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※管理人Shinは知財保護において個人による「特許」のようなものを好まず、「全公開」を旨とします。
MEMSマイクで単一指向性マイクを実用化実現(2号機)
前例のない事柄の達成には「目的のためには手段を選ばない」という古今東西・世界共通のセオリーがあります。
しかしそれを成し遂げたあとは合理的に見直すのもまたルールでしょう。
「たどり着いた感」の強い初号機の内容からブラッシュアップされたと思います。
MEMSマイク単一指向性化(第2号機)
Clasic Pro CM5の外筐使用、BETA58風の外観で
ポイント1 ICS-40730を「Differential」にて使用
「ICS-40730」このMEMSマイクの出力は、「Single」と「Differential」Useがあり、前者「Single +」のインピーダンスは180Ω、これに対し後者は430Ω。
インピーダンスの高い後者を選択したほうが「音決め自由度」が圧倒的に高いことが調整中もよく分かりました。
ポイント2 外筐にクラシックプロの「CM5」使用
CM5のケースだけを使ってやろう、と取寄せたこの時の「ひょうたんからコマ」の事実に慌て、予想外の記事「2324」を割り込ませ、過去記事の見直し削除を行いました。
ブログ開設時からの「人気記事」であり、このブログの根幹である内容ですので、ネット社会の責任として、関連14記事を「訂正」ではなく全面削除し、影響を最低限に抑えるように記事調整しました。
そして・・・・・
「グリルボール」にこんな仕掛けをしました。
Shureの純正パーツ「66A8035」・・・BETA58用ブルーリング
これはCM5のグリルボールでもジャストフィットしました。
接着剤なしでも案外強く固定してくれます。
(マイクヘッド部)
ICS-40730はDifferential接続の4線、他はほぼ前回と同一です。
ICS-40730背面の速度穴は今回1.5mmにてイナータンス調整しましたが、0.5mm程度の方が調整しやすかったと感じています。
背面の綿はただ詰めてあるだけではありません、その「速度穴」へのイナータンス制御にはカナメとなるノウハウがあります。
組み立て中のマイクと「音響調整材」・・・(脱脂綿)
持ち手部分内部のレゾネーションとハンドリングノイズ排除にはダイナミックマイクならトランスの封入やホットボンド封止が定番ですが、このマイクでは基板があるためできません。
マイクトップ部同様に脱脂綿封入により、「管鳴き防止」をはかると同時にタッチノイズの防止もはかりました。
(音響調整材料について)
目的から判断して選びます。
マイク用途の例としてはRCA 77D(X)のラビリンス部ではまさかの「シュロの葉」が用いられ、「77サウンド」と呼ばれるあのサウンドを生み出す核になっており、リボン張替え調整 最大のツボとなっています。
多くのメーカーでは古くから「非化繊フェルト」が音響抵抗として用いられてきています。
化学素材=安定、自然素材=不安定とYOUTUBEで公言するマイク自作者がありますが、「マイク音響回路」では誤りです。
それどころか、衣類でも「綿」「絹」「ウール」の自然素材を否定し、「カセン(化学繊維)こそホンモノ」と言うに等しい。
この部分に化学素材を用いないのはマイクメーカーでもその弊害を知っています、これは単に「吸音材」ではなく「音響調整材」だからです。
この詰め物は単に音響抵抗(rm)に終わりません。
化学綿では、繊維構造により適切なイナータンス制御を難しくするからです。
回路図
アクティブデバイス不使用
イナータンス制御による周波数特性制御を補完するため、入力回路にパラレルCを使いますが、
前作では途方もなく大きな値(22μF)となり、BETA87Aとの音の類似度は目標を果たした反面、マイク感度はかなり低下しました。
2号機ではMEMS-OUTを「Differential」で使い、インピーダンスを180Ωから430Ωに変え、より小さなパラレルC値が適用できるようにし、これを最小限におさえました。
22μF→1.22μF・・・つまり20分の1近くの容量で済むようになったのは大きな進展です。
速度成分小穴のスティフネス+流入量(イナータンス)は音響等価回路上直列に入り、それを補完する為の入力回路のパラレルCとのすべての合成により指向特性と周波数特性が決まります。
ここでは0.22μFから調整開始し、速度穴径、綿の密度・押圧といったイナータンス調整を含めてパラレルCは1.22μFで最良となりました。
サウンドクオリティは前作を上回ります。
周波数特性?
耳を鍛え信じること、それに尽きる。
「マイボイス・リアルタイムモニター」による判断は正確です。
指向性に違和感なく、音質の満足できるころまで調整したらFFTを眺めればドンピシャで当たるはず。マイクの特性はそれでいい。
最初からホワイトノイズ、シングルトーンのSWEEPのたぐいで「フラット・フラット」と、やればやるほど分からなくなり、チューニングは失速する。
また、音楽ソースなど与えれば総合判断はさらに不可能となる。
日本のメーカーでは物理特性絶対主義で一部のスキもないガチガチのマイクを長年こしらえて世界から笑われてきた経験を持ちます。
「BTS規格」なるものすら当の昔に廃止された。日本のマイク屋ならそれをイヤというほど学んできましたが、今また「物理特性」云々に前戻ろうとする動きがあり憂慮するところです。
筆者座右の書について
(本記事参考文献)
実用マイクロホンハンドブック CQ出版 1978年
マイクロホンハンドブック 日本放送協会 1961年
マイクロホンハンドブック第2編 日本放送協会 1973年
マイクロホンハンドブック ミュージックトレード社訳刊 1983年
マイクロホン テクニカルハンドブック 高柳裕雄 兼六館 1986年
マイクを学ぶ者にとっての文献(古いいいかたですが)はこれ以降、適切な著書が完全に消え、いまマイクを学ぼうとするかたにとって適切な図書・文献がほとんどありません。
価格を無視してでも現代版の発刊またはこれらの再刊を切に希望します。
このままでは日本国内でのマイクロホン技術は新技術だけでなく、その継承すら消滅する危機を感じています。
また、これらの著書が本当に必要な放送関係の方が血まなこで求めているのをお手伝いしたことがありますが、100歩譲っても差し上げる事はできず、神田古書街をご一緒するも空振りに終わった。
しかし古本でも、もはや絶対数がなく入手は絶望的となってしまっています、何とかしなければなりません。
AMAZONに登録して2~3年待てばひょっこり手にはいるかもしれません。
単一指向性MEMSマイク 今後の展望
「テクノロジー」の進化はさらに続く。
単一指向性化MEMSマイクの「オンマイク適正」だけでなく、DPA、SCHOEPSを超える「オフマイク適正」の単一指向性マイクの実現へはどんな道があるだろうか。
答えは歴史の中にあるとはかぎらないし、MEMSマイクメーカーにそれを求めても不可能な仕事であることはICS-40800で明確となった。
原理原則に立つ以外に道はない。
それを追求して結果を出すことにこそがMEMSマイク実用化プロジェクトの本懐と言えるでしょう。
筆者Shinは前例のない、前人未踏の真っ白な世界が好きです。
想いを持って先頭を進めば何にも制約されず、しがらみもなく可能性だけが無限に未来に向けて開いているからです。
以上
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