普通人の映画体験―虚心な出会い -4ページ目

普通人の映画体験―虚心な出会い

私という普通の生活人は、ある一本の映画 とたまたま巡り合い、一回性の出会いを生きる。暗がりの中、ひととき何事かをその一本の映画作品と共有する。何事かを胸の内に響かせ、ひとときを終えて、明るい街に出、現実の暮らしに帰っていく…。

2019年11月22日(金)新宿武蔵野館(東京都新宿区新宿3-27-10 武蔵野ビル3F、JR新宿駅中央東口から徒歩2分)で、19:00~鑑賞。

「真実」 (2)

作品データ
原題 La Vérité
英題 The Truth
製作年 2019年
製作国 フランス/日本
配給 ギャガ
上映時間 108分


「真実」 (1)

第76回ベネチア国際映画祭⑴第76回ヴェネツィア国際映画祭⑵
      (第76回べネチア国際映画祭)

『万引き家族』で第71回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した是枝裕和監督が、全編フランスで撮影した自身初の国際共同製作映画。国民的大女優の母が自伝本を出版したことをきっかけに、娘との間に隠された心の闇が暴かれていく。主演はフランス映画界の至宝とも呼ばれる名女優カトリーヌ・ドヌーヴ。その娘役をジュリエット・ビノシュ、娘婿役をイーサン・ホークが務める。2019年8月28日、第76回べネチア国際映画祭で日本人監督作品では初めてコンペティション部門オープニング作品として公式上映された。

「真実」⑶

ストーリー
世界中にその名を知られる、国民的大女優ファビエンヌ・ダジュヴィル(Fabienne Dangeville - カトリーヌ・ドヌーヴ)※が、自伝本『真実』を出版。海外で脚本家として活躍している娘のリュミール(ジュリエット・ビノシュ)、テレビ俳優として人気の娘婿(イーサン・ホーク)、そのふたりの娘シャルロット(クレモンティーヌ・グルニエ)、ファビエンヌの現在のパートナーと元夫、彼女の公私にわたるすべてを把握する長年の秘書─。“出版祝い”を口実に、ファビエンヌを取り巻く“家族”が集まるが、全員の気がかりはただ一つ。「いったい彼女は何を綴ったのか?」
母が自分に内容をチェックさせずに出版したことに内心不満を抱いているリュミールは、本に目を通し、母の書き散らした嘘に驚き、傷つく。彼女の記憶の底には、自分を可愛がってくれた、母に役を奪われた今は亡きライバル女優、サラのことがわだかまっていた。この自伝に綴られた<嘘>と、綴られなかった<真実>が、次第に母と娘の間に隠された、愛憎うず巻く心の影を露わにしていく…。

※ファビエンヌはカトリーヌ・ドヌーヴの本名カトリーヌ・ファビエンヌ・ドルレアック (Catherine Fabienne Dorleac)のミドルネームから借用。

▼予告編



カトリーヌ・ドヌーヴ(Catherine Deneuve、1943~)、ジュリエット・ビノシュ(Juliette Binoche、1964~)、是枝裕和監督(これえだ・ひろかず、1962~) 特別インタビュー :



是枝裕和監督インタビュー本作公式サイト/INTERVIEW) :

──作品全体のトーンが非常に軽やかですね。
読後感の明るいものを作りたいという想いが強くありました。前作がバッドエンドだったとは思いませんが、今回は自分の中でも最も明るい方へ振ろうと決めて現場に入りました。

──フランスの二大女優との共演に、イーサン・ホーク(Ethan Green Hawke、1970~)さんを選ばれた理由は?
一番やりたい役者だったからです。リチャード・リンクレイター(Richard Linklater、1960~)との仕事を見ていて、今回のような作品を面白がってくれるだろうと。カトリーヌ・ドヌーヴさんも俳優として彼のことが大好きで、正式に決まる前から脚本を「イーサンをイメージして読んだ」とおっしゃっていました。

──ホークさんとは撮影前にどんなお話をされましたか?
最初に、「なぜ、僕が演じるハンクはわざわざフランスまで行くんだろう」と。役者から疑問をぶつけられるのは、とても大事なことです。樹木)希林さんにも、よく聞かれました。母親に幸せな家族を見せつけるためだとか、彼が実はお酒をやめていてなど、全てイーサンとのやり取りの中で作っていきました。ハンクの弱点を書いてくれて、非常に演じやすくなったと言われましたね。

──オーディションでマノン・クラヴェル(Manon Clavel)さんを選ばれた理由は?
声ですね。劇中のマノンも魅力的なハスキーボイスだという設定に変えました。

──リュディヴィーヌ・サニエ(Ludivine Sagnier、1979~)さんは?
彼女は元々、僕の作品を気に入ってくれていて。彼女に合わせて少し書き直しました。

──脚本執筆で、文化や慣習の違いなどはどうされましたか?
プロデューサー陣に第一稿を読んでもらった時に、「こういう言い方はしない」「この設定は違う」という意見が出たので、それを受け止めて修正していくという作業をしました。この年齢の子供とは川の字では寝ないとか、フランス人は70歳を過ぎても階段なんか気にしないとか。全てを受け入れたわけではありませんが。

──週休2日、1日8時間の規則的な撮影だったそうですね。
フランスでは、映画というものが、観ることも撮影することも日常なんです。日本はお祓いから入って寝食を共にして、お祭りやイベントですよね。僕に関して言うと、一度も体調を崩すこともなく、正しいやり方だと思いましたが、今日は調子が出てきたからもう少し撮りたいなと物足りないところもありました。

──演出方法は変えられましたか?
今までと同じ方法でやらせてもらいました。最初は変えるつもりだったんです。ジュリエット・ビノシュさんから自分の中に役を落とし込むのに3週間かかるから、前日に台本を直して当日渡すようなことはやめてほしいと言われたので。その時はそうすると約束したのですが、撮影が始まったらすぐに破ってしまいました。ビノシュさんは「諦めた」と言ってましたね(笑)。

──脚本が変わることに関して、ドヌーヴさんの反応は?
ドヌーヴさんは、お昼に来てメイクをしながら台本を開くので、変わっていてもいなくても関係ないんです。そこに呼ばれて、「今日のここなんだけれど、こういう風に言っていいかしら」と。マノンの目を見て「小鹿みたい」と褒める台詞もそうです。いろいろ提案してくださる。希林さんと一緒でしたね。

──現場でのお二人は?
ドヌーヴさんは、どのシーンも必ず素晴らしいテイクがある。そこがやっぱりすごいと思います。自分でもわかっていて、それが出るととても嬉しそうにされて、「今のが、OK」と。「今晩8時にディナーの約束をしているの」という日は、早い段階でそれが出ましたね(笑)。その点、ビノシュさんは正反対で、既にベストなテイクがあっても、もっとよくなるんじゃないかと何度もトライしたいタイプでした。

──母と娘の対決と和解のシーン、二つの山場があります。
対決のシーンは、昼間のうちにたまっていったリュミールの想いが噴出し、娘に引き金を引かれた母親がどう反撃しつつ、ある種のもろさを出すかというところが重要でした。和解のシーンは、抱き合った後に女優に戻る母に娘が仕掛け返すシーン、あれは撮影途中で書いたシーンで、何テイクか撮って編集で着地点を決めています。

──撮影監督のエリック・ゴーティエ(Eric Gautier、1961~)さんは?
素晴らしかったです。人間と空間を非常に瑞々しく撮っている。僕がカットバックで考えていたものをワンカットで撮るなど、すごく動き回っているのですが、全てが的確なワークで見事でした。

──音楽は?
今回は、多幸感のある音楽をと考えて、いくつか送ってもらったデモを聞いて、アレクセイ・アイギ(Alexei Aigui、1971~)に依頼しました。テーマは動物園。ファビエンヌに魔法で動物に変えられた大人たちがいるにぎやかな空間に、孫娘が遊びに来た時に響いている音楽というイメージです。

──エンドロールのドヌーヴさんも素敵でした。
あそこまで、豹柄が似合う人はいませんよね(笑)。
2019年11月19日(火)「アップリンク吉祥寺」(東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目5−1 吉祥寺パルコ地下2階、吉祥寺駅北口から徒歩約2分)で、19:10~鑑賞。

「アイリッシュマン」

作品データ
原題 The Irishman
製作年 2019年
製作国 アメリカ
配給 Netflix
上映時間 209分


マーティン・スコセッシ監督とロバート・デ・ニーロが、『カジノ』以来24年ぶりにタッグを組み、チャールズ・ブラント(Charles Brandt、1942~)のノンフィクション“I Heard You Paint Houses”(2004)(高橋知子訳『アイリッシュマン』早川書房、2019年)を映画化した実録犯罪大作映画。第二次大戦後のアメリカ裏社会の盛衰を、実在の殺し屋フランク・シーラン(Frank Sheeran、1920~2003)の半生を通して描き出す。『シンドラーのリスト』『ギャング・オブ・ニューヨーク』のスティーヴン・ザイリアンが脚本を手がけ、アル・パチーノ、ジョー・ペシ、ハーヴェイ・カイテルらハリウッドのレジェンド級俳優が共演する。Netflixで2019年11月27日から配信。日本では配信に先立つ11月5日に第32回東京国際映画祭のクロージング作品として上映、また11月15日から一部劇場にて公開。

ストーリー
1975年、全米トラック運転組合「チームスター」のリーダーであるジミー・ホッファ(アル・パチーノ)が忽然と姿を消した。その失踪事件に関与した疑いをかけられたのは、伝説的マフィアのラッセル・バッファリーノ(ジョー・ペシ)に仕えていた殺し屋“アイリッシュマン(The Irishman)”ことフランク・シーラン(ロバート・デ・ニーロ)だった。第二次世界大戦後の混沌としたアメリカ裏社会を背景に、シーランの数十年にわたる物語が描かれる…。

▼予告編



▼特別映像-ロバート・デ・ニーロ(Robert De Niro、1943~)演じる“フランク・シーラン”の軌跡



▼特別映像-豪華キャストらが語る制作舞台裏



マーティン・スコセッシ監督(Martin Scorsese、1942~)単独インタビュー



アル・パチーノ(Al Pacino、1940~)単独インタビュー

2019年11月15日(金)新宿ピカデリー(東京都新宿区新宿3-15-15、JR新宿駅東口より徒歩5分)で、14:55~鑑賞。

「アンドレア・ボチェッリ 奇跡のテノール」

作品データ
原題 La musica del silenzio
英題 The Music of Silence
製作年 2017年
製作国 イタリア
配給 プレシディオ/彩プロ
上映時間 115分


イタリア出身の世界的テノール歌手アンドレア・ボチェッリ(Andrea Bocelli、1958~)の波瀾万丈の半生を、本人が執筆した自伝的小説“The Music of Silence”(1999)を基に映画化。少年時代に失明しながらも、歌手としての才能を開花させていく過程が描かれるボチェッリの役どころであるアモスをTVシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』の新鋭トビー・セバスチャンが演じ、アモスを導くマエストロ役を『デスペラード』のアントニオ・バンデラスが演じる。監督は『イル・ポスティーノ』のマイケル・ラドフォード。なお、主人公アモスの歌唱シーンは、すべてボチェッリ本人が吹き替えている。1996年に世界中で大ヒットした「CON TE PARTIRÓ/Time to Say Goodbye」をはじめ「 AVE MARIA/アヴェ・マリア」、「NESSUN DORMA/誰も寝てはならぬ」(オペラ「トゥーランドット」のアリア)などを披露している。

ストーリー
イタリア・トスカーナ地方の小さな村。アモスは眼球に血液異常を持って生まれ、幼い頃から弱視に悩まされていながらも、明るく過ごしていた。ところが12歳の時、学校の授業でサッカーボールが頭に当たり持病が悪化、失明してしまう。不自由な暮らしに鬱憤を抑えきれず、両親を困らせるアモス。その様子を見かねた叔父(エンニオ・ファンタスティキーニ)が、元来歌が上手なアモスを音楽コンクールに連れていく。すると、その美しい歌声が評価されたアモスは、見事に優勝を果たす。しかし喜びも束の間、すぐに声変わりが始まり、持ち前の美声が出なくなってしまう。これを機に、歌手になる夢を断念し、親友とともに猛勉強に励み、弁護士を目指すことに。
大人になったアモス(トビー・セバスチャン)は、大学に進んだ後、ピアニストとして音楽を嗜んでいた。バーでの生演奏をするアルバイト中、客からのリクエストで歌声を披露。その歌声に感激した友人が数々の有名オペラ歌手を育てたスペイン人の歌唱指導者、マエストロ(アントニオ・バンデラス)を紹介する。マエストロとの出会いがアモスの人生を一変する。改めて歌手の道を目指すことを決意した彼は、マエストロの徹底した厳しい特訓に臨み、実力を伸ばしていく。気まぐれな音楽業界に振り回されながらも、順調にキャリアを積んでいくアモスだったが…。

▼予告編 :



▼特別インタビュー映像(EPK) :



マイケル・ラドフォード監督(Michael Radford、1946~) インタビュー本作公式サイト - Interview) :

Q.アンドレア・ボチェッリの自伝が原案ですが、どの程度脚本に反映させたのですか?
A.原案にほぼ忠実に書きました。彼は生まれた時に部分的に視覚障害がありました。その後回復の兆しを見せ、そして手術によってさらに少しだけ視野を取り戻しました。盲学校に通っているときサッカーボールが目に直撃して、それが原因で再度視覚を失ってしまいます…。本作は彼が有名な歌手になるまでの人生を描いています。転換点は有名歌手のズッケロと共演したコンサートです。ズッケロはこのデュオで「ミゼレーレ」を披露しました。元々はルチアーノ・パヴァロッティとツアーを回っていましたが、彼の体調が悪くなったためボチェッリに話が来て、ここからキャリアがスタートします。ここに来るまで彼はとても長い間待たされました。名が知られるようになったのは40歳になろうかという時でした。

Q.映画製作においてボチェッリとは密に連絡を取り合っていたのですか?
A.ある部分ではね、よく連絡していました。友人になりましたよ。脚本は『イル・ポスティーノ』(94)でも参加してくれたアンナ・パヴィニャーノと共同で作りました。また一緒に仕事ができて素晴らしい時間を共有できました。存命の人の伝記映画は多くの困難が付きまといます。その人の私生活のリズムと映画で描くべきリズムは別物なので、そこを変えなくてはならない。本当のことを偽るのではなくて映画的にするのです。存命であればその部分に口出ししてきますから。目は見えなくても聞くことはできますしね。「いや、そこはそうではなかったな」とかね。でもボチェッリは映画をとても気に入ってくれました。

Q.「この人にボチェッリを演じてほしい」とあなたに思わせたトビー・セバスチャンはどうでしたか?
A.私だけではなく、みんながそう思っていました。初めてトビーと会った時、とても良い俳優でボチェッリに似ていなくもない、そっくりというわけでもないがきっと彼はボチェッリになれると思いました。ボチェッリの家族も含めてスタッフ全員がそう思ったのです。

Q.アントニオ・バンデラスがボチェッリのマエストロとして出演していますが、キャスティングの決め手は何ですか?
A.映画を撮るときは名前のある俳優を起用しようとするものです。その方が売れますから。アントニオ・バンデラスはイタリアで大スターです。もちろん世界的スターですが特にイタリアで大人気なのです。実際仕事をしてみて、彼は絶対的に、圧倒的に、素晴らしい俳優でした。完全に役に入り込み、たくさんのアイデアを出してくれました。

Q.この映画を観る人は涙を流すでしょうか?
A.もちろん(笑)。私は本作をとても気に入っているし、感動ポイントもありますから!

音符 cf. Andrea BocelliSarah BrightmanTime To Say Goodbye” → Sarah Brightman “Time To Say Goodbye”(English Version) :



【「Con Te Partirò」(コン・テ・パルティロ/君と旅立とう)は、アンドレア・ボチェッリの代表的オペラティック・ポップ楽曲。作詞(全編イタリア語)はルーチョ・クアラントット、作曲はフランチェスコ・サルトーリ。1995年2月にサンレモ音楽祭で初めて歌われ、同年春発売のセカンド・アルバム「Bocelli」の1曲目に初収録されたが、この時点では必ずしも大ヒットと言えない状況であった。この曲の知名度を高めたのが、96年にイギリス人ソプラノ歌手サラ・ブライトマン(Sarah Brightman、1960~)がボチェッリにデュエットを申し出て、曲名及び歌詞の一部をイタリア語から英語の「Time To Say Goodbye」(タイム・トゥ・セイ・グッバイ)に変更し、共演したことである。これがヨーロッパを中心に爆発的にヒットし、結果的にシングルが1500万枚、アルバムを含めて2500万枚という世界的大ヒットを記録。その後、ボチェッリはこの曲の全編スペイン語歌詞による「Por ti volaré」(ポル・ティ・ヴォラーレ)を発売し、前掲のオリジナル曲「Con Te Partirò」及び「Time To Say Goodbye」と並んでこれら3バージョンはボチェッリの代表曲となっている。サラ・ブライトマンもこの曲のソロバージョン、全編英語詞の「Time To Say Goodbye」をリリースしている。】
2019年11月12日(火)吉祥寺オデヲン(東京都武蔵野市吉祥寺南町2-3-16、JR吉祥寺駅東口徒歩1分)で、20:15~鑑賞。

「ターミネーター:ニュー・フェイト」 (2)

作品データ
原題 Terminator:Dark Fate
製作年 2019年
製作国 アメリカ
配給 ディズニー
上映時間 129分


「ターミネーター:ニュー・フェイト」 (1)

SFアクション『ターミネーター』シリーズの通算6作目⇒生誕35周年記念作品。ジェームズ・キャメロン監督が手がけたシリーズ第1作『ターミネーター』(1984年)→第2作『ターミネーター2』(91年)の正当な続編。未来のためにターミネーターに立ち向かう人々を待ち受ける運命を映し出す。キャメロンがプロデューサーとしてシリーズに復帰し、『デッドプール』のティム・ミラーが監督を担当。『ターミネーター』→『ターミネーター2』で“T-800”を演じたアーノルド・シュワルツェネッガーと、サラ・コナー役のリンダ・ハミルトンが再共演を果たす。共演にシリーズ初参加となるマッケンジー・デイヴィス、ナタリア・レイエス、ガブリエル・ルナ。

ストーリー
『ターミネーター2』で、“スカイネット(Skynet)”の企みによる1997年8月29日「審判の日(Judgement Day)」を阻止し、30億人もの人類を救ったサラ・コナー(リンダ・ハミルトン)。1998年のある日、息子のジョン(エドワード・ファーロング/ジュード・コリー〈ボディダブル〉)と共に、中米のグアテマラのビーチでくつろいでいた。しかし、そこへ突如現われたターミネーターT-800(アーノルド・シュワルツェネッガー/ブレット・アザー〈ボディダブル〉)によって、ジョンは命を落としてしまう。T-800は『ターミネーター2』のラストで溶鉱炉に没したはずだが、新たな個体がジョンを殺すために“審判の日”を回避する前の未来から送り込まれていたのだ。抹殺任務を遂行したT-800は、そのままビーチを後にする。
時代は変わり2020年。地球には再び重大な危機が迫っていた。ある日、メキシコシティの自動車工場で働く21歳の女性ダニー・ラモス(ナタリア・レイエス)と弟ディエゴ(ディエゴ・ボネータ)は、未来からやって来た最新型ターミネーター“REV-9(レヴ・ナイン)”(ガブリエル・ルナ)の突然の襲撃に遭う。抹殺される間一髪のところで二人を助けたのは、同じく未来から送り込まれた人類軍の“強化”兵士(the enhanced soldier)であるグレース(マッケンジー・デイヴィス)。ダニーとディエゴ、グレースは、工場から車で必死の逃走を図る。しかし、彼らに執拗に迫ってくる変身機能と分身機能を備えたREV-9。激しい交戦状態が続く中、グレースは負傷し戦闘不能となり、ディエゴは致命傷を負って死亡。グレースとダニーが絶体絶命の窮地に立たされたとき、どこからともなく銃火器を携えた初老の女性が現われ、REV-9を一時的に無力化する。彼女こそ、ジョンを失いながら宿敵ターミネーターと孤独に戦い続けていたサラ・コナーだった。
サラはグレースに、事態~新たに出現したターミネーターとグレースは何者なのか、未来で何が起きたのか~の説明を迫る。グレースの口から衝撃的な事実が語られる。それは、未来では「スカイネット」に代わって“リージョン(Legion)”という新たなAI(人工知能)システムの反乱・暴走で数十億人の人間が犠牲になるということ。そして、その「リージョン」機械軍との戦いで人類の運命を左右するのがダニーであり、2020年のダニーを抹消するために「REV-9」~以前現われたT-800やT-1000 を遥かに凌ぐ性能を持つターミネーター~が「リージョン」によって、また2020年のダニーを保護するために「グレース」~微小反応器(マイクロリアクター)で速さと力を得た“強化”人間~が人類抵抗軍(レジスタンス)によって、それぞれ2042年から送り込まれたと言う―。
やがてダニー、グレースと行動を共にするサラの前に、かつてジョンを抹殺した旧モデルの「T-800」が姿を現わす。人間と同じように外見に老いの兆しが見えるT-800は、今はカールと名乗り、シングルマザーと出会って、その息子を育てるうちに人間性に目覚め人の心を理解できるようになっていた。ジョンを殺害したことをサラに謝り、サラへの罪滅ぼしのために共にREV-9と戦うことを希望するが、怒りを覚え攻撃しようとするサラ。しかし、グレースやダニーによって止められる。もはやREV-9は3人だけで倒すことのできない相手なのだ。サラはひとまずT-800と停戦し、4人揃って、REV-9に対する共同戦線を張る覚悟を固めるのだった…。

▼予告編



Opening Scene



Grace vs REV-9 Factory Fight Scene



Car Scene|Sara Connor vs REV-9 battle



REV-9 Prison Scene



Helicopter vs Airplane Chase Scene



Ending Fight Scene



特別メイキング映像



ジャパンプレミア・レッドカーペットイベント/歌舞伎町ゴジラロード /2019.11.6

2019年11月12日(火)「アップリンク吉祥寺」(東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目5−1 吉祥寺パルコ地下2階、吉祥寺駅北口から徒歩約2分)で、17:50~鑑賞。

「アースクエイクバード」(2)

作品データ
原題 Earthquake Bird
製作年 2019年
製作国 アメリカ
配給 Netflix
上映時間 106分


「アースクエイクバード」(1)

『エクス・マキナ』『リリーのすべて』のアリシア・ヴィキャンデルが主演し、リドリー・スコットが製作総指揮を務めたNetflixオリジナル映画。日本在住経験のあるイギリス人作家スザンナ・ジョーンズの同名小説[“The Earthquake Bird”(2001)〈阿尾正子訳『アースクエイク・バード』早川書房、2001年〉]の映画化で、日本が舞台となっており、撮影は東京と新潟県の佐渡島で行なわれた。異国の地で生きるヒロインの揺れ動く心理を繊細な描写で映し出すサスペンス・ミステリー。主人公の友人役に『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』のライリー・キーオ、物語の鍵を握る日本人カメラマン役に「三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE」の小林直己。監督は『アリスのままで』『コレット』のウォッシュ・ウェストモアランド。Netflixで2019年11月15日から配信。日本では配信に先立つ11月8日から、東京・アップリンク渋谷ほかにて劇場公開。

ストーリー
1980年代の日本。東京で働くイギリス人女性ルーシー(アリシア・ヴィキャンデル)は、ミステリアスな雰囲気を放つ日本人カメラマンの禎司(小林直己)と出会い、恋に落ちる。だが、彼女は交友関係のあったリリー(ライリー・キーオ)との三角関係に心を乱されていく。そんな中、リリーが行方不明の末、死体となって見つかり、ルーシーはその殺害容疑をかけられてしまう…。

▼予告編



アリシア・ヴィキャンデル(Alicia Vikander、1988~)が語る日本語での演技

2019年11月8日(金)新宿ピカデリー(東京都新宿区新宿3-15-15、JR新宿駅東口より徒歩5分)で、17:10~鑑賞。

「永遠の門 ゴッホの見た未来」  (1)

作品データ
原題 At Eternity's Gate
製作年 2018年
製作国 イギリス/フランス/アメリカ
配給 ギャガ/松竹
上映時間 111分


「永遠の門 ゴッホの見た未来」  (2)

ウィレム・デフォーが孤高の画家フィンセント・ファン・ゴッホを演じ第75回ベネチア国際映画祭で男優賞を受賞し、第91回アカデミー賞でも主演男優賞にノミネートされた伝記ドラマ。自身も現代美術のアーティストであるジュリアン・シュナーベル監督が、ファン・ゴッホの最期の日々に焦点を当て、不安や孤独と格闘しながらも自らの絵を追い求め続けた姿を、ファン・ゴッホの眼から見た世界の再現に挑んだ美しい映像とともに描き出す。ファン・ゴッホ役のデフォーのほか、ゴーギャンをオスカー・アイザック、生涯の理解者でもあった弟テオをルパート・フレンドが演じるほか、マッツ・ミケルセン、マチュー・アマルリックら豪華キャストが共演。

ストーリー
画家としてパリでは全く評価されていないフィンセント・ファン・ゴッホ(ウィレム・デフォー)。彼は、会ったばかりのポール・ゴーギャン(オスカー・アイザック)の「南へ行け」というひと言で、南フランスのアルルへやって来る。「まだ見ぬ絵を描くために、新しい光を見つけたい」という彼の願いは、この地で春を迎えた時に叶えられた。
行きつけのカフェのオーナーであるジヌー夫人(エマニュエル・セニエ)に頼んで、“黄色い家”を紹介してもらったファン・ゴッホは、ゴーギャンの到来を待ちわびる。
広大な畑をひたすら歩き、丘に登って太陽に近づき、画材を取り出すファン・ゴッホ。竹の枝で作ったペンの先から、たちまち彼だけの線が生まれていく。どこまでも続く風景に絶対的な美を見出した彼は、「永遠が見えるのは僕だけなんだろうか」と自身の胸に問いかける。風になびく麦の穂や沈みゆく太陽を見つめる彼の瞳は、不思議な輝きを放っていた。
ある時、地元の人々とトラブルになったファン・ゴッホは、強制的に病院へ入れられる。駆け付けてくれた弟のテオ(ルパート・フレンド)にも、初めて特別なものが見えることを打ち明ける
のだった。
やがて一緒に暮らし始めたファン・ゴッホとゴーギャンは、“絵を描く”ことについて際限なく議論を交わす。自然を見て描くファン・ゴッホと、自分の頭の中に見えるものを描くゴーギャン。一瞬で真実を捉えようと素早く描くファン・ゴッホ、ゆっくりと降りてくるのを待つゴーギャン。屋外に美を探し求めるファン・ゴッホ、内面に深く潜るゴーギャン、すべては正反対だ。それでもファン・ゴッホは、「僕らの時代だ」と熱く語るゴーギャンに心酔し、ますます創作にのめり込むが、やがてゴーギャンが去って行くことは止められなかった。
再び一人になり絶望したファン・ゴッホをこの世に繋ぎとめたのは、描き続ける情熱だけだった。相変わらず1枚の絵も売れない日々の中、彼は神父(マッツ・ミケルセン)にそっと語る。「未来の人々のために、神は私を画家にした―」
もはや彼の眼差しに不安の影はなかった。晴れ晴れと穏やかなその瞳が最期に映したものとは…。

▼予告編



特別映像



ジュリアン・シュナーベル(Julian Schnabel、1951~)×ウィレム・デフォー(Willem Dafoe、1955~) インタビュー映画.com -「ゴッホの映画をアーティストが作るということ」- 2019年11月8日
――生前に才能を認められなかったゴッホとは違い、画家としても映画監督としても成功されているあなたが、ゴッホを題材にした映画を作られた理由を教えてください。
シュナーベル:私は画家としても映画監督としても成功していると言われますが、何をもって成功と言うのでしょうか。本当の成功は、自分の作った作品の質によるのではないかと思います。私にとって芸術と人生は表裏一体。アド・ラインハートという画家の言葉を引用すると「芸術があり、あとはそれ以外」ということなのです。ゴッホがかつて描いた絵が、今、生きている私たちの中で息づいています。
ウィレムもアーティストですし、彼は俳優として、演技という芸術活動を行っています。ですから、ふたりでこの映画という芸術作品を作りました。芸術は時間と一緒に機能していくもの。この映画のタイトルは「永遠の門」です。私たちはこの映画とともに永遠に参加したのです。皆、いつの日か人間としての命は消えますが、映画は記録された作品として残り、彼の画家としての感情はずっと続いていくのです。
この芸術作品―映画は、ウィレムがいなければできませんでした。彼が参加し、高みに持って行ったことに、ゴッホは大きな笑みを浮かべるに違いないでしょう。ゴッホについての映画はたくさんあり、それぞれ違う視点から作られています。しかし、このウィレム・デフォー版のゴッホは、比類のない素晴らしいものだと思います。今回彼と一緒にこの映画を作り、完成したことを光栄に思っています。

――これまで様々なゴッホの映画が作られていますが、あなたのこの作品は、主に彼の精神、そして聖性のようなものにフォーカスされています。
シュナーベル:例えば、黒澤明監督の「夢」では、ゴッホの絵をまずイメージとして取り入れ、そこにキャラクターを置くというアイディアを使っています。マーティン・スコセッシが演じたゴッホは賢く描かれていますが、ゴッホの内面に入ろうとしているとは思えません。私は、ゴッホは気が狂ってはおらず、自殺したとも考えていません。繊細で、他人と上手に付き合うことができなかっただけです。リサーチからもそう思います。私たちは純粋に彼の作品にのみ呼応して作りました。そして実際、ゴッホ自身、キリストと同化していた部分があるのです。

――映画史に残る数々の傑作に出演されていますが、今作は新たな記念碑的な一本になったのではないでしょうか。30年前にマーティン・スコセッシ監督の「最後の誘惑」でキリストも演じられています。ゴッホという、ある意味神格化されたような人物を演じるにあたっての役作りについて教えてください。
デフォー:アーティストについての作品をアーティストが作る。そういった作品の鍵となるアプローチは自分がいかに経験し、学び取れるのかということ。今回特別だったのは、ジュリアンが僕に絵を描くことを教えてくれたことです。絵を描くことで、ものの見方のシフトができて、それがものすごく本質的なことだとわかりました。
対象を見る、絵を描くというのはそのテクニックのことだけを指すのではなく、生き方、自然と共に生きるのはどういうことなのかということでもあり、そこで何かを見ることによって、何かが作られていく。そういった物事の栄枯盛衰はゴッホが手紙に書いたことでもあり、役者にとって実用的な側面として、私自身を変えました。物語の中に自分を置き、全ての過程でそれが影響してきたのです。
シュナーベル:彼の言葉に付け加えさせてください。彼が言う、役へのアプローチは事実ですが、一言で言うと“神秘”、説明できないものなのです。彼がその場に行って、そこで感じたもの、どういうプロセスを経たのか、ひとつひとつ名前をつけると、それは宗教かもしれませんし、狂気といったものになるのかもしれません。
私は彼のことを30年知っていますが、彼は自分がわかっていること、わかっていないことをいったん全て自分の中に取り入れて、キャラクターにします。そして、カメラの前に立った彼は私の知らない人物になっている。これまでの人生に何があったか知りませんが、それが出てきて、神秘としか言いようがないのです。
ゴッホの絵も同じことが言えます。もちろん描かれた花、筆致、ガッシュ、色…と様々な要素にそれぞれ名前をつけることができますが、それをひとつにすると、説明のできない、論理のない物になる。それが神秘であり、魔法です。そして、その魔法がどのようにしてできるのかは、はっきりした答えがないのです。この人生のなかで、数少ない純粋さを貫いているものがそこにはあるのです。やはり「芸術があり、あとはそれ以外」なのです。

――デフォーさんにとって、映画監督としてのシュナーベルさんとの仕事についてお聞かせください。
デフォー:ゴッホは絵が自分自身であるというのですが、私にとっても、この作品がジュリアンと私、そしてゴッホであり、切り分けることができないのです。それは、何かを守りたいということではなく、真実だからです。もしかしたら、それはお互いを知っているからかもしれないし、お互いに作りたいという欲望がマッチした結果かもしれません。あるいは、ロケでのふたりの感覚であったり、何かを探そうとするふたりの思いが合致したのかもしれません。共に経験し、共に動きながら、見つけていくという中で生まれた作品なのです。
まず最初に企画があり、それを形にしていく映画があります。しかし、これはそうではなくて、もちろん強い脚本や視覚的なアイディア、独特な撮影法もありますが、全てはロケ地に立って、そこで動く事象、光を見たり、絵を描いたりすることでした。これはゴッホの手紙から借りたやり方でもありますが、自然とやり取りする中で、生まれてくる錬金術のようなものでした。全ての映画はこのように作られているわけではありませんが、ジュリアンは何かを見つける、見出すことについて作品作りをしていく中で研鑚を積んでいます。制作過程で真実とは何かを見つけていく、今回はそのように作られた作品です。

――おふたりは30年来の付き合いだそうですね。どのような部分がお互い共鳴しているのでしょうか。
デフォー:僕はジュリアンと一緒にいるのが好きです。刺激を受けますし、いつも挑戦をしているし、心が広くて、そこにあるものと相対することがとても上手な方です。彼は今の生を生きることに長けているんです。そういう意味で素晴らしい師でもあります。
シュナーベル:私の母がこう言いました、「友人とは、自分のことを全部わかっている人。だけど、それでも好いてくれる人が友人」だと。一緒に仕事をする上では、信頼でき、何かを学べ、自分が考えないことを考えてくれる人。作者であるということで、自分を守らずオープンであることが大事です。彼は、脚本を読んで、何か違うなと思ったら、「このキャラクターはこういう風に言うかな?」と提案し、どういう感情を出したいのかを言ってくれる。そこには、信頼があり、協力しようという気持ちがあると思います。そして彼は、そういったことを他の監督にも言える人なのです。自分の役割だけでなく、映画全体を通してのメッセージとして、どのようにしたら良いのかを考えてくれる人。そういう意味では、真の協力者であり、無私の人。俳優はエゴイストが多いので、彼は珍しいタイプです。他の役者を助けるという意味でも、まれな役者。信頼はとても大事です。
時々、私たちは一体何をしているんだろう、と思うこともあったんです。しかし未知の部分に進んでいるということだけはわかっていました。私の理論はとりあえず穴に飛び込む、そして一日で這い上がれたら、今日一日分の仕事は終わった、と考えるのです。
デフォー:私も信頼がなければ未知の場所に足を運ぼうとは思いません。そういったことなしに何かを発見するということには至らないのです。
シュナーベル:この映画を撮影したのは2年前です。今回ふたりで日本に来たのは、仕事ではなく、この作品を愛の結晶として考えているからです。お互いを尊重し、ゴッホに敬意を表する意味でもあるのです。この言葉は適切ではないかもしれませんが、面白いと思うのです。ゴッホは日本の絵画に興味を抱いていました。19世紀末のフランスで人気を博し、VOGUEの表紙に載っていた浮世絵を、当時無名のゴッホが模写していた。ですので、ゴッホについての映画を作った私が、今ここで取材を受けていると知ったら、彼はとても驚くのではないでしょうか。

ジュリアン・シュナーベル監督 インタビューReal Sound - 「ジュリアン・シュナーベル監督が語る、ゴッホへのアプローチ」- 2019.11.13) :
――ゴッホは非常にポピュラーな存在です。なぜ、今改めてモチーフとして取りあげることにしたんでしょうか?
シュナーベル:君の言う通り、ゴッホは歴史上で最も取りあげられている画家かもしれない。みんな自分がゴッホのことをすでに知っていると思っている。でも、そんなことはありえない。だから、僕は、あえてゴッホに対して違うアプローチをとった。自分たちでゴッホという「像」を意識的に作り上げたんだ。彼が書いた手紙や、私が見た彼の絵画の印象、彼とゴーギャンの関係についての資料を元にして、彼だけに限らず、本作に映っている絵画も作り上げた。私は画家でもあるから、絵画のことをよく知らない人が作ったものとは違うゴッホになったと思う。

――本作を作ったことで、改めてゴッホについて気づいたことはありますか?
シュナーベル:今回の制作を経て、ゴッホから「今までやらなかったことをやってもいい」という許可をもらったような気がする。ゴッホには「ひまわり」という有名な絵があるけれど、その絵が何枚も描かれているんだ。すごく面白いと思ったし、僕は今でもデフォーが演じたゴッホをモデルにした、ゴッホの自画像作品を何枚も描いている。今、改めて、ゴッホのインスピレーションを探っているし、自分がやってこなかったことに挑戦しようとしている。
そういう意味では、まだ映画は終わっていないとも言えるね。映画というのは記録された部分だけじゃなく、その前や後もあるんだ。まさに『永遠の門』というタイトルみたいに永遠に続いているのかもしれない(笑)。映画を観終わって映画館から出ても、自分の心の中に生き続ける。それってアートの目的だよね。映画でも絵画でも、物理的なものを扱ってできたものが、精神に取り込まれていく…そのアートの価値に改めて気づいた。本作を観て一週間ほど経ってから電話してきてくれた人が、「何かが変わったみたい」と言っていたんだけど、それを聞いた時に作品の成功を実感したね。

――監督自身では、絵画と映画で、どのようにアウトプットを分けているんでしょうか?
シュナーベル:静止しているか否かという手法の違いしか僕は感じていない。そして、どちらも孤独な行為だということ。一度、絵を映画に、映画を絵にしようとしたことがあるんだけど、結果としてその両者の構造や意味、与えてくれる感覚は僕には分けられなかった。どうやって、何を語るか…結局それが大事で、手法に関して意識したことはないね。

――本作でゴッホを演じたウィレム・デフォー、ゴーギャンを演じたオスカー・アイザックとの作業はいかがでしたか?
シュナーベル:彼らはとても温かくて、寛大な俳優たちだった。「お仕事」じゃなくてやりたいからやってくれたんだ。アイザックは、『スター・ウォーズ』の宣伝活動より、こちらを優先して撮影に来てくれた。それってすごい選択だよね。彼はそれほどこの映画に強く惹かれていたんだ。彼らのことは信頼していたから自由にやってもらって、僕らスタッフはそのための場所を提供すること、そしてその中で起きる一つ一つを見逃さないことだけに注意していた。

――芸術は、不遇に終わったゴッホの時代に比べればとてもポピュラーなものになりました。
シュナーベル:芸術というのは、芸術家が止むに止まれず作ってしまうものだと思う。お金持ちになりたいという欲望から偉大な芸術が生まれるとは思えない。ゴッホが有名になりたかったかと聞かれたら、彼は怒るだろう。彼は、自分のやり方で、自分の世界を表現したかっただけだ。後になって観客が追いついてきた。その点、僕はすごくラッキーだ。こうして作品を観客と分かち合うことができている。これはゴッホにはなかったことだ。だけど、彼にはゴーギャンがいた。アンデパンダン展で、ゴーギャンから作品の交換を提案されたことは彼の人生に大きな感動を与えた。尊敬している人が、自分が見ている世界に同意してくれるというのは芸術家にとって最高なことだと思う。

クリップ 参照:本ブログ〈December 13, 2018〉/本ブログ〈December 15, 2018〉/本ブログ〈April 17, 2018〉
2019年11月7日(木)吉祥寺オデヲン(東京都武蔵野市吉祥寺南町2-3-16、JR吉祥寺駅東口徒歩1分)で、11:55~鑑賞。

「イエスタデイ」

作品データ
原題 Yesterday
製作年 2019年
製作国 イギリス
配給 東宝東和
上映時間 117分


『トレインスポッティング』『スラムドッグ$ミリオネア』のダニー・ボイル監督と『ノッティングヒルの恋人』『ブリジット・ジョーンズの日記』の脚本家リチャード・カーティスの初コラボで贈る音楽ファンタジー・コメディ。ある日突然、自分以外の誰もビートルズの曲を知らない世界に迷い込んでしまったシンガー・ソングライターの青年が、彼らの名曲の数々を新曲として発表し一躍大スターとなっていく興奮と戸惑いの行方を描く。主演はイギリスの人気TVシリーズ『EastEnders』に出演のヒメーシュ・パテル。『シンデレラ』のリリー・ジェームズが主人公を支える幼なじみの女性を演じるほか、人気歌手のエド・シーランが本人役で出演する。

ストーリー
インド系イギリス人の青年ジャック・マリック(ヒメーシュ・パテル)は、英国サフォーク州の小さな海辺の町に住む、悩めるシンガーソングライター。幼なじみで親友のエリー・アップルトン(リリー・ジェームズ)から(マネージャー兼ドライバーとして)献身的に支えられているものの全く売れず、音楽で有名になりたいという夢に限界を感じていた。そんな時、世界規模で瞬間的な謎の大停電が発生。真っ暗闇の中、交通事故に遭った彼が、昏睡状態から目を覚ますと…。何と、あの史上最も有名なバンド、ビートルズ(ザ・ビートルズ〈The Beatles〉)がこの世に存在していなかった!
“イエスタデイ〈昨日〉”まで、地球上の誰もがビートルズを知っていた。しかし今日、彼らの名曲を覚えているのは世界でただ一人、ジャックだけ…。彼は突然、信じられない不思議な世界に身を置くこととなってしまった!
ジャックがビートルズの曲を歌うとライブは大盛況、SNSで大反響、マスコミも大注目! すると、その曲に魅了された超人気ミュージシャン、エド・シーラン(本人)が突然やって来て、彼のツアーのオープニングアクトを任されることに。エドも嫉妬するほどのパフォーマンスを披露すると、ついにメジャーデビューのオファーが舞い込んでくる。思いがけず夢を叶えたかに見えたジャックだったが…。
ジャックはスターダムへの階段を駆け上がるうちに、昔から恋心を抱いていたエリーとの距離が離れていくことを身に染みて実感する。一方で、ビートルズの曲を「自分の作詞・作曲」とする“盗作”行為に罪悪感を抱くとともに、その“悪事”が露見するのではないかという不安感に襲われていく。そんな中、人生の重大な分岐点に立った彼は、選択的に自らの生き方・歩み方を正さざるをえなくなる。ミュージシャンとしての“成功”で富・名声・地位を得るべきか、それともエリーとの“愛”ある幸せな暮らしを送るべきか、と…。

▼予告編



私感
物語内容が浅薄すぎて辟易!
主人公(ジャック)の人生、色々あったが結局、昔から自分の近くにいて自分を応援してくれた女性(エリー)が好きというお話…。
音楽映画は基本的にハズレなし―とはいえ、ビートルズ・ナンバーを、よりによって、こういう予定調和的な凡作で、何も無理に聴くまでもないだろう。

【本作ラスト】 月日が流れ、ジャックとエリーの間には二人の子供(息子&娘)が生まれ、ジャックは小学校で生徒たちと一緒にビートルズの曲「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ(Ob-La-Di, Ob-La-Da)」を歌っている。幸せになる秘訣は、愛する女に愛を伝え、嘘をつかずに生きること。“Life goes on(人生は続く)!” 。ジャックは名声を失い、スーパースターではなくなったが、それ以上に素晴らしい、自らに忠実な人生の幸せを手に入れたのだった…。

それにしても、ジャックを演じたヒメーシュ・パテル(Himesh Patel、1990~)、何か冴えない、存在感の薄い、私を何ら惹きつけることのない役者でした!
2019年11月5日(火)吉祥寺プラザ(東京都武蔵野市吉祥寺本町1-11-19、JR吉祥寺駅北口サンロード突き当たり左)で、17:45~鑑賞。

「マレフィセント2」

作品データ
原題 MALEFICENT:MISTRESS OF EVIL
製作年 2019年
製作国 アメリカ
配給 ディズニー
上映時間 118分


名作ディズニーアニメ『眠れる森の美女』(原題:Sleeping Beauty、クライド・ジェロニミ監督、1959年)に登場する悪役“マレフィセント”を主人公にして実写映画化した『マレフィセント』(ロバート・ストロンバーグ監督、2014年)の続編。再び勃発する人間界と妖精界(ムーア王国)の争いの行方を描く。前作に引き続き、マレフィセントをアンジェリーナ・ジョリーが演じ、オーロラ姫役をエル・ファニングが務める。また『アントマン&ワスプ』のミシェル・ファイファーが、マレフィセントを嫌悪するイングリス王妃を演じる。監督は『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』のヨアヒム・ローニング。

ストーリー
邪悪な妖精マレフィセント(アンジェリーナ・ジョリー)の呪いによって16歳のときに永遠の眠りに落ちたオーロラ姫(エル・ファニング)は、マレフィセント自身の“真実の愛”によって呪いを解かれ、ついに目を覚ました。ムーア国の女王となった彼女は、アルステッド国のフィリップ王子(ハリス・ディキンソン)との愛を育み、やがて彼のプロポーズを受け入れる。2人の結婚は、これまで争いの絶えなかった人間と妖精の間に平和をもたらし、世界を幸福に導くものと思われた。しかし婚礼の日、フィリップ王子の母イングリス王妃(ミシェル・ファイファー)が仕掛けた罠によってオーロラ姫に危機が迫り、彼女を救出しようとするマレフィセントの“究極の愛”が試されることになる。すべては、オーロラとフィリップの結婚により妖精を滅ぼし、ムーア国まで支配をしようとしていたイングリス王妃の恐るべき企みだった…。

▼予告編



▼ cf. 1959年公開のディズニーアニメ映画『眠れる森の美女』 《3人の妖精たち→ ヴィラン・マレフィセント(Maleficent)》の登場シーン :




▼ cf. 前掲『眠れる森の美女Full Movie


STORY : 14世紀のヨーロッパ。ある王国に待望の王女が誕生し、「夜明けの光」という意味をもつオーロラと名付けられた。父のステファン王はオーロラ姫の誕生を祝う宴に、隣国のヒューバート王と後継ぎのフィリップ王子を招く。2人の王は両国の平和統合のしるしにフィリップ王子とオーロラ姫の婚約を発表しようと考えていた。そこに現われたのは3人の妖精たち。植物の妖精フローラはバラの花のような類い稀な“美しさ”を、動物の妖精フォーナはナイチンゲールのような美しい“歌声”を王女に贈る。3人目の天気の妖精メリーウェザーが贈り物を授けようとした時、一陣の風とともに、招かれざる客、魔女マレフィセントが現われる。そしてオーロラに、「16歳の誕生日の日没までに、糸車の針で指を刺して死ぬ!」と、誰にも解けない強力な“呪い”をかける。そこでメリーウェザーは、「不吉な予言は、あなたを眠らせるだけ。運命の相手からのキスが呪いを解き、あなたは眠りから覚めるのです」と王女に希望の光を与える。ステファン王は呪いが実現しないよう、すぐに国中の糸車を焼き払う。そして、姫を3人の妖精たちに託し、16回目の誕生日を迎えるまで名前もブライア・ローズと変えて、森の奥の樵(きこり)小屋で育てることにする。
時は15年が過ぎ、ローズ(オーロラ)は16歳の誕生日を迎えようとしていた。16歳になった彼女は、誕生日の日没後に妖精たちの元を離れてお城に戻ることになっていた。3人の妖精たちは、ローズに内緒で誕生日パーティーの準備をするため、彼女を外出させる。森へ出かけたローズは、偶然通りかかった“青年”(フィリップ王子)と出会い、お互い相手が誰か気づかないまま~婚約者同士とは知らずに~惹かれ合い恋に落ち、夜に再会する約束を交わして別れる。初めての恋に夢見心地の彼女は、妖精たちからオーロラ姫という自分の本当の身分と決められた婚約者(フィリップ王子)の存在を聞かされ、“青年”に二度と逢えないと知ると、悲しみとショックのあまり泣き崩れてしまう。
3人の妖精たちは、王女を連れてステファン王の城へと向かっていた。城へ無事に辿り着き、彼女をしばらく一人にする妖精たち。しかし、その隙をマレフィセントに突かれてしまう。マレフィセントは魔法の光でオーロラを誘い出し、糸車の針に指を刺させた。マレフィセントの気配に気づいた妖精たちは王女の後を追ったが時既に遅く、“呪い”は遂に実現されて彼女は昏々と眠りに落ちてしまった。お城では王女を歓迎する準備が進められていたが、妖精たちは王様をはじめ、城にいる人々全員を王女が目を覚ますまで、魔法をかけて眠りに就かせた。
その頃、フィリップ王子はローズ(オーロラ)との約束に従って妖精の家を訪ねる。そこに待ち構えていたのは、“呪い”を解かれることを危惧したマレフィセント。オーロラを目覚めさせるカギとなるフィリップを拘束し、自分の“魔の城”へと連行し牢獄に監禁してしまう。ヒューバート王の寝言から呪いを解く運命の相手が“青年”⇒フィリップ王子だと知った3人の妖精は、大急ぎで魔の城に向かい、王子を奪還、彼に「真実の剣」~どんなものをも貫く剣~と「美徳の盾」~どんな攻撃からも守る盾~を授ける。並み居る怪物の兵士たちをなぎ倒しながら、魔の城を脱出し、オーロラ姫の元へ急ぐフィリップ王子と妖精たち。事態の急変を知ったマレフィセントは、彼らの行く手を阻むために、オーロラが眠るステファン王の城の周りにイバラを巡らせる。そして、自らも巨大な黒いドラゴンに変身し、フィリップ王子を追い詰める。ドラゴンが口から放つ凄まじい炎の一撃で「美徳の盾」を失った王子は、妖精の加護を受けながら、「真実の剣」をマレフィセントの胸めがけて投げる。剣はマレフィセントの心臓に刺さり、マレフィセントは崖から落ち絶命した。城へとたどり着いた王子は、ベッドに寂然と眠りに浸るオーロラ姫の口唇にキスをする!オーロラ姫にかかった呪いが、ついに解かれた。
城では王女の帰還とフィリップとの婚約が発表された。ヒューバート王は当初、妖精たちと同じく、フィリップ王子が恋に落ちた相手がオーロラ姫とは知らなかったため、事の次第に驚く。そして宴が開かれ、オーロラ姫とフィリップ王子は眠りから覚めた人々が見守る中、幸せそうにダンスを踊るのだった―。】


▼ cf. The Making of Sleeping Beauty

2019年11月1日(金)新宿ピカデリー(東京都新宿区新宿3-15-15、JR新宿駅東口より徒歩5分)で、19:00~鑑賞。

「マチネの終わりに」

作品データ
製作年 2019年
製作国 日本
配給 東宝
上映時間 124分


芥川賞作家・平野啓一郎の同名ベストセラー小説を原作にした恋愛ドラマ。東京・パリ・ニューヨークを舞台に、共に40代の男女が惹かれ合う姿を描く。主演は『そして父になる』の福山雅治と『北の零年』の石田ゆり子。共演は伊勢谷友介、桜井ユキ、木南晴夏、風吹ジュン、板谷由夏、古谷一行。監督は『容疑者Xの献身』の西谷弘。

ストーリー
天才クラシックギタリストの蒔野聡史(福山雅治)は、その名を世界に轟かせる一方、キャリアの節目を迎える中で自分の音楽に迷いが生じて苦悩を深めていた。ある日、パリでの公演を終えた彼は、パリの通信社に勤務するジャーナリストの小峰洋子(石田ゆり子)と出会う。ともに40代という、独特で繊細な年齢を迎えていた。出会った瞬間から、強く惹かれ合い、心を通わせた二人。洋子には婚約者がいることを知りながらも、高まる想いを抑えきれない蒔野は、洋子への愛を告げる。しかし、それぞれを取り巻く目まぐるしい現実に向き合う中で、蒔野と洋子の間に思わぬ障害が生じ、二人の想いは決定的にすれ違ってしまう。互いへの感情を心の底にしまったまま、別々の道を歩む二人が辿り着いた、愛の結末とは…。

▼予告編

2019年10月29日(火)「アップリンク吉祥寺」(東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目5−1 吉祥寺パルコ地下2階、吉祥寺駅北口から徒歩約2分)で、20:10~鑑賞。

「キング」

作品データ
原題 The King
製作年 2019年
製作国 オーストラリア/アメリカ
配給 Netflix
上映時間 140分


『君の名前で僕を呼んで』のティモシー・シャラメ(Timothée Chalamet、1995~)が、父の死後、王位を継承し、様々な困難に立ち向かい、成長していくイングランド王ヘンリー5世を演じるNetflixオリジナル映画。ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『ヘンリー四世』2部作や『ヘンリー五世』に着想を得た本格歴史劇。共演はジョエル・エドガートン、ロバート・パティンソン、ショーン・ハリス、リリー=ローズ・デップ、ベン・メンデルソーン。監督は『アニマル・キングダム』『ウォー・マシーン 戦争は話術だ!』のデヴィッド・ミショッド。2019年10月11日にアメリカで、25日に日本で劇場公開された後、同年11月1日にNetflixで全世界配信された。

ストーリー
イングランドの王位継承者でありながら王室の一員としての暮らしを拒み、民衆に混じって自由気儘に生きてきた王子ハル(ティモシー・シャラメ)。しかし、父親であるヘンリー4世(ベン・メンデルソーン)の急死後、ヘンリー5世として王位を継承した彼に突き付けられるのは、これまで避けていた現実。親友であり師でもある酒好きの老騎士ジョン・フォルスタッフ (ジョエル・エドガートン) との関係や過去のしがらみに悩みながらも、父から宮廷政治を引き継いだ若き王が、宮廷内の権力争いやフランスとの戦争など、混乱する時代に生きることで国王としてたくましく成長していく…。

▼予告編



The Epic Battle



The Real Story Behind Timothée Chalamet's Henry V