健康的な食生活はどういうものなのか。「具体的にこういう献立で健康になれる」というものがあったら毎日その通りに作ってみたいものですが、実はそんなものは存在しないのです。

長野は長寿日本一、健康寿命日本一、一人当たりの医療費は最低なので、長野の食生活がもっとも成果を出しているといえましょう。

しかし、「野菜中心」「味噌の消費量日本一」「ファーストフード店が少ない」は納得できますが、「塩分11g/日」「魚の消費量は少ない」など、従来提唱されてきた健康的な食生活と異なる部分があります。

沖縄県は、かつては長寿県だったのに、「豚肉を減らす」など、現代的な栄養学を指導した結果、逆に転落してしまいました。

ではどうすればいいのでしょうか?

 

ここで、食べたものはいつ排泄されるのかという話をします。

排便はなぜ朝に起こりやすいのでしょうか?

腸のぜん動運動(食べた物を肛門の方へと移動させる収縮運動)は、副交感神経(リラックスしているときに働く自律神経)が優位なときに活発化します。

そのため、仕事や勉強が終わってリラックスしていたり、落ち着いて食事を摂ったりしているときは比較的活発化しています。ただ、夜になるにつれて、ぜん動運動は徐々に弱くなっていきます。

一方、睡眠中は「モチリン」というホルモンが約100分毎に周期的に分泌されます。

このホルモンには「消化酵素の分泌を促進する」、「小腸内にある便を大腸へ送り出す」といった働きがあります。モチリンのこの作用によって、胃と小腸が空っぽになり、翌朝の食事を迎え入れる準備が整えられます。

腸の中を移動した便はS状結腸に滞留します。そして、この滞留している便は、「大ぜん動」という1日に2~3回起こる大きなぜん動運動によって、直腸へと押し出されます。大ぜん動によって便が直腸に到達すると、直腸から脳に信号が送られて「便意」が生じます。

大ぜん動は「胃に刺激が加わったとき」に生じます。胃への刺激が腸へと伝わり、大ぜん動が促されるのです。これを「胃・結腸反射」といいます。

ただ、「胃に刺激が加わったとき」といっても、昼食や夕食時より朝食時のほうが大ぜん動は起こりやすいです。なぜなら、昼食や夕食時と比べて、朝食時のほうが胃は空っぽに近いため、胃への刺激は強くなるからです。

さらに朝食時には、S状結腸にある程度の便が滞留しています。そのため、朝食を摂ることで大ぜん動が引き起こされると、S状結腸に溜まった便の排泄が促されることになります。これが「朝に便意を生じやすい理由」です。

 

ということで、食べたものは翌朝排泄されます。脱線しますが、「便秘にはヨーグルトが効く。食べたらその日のうちに便秘が解消される」という人は、消化不良で便が排泄されてしまっている可能性があります。

ということで、その日の腹の調子が正常でなかったら、前日、間違ったことをしていないか考えます。食生活が悪い他に、ストレスや睡眠不足、身体を冷やすなど、いろいろな可能性があります。

腹の調子は、自分では正常だと思っていても、正常ではないことが実に多いです。便が毎日出ていても、消化不良の食べ物が混じっていることもあるし、沢山食べても異常にお腹がすくなら、消化不良の可能性が高いです。残便感があったり、下腹がぽっこりでていたら、残便で腹が張っていることが考えられます。

また、食べ過ぎや、逆にカロリー不足は、その日のうちに、空腹感が酷かったり、逆にお腹がすかなくなったりして気づくことができるでしょう。

「腹八分目」といいますが、食べた直後は、適切な量かどうか分からないものです。食べて時間が経ってから、「足りなすぎる」と分かります。その経験を蓄積することで、自分に合った量の見当がつきます。

ですから、そのような、消化吸収に注目していれば、すぐに自分の不健康な生活習慣に気づいて修正できます。

現代的な栄養学というのは、そういうときにこそ効果を発揮します。

 

私は、最近、日記をつけて、食べた献立や、それをふりかえって推測されることを記録しています。

それで私が気づいたのは、

  • ごほう、さつまいも、ひじき、きのこなど、確かに整腸効果がある。しかし、さつまいもをたくさん食べたいから米飯(麦ご飯ですが)を減らそうなんてやると逆に翌日の便通が悪くなった。だからバランスが大事である。おそらく、蛋白質が足りない場合も,同様に気づけると思うのである。
  • おきたらすぐ湯をわかしてスパイス入りの熱いお湯を飲むとその日の体調が良いと感じた。
  • ショウガを飲むと確かに冷え性に効くように思う。
記録をつけないと、「何々が健康によい」という説を真に受けて、実際の効果を深く考えないものです。
 
玄米菜食、ナチュラルハイジーン、アーユルヴェーダなどの提唱する食生活には、いずれも、良い教えも危険な教えも含んでいます。現代の栄養学にも多少の問題はあります。欧米人に合わせた栄養学が、そのまま体質の違う日本人に合致するはずがないのです。
実際に、消化吸収の症状に注目して、自分の食生活のどこが悪いのか考えて修正していけば、健康的な食生活に近づけると思います。
アーユルヴェーダにおいて、消化不良によって生じる未消化物を「アーマ」といいます。アーマが蓄積するとドーシャ(体質)が乱れるため、あらゆる病気の原因となるといいます。
実に的を得ていると思います。ただし、消化不良だけでなく、食物繊維が足りない、何々の栄養が足りない、食べ過ぎ等も含みますが・・・。
間違った生活による悪い結果は,一番最初に消化器症状にあらわれます。それを見過ごして放置すると、あらゆる病気に発展するし、消化器症状のうちに修正すれば、あらゆる病気を予防できるということです。