・・
いいホールもあれば 「劣悪ホール」もある。行き当たりばったりの「賭け」である怖さは今でも変わりません、皆様、おかしいと思いませんか?
▲(某ケーブルメーカーの対外通達をうのみにしたホール内配線の施工法はこれでいいのか)
クラシック録音を中心とするホール録音専門家は常にそれに怯え、自己防衛しながら仕事している反面、「指定管理」とはいえホール側の知識や設備状況のちぐはぐさは否めない。
吊り機構・衛星部に乗せるマイクの長距離延伸、そんな「読めない現場」では超高額なヨーロッパ製マイクでさえ問題を起こすことは良く知られている通りです。
まして「自作マイク」など筆者の経験では「普通に作れば全部失敗する」と断言できます。
「自作マイク」を信頼できるマイクへと変貌させる、それに必要なのはオーディオ技術などではありません、だれもが嫌がる、避けて通りたい「EMC技術」・・・(無線技術)なのです。
(筆者はかつて「無線」と「EMC」が本業でした)
しかし「EMC」はホール設計時点から、またマイク設計時点から決して理解される事はなかなかなく、さらにホール管理の中でも正しく理解される事はなく「帯・タスキ」の現状であります。
つまり「正しくEMC設計」されたホールはまず存在しないこと。
「EMC」技術の特異的難しさと理解しにくさ、この事が吊り回線の信頼性のなさとなってホール録音にたずさわる人を苦しめているのです。
マイクロトランスの高品位実用化
「悪質マイク回線にはこれしかない」、と放送局各局が頼りにするのは600Ω:600Ωのトランス。(これは現在でも変わりません)
質の悪いマイク回線にはこれしかない、たとえば旧型トランス式の4006と現行の4006Aとの比較表があり、旧型の優れたCMRRの高さで延伸距離は新型現行機の3倍になる事をメーカーであるDPAの対外資料でもハッキリ公開している通りです。
筆者が有り合わせのST-71やタムラのトランスでトランス化実験をしている時、目に止まったAliexpressの「SMD-ED8」という桁外れに小さな、日本語の説明すら意味の怪しい激安トランスがありました。
しかし、書かれていることを勝手に理解するほどに、「ただものじゃない絶品」か「単なるゴミ」だと思いポチった。
10日ほどのちに届いたトランスのあまりにも小さいことにドギモを抜いた。「ロクなものじゃないだろう」と実験開始して、その音質に唖然とした。
(SMD ED8 5P)5個680円で入手
「いい!」、1万円以上のタムラ製トランス同等、試作でもFETやバイポーラTR式となんら変わらないその音も合格だ、次元と常識を遥かに超えた可能性をタナボタ的に手にいれたのです。
それは「ProbeⅡ」と入れ替えてもA-B比較でも音質差のないことは驚きでした。
マイクロトランス採用の、その場で作ったマイクに「Probe-T」と名付けた。
XLRファンタム動作回路はこれで14年ぶりに一変した。
(MEMSマイク以外アクティブデバイスの使用は一切ナシ)
ケース構造のEMC的ステップアップ
1st(エンボス銅テープの効果的な使用)
金属導体と別金属との間を3Mエンボス銅テープ(2445)によりDC的一体化を果たしたが抵抗値がわずか残る。
完全な「金属によるファラデーシールド」や「同一インピーダンス化」を向上させる為、エンボステープに無数のカッター傷を材料に通るまで深くいれることによって、より低抵抗化させ、インピーダンスの分散を避けた。
2nd (スポット溶接の導入)
藁をもつかむ思いでたどり着いたのがこれです。
「手の平サイズ」で満足できるハンディ・スポット溶接機を入手しました。(5~6,000円)
使い道も使い方も本来と違うらしいが、「溶接棒」も「溶接材」もいらない溶接法が見つかって採用。
これは素晴らしい結果となっています。
これで「接触によらない複数金属の一体化」が完成しました。
本来なら、なかなか馴染みのない100A~500Aという普段の私たちからは途方もない大電流が机上で安全に扱えるため、慣れればフロントメッシュとステンレスパイプ間及びステンレスパイプとXLRコネクタ間などエンボス銅テープとの併用であっけなく綺麗に溶接できる。
これで2種金属同士の溶接一体化が可能になりました。
これをもってEMC耐力を俄然引き上げる手法として完成しました。
AMラジオ局送信所でこんな例がありました
3か月前(2023年9月)首都圏の或るAMラジオ局の送信所(100KW)とその設備全般の見学チャンスがありました。
(このときの特筆経験)・・・「フェンスがしゃべっている!」
①アンテナのある送信所敷地内フェンスから放送が小さく聞こえました。金網と鉄アングルとの接触部から聞こえ、特に錆びたボルト部の音は大きい。(同部分の非直線性によるAM検波作用)
フェンスのアングルに共鳴して「放送内容」が聞き取れるほどの音量で音楽も曲がはっきりわかる。
②送信所内の主要配線には銅の「グランドプレーン板」を敷き込み、等電位化した基準GNDが張り巡らされている。配線はそれに密着してあらゆる配線類が高周波的に電位を持たない対策の徹底した施設構造であった。
③ポケットラジオを持参し、アンテナ直下及び給電部近接では「AGC」が働き、ラジオは一切聞こえなくなることを確認した。
(これは半世紀前にNHK第2放送送信所での経験と同一だった)
◎この近所に公共ホールなどを建てれば、マイク音声はホール内配線を長くするほど放送波は非直線部の作用によりマイク回路に飛び込み、使い物にならなくなることが簡単に予想される。
そんなとき、トランスを使えばそのEMIを大きく防止してくれるだろう。
そんな意味で今年はEMC問題をいろんな角度から触れ、ふたたび対策実践、答えを出す良い機会にめぐまれました。
MEMSマイクの単一指向性化実現
10月の半ばに、ふと思い立ったように手をつけたところ、あれほど難儀していたMEMSマイクの単一指向性化が当初予定より高い次元で完成した。
そして、さらに改良版が完成し、これまで不可能だったMEMSマイクによる単一指向性マイクの未来が見えてきた。
これはMEMSマイク史上、決定的な財産となるでしょう。
個人の成果などではなく万物進化の法則に沿った「宇宙の意志」ということで理解しています。
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このブログの代名詞 CM5の改造記事すべてを削除した
14年という時間は激安マイクも進化させてくれ、もはやこうした「ダイナミックマイクの改造」はいらなくなりました。
かくして、今年の目標はすべて完了し、特に長年の懸案だった「MEMSマイクの単一指向性化」の成功は形を変えながらマイクロホンの未来に影響していくことでしょう。
ここまで進むことができたのは有形・無形で支えてくださった読者の皆様のおかげです。
ことしも1年ありがとうございました。
どうぞ佳き年をお迎えください。
ShinさんのPA工作室 管理人Shin
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おしらせ
MEMSマイク使用、話題のProbeⅡ Probe-T L-730mems など、読者のみなさまからのご注文により優秀機種の手づくり製作・領布を承っておりますのでお問い合わせください
またFetⅡなど純正WM-61Aのファンタム式パナ改マイクも継続中
モノ作り日本もっと元気出せ!
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