週刊ゲンダイオンラインより数回に分けて引用する。

新潟大学医学部教授の岡田正彦氏(65歳)は予防医学の第一人者で、現代医療の無駄の多さ、過剰さに疑問を呈し、健康のために真に必要なものは何なのか、独自に調査・研究を進めてきた。

ここ数年、「がんの見落とし」に関する裁判が急増しています。患者側は「どうしてくれるんだ!」と激怒して病院を訴えますが、私は、見落とされてかえって良かったかもしれないと思うんです。へたに発見されて激しい治療を受けていたら、もっと苦しい思いをして、寿命を縮めてしまう可能性があるからです。

例えば、こういうケースが例にあげられる。

膵癌は、手術可能な症例が2~3割である。手術後の再発率が極めて高率で、手術により膵臓にできた癌をすべて切除できたとしても、約90%の患者が再発するといわれている。

だから、手遅れになる前に(手術できるうちに)発見してしまったら、治療するまで健康だったのに、治療をした途端衰弱し、自由に使える時間を失ったあげく、結局は再発するということになる。しかし、生存期間は延びる可能性がある。

手遅れで見つかったら、治療によるダメージを受けなくて済み、ギリギリ(癌自体によって衰弱する時期)まで元気で過ごせるのである。

余命半年で見つかった場合、最期の半年まで症状がなく、仮にこれから苦しむとしてもわずか半年以内なのである。早期に見つかったら、苦しい治療を受けるから、それでは済まない。

寿命を縮める縮めないについてはケースバイケースである。

私は、治る可能性が高いから治療するのが自然な考え方だと思うのである。8割9割治るなら、治療したほうがいいだろう。しかし、高率に再発する、つまり治らないと分かっているのに、正常細胞をも叩いて、徹底的に治療するのがスタンダードなのだから不思議なことだ。

だから、癌をすべてひっくるめて、見落とされたほうがトクだったということはできない。早期発見したら高率に治る癌なら、見落とされたら不利益ということになる。

逆に、癌を全部ひっくるめて、「見落とされたから損した、死んでしまった」という論理は間違っている。

私は過去20年にわたって、世界中で発表された検診の結果に関する論文を読んできました。睡眠時間、体重、生活習慣、過去に受けた医療行為など、あらゆる条件を考慮した上で、がん検診を受けた人と受けない人が十数年後にどうなっているか、追跡調査した結果にもとづく論文などです。その中で最も衝撃的だったのが、20年以上前にチェコスロバキアで行われた肺がん検診の追跡調査です。そこでは、検診を定期的に受けていたグループは、受けなかったグループより肺がんの死亡率が圧倒的に多く、それ以外の病気による死亡率も明らかに多いという驚愕の結論が出ているのです。

その後、欧米各国でより精密な追跡調査が行われてきましたが、その多くが同様の結果でした。つまり、「検診を受けようが受けまいが、寿命が延びることはない」のです。

有名な1990年のチェコ・レポートである。

6300人の男性をガン検診する人(年2回を3年間継続)とガン検診しない人の半分ずつに分けたところ肺ガンでは検診をした人たちがしない人たちより死亡率が1.36倍多かった。

胸部CTではなく胸部エックス線検査!?その程度で差が出る?そもそもがん検診を受ける人って、心配性だろうから、精神的要因によって死亡率が上昇している可能性もあるだろう。

肺がんだけでなく、他のがん検診でも、同傾向の結果が出ています。
肺がんの検診を受けると、なぜ死亡率が高くなるのか。理由の一つはエックス線検査にあります。

国や専門家たちは、「エックス線検査には放射線被曝というデメリットがあるけれど、それ以上にがんの早期発見というメリットの方が大きい。だから害は無視できる」と主張します。

しかし、これには科学的根拠がありません。私はありったけの関連論文を読んできましたが、放射線を浴びても、それを上回るメリットがあるということを科学的に証明した論文は、1本もなかったのです。

イギリスの研究チームが、医療用エックス線検査で起こったと考えられるがんを調べたデータがあります。その研究では、日本人のすべてのがんのうち、3.2~4.4%はエックス線検査が原因だと結論づけています。残念ながらこのレポートは、日本では話題にされることはありませんでした。

胸部エックス線検査でさえこれだけ有害なのですから、被曝量がその数十倍から百数十倍もあるCTを使った検診が身体にどれだけ大きなダメージを与えるかは、火を見るより明らかです。

検査のための被爆が日本人の癌リスクを上げているというデータがあることは肝に銘じなければならない。

PET検診というのがあり、全国各地にPETセンターがあり、癌の超早期の発見のためにPET検診を推奨している。

また、CTコロノグラフィという検査がある。大腸内視鏡検査よりも軽い下剤で、肛門から炭酸ガスを入れて腸管をふくらませ、CTをとって画像を再構成し、大腸内視鏡のような画像を再構成する仮想内視鏡(バーチャル内視鏡)である。つまりCTをとるだけなので苦痛がない。これは、大腸癌の術前検査に有用であるのだが、これをがん検診に活用する医療機関が増えているというのである。

過剰な医療被爆によって癌が誘発されるデータが出ているのを知らされず、癌の早期発見が身体によいものと思い込んで、大量被爆して身体を害するのである。