Also Known As(AKA) : (original title) Roman Holiday USA Roman Holiday UK Roman Holiday France Vacances romaines Italy Vacanze romane Germany Ein Herz und eine Krone Spain Vacaciones en Roma Finland Loma Roomassa Denmark Prinsessen holder Fridag Russia Римские каникулы Poland Rzymskie wakacje Hungary Római vakáció Slovakia Prázdniny v Ríme Korea 로ー마의 休日 Japan(Japanese title) ローマの休日
“美男美女”Gregory Peck& Audrey Hepburn : (Actors Gregory Peck as Joe Bradley and Audrey Hepburn as Princess Ann in a publicity still for the film “Roman Holiday”, 1953. )【私は数十年に及ぶ自らの映画鑑賞史上、正真正銘の“美男美女”というと、ただちにGregory Peck & Audrey Hepburnという好一対の男女の組み合わせを連想する―。】
cf. 第26回アカデミー賞授賞式(開催日:1954年3月25日)で主演女優賞を受賞したAudrey Hepburn : (Audrey Hepburn winning the Best Actress Oscar for her performance in “Roman Holiday” at the 26th Annual Academy Awards in 1954. Presented by Donald O'Connor and Gary Cooper.)
cf. 第35回アカデミー賞授賞式(開催日:1963年4月8日 )で主演男優賞を受賞したGregory Peck : (Sophia Loren presenting Gregory Peck the Oscar for Best Actor for his performance in “To Kill a Mockingbird”(邦題『アラバマ物語』) at the 35th Academy Awards in 1963. Introduced by Frank Sinatra.)
cf. 第60回アカデミー賞授賞式(開催日:1988年4月11日)でプレゼンター(賞の授与者)を務めたGregory Peck& Audrey Hepburn : (Audrey Hepburn and Gregory Peck presenting the Oscars for Writing (Screenplay Based on Material from Another Medium) to Mark Peploe and Bernardo Bertolucci for “The Last Emperor” and for Writing (Screenplay Written Directly for the Screen) to John Patrick Shanley for “Moonstruck” , at the 60th Academy Awards in 1988.)【『ローマの休日』から35年後の二人 】
cf. Gregory Peck(1916年4月5日~2003年6月12日〈87歳没〉) : (Eldred Gregory Peck was an American actor who was one of the most popular film stars from the 1940s to the 1960s. Peck continued to play major film roles until the late 1980s.)
cf. REMEMBERING AUDREY HEPBURN(1929年5月4日~1993年1月20日〈63歳没〉) : [The images shown in this slideshow are mainly from her earlier films(which include Roman Holiday, Sabrina, etc) and some of her family photos as well.]
《真実の口》(Bocca della Verità〈ボッカ・デラ・ベリタ〉/Mouth of Truth) Clips :
[アーニャ(アン王女)とジョーとアーヴィングの3人の着いた先が、サンタ・マリア・イン・コスメディン教会内にある石の彫刻《真実の口》。「嘘つきの手は食いちぎられる」とジョーから聞かされたアンは、自分が王女であることを隠している(嘘をついている)負い目からか、左手を唇に近づけはしても、なかなか口の中にまで手を入れることができない。「あなたが、やってみて」とジョーに順番を渡すことに。ジョーは恐る恐る口の奥の方まで右手~指先から手首まで手全体(いくらか前腕に及ぶ)~を差し込む。その瞬間、自らの手が今まさに食いちぎらているかのように、悲鳴を上げて踠(もが)き始めた。そんな異様な彼の姿にショックを受けながらも、必死になって彼に飛びつき、その背中にしがみつき、後ろから彼を引っ張って助けようとするアーニャ。ほどなく口から引き出された、右手のないジョーの腕。それを一瞥して、「キャー!!」と顔を覆って泣き叫ぶアーニャ。ところが、ジョーはやおら、袖に隠していた右手を出して、掌(てのひら)をパッと開きつつ、戯(おど)けて「Hello」と言う。無傷のままのジョーの手を見て、「ひどいわ!何ともないじゃない!大丈夫なのね!」(You beast!It was perfectly all right!You’re not hurt!)と怒りながらも、安堵の胸を撫で下ろすアーニャだった。/SHE IS SO CUTE IN THIS SCENE!]
(テヴェレ川に飛び込み、エージェントたちを撒いて無事に岸辺に辿り着いたジョーとアーニャ。そして、冷たい川の水に体温を奪われて終始震えっぱなしのアーニャを抱き寄せて必死に温めようとするジョー。Joe「大丈夫か?」→Anya「あなたこそ」→Joe「大丈夫だとも」。二人は「さっきの君はすごかった」→「あなたも まあまあね」と、先の大乱闘での互いの健闘を冗談交じりに称え合う。そして、そのまま思わず魅入られたかのように衝動的に、ジョーはアーニャに口づけをしてしまう。それを抵抗することなく、受け入れるアーニャ。そして、アーニャに惹かれている自分の気持ちの変化に戸惑うジョー。初めてキスを交わした二人はその後、「とりあえず濡れた服と体を乾かそう」と、照れくさい雰囲気を払拭するかのようにジョーのアパートに向かう。/One of the most moving kisses in the entire history of cinema!)
ジョーの部屋に戻り、服も乾かした二人。夜は更け、とうとう迫ってきた別れの時。アーニャ(アン王女)は身分を偽って束の間の休日を楽しみながらも自分が王位継承者であることを自覚しており、“1日だけ”という約束通り、夜には宮殿に戻ると決めていた。やがてアーニャを乗せ、彼女が指示する場所~某国大使館の前~へと車を走らせるジョー。ついに目的地に到着…。しばしの沈黙の後、「お別れしなくてわ(I have to leave you now.)」と口を開いたアーニャ。そして、「私はこれから、あの角を曲がります。あなたは車から降りないで、このまま帰って。私が角を曲がったら、もう見ないと約束して。そのまま帰ってお別れして。私が、そうするように」(I’m going to that corner there and turn. You must stay in the car and drive away. Promise not to watch me go beyond the corner. Just drive away and leave me as I leave you.)とジョーにお願いする。恋してはいけない女性に恋してしまったジョー。苦しい表情を浮かべながらも、彼は彼女の願いに素直に頷く。目に涙を浮かべたAnya:「私はサヨナラをどう言えばいいか分からない。言葉が思いつかない」(I don't know how to say goodbye. I can't think of any words.)→Joe:「言わなくていい」(Don’t try.)。感極まったアーニャとジョーは、ひしと抱き合って最後の熱いキスを交わす。そして、暗闇の先へと続くそれぞれの「元の世界」へと戻っていった。アーニャはもう、ジョーの手の届かない、遠い世界の女(ひと)、“Princess Ann”である。
(車中で別れを惜しむ~結ばれない愛に泣く~二人)
(アン王女に戻ったアーニャは、小走りに大使館に駆け込んで行く…)
宮殿(大使館)に戻ったアン王女は、大使とヴェレベルグ侍従長とプロヴィノ将軍を前に、気丈に振る舞う。心配のあまり問いただす大使と王女の言葉のやりとり: 大使:「王女様、24時間を丸々無駄にされましたな」 王女:「してないわ」 大使:「両陛下には何と申し開きを?」 王女:「病気だったが、回復したと」 大使:「自覚してくださいまし、私に義務(duty)があると同様、王女様にも義務があるのです」 王女:「お言葉ですが、私に対してその言葉を二度と使わぬように。わが王室と祖国に対する義務をわきまえていなければ、今夜帰っては来なかったでしょう。この先も永久に…」(Your Excellency, I trust you will not find it necessary to use that word again. Were I not completely aware of my duty to my family and to my country, I would not have come back tonight... or indeed ever again!)「 さて、今日は予定の行事が沢山あって忙しいですよ。もう下がってよろしい」
翌日の朝、ヘネシー支局長が目を輝かせてジョーのアパートにやってきた。 支局長:「ジョー、手に入れたか?」 ジョー:「何をです?」 支局長:「王女の特ダネだよ。手に入れたか?」 ジョー:「ダメだった」 支局長:「そんなはずない」 ジョー:「…コーヒーでもどうです?」 支局長:「もったいぶるな」 ジョー:「誰がです?」 支局長:「君がだよ。分かってるぞ。王女の特ダネをモノにすると提案した後、君はいなくなった。大使館から王女失踪の噂も聞いた」 ジョー:「噂をいちいち本気にするんですか?」 支局長:「ほかにもある。川でのパーティーのこと。某国の8人のSS要員が拘束されたこと。それに王女が奇跡的に回復したことで合点がいく。(今更出し惜しみをして)記事の値段を吊り上げるつもりか。約束は約束だ。今すぐ出せ。記事はどこだ」 ジョー:「ありません」(I have no story.) そこへ、“写真”を現像したアーヴィングが、喜び勇んでやってきた。「これを見てみろよ!」―すごい写真が撮れたと興奮するアーヴィング。ジョーはヘネシー支局長にアン王女の極秘撮影の事態を気取られまいと、ことさらにアーヴィングに嫌がらせをする。水をひっかけたり→足を掬って転倒させたり…。一悶着を起こすジョーとアーヴィングを、呆気(あっけ)に取られて見つめるヘネシー。やがて業を煮やしたか、先のジョーへの話を続けて言う。「昨日の君の口ぶりでは…」 ジョー:「確かに作日は目算があった。でも、それが外れた。ただ、それだけの話。記事(特ダネ)はありません(There is no story.)」(この言葉を耳にして一瞬、顔に驚きが走り、目を見張るアーヴィング…) 支局長:「分かった(Okay.)。王女は今日また、同じ時間、同じ場所で記者会見を開く。せめて、その記事ぐらいはモノにしてくれるだろうな。500ドル(bucks)の貸しだぞ(忘れるな!)」 ジョー:「週に50ドル、給料から引いてください」 支局長:「言われなくとも、そうするよ」 ヘネシーが帰った後、アーヴィングはしんみりとした口調で言う。「どうした?もっと、いい買い手がついたのか?」 ジョー:「アーヴィング、どう説明すればいいのか…。記事についてだが、この写真につけるための記事はない」 アーヴィング:「なんでだ?」 ジョー:「つまり、自分は関われない、ということだよ」(I mean, not as far as I'm concerned.) このジョーの言葉を聞いた途端、思い当たる節があるのか、顔に複雑な表情を浮かべるアーヴィング。が、すぐに気を取り直して言う。「写真はうまくできたよ。ちょっと見るかい?」 アン王女を撮った写真は、“カフェで人生最初のタバコを吸う王女”、“「真実の口」に向き合う王女”、“美容師マリオと踊る王女”、“「祈りの壁」に願いを込める王女”など、実に鮮やかな傑作ばかり。アーヴィングが見せる写真に眺め入りながら、王女⇒アーニャの、何か微笑(ほほえ)ましい甘やかな情景が次々と脳裏に現われて、悦に入るジョー。そして、ダンスパーティー会場での大乱闘の中、アン王女がSS要員にギターを振り下ろす瞬間の写真を前に、ジョー&アーヴィング二人していやが上にも気分が盛り上がり、Wow!ベストショット!まさに感嘆措(お)く能わず!しかし、須臾(しゅゆ)にして我に返って、物思わしげな顔つきをするジョー。アーヴィングはその顔色を窺いながら、彼にはっきりと言明する。「彼女は凄い特ダネなんだ(She’s fair game.)。常にカメラから狙われる。…どうかしてるぞ(もっと冷静になれよ)(You must be out of your mind.)」 ジョー:「分かってるけど…。でも、君が写真を売りたいのなら邪魔はしない。いい値がつくぞ」 アーヴィング:「Yeah!」 ジョー:「記者会見には行くのか?」 アーヴィング:「君は?」 ジョー:「ああ、仕事だからな」 アーヴィング「また後で」
記者Bの質問:「王女様(Your Highness)のお考えでは、ヨーロッパの経済問題について、連邦化(federation)は解決策となりえましょうか?」 王女:「ヨーロッパの協力関係(cooperation in Europe)が緊密になるのであれば、いかなる政策にも賛成です」 【政治的な質問に、抑制のきいた回答でそつなく対応するアン王女!】
記者Cの質問:「では、国家間の友好関係については、今後どのような展望をお持ちですか?」(And what, in the opinion of Your Highness, is the outlook for friendship among nations?) 王女:「私は国家間の友好は守られるものと信頼しています。人と人との間の友好関係を信頼しているように」(I have every faith in it... as I have faith in relations between people.)【これは公的な言葉でありながら、暗にジョーに向けて投げかけられたものであり、その意味合いを正当に理解できる者はジョーのみ。王女とジョーだけに特別な意味を持つ言葉である。事前に準備した公式コメントとは異なる発言をする王女に何のことかと戸惑う側近たちだった…】 ジョーは王女の言葉を受けて発言する。「わが通信社を代表して申しますが、王女様の御信頼は決して裏切られることはないものと信じます」(May I say speaking for my own press service, we believe that Your Highness's faith will not be unjustified.) 王女:「そのお言葉をお聞きし、大変嬉しく存じます」(I am so glad to hear you say it.)
記者Dの質問:「御訪問された都市の中で、どこが一番お気に召されましたか?」(Which of the cities visited did Your Highness enjoy the most?) しばし答えに迷い沈黙する王女。傍らに立つプロヴィノ将軍が慌てて、低い声で彼女に耳打ちする。“Each in its own way...” と。この用意された決まり文句に促されて、「それぞれの都市はそれぞれのやり方で…忘れ得ぬ思い出になりました。一番を選ぶのは難しいことと…」(Each in its own way was...unforgettable. It would be difficult to...)と当たり障りのない答えを口にしかけた王女。だが、お仕着せの常套句はここまで!彼女は突然霊感に打たれたかのように、万感の思いを込めてキッパリと言い切る。 「ローマです。何と言ってもローマです。私は、この地を訪れた思い出を懐かしく思うことになるでしょう、私が生きている限り」(Rome;by all means, Rome. I will cherish my visit here, in memory, as long as I live.)【これは王女が今回の欧州親善旅行で初めて自らの本心を打ち明けた言葉であり、そしてそのようなものとして、何よりもジョーに対する偽りない本心からの言葉でもあった。】 王女の意外な発言に記者たちはどよめく。側近たちは驚愕する。「ローマでは病気で御静養されていたにも関わらずですか、王女様?」(Despite your indisposition, Your Highness?)との記者からの声。アン王女:「病気静養していたにも関わらずです」(Despite that.)
写真撮影後、アン女王は「記者の皆様にご挨拶をしたいと思います」(I would now like to meet some of the ladies and gentlemen of the Press.)と言い出す。そして自ら、各メディアの記者たちの並ぶところに降りて来て、一人一人に挨拶をしながら握手して回る。この王女の、予定にはない、異例の振る舞いに不意を打たれて面食らう側近たち。 やがて女王がアーヴィングの面前に立つ。アーヴィング:「CRフォト・サービスのアーヴィング・ラドヴィッチ(Irving Radovich)です」→王女:「How do you do?」。二人は軽く握手を交わす。そして、アーヴィングは「お渡ししたいものが…ローマ御訪問の記念写真(some commemorative photos of your visit to Rome)です」と言いながら、盗撮していた「王女のローマの休日」の写真が入った封筒を手渡した。封筒を開け、パーティー会場でギターを振りかざして応戦する自分の“姿”を目にした王女は、少し驚きながらも、「大変感謝します」(Thank you so very much.)、嬉しそうにその封筒を受け取った。
アーヴィングの次はジョー。王女はついにジョーの元へ。この時、二人は初めて出会ったかのように…。ジョー:「アメリカ・ニュース・サービスのジョー・ブラッドレー(Joe Bradley)です」→王女:「お会いできて大変幸せです、ブラッドレーさん」(So happy, Mr. Bradley.)。二人は互いに相手の顔をじっと見つめ合いながら、しっかりと握手を交わす。手を握ったまま、瞳で無言の会話を交わすこの数秒間が、二人にとって真に【最後のひと時】となった。
▼ Audrey Hepburn's Roman Holiday Screen Tests : (Oscar-winning costume designer Edith Head shows personality and costume tests for Audrey Hepburn in Roman Holiday, as seen on the television program You Asked for It.)
▼ cf. Audrey Hepburn dancing 'en pointe' in the film “The Secret People”(1952) : (A young Audrey Hepburn, who had trained as a ballet dancer from childhood, played Valentina Cortese's younger sister in this film. Here are all three scenes where she dances in the film. 同作〈邦題:『初恋』、監督:ソロルド・ディキンスン、日本初公開:1966年1月〉は、1930年代のロンドンを舞台として製作されたイギリス映画。)
▼ cf. Audrey Hepburn's First Film “Nederlands in Zeven Lessen”(『オランダの七つの教訓』1948年、日本未公開) : (It was a Dutch movie and she has a small role as a stewardess.)
※1940年代後半から50年代半ばにかけて、マッカーシズム(McCarthyism)による赤狩り(Red Scare)の旋風が吹き荒れる中、ハリウッドで活躍する監督や脚本家、俳優たちの中でアメリカ共産党と関連があったとして列挙された人物リスト、ハリウッド・ブラックリスト(Hollywood Blacklist)なるものが存在した。さらに、そのうち召還や証言を拒否して議会侮辱罪で有罪判決を受けた主要な10人を、ハリウッド・テン(Hollywood Ten)と呼んでいる。ダルトン・トランボ(cf. 本ブログ〈September 21, 2016〉)は、赤狩りに反対し、ハリウッド・テンの一人となった。禁固刑の実刑を受け、刑期終了後も映画界から事実上追放されたトランボは、メキシコに逃亡し、いくつかの偽名を使って脚本家としての仕事を続けた。『ローマの休日』の原案・共同脚本の場合は、トランボの友人でイギリスの脚本家、イアン・マクレラン・ハンターの名義で執筆。そして、第26回アカデミー賞では、そのハンターに「原案賞」が贈られた。1990年代に入って、映画芸術科学アカデミー(AMPAS)は冷戦期のレッドパージなどに起因する間違いを正すことに決め、1993年、既に故人となっていたトランボへ改めて「1953年原案賞」を贈呈する(なお、アカデミー原案賞〈Academy Award for Best Story〉自体は、57年度の第30回より廃止)。2011年12月19日、全米脚本家組合は『ローマの休日』の原案者クレジットをハンターからトランボに変更、ハンターとダイトンの2人が記載されていた脚本クレジットにトランボの名前を追加したと発表した。
本作は世界中で大ヒット作となった。日本でも1954年に劇場公開されるや否や、観客の心を魅了して、とりわけ「ヘップバーンカット」の髪型はブームとなったくらいである。 本作はアメリカン・フィルム・インスティチュート(American Film Institute、AFI)が“アメリカ映画100周年”を記念して2002年に選定した「愛と情熱の映画ベスト100」で第4位[『カサランカ』(1942年)→『風と共に去りぬ』(1939年)→『ウエスト・サイド物語』(1961年)に次いで]、同じくAFIが2008年に選定した「ロマンティック・コメディ映画ベスト10」で第4位[『街の灯』(1931年)→『アニー・ホール』(1977年)→『或る夜の出来事』(1934年)に次いで]にランクされた。 劇場公開されてからおよそ六十数年経った現在でも、繰り返し劇場やテレビ等で上映され続けているように、本作は世紀を超えて世界中の人々に愛され続けている恋愛映画の最高傑作であり、映画史に残る文字通りの不朽の名作にほかならない。
ジョヴァンニとの電話を終えたジョーは、意気揚々とヘネシー支局長のもとへ引き返して言う。 ジョー:「“this Dame”とのインタビューの価値は?」 支局長:「王女の話か?」 ジョー:「ドロシー・ラムーアの話じゃない。いくらだ?」 支局長:「お前が聞いてどうする?」 ジョー:「もし取れたら?」 支局長:「世界情勢についてのコメントなら250。ファッションの話なら1000くらい」 ジョー:「ドルで?」 支局長:「ドルだ」 ジョー:「あらゆる分野(everything)に関する話ならば?例えば、“王女様の個人的で秘密の願い”。わが社の記者による独占インタビューで密かな王女の心のうちを告白したら?これは支局長好みじゃなさそうですな…」 支局長:「恋の要素もあるのか?」 ジョー:「ほとんどが、それです」 支局長:「写真付きか?」 ジョー:「付くといくらに?」 支局長:「その記事なら、どこでもfive grand(5000ドル)は出すだろう。その前に、一つ聞かせてくれ。どうやってインタビューを取る?」 ジョー:「体温計に変装して病室に入り込む(I plan to enter her sick room disguised as a thermometer)。5000と言いましたね。では握手を」(二人は握手を交わす) 支局長:「王女は明日にもアテネ(Athens)に発つんだぞ。じゃあ、私と賭けをしないか。記事が取れなければ500だ」 ジョー:「…交渉成立」 支局長:「では約束の握手を。(二人の再握手直後、続けて)君には既に500貸してるから、負けたら1000の貸しだぞ。いつも私にカモられて(勝ち誇ったように哄笑 )」 ジョー:「ツキも今日で終わり。僕が勝ちます。そして、ニューヨークへ戻ります」 支局長:「負け犬が遠吠えしてるな」 ジョー(顔に柔和な笑みを湛えながら ):「本社で支局長のことを考えます。空の手綱を握って、ここに座っている姿をね」
急遽アパートに戻ったジョー。侍医が処方した鎮静剤がよほど強い眠り薬だったのか、“彼女”は寝椅子の上で、まだ眠りを味わっていた。新聞のアン王女と目の前の彼女を見比べてみると、やはり同一人物。試しに「王女様」(Your Royal Highness)と呼びかけると、「ええ、何の用?」(Yes, what is it?)と応答するではないか。ジョーはこれは本物だと確信するや否や、寝ている彼女を両腕で抱き抱えて長椅子から、わざわざベッドに移す …やがて目覚めた彼女は、薬の効果が切れ、すっかり正気を取り戻す。そして、知らない部屋に知らない男性といることに驚き入る
アン:「(私が着ている)このパジャマはあなたの?」 ジョー:「僕のだ」 アンは、右手を素早くお尻に触れ、ショーツをちゃんと穿いているかを素早くチェックする…。 アン:「ここは、どこなのか説明してくださる?」 ジョー:「僕の安アパートさ」 アン:「あなたが無理やり私をここに?」 ジョー:「いや、むしろ、その逆ですよ」 アン:「ここで一夜を過ごした…私ひとりで?」 ジョー:「僕を除けばね」 アン:「では、一夜を共にしたのね…あなたと?」(So I’ve spent the night here – with you?) ジョー:「その表現は、あまり正確とは言えない。しかし、見方によっては、そうだね」 ここで気持ちのわだかまりが吹っ切れて、晴れ晴れしい笑顔を浮かべたアン。そして、互いに思いがけない出会いを喜ぶかのように、「How do you do?」と挨拶&握手を交わすとともに、名前を聞き合うアンとジョー。 アン:「あなた(のお名前)は…?」(and you are…?) ジョー:「ブラッドリーだ。ジョー・ブラッドリー」 ジョー:「君の名前は?」(What's your your name?) アン:「私の名前は…アーニャ」(You may call me Anya.)
ごく普通の女の子のように楽しい時間を満喫するアーニャ。この間、彼女の後方からついてゆくジョーは、何とかスクープを狙おうとするも、手元にカメラがなく、証拠を残すことができない。それでも諦めきれず、「スペイン広場」の階段でジェラートを頬張る彼女のもとへ、偶然を装って再接近。「もう帰るべきよね」と立ち去ろうとする彼女に、「人生を楽しまないか」「丸一日冒険してみようよ」と提案する。そんなジョーの言葉に少し乗り気になったアーニャが応じる。「あなたには想像もつかないと思うけど。したいことをしたいわ、一日中ね」(Oh, you can’t imagine. I’d like to do whatever I liked, the whole day long.) ジョー:「例えば、散髪や食べ歩き?」。アーニャ:「そう、カフェのテラス席に座るわ、ウインドーを眺め雨の中を歩くの、楽しくワクワクすること…」。これを聞いたジョーは、「今日1日休みにするから、それを二人で一緒に全部やろう!」と、彼女の手を引き、スペイン広場を後にする。