いつも社長のきもちのブログを読んでいただきありがとうございます。
今回は建設業や卸売・小売業などの企業間取引で使用されることもある約束手形について触れてみたいと思います。
だんだんと約束手形が決済に使用されることは少なくなっていますが、経済産業省は2026年をめどに利用廃止するよう、金融業界や産業界に対応を求める方針を明らかにしたようです。
その背景には現金決済が増えたこと、印紙税・郵送・保管コストを負担しなければならないこと、紙媒体のため紛失リスクもあるなど様々なことが関係していると考えられます。
そもそも約束手形は振出人が支払いサイトを決めるため、商慣行によって決済までの期間が長くなってしまうのが受取側の企業の悩みのタネでした。
中小企業にとっては資金繰り負担を重くする要因となっており、支払期日まで対応できなければ手形割引や裏書譲渡などにより資金調達しなければならなくなります。
さらに近年では手形など債権を電子化し、インターネットで取引する電子記録債権へシフトする動きも見られるなど、デジタル化が進む時代にそぐわない取引とも考えられているようです。
デジタル時代に適応するように2013年2月にスタートした「でんさい」ですが、実際のところ2020年における交換高は手形の約6分の1にとどまっており、普及は進んでいません。
このような状況での約束手形の利用廃止は、中小企業の資金繰りや電子化対応支援の課題も残しているといえます。
とはいえ約束手形を使わず振込み払いや電子記録債権へ移行を進めれば、支払いまでの期間を短期化できることは間違いありません。
そのため経済産業省も、古い商習慣が残っている業界の事情にも配慮しながら計画と実行を促しつつ、廃止に向けた取り組みを進めるとしています。
しかし約束手形が廃止されたときには、「不渡り」の仕組みはどうなるのか気になるところです。
「不渡り」とは、手形を振り出した企業が期日までにお金の準備ができず決済できなったときの扱いを指しています。
半年で2度不渡りを出した企業は、金融機関との取引は停止され事実上の倒産として扱われます。
電子記録債権でも紙媒体の手形と同じように、半年で2回支払いができない状態となれば、不渡りと同じ扱いとなり金融機関との取引は停止されます。
ただし現金による振込み払いには不渡りの仕組みはないため、支払側がいろいろと理由をつけ支払いを遅らせる可能性も出てきます。
手形の利用廃止を促す一方で現金決済を勧めるのであれば、受取側の権利を保護することの検討も必要ではないでしょうか。
近年ではインターネットバンキングの普及も増えているため、債権の電子化にも対応できると考えられている反面、高齢の経営者などはインターネットでの手形決済に躊躇する傾向も多く見られます。
しかしコロナ禍においてすでに経営体力が低下している状況で、コロナ支援の追加融資も受けられず、長い支払いサイトの間の資金を調達することもできなければ倒産や廃業する企業は増えてしまうでしょう。
安全に短期のサイトで回収できることは望ましいことですが、高齢の経営者が多い中小企業の実情を反映した取り組みや支援制度が必要ではないかと考えられます。
そして手形という決済手段の利用が廃止されれば、手元の手形を現金化し資金調達する手段も失ってしまいます。いざというときに手形割引を利用していた経営者にとって、実際にそれが痛手とならないとも限りません。
ただ、振込払いするときには売掛金が発生していますが、この売掛債権を売却することでも資金調達は可能です。
その方法をファクタリングといいますが、むしろ手形割引より審査のハードルが低く利用しやすいことが特徴なので、手形の利用が廃止されても売掛金を保有していれば資金調達はできます。
もし今後の資金繰りや資金調達でお悩みのことなどありましたら、気軽に社長のきもちにご相談いただければと思います。