2322 :業界初! MEMSマイクで単一指向性マイクを実用化実現した | ShinさんのPA工作室 (Shin's PA workshop)

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管理人Shinは知財保護において個人による「特許」のようなものを好まず、「全公開」を旨とします。

 

 

  業界初! MEMSマイクで単一指向性マイクを実用化実現した

 

 

はじめに

MEMSマイクには未だに達成できていなかった最重要課題がある。

そう、「単一指向性MEMSマイク」です。

 

今回その課題を「プロフェッショナルマイク」の実現をもって、突破させました。

指向特性は一挙に「スーパーカーディオイド」=「超単一指向性」で実現させることができました。

 

これはMEMSマイク史上、初めてのニュースになると思います。

 

 

 

 

「無指向性」であったMEMSマイクは「スーパーカーディオイド」型で実用実現し、筆者は感無量です。

 

 

 

サンプル音の動画をご視聴いただけます YOUTUBE 

 

 

 

 

 

 

YOUTUBE でお聴きいただける通り、その音や指向性といったファクターはShure BETA 87A をモデルにしてSimulation、つまり「そっくりなモノ」を作り上げたわけです。

 

アナログ手仕事の極み、械的音響等価回路と格闘しながらでも、耳だけでここまでできたのは奇蹟でもあります。

 

指向性はBETA 87Aと同一の「Super Cardioid」ですので、センター音の許容角度はきわめて狭く、素人カラオケなどにはかえって歌いづらいプロフェッショナルモデルのマイクとなります。

 

BETA 87Aと同一の「Super Cardioid」=「hyper Cardioid」は高域で「りんごの芯」が出るためPA使用時、返しモニターSP置き位置は真後ろをさけ、120度点が適切となるポーラパターンです、この点がSM58などとは異なります。

 

BETA 87A にある多少の「固体鳴き」までは再現を見送りましたが、この試作マイクはあらゆる場面でBETA 87Aと入れ替えても、出音では気づかれることはまずないでしょう。

 

 

 

 

アナログの極み、「機械的音響等価回路」を攻めて完成に至ったことが最大特徴です。

 

 

「単一指向性化」は当のMEMSマイクメーカーでさえ尻込みしているのはご承知の通りです。

 

Shinさんのような個人にこの先もまかせておくのか?

MEMSマイクメーカーとマイクロホンメーカーの奮起を求む。

 

 

 

これまで

MEMSマイク最大の弱点は「無指向性」のみであることでした。

MEMSマイクは「音圧型」マイクロホンに分類され、サイズの問題もあり「指向性マイク化」には難易度の高い構造であった。

 

 しかし、従来のコンデンサ型もダイナミック型も「無指向性」マイクを原型として誕生・進化していったように、これはMEMSマイクにとって弱点ではあっても「欠点」ではなく「進化前の音圧型マイクロホン」のあたりまえの姿であるだけです。

 

原理的には中~低域のない不本意な「周波数特性」、それを無視すれば単一指向性化は簡単ですが、実用には程遠い結果となります。

 

しかし世のニーズの方が先行し、マイクメーカーを中心に、ここ10年間こぞって「マイクアレー」や「ビームフォーミング」に逃げ込んで指向性を得てきました。

それは。おびただしい数のMEMSマイクを使った構成とAIを含めたソフト制御により、会議PA補助のジャンルとして現在各社が競っている。

そこではMEMSマイクの弱点を回避し、お世辞にも「マイクロホン」とは言い難い「大規模収音&拡声設備」となり、話声専用であるハンディもかかえている。

 

MEMSマイク単体での「単一指向性マイクロホン」という方向性の開発は存外、蚊帳の外に追いやられていた。

 

それもそのはず、MEMSマイクはもともと機器組込み音センサーでしかないため、少しでも指向性が必要な場合は複数のデジタルMEMSマイクを並べてソフト屋さんが「おれがやるよ」で済んできた。

 

 

MEMSマイク型初の単体マイク「 ProbeⅡ」登場の役割

「ProbeⅡ」の発表(2021年1月)、「ICS-40730」を使ったこの単体マイクの音質は驚愕と衝撃をもって「全世界のマイク通」に注目され広まった。

コンサート録音、自然録音他で別格なその優れた音は自作マイクファンの方向も変えた。

 

本記事の「無断引用」をおこない、それをもとに悪質な投稿を続ける者がいて、注意・抗議・訂正、削除要求は完全に無視し続け、指摘にも開き直る始末、そんな被害・いやがらせに晒されている現実もあります。 

この犯人には本ブログ記事のパクリ流用を一切厳禁とします。発見した場合は即、当サイトにて住所・氏名ほかを明かします。動画の訂正または削除とこれまでの反省と謝罪を別次元で求めます。(独自調査によりH県K市内「幸泉院」というお寺の関係者H氏と判明)、もう全部わかっています。

まして人に善行と仏の教えを説く宗教者としてあるまじき「悪行」、許しません。

 

 

「高品位MEMSマイク」は各国フォーラムでも話題となっておりますが、特にロシアのサイトではこのMEMSマイクの入手が不可能な為、西側への羨望もあり、むしろ議論と情報希求はそれより数段盛んです。

 

誕生から2年半、専門筋では常にDPA(B&K)、Schoeps、Eathworksなど欧米製超高級マイクとの比較で音質が語られるようになり、設計・製作する私の意識も当然シャープに訓練されてきました。

 

これまで「世界の名機」マイクを定番使用していたシーンでも、少しづつMEMS型が浸透し始めている事実もあり、これは誰にも止められないテクノロジーの進化である、それはさらにこの先に進む。

 

それは2014年初めてMEMSマイクを手にした時感じたままの進化を続けている。

 

 

「MEMSマイク」はこれまで音響技術者でさえ「それなーに?」と知識・意識、頭の隅にすらなかったが、その認識を根底からひっくり返すことになった。

 

これからは「クラシック録音」ジャンルを中心に、MEMSマイク抜きには語れない時代を迎えたことは間違いありません。

 

それは筆者のライフワークで良いのか、それともこれまでダンマリを決めていたマイクメーカーは参入するのか、問われている。

 

*私は後者を切に望みます。

それは14年前LANケーブルによる4chマルチケーブルシステムを発案したときと同様です。

ケタ違いに「軽薄短小」なLANケーブル型マルチケーブルは、おおいに歓迎され今ではあたりまえのようにMAスタジオや公共ホール、PA現場の必須音響機材としてメジャーとなりました。

 

 

 

 

  単一指向性への必然性

MEMSの単体マイクが高次元のマイクロホンとして認知されてくると、当然「単一指向性」の単体マイクが求められるようになるのはマイクの歴史を振り返れば必然性をもった流れです。

 

「原理的」には可能でもピアノやバイオリンが録れる、オーケストラが録れるといった高品位な「広域でフラットなマイク」を登場させるのはそう簡単な課題ではない。

 

MEMSマイクメーカーマイクロホンメーカーも尻込みしている実態を憂い、自分1人の力ででも、現状打破して実現させることこそ「正義」とドンキホーテのような取り組みを開始した。

 

 

 

 

単一指向性実現の過程

筆者は2014年からMEMSマイクに関わり始めて、「単一指向性化」の難しさを肌で感じていた。

「反射型」「仮想音圧傾度型」と手掛けてきたが、満足な結果は得られたことはなく、そのたびに挫折を繰り返してきた。

 

近年、TDK Invensenseから「指向性MEMSマイク」として「ICS-40800」が登場した。大いに期待したが内容はきわめてお粗末かつ不真面目なものでガッカリした。

2021年プレス発表時「後ろの穴はふだん塞いで使え」と驚いたが・・・

 

この「ICS-40800」を入手、机上実験時点で今回の方式を検討した経緯があるが、ICS-40740のマイナーチェンジであるこの「画期的新製品?」の設計哲学と方向性には大いに疑問を抱き、相手にするのをやめていたのは正解でした。

 

その方式はかつて筆者がICS-40730の裏に小穴を開けて「単一指向性化」を試みた2019年のときの改造そのもの、「あとはイコライザーで宜しく」というではないか、マイクを「ナメるナヨ!」

 

ICS-40800」はマイクカプセルメーカーとしてあるまじき無責任さ。「invensense」や前身の「anarog devices」の方向性ではない。

こんなのなら「ピピッ」「ピー」の「圧電ブザー」でさえマイクになる、まさに「やっつけ仕事」そのものです。

 

 

Shure「BETA 87A」をSimulationした

どうせやるなら、初号機はDPA 4011やShoeps 641Uの世界ではなくPA用コンデンサマイクの王道、Shure BETA 87Aをシミュレーションすることに決めた。やはり順序がある。

 

それはこのブログの「原点」であり、そのために立ち上げたブログです。ここでは十八番ワザが活かせる。

 

筆者は昔から同僚に、技術者じゃなくて「奇術者」だ・・・と言われてきた。何といわれても構わない、結果がすべてなのだ。

 

外観ケースは空き家になったBETA-58のものを使い、回路はマイクロトランス式で最初から長距離延伸対応させた。

 

 

 

  物理特性優先主義の拒絶(小見出し1.2あり)

少し遠ざかっていたアイテムだったが十八番芸のはず、ふとひらめいた。

すぐ脱脂綿の小片を手にしていた。

異次元の結果はすぐ現れたが、ここから先は耳と根気の勝負だ。

 

ピュアな音響メカニズム(機械的音響等価回路)を中心とした再構築では、背面小穴のイナータンス制御がカナメになる、

 

放置されていた「ICS-40730」の「背面穴あきバージョン」の小穴に脱脂綿(音響抵抗)・・・化学綿ではない、をシリーズに加えて「背面小穴」への速度成分流入量制御(イナータンス制御)によって正面音圧とのバランスをとった合成特性を追いかける、これは途方もない時間と手間と聴覚との闘いを覚悟した、「成功の極意」は「成功するまでやる」ということなので絶対に失敗はない。

 

「Analog」とは「相似形」のこと、音はアナログ量である。

 

これはかつて、マイク技術の伝授を受けたときの師匠(元、某業務マイク専業メーカーの設計技術者)から、「メーカーでもカプセルの音決め、背面の調整は時間をかけて耳でおこなっているよ」「針でつついたり音響抵抗を加えたりして・・・これが気の遠くなるほど大変なんだ、測定は最後でいい」と続けて述べられていたのを思い出します。「昔の話」とはいえないマイクづくりの原点。

 

下記はすべて物理的におこない、エレキの出る幕ではない。

 

1.音(ベタオン~オフにかけての音を磨く)

2.指向性(特に0度点、90度点、120度点、180度点に注目)

3.子音強調やIMひずみなど異音・違和感の監視・除去


 

背面小穴の大きさで指向性と周波数特性は大きく変わるが、時間をかけて突き詰めていくと、どれでも同じ結果を得られることが分かった。ここでは取扱いがノーマルだった「1Φ」を採用した。

 

 

 

 

1.最重要部

MEMSマイク(ICS-40730を乗せ、ジャノメ基板を用いて背面に無数の速度穴をもつ「三角ブロック化」させた単一指向性カプセルを構築した。

脱脂綿の入れ方次第で音は激変するのでどんな結論でも出せる、それが「機械的音響等価回路」を制覇する難しさであり、醍醐味でもある。

 

 

「MEMSマイク単一指向性化」のカナメは何か?・・・

 

 

最後に、限定的な「サ行強調」だけが残って往生したが、音決めの絶対ツール、「マイボイス・リアルタイムモニター」によって脱脂綿の量と密度を変えながら、また綿の装填箇所を変えたりして調整、これを退治、すべてがBETA 87A同等になるよう念入りに再調整した。

 

 

 

2.回路図

AMP系の回路屋とマイク屋の回路はここが決定的にちがいます。

(アクティブデバイス不使用)

ICS-40730のSingle OUTはそのインピーダンスが100Ω台だからこそ成り立つこの思い切り違和感のある回路発想ですが電気的原点でもあり、その結果はお聴きいただく通りです

 

 

XLR出力回路部

 

 

 

出力レベルはもう少しあって良いので、次回はMEMSの「Differential output 」で再調整したいと思います。

 

 

 

以上でMEMSマイク単一指向性化第1回目の報告を終わります。

久しぶりにマイクロホンのルーツに翻弄され、原理原則に誘導され、それでも諦めないで本質を突き詰めれば結論に達する。

あらためてその難しさとの格闘を楽しめたと思います。「結果がすべて」の世界です。

 

 

次のターゲットは「オフマイク適正のマイク」、DPAかSchoepsか、はたまたベリンガーか・・・おたのしみに。

 

「常識」はひっくり返してうまくいけば、それが常識となる。

今後も「マイクロホン界のドンキホーテ」でいい。

 

後編を計画しています

 

第2号機記事へ

 

 

 

PS) 

同一手法をあの「ICS-40800」で試してみた。

指向性は問題ないが、「低域不足」はいかんともしがたく、それでも女性スピーチ、ローカット的録音なら可能なレベルであったことを追加とします。

 

 

 

 

 

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