普通人の映画体験―虚心な出会い -3ページ目

普通人の映画体験―虚心な出会い

私という普通の生活人は、ある一本の映画 とたまたま巡り合い、一回性の出会いを生きる。暗がりの中、ひととき何事かをその一本の映画作品と共有する。何事かを胸の内に響かせ、ひとときを終えて、明るい街に出、現実の暮らしに帰っていく…。

2020年1月7日(火)「アップリンク吉祥寺」(東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目5−1 吉祥寺パルコ地下2階、吉祥寺駅北口から徒歩約2分)で、17:30~鑑賞。

「国家が破産する日」

作品データ
原題 국가부도의 날   
英題 Default
製作年 2018年
製作国 韓国
配給 ツイン 
上映時間 114分


韓国を震撼させた1997年の通貨危機(IMF経済危機)の裏側を活写した、史実に基づく社会派ドラマ。突然訪れた未曾有の通貨危機に直面した人々の運命をスリリングに描く。キャストには『修羅の華』のキム・ヘス、『バーニング 劇場版』のユ・アイン、『おまえを逮捕する』のホ・ジュノ、フランスの俳優で韓国映画初出演のヴァンサン・カッセル(Vincent Cassel、1966~)らが集結。監督は、本作が長編映画2作目となるチェ・グクヒ。

ストーリー
1997年、右肩上がりに経済成長して韓国国民の多数が好景気の続くことを信じて疑わなかったなか、韓国銀行の通貨政策チーム長ハン・シヒョン(キム・ヘス)は通貨危機を予測。彼女の報告書を踏まえ政府が非公開の対策チームを招集した時には、国家破産まで残りわずか7日間のみとなっていた。シヒョンは対策チームの中で、国民にこの危機を知らせるべきと主張するも、反対する財務次官パク・デヨン(チョ・ウジン)と激しく対立。その頃、独自に危機の兆候を掴んだ金融コンサルタントのユン・ジョンハク(ユ・アイン)は、一世一代の大勝負に出る。他方、経済情勢に疎い町工場の経営者ガプス(ホ・ジュノ)は、大手百貨店から手形決済で大量発注を受けてしまう。自国通貨の価値が加速度的に下落する中、彼ら、そして国家は生き残ることができるのか…。

▼予告編



キャストインタビュー

2019年12月24日(火)吉祥寺オデヲン(東京都武蔵野市吉祥寺南町2-3-16、JR吉祥寺駅東口徒歩1分)で、18:45~鑑賞。

「スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け」

作品データ
原題 Star Wars:The Rise of Skywalker
製作年 2019年
製作国 アメリカ
配給 ディズニー
上映時間 142分


「スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け」⑵

2017年に公開された『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の続編(レイを主人公とする続3部作〈シークエル・トリロジー〉の第3章「エピソード9」)にして、1977年に『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』が全米公開されて以来、スカイウォーカー家を軸に42年にわたって語り継がれてきた壮大な『スター・ウォーズ』サーガ(saga)の完結編となるスペース・アドベンチャー超大作。ヒロインのレイ、銀河の支配者へと上り詰めるカイロ・レンらの待ち受ける運命が壮大なスケールで描かれる。キャストはデイジー・リドリー、アダム・ドライバー、ジョン・ボイエガ、オスカー・アイザック、ルピタ・ニョンゴら続3部作レギュラー組の続投のほか、ルーク役のマーク・ハミルも再登場、さらにビリー・ディー・ウィリアムズ(ランド・カルリジアン役)、イアン・マクダーミド(パルパティーン皇帝役)が久々のシリーズ復帰を果たした。また、2016年12月に他界したレイア役のキャリー・フィッシャーも過去に撮影された未公開映像を使用して出演となった。監督は続3部作の1作目『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』を手がけたJ・J・エイブラムスが再登板した。

【参照】本ブログ〈January 18, 2016〉本ブログ〈January 15, 2018〉本ブログ〈February 01, 2018〉
本ブログ〈January 01, 2017〉本ブログ〈July 08, 2018〉

ストーリー
かつて銀河に君臨していた祖父ダース・ベイダーに傾倒し、その遺志を受け継ぐべく、銀河の圧倒的支配者へと上り詰めた、スカイウォーカー家のカイロ・レン(アダム・ドライバー)。伝説のジェダイ、ルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)の想いを引き継ぎ、類い稀なフォース(the Force)を覚醒させたレイ(デイジー・リドリー)。新たなるサーガを担う若者二人の運命が、この物語の行く末を担う。二人の運命を左右し、このクライマックスを共に迎えるのは、R2-D2、C-3PO、BB-8ら忠実なドロイドと、銀河の自由を求めて戦い続けるルークの双子の妹レイア将軍(キャリー・フィッシャー/アーカイブ出演)、天才パイロットのポー・ダメロン(オスカー・アイザック)、元ストームトルーパーのフィン(ジョン・ボイエガ)らレジスタンスの同志たち、そして今回初めて登場するBB-8のキュートな相棒「D-O(ディオ)」。はるか彼方の銀河系で繰り広げられるスカイウォーカー家を中心とした壮大な<サーガ>の結末は、“光と闇”のフォースをめぐる最終決戦に託される…。

▼予告編



予告編からわかることは?



Behind The Scenes



▼ cf. EVERY SKYWALKER SAGA TRAILER (1977-2019) | Movieclips Trailers :



▼ cf. 『スター・ウォーズ』42年の歴史が詰まった特別映像



▼本作 レッドカーペット・イベント(開催日:2019年12月11日、会場:東京・六本木ヒルズアリーナ) :



▼本作来日記者会見(2019年12月12日/東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズ) :
[会見には、キャストのデイジー・リドリー(レイ役)、オスカー・アイザック(ポー役)、ジョン・ボイエガ(フィン役)、アンソニー・ダニエルズ(C-3PO役)、監督と脚本を担当したJ.J.エイブラムス、脚本を手がけたクリス・テリオ、プロデューサーのキャスリーン・ケネディが出席。]

【『スター・ウォーズ』シリーズのエピソード9にあたる本作。スカイウォーカー家の物語に終止符が打たれる本作について、エイブラムス監督は「この作品は撮影に2年、ポストプロダクションに1年かかっているんだ。やっと皆さんと共有できることがうれしいよ。特に俳優たちの演技が素晴らしいし、最高のVFXが使われているからぜひそこを観てほしいな」とアピールする。レイ役のリドリーは「J.J.やクリスは物語を作る重責があったと思うけど、私たちは彼らが作った世界観にとても楽しく入っていけたわ。終わってしまうことに一抹の寂しさはあるけれど、皆さんと分かち合えることにワクワクしています」と続けた。
フィン役のボイエガが「毎日顔を合わせていたデイジーやオスカーと会えなくなるのは悲しいな」と続三部作の終結を惜しむと、アイザックは「まだ公開しなくてもいいんじゃないかな? もう少し仕上げない?」と提案して笑いを誘う。リドリーは「自分の人生と『スター・ウォーズ』を分けて考えることができないくらい、大きな存在よ。家族のような環境を作ってくれて、いろんなチャレンジをすることができたの」と回想。アイザックも「『スター・ウォーズ』はもはや映画というよりも世界規模の文化的な現象だと思うんだ。そんな作品の決着を見届けることができて、こうして世界中の方々と出会えたことを光栄に思っているよ」と真摯に語り、もともと『スター・ウォーズ』シリーズのファンだったというボイエガは「J.J.たちが映画を作っていく過程を見ることができて、とてもインスピレーションをもらったよ」と振り返った。
『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』以来、すべてのエピソードに参加してきたC-3PO役のダニエルズ。「今気付いたけど、このステージにいる皆さんは私のキャリアを観て成長しているんだね。まさにそれが『スター・ウォーズ』の魔法だと思う。最初はジョージ・ルーカスの卓越した才能から始まり、映画館、ホームビデオ、もっと高度なメディアによって発展を遂げてきた。そして3世代にわたって家族の物語が描かれてきたんだ。すべての作品に出演できて、オスカーの言った通り本当に光栄だよ」と噛みしめるように述べる。また、予告編でC-3POが言う「最後にもう一度だけ、友人たちに」というセリフについて質問されたダニエルズは、「大変美しいセリフでさまざまな解釈ができるよね。でも、待ってもらうのはあと数日なんだ。その間にどういう意味なのか考えていてくれるとうれしいな」とお茶目に話した。
レイア役のキャリー・フィッシャーが登場することを聞かれたエイブラムスは「代役を立てたり、デジタル化されたキャラクターにしたくなかった。だから『フォースの覚醒』のときに撮りためていたフッテージを使ったんだ。僕らはレイアもフィッシャーも大好きだったから、彼女が亡くなってしまったことはとても悲しいけれど、映画の中でまた出会うことができる」と回答。さらに、日本の文化から得たアイデアとして「カイロ・レンの割れたマスクには、金継ぎという日本の伝統的な技法を使っているよ。欠陥があってもそれを隠さないという意味があるんだ。あと、レンの騎士団は黒澤明の映画から影響を受けているし、僕の友人の村上隆さんも映画に出演してる。そうやって日本のスピリットが作品に入っているのは、僕は日本が大好きだからなんだよ」と明かした。
本作でレイの両親が明かされるのか質問されたリドリーは、「明かされるわ!」と明言。「『最後のジェダイ』のときに言われた言葉について、レイは答えを求めているのではないかと考えたの。彼女は前に進むために、今まで失ったものを知ろうと模索していき、それが明かされるわ」と言及し、「ただ、私自身は『スター・ウォーズ』の物語では、血のつながった家族以外でも愛する人と家族を作っていくところがとても美しいと思っているの」とほほえむ。終盤にはテリオが、ダニエルズを示し「もうC-3POのセリフが書けないと思うと悲しい。それほどアンソニーさんは『スター・ウォーズ』シリーズのハートであり魂だったんです」とたたえる場面も。するとエイブラムスは「実は今僕たちはレジェンドと一緒に座っているんだ。C-3POは『スター・ウォーズ』の導入で登場するキャラクターでもあるし、顔が見えないからものすごく難しい役でもある。彼のパフォーマンスは語り尽くせないくらい素晴らしいよ!」と心からの敬意を表し、キャストたちは拍手を贈った。】
2019年12月17日(火)「アップリンク吉祥寺」(東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目5−1 吉祥寺パルコ地下2階、吉祥寺駅北口から徒歩約2分)で、19:50~鑑賞。

「カツベン!」⑵

作品データ
製作年 2019年
製作国 日本
配給 東映
上映時間 127分


『シコふんじゃった。』『Shall we ダンス?』の周防正行監督が、活動弁士[通称“活弁”(カツベン)]が活躍した無声映画時代の映画館を舞台に贈る痛快エンターテイメント・コメディー。カツベンに憧れる一人の青年を主人公に、一癖も二癖もある登場人物たちが織りなす悲喜こもごものドタバタ人間模様を、緻密な考証を下敷きにしつつスラップスティックなギャグとアクション満載に描き出す。主演は『スマホを落としただけなのに』『人間失格 太宰治と3人の女たち』の成田凌、共演に黒島結菜、永瀬正敏、高良健吾、音尾琢真、竹野内豊、井上真央、竹中直人、渡辺えり、小日向文世。作中には、「椿姫」や「金色夜叉」という元(1921年版『椿姫』、1932年版『金色夜叉』)のある再現無声映画、また「南方のロマンス」といった本作オリジナルの無声映画が登場する。第32回東京国際映画祭特別招待GALAスクリーニング作品(英題:Talking the Pictures)。

ストーリー
子どもの頃、活動写真小屋で観た活動弁士(カツベン)に憧れていた染谷俊太郎(成田凌)。“心を揺さぶるカツベンで観客を魅了したい”という夢を抱いていたが、今では、ニセ弁士として泥棒一味の片棒を担いでいた。そんなインチキに嫌気がさした俊太郎は、一味から逃亡し、隣町のライバル映画館に客も人材も取られて閑古鳥の鳴く映画館〈青木館〉に流れ着く 。“ついにホンモノのカツベンになることができる!”と期待で胸が膨らむ俊太郎だったが、人使いの荒い館主夫婦、傲慢で自信過剰な弁士、酔っぱらってばかりの弁士、気難しい職人気質な映写技師といった個性的な曲者ばかりが残った青木館で、雑用ばかり任され、悪戦苦闘の日々を送る。そこに大金を狙う泥棒、泥棒とニセ活動弁士を追う警察、そして幼なじみの初恋相手が現われ、彼はさまざまな騒動に巻き込まれていく。俊太郎の夢、恋の運命やいかに…!?

▼予告編



▼「カツベンとは?」 :



▼特別映像:成田凌、活動弁士への道

2019年12月10日(火)「アップリンク吉祥寺」(東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目5−1 吉祥寺パルコ地下2階、吉祥寺駅北口から徒歩約2分)で、19:50~鑑賞。

「盲目のメロディ」 (2)

作品データ
原題 Andhadhun
英題 The Blind Melody
製作年 2018年
製作国 インド
配給 SPACEBOX
上映時間 138分


「盲目のメロディ」 (1)

盲目を装ったピアニストが、演奏に招かれた豪邸で、偶然にも殺人現場を目撃してしまったことから窮地に陥るさまを、一癖も二癖もある登場人物たちが織りなす予測不能のストーリー展開でブラック・ユーモアいっぱいに描いたインド製クライム・コメディー。主人公を演じた『僕の可愛いビンドゥ』(第6回インド映画祭「インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン〈IFFJ〉2017」にて上映)のアーユシュマーン・クラーナーのほか、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』のタブー、『パッドマン 5億人の女性を救った男』のラーディカー・アープテーらが個性的なキャラクターを演じる。『エージェント・ヴィノッド 最強のスパイ』のシュリラーム・ラガヴァン監督が、フランスの短編映画『L’Accordeur(The Piano Tuner/ピアノ調律師)』より着想を得て制作。

ストーリー
盲目のピアニスト、アーカーシュ(アーユシュマーン・クラーナー)には、誰にも言えない秘密があった。それは、本当はバッチリ目が見えること!芸術を追求するあまり、才能の向上を目指して盲目を装う彼は、ひょんなことから恋に落ちたソフィ(ラーディカー・アープテ―)の父親の店で、ピアノ演奏を披露する日々を送っていた。ある日、彼の演奏を絶賛した往年の大スター、プラモード(アニル・ダワン)から演奏を依頼され、彼の豪邸を訪ねたところ、妻のシミー(タッブー)とその不倫相手がプラモードを殺害した現場を“目撃”してしまう!死体も犯人も何も見えないフリを貫き、その場を切り抜けたアーカーシュだったが、通報に駆け込んだ警察のマノーハル署長(マナフ・ヴィジ)こそ、実は現場にいた犯人だった!さらに災難は続き、アーカーシュの盲目を疑うシミーに毒薬を飲まされ、本当に目が見えなくなり、署長からは命を狙われて、遂には病院送りになってしまう。追い込まれたアーカーシュは、目の手術費用を稼ぐため、病院で知り合った怪しい医者スワミ(ザキ―ル・フセイン)たちと組んでシミーを誘拐するが、そこには裏切りと騙しあいの大騒動が待ち受けていた…。

▼予告編



冒頭映像

2019年12月6日(金)新宿ピカデリー(東京都新宿区新宿3-15-15、JR新宿駅東口より徒歩5分)で、18:55~鑑賞。

 FROZEN 2

作品データ
原題 FROZEN 2
製作年 2019年
製作国 アメリカ
配給 ディズニー
上映時間 103分


「アナと雪の女王2」

第86回アカデミー賞で歌曲賞、長編アニメ映画賞を受賞したディズニー・アニメ『アナと雪の女王』の続編。前作の3年後を舞台に、不思議な歌声に導かれて旅に出たアナとエルサの姉妹が、エルサの持つ魔法の力の秘密を解き明かすため、未知の世界で驚きと感動の冒険を繰り広げる。前作に引き続き、監督をクリス・バックとジェニファー・リー、エルサ役の声優をイディナ・メンゼル、アナ役の声優をクリステン・ベルが務めた。

ストーリー
命がけの妹アナ(声:クリステン・ベル)によって、閉ざした心を開き、“触れるものすべてを凍らせてしまう力”をコントロールできるようになったエルサ(声:イディナ・メンゼル)は、雪と氷に覆われたアレンデール王国に温かな陽光を取り戻した。そして、再び城門を閉じることはないと約束した。それから3年―。
王国を治めるエルサとアナの姉妹は、固い絆で結ばれ、失われた少女時代を取り戻すかのように、気の置けない仲間たちと平和で幸せな毎日を過ごしていた。だが、ある日、エルサだけが“不思議な歌声”を聞く。「この平穏を脅かしたくない」と耳を塞ごうとするが歌声は強まり、ついに王国に危険が迫る。エルサはアナと、アナの彼氏であるクリストフ(声:ジョナサン・グロフ)、雪だるまのオラフ(声:ジョシュ・ギャッド)、トナカイのスヴェンと共に歌声に導かれ、旅に出る。それは自身を知るための、未知なる世界へと導かれていく壮大な冒険の始まりだった。なぜ、エルサだけに“魔法の力”は与えられたのか?そして、姉妹の知られざる過去の“謎”とは?数々の試練に立ち向かう旅の終わりに、待ち受けるすべての答えとは…。

<前作のSTORY>
アレンデール王国の王女エルサは、触れた物を凍らせる力を持ち、それが妹のアナを傷つけてしまうことを恐れて心を閉ざしていた。日ごとに強くなる力を制御できず、ついに真夏の王国を凍てつく冬世界に変えてしまったエルサは、雪山の氷の城で雪の女王として生きることを選ぶ。自分への姉エルサの愛に気づいたアナは、山男のクリストフと雪だるまのオラフと共に、エルサを救うため旅に出る。アナの思いは、雪の女王となったエルサの心と、凍った世界を解かすことができるのか…?

Official Trailer→〈吹替版〉予告編





フルエンディングシーン

2019年12月3日(火)「アップリンク吉祥寺」(東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目5−1 吉祥寺パルコ地下2階、吉祥寺駅北口から徒歩約2分)で、20:10~鑑賞。

「マリッジ・ストーリー」

作品データ
原題 MARRIAGE STORY
製作年 2019年
製作国 アメリカ
配給 Netflix
上映時間 136分


 『イカとクジラ』『フランシス・ハ』のノア・バームバックが、監督と脚本を手がけたNetflixオリジナル映画。結婚生活に苦悩と葛藤を抱える夫婦が離婚へと向かっていく姿を、繊細かつ赤裸々な筆致で描き出す。主演は『アベンジャーズ』シリーズのスカーレット・ヨハンソンと『スター・ウォーズ』シリーズのアダム・ドライバー。共演にローラ・ダーン、アラン・アルダ、レイ・リオッタ。第76回ヴェネツィア国際映画祭(2019年8月28日~9月7日)で世界初上映され、また第44回トロント国際映画祭(同9月5日~15日)でも、第57回ニューヨーク映画祭(同9月27日~10月13日)でも上映された。Netflixで同12月6日から配信。日本では配信に先立つ11月29日から、一部劇場にて公開。

ストーリー
女優のニコール(スカーレット・ヨハンソン)と、夫で監督兼脚本家のチャーリー(アダム・ドライバー)は、かわいい息子ヘンリーにも恵まれ、仲のいい家庭を築いていた。しかし、すれ違いから、夫婦の関係は少しずつ悪化していき、ヘンリー(アジー・ロバートソン)が8歳となった現在、離婚を決めることに。円満な協議離婚を望んでいたが、それまでお互いに溜め込んでいた相手への不満が噴出し、負けず嫌いの二人は離婚弁護士を雇って裁判で争うことになってしまう。このまま決別するか、それとも新たな関係を構築するか、2人は選択を迫られる…。

▼予告編

2019年11月26日(火)「アップリンク吉祥寺」(東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目5−1 吉祥寺パルコ地下2階、吉祥寺駅北口から徒歩約2分)で、20:00~鑑賞。

「グラン・ブルー」

作品データ
原題 Le Grand Bleu
英題 The Big Blue
製作年 1988年
製作国 フランス


『レオン』『フィフス・エレメント』のリュック・ベッソン監督の出世作『グラン・ブルー』のフランスオリジナル・バージョン(132分)。潜水に取り憑かれた二人の男が織りなす人間ドラマを華麗なる水中撮影もふんだんに描いたアドベンチャー・ロマン。10代からダイビングに親しんできたベッソン監督が、長年の夢だった“イルカに魅せられた潜水夫の物語”を、実在の天才ダイバー、ジャック・マイヨール(Jacques Mayol、1927~2001)の協力を得て映画化。撮影は1987年6月から約9か月に亘り、イタリア、ギリシャ、フランス、ニューヨーク、パリなどで行なわれた。脚本はベッソンとロバート・ガーランド。撮影は『最後の戦い』『サブウェイ』のカルロ・ヴァリーニ。音楽はベッソンとのコンビで知られるエリック・セラ。出演は『ヨーロッパ』のジャン=マルク・バール、『ニキータ』『レオン』のジャン・レノ、『マドンナのスーザンを探して』のロザンナ・アークエットほか。

クリップ様々なバージョン
初上映は1988年5月10日、第41回カンヌ国際映画祭の栄えあるオープニング作品として。
『Le Grand Bleu』フランス公開版(132分) ー 88年5月11日に仏国内で最初に公開された版。カンヌで上映されたものと同じ。本作は元々国際マーケット向けに製作されたもので、セリフはすべて英語。仏公開版は俳優本人たちが仏語に吹き替えている。
『THE BIG BLUE』国際版(120分)ー 海外向け編集版(英語版)で仏公開版より12分カット。日本では88年8月20日に『グレート・ブルー』の邦題で劇場公開された。
『Le Grand Bleu/VERSION LONGUE』長尺版(168分)ー ベッソン監督が最初に完成させた言わば“無編集版”(フランス初公開版は、このバージョンから監督自ら36分間カットしたもの)。日本では92年6月に『グラン・ブルー/グレート・ブルー完全版』の邦題で劇場公開された(上映時は仏語吹き替え版)。
『10ans Le Grand Bleu/VERSION ORIGINALE』オリジナル版(132分)ー 98年、作品生誕10周年を記念してフランスでリバイバル上映されたもの。仏初公開版と同じもの。日本でも同年8月8日に『グラン・ブルー/オリジナル・バージョン』として劇場公開。ベッソン監督は「これこそが磨きに磨き抜いた、一生大事にしていきたい、心の一本」と表明している。

クリップ日本での「グラン・ブルー・ジェネラシオン」
日本では20世紀フォックスが配給を手がけ、『グレート・ブルー』(国際版、120分)として1988年8月20日に東宝洋画系にて公開された。公開当時のキャッチ・コピーは「海には、多くの秘密がある」。しかし、同時期公開のヒット作の多くに興行面で苦戦してしまい、メイン上映館であった日劇プラザは2週間、新宿プラザ劇場は1週間で打ち切りとなる。
その後フランスでの盛り上がりが伝わるにつれ※、口コミで話題となり、89年4月にセルビデオが発売されると、六本木WAVEビデオ部門で1位となるなど、折からのカルト映画ブームもあり、『グレート・ブルー』人気が熱気を帯びていく。当時キリン・シーグラムから発売されたウイスキー「HIPS」のCMにはジャン・レノ、マルク・デュレの2人が劇中のエンゾ、ロベルト兄弟のイメージをそのままに起用され、業界での注目度も高かった。
その「HIPS」が冠スポンサーとなり、92年6月20日には『グラン・ブルー/グレート・ブルー完全版』(168分)がシネセゾン渋谷で独占公開。配給は日本ヘラルド映画。ミニシアターでの興行ではあるが、連日立ち見が出るほどの盛況となり、それ以降も全国で順次公開された。
2010年8月7日から『グラン・ブルー完全版〜デジタル・レストア・バージョン〜』(168分)が角川映画配給により角川シネマ新宿などで日本公開され、同年9月24日に同バージョンのBlu-ray Discが発売された。

フランスでは公開後、ハイティーンの若者たちの絶大な支持を集め、映画館前は長蛇の列。上映前と終わりには、割れんばかりの拍手が映画館を埋めるような狂騒となった。結果的に、フランス国内の観客動員数は1000万人、パリでは187週連続上映という記録を達成。彼らは「Grand Bleu Generation」と呼ばれ、社会現象にまでなった

ストーリー
1965年、ギリシャのキクラデス諸島で8歳のジャック・マイヨール(Bruce Guerre-Berthelot)はエンゾ・モリナーリ(Gregory Forstner)と出会った。そこで二人は初めて潜りを競うが、翌日、ダイバーであるジャックの父の死を目撃し、大きな衝撃を受ける。22年後の1987年、今や一流ダイバーとなったエンゾ(ジャン・レノ)は、稼いだ金をつぎ込んでジャック(ジャン=マルク・バール)の行方を探していた。ジャックとダイビング選手権に出場して勝利すること、それがエンゾの夢だったのだ。一方、ジャックはペルー・アンデス山脈の高地にいて、水族館のイルカだけを友として静かに暮らしていた。そんなジャックと出会ったニューヨーク生まれのジョアンナ・ベイカー(ロザンナ・アークエット)は、彼の不思議な雰囲気に惹かれていく。やがてエンゾはジャックをシチリアの競技会に連れ出すが、そこでのダイビングでジャックに敗れてしまう。ジャックへの対抗心に燃えるエンゾは、無謀なダイビングに挑み、命を落としてしまう。その魂に惹かれるかのように、ジャックもまた大海原に一人乗りだしていく。彼を愛し、彼の子を宿したジョアンナを残して。やがて、人間の限界を超える深海に達したジャックの目の前に一匹のイルカが現われ、彼を底知れぬ深淵へと連れ去っていくのだった―。

▼予告編(『グラン・ブルー完全版~デジタル・レストア・バージョン~』)



▼予告編(『グレート・ブルー』)



▼『Le Grand Bleu』制作日誌(1988年) ─ リュック・ベッソン(Luc Besson、1959~)ほか



音符 海の青い映像美に見事にマッチした、エリック・セラ(Éric Serra、1959~)の音楽



私感
21年ぶりの4回目の鑑賞だった。相変わらず色褪せず、印象深い映画だ!
私はこれまでに映画館で、1988年『グレート・ブルー』→92年『グラン・ブルー/グレート・ブルー完全版』→98年『グラン・ブルー/オリジナル・バージョン』を各1回、日本公開直後に鑑賞。何度観ても、その都度、画面に引き込まれるように飽かず見入って新鮮な感動が心の中に広がる私だった…。

美しい紺碧の海を舞台に、スキューバ用の道具を一切使わないフリーダイビングに命を賭ける二人の男を描く本作。E・セラの叙情的な音楽と、撮影監督C・ヴァリーニ(Carlo Varini、1946~2014)による美しい映像を得て、これが監督3作目[←1985年『サブウェイ』←1983年『最後の戦い』]のL・ベッソンが海の持つ神秘性を見事に活写。海との一体化を願う主人公ジャックに扮したJ=M・バール(Jean-Marc Barr、1960~)の繊細さ、ジャックの旧友にしてライバルのエンゾに扮するJ・レノ(Jean Reno、1948~)の豪放さ、そして海に恋するジャックにかなわぬ想いを抱くR・アークエット(Rosanna Arquette、1959~)の美しさが織り成すドラマも素晴らしい。

本作はいつまでも私の脳裏に刻み付けられて離れない作品である。そこでは、穏やかな内陸に面した地中海、特にシチリア島周辺の美しい風景が人間ドラマ~ジャックとエンゾの友情物語とジャックとジョアンナの恋物語~と絡めて陰影豊かに描き出されている。
突き詰めて言えば、本作の最大の見所は、その、どこまでも“青い”海の、千変万化する豊かな表情である。冒頭からモノクロームで描かれるコントラストの効いた夏の海。陽光にきらめく水面の鮮やかな青。浅い瀬の緑がかった透明感の高い青。海中から水面を映す明るい青。深海へ向かう群青のグラデーション。イルカの跳ねる月夜の玲瓏たる海…。この海の際立った自然美が私をぐいぐいと惹き付けてやまない名作映画、それが私にとっての“Le Grand Bleu”にほかならない。
2019年11月24日(日)ル・シネマ(東京都渋谷区道玄坂2-24-1 Bunkamura6F、JR渋谷駅ハチ公口より徒歩7分)で、18:50~鑑賞。

「LORO 欲望のイタリア」⑶

作品データ
原題 Loro
英題 Them
製作年 2018年
製作国 イタリア
配給 トランスフォーマー
上映時間 157分


「LORO 欲望のイタリア」⑴

イタリアのメディア王から政界へと進出し、数々の疑惑やスキャンダルにまみれながらも3度にわたって合計9年間もイタリア首相の座に君臨したシルヴィオ・ベルルスコーニ(Silvio Berlusconi、1936~)をモデルに、『イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男』『グレート・ビューティー/追憶のローマ』のパオロ・ソレンティーノ監督が撮り上げた異色エンターテイメント作。政敵に敗れ失脚したベルルスコーニが返り咲きを目指していた2006年から2010年の期間に焦点を絞り、その絢爛にして空疎な肖像を、シュールかつ背徳的な映像美とともに描き出す。主演はソレンティーノ作品の常連トニ・セルヴィッロ、共演にエレナ・ソフィア・リッチ、リッカルド・スカマルチョ。もともとイタリア国内ではベルルスコーニに取り入り、のし上がろうとする青年実業家セルジョをフィーチャーした第1部とベルルスコーニがメインの第2部という2部作として公開されたが、本作はそれを海外向けに1本の作品として再編集したインターナショナル版。

ストーリー
イタリア、サルデーニャ。広大な敷地を持つゴージャスな高級ヴィラ。ここには、悪名高き「彼」が住んでいる。
「彼」とは、政治とカネ、マフィアとの癒着、職権乱用、女性問題に失言など、数々のスキャンダルで世を騒がせたイタリアの元首相シルヴィオ・ベルルスコーニ(トニ・セルヴィッロ)。2006年、因縁の政敵であるロマーノ・プローディに敗れ失脚するも、一度はトップに登りつめた怪物的な手腕で、政権への返り咲きを虎視眈々と狙っていた。
一方、政界進出を目論む青年実業家のセルジョ(リッカルド・スカマルチョ)は、その足掛かりにベルルスコーニに近づこうと画策する。
そんな中、セクシー美女を招き贅の限りを尽くしたパーティーで気力を養い、得意のセールストークで足場を固めていくベルルスコーニだったが、政治家生命を揺るがす大スキャンダルが勃発する…。

スペード ベルルスコーニ驚愕エピソード(イタリア政治史上最大の“ミステリー”)
総資産額は90億ドル(日本円にして約7800億円 ※首相在任中の2010年当時の推定)
建設業での成功で不動産王となったのち、大手テレビ局、新聞社、出版社を次々に買収、メディア王としても君臨。

汚職にまみれたスキャンダル王
賄賂、脱税、不正会計、マフィアとの癒着などで捜査対象となっており、幾つかの疑惑では立件にまで至ったものの、首相在任中は全ての刑事捜査を棚上げさせることに成功、事件の多くは首相離任後の2013年8月まで有罪確定を免れていた。
失言オンパレード
「オバマ大統領は若くてハンサムで、日焼けしている」/ドイツのメルケル首相を指して「あの女とヤルなんて無理」/国内でレイプが多発しているという問題に対して「イタリアには可愛らしい女の子がたくさんいるから、レイプをなくすことは無理だ」/被災地を訪れ「週末のキャンプみたいだ」など多数。
趣味は身だしなみ
バカンス中に整形・植毛をし、シークレットブーツを愛用する自称身長171cmの伊達男。繰り返し行われた整形も、実は単なる個人的な嗜好ではなく、自分の重要な支持者が中年の専業主婦層だと知った上で、こうした女性たちにアピールするための戦略であった。
自身の応援歌「われらがシルヴィオに感謝」
劇中にも登場するベルルスコーニを称える応援歌は実際にあったもので、プロモーション・ビデオも作られ、党員集会でも「党歌」のようにして歌われた。
美女とブンガブンガ・パーティー
半裸の女性がストリップダンスを踊るパーティー「ブンガブンガ(Bunga bunga)」を開いていたことがスクープされる。ブンガブンガはその年の流行語に。売春婦のパトリツィア・ダダリオ(Patrizia D'Addario)とペルルスコーニの熱い会話を収めた録音テープが暴露され、ペルルスコーニを「パピ」と呼ぶ18歳のブロンドモデル、ノエミ・レティツィア(Noemi Letizia)との熱愛など数々の女性スキャンダルがあるが、多くのイタリア人男性はそのスタミナに皮肉交じりの称賛を寄せたという。ちなみに、ノエミのスキャンダル~未成年淫行疑惑~をきっかけに(2番目の)妻ヴェロニカ・ラリオ(Veronica Lario、1956~)からは完全に見放され、慰謝料として毎月350万ユーロの生活費を要求される。2013年、ミラノ地方裁判所はベルルスコーニに支払いを命じた。

クラブ Silvio Berlusconiprofile
1936年、イタリア・ミラノの下層中流家庭に生まれる。サレジオ修道会経営の全寮制寄宿学校に入学。成績優秀だったが家が貧しかったため在学中からバンドの歌手やセールスマンなどのアルバイトを始め、親の支援なく自力でミラノ大学法学部を卒業。不動産ブームに目を付け大学卒業とともに建設会社を創立すると、巨大な集合住宅「Milano 2(ミラノ・ドゥエ)」を開発し、実に1万500棟を完売させた。敷地の上を飛ぶ飛行機が問題となれば、あらゆる手を使って航路変更させた逸話があり、その類い稀な商才はもとより、私利私欲のためならどんな道をも切り開くパワーはその頃から顕著だった。建設業界での成功を足掛かりに、次なるターゲットをメディア業界に移したベルルスコーニは、破竹の勢いで大手放送局4局を子会社とし、不動産王に加えてイタリアの「メディア王」としても君臨した。サッカークラブACミラン会長・オーナーとしても活躍。低迷が続いていたACミランは、ベルルスコーニの会長就任後、セリエA三連覇、UEFAチャンピオンズリーグで5度の優勝を果たしている。
一方で、事業拡大のための莫大な資金元は、マフィアとの癒着によるものではないかといった数多くの疑惑がある。単なる新興成金だったベルルスコーニは、こうした黒い資金力と人脈を糧に、政界に進出してわずか数か月で一国の首相にまで成り上がった。3度にわたる政権担当期間の合計は9年に及び、スキャンダルにまみれながらも人並外れたカリスマ性で国民を魅了した。2013年に議員資格を剥奪され議会を追放されたが、支持者らに対し「引退はしない」と宣言。この“怪物”は2019年5月、欧州議会議員選挙で当選し、久々に国際政治の表舞台に復帰した。

1994年 実業家としての豊富な資金力と企業グループをバックにして新政党「フォルツァ・イタリア(Forza Italia)」を結成。自由の擁護と共産主義との戦いをスローガンに掲げ、中道右派系の議員を糾合することに成功。極右政党「国民同盟」(旧「イタリア社会運動」)、地域分離主義を唱える「北部同盟」などと連立を組んで第1次ベルルスコーニ政権を樹立。1995年北部同盟の離反により政権崩壊。
1996年4月 繰り上げ総選挙で再起を図るも、「オリーブの木」の下に左派勢力を糾合したロマーノ・プローディ(Romano Prodi、1939~)に敗北。
2001年 政権奪回のための入念な“準備”を進め、野党連合「自由の家」を結成し、総選挙で勝利。第2次ベルルスコーニ政権が発足。5年間の長期政権を維持した。
2006年4月 総選挙でプローディに2度目の敗北を喫し、第2次ベルルスコーニ政権終了。
2008年 新党「自由の人民」を結成して第3次ベルルスコーニ政権樹立。政権に返り咲く。
2008年5月9日 首相就任に伴ってACミランの会長職を退任。
2009年4月 イタリア中部地震(ラクイラ地震)発生。
2009年5月 18歳のモデル、ノエミ・レティツィアとの親密な関係が発覚。
2009年7月 「ブンガブンガ」と呼ばれる乱交パーティーが発覚、42歳の売春婦パトリツィア・ダダリオを買春した疑惑も浮上。
2011年 ミラノ地裁から未成年者淫行罪と職権乱用罪で起訴される。イタリアが経済危機に陥ったことから、苦境に立たされたベルルスコーニは11月12日に辞表提出。
2012年12月 引退表明から一転、2013年の総選挙への出馬を表明。当時のマリオ・モンティ政権が中流・下流階級の国民からの支持を失っていたこともあり、ベルルスコーニは予想外の健闘を示す。
2013年 「自由の人民」は総選挙で第3党として大政党の地位を守り、政界に復活。2013年主導権争いにより「自由の人民」の党内分裂の動きが起こる。反ベルルスコーニ派は院内会派「新中道右派」を結成。一方、ベルルスコーニは11月16日のローマ党大会で「自由の人民」の解散と大連立政権からの離脱を宣言。自身を支持する議員らと「フォルツァ・イタリア」を再結成。
2013年11月27日 ベルルスコーニの議員資格剥奪に関する議会での投票が賛成多数で可決。議会から追放され6年間は被選挙権を剥奪されることになったが、「フォルツァ・イタリア」の党首職には留まった。
2019年5月26日 欧州議会議員選挙で「フォルツァ・イタリア」から欧州議員に当選。

▼予告編



私感
金欲、性欲、権力欲など、百八煩悩に振り回された希代の権力者(ポピュリスト)も、その実体は、“若々しい女の子ちゃんが好きで自分も不断に若くありたいと頑張っちゃってるお爺ちゃん” であったか!?
本作で私にとって一番印象深いシーンは、ベルルスコーニが自邸で美女軍団を集めてパーティーを開いたものの、ベッドで若い娘ステッラ(アリス・パガーニ)に「祖父と同じ口の臭いがする」とすげなく拒まれるところであり、その直後にベルルスコーニがキレるでもうなだれるでもなく、独り合点のように「あの子のおじいちゃんは、私と同じ入れ歯洗浄剤を使ってるんだなあ」と呟くところである。老獪で狡猾な70歳の古狸/何を考えているのか分からない妖気が全身から放たれてくる怪人も、しょせんは有象無象のメスを侍らすサル山のボス…、思わず可笑しくてプッと噴き出す私だった!

本作では、畸形的な権力者の肖像が透かし彫りにされながら、現代イタリアに横たわる奥深い“空虚”が見据えられている。私が去る9月に鑑賞した『帰ってきたムッソリーニ』 本ブログ〈October 13, 2019〉と照らし合わせるとき、その「空虚」という、快適ではないが複雑な状態が一層鮮明に浮かび上がってくる…。
2019年11月24日(日)目黒シネマ(東京都品川区上大崎2-24-15 目黒西口ビルB1、JR山手線目黒駅西口から徒歩3分)で、16:00~鑑賞。『トニー滝谷』14:30~と2本立て上映。
「つぐみ」
作品データ
製作年 1990年
製作国 日本
配給 松竹
上映時間 105分


吉本ばななのベストセラー小説『TUGUMI』(中央公論社、1989年)を、『BU・SU』 の市川準監督が『東京上空いらっしゃいませ』の牧瀬里穂主演で映画化。生まれつき体が弱いわがままな少女つぐみと彼女を囲む人々とのひと夏の出来事を描く。静岡県賀茂郡松崎町で撮影が行なわれた。

「いつ消えてしまうかわからない、かけがえのないものがあって、それが発する、強い「生命力」というものがあるような気がした。いろんな不可能にいらだち、いろんなことに命がけであるような女の子のきらめきと、そのきらめきに心を動かされるものたちの、視線が描けたら、と思った」(市川準/プレスシートより) 。

ストーリー
西伊豆の小さな港町。旅館を営む両親の娘のつぐみ(牧瀬里穂)は、生まれつき体が弱く甘やかされて育った、わがままな18歳の少女。いつも死の恐怖と背中会わせの日常を送っているせいか、その不思議な生命力に従姉妹のまりあ(中嶋朋子)は心を惹きつけられていた。東京で大学生活を送るまりあは、つぐみとその姉の陽子(白島靖代)に誘われ、高校まで過ごした西伊豆へ渡る。懐かしい思い出さながらに穏やかな日々を送る彼女らの前に、美術館に勤める恭一(真田広之)という青年が現われる。運命の出会いのように巡り会ったつぐみと恭一は自然に惹かれ合うが、つぐみに横恋慕する不良少年たちは、恭一に暴行を加え、さらにつぐみの愛犬を殺してしまう。不良たちに復讐を考えるつぐみは、すべての力を振り絞って大きな落とし穴を掘った。しかし、その骨の折れる作業ゆえに、つぐみは倒れてしまう。こうして夏も終わり、東京に戻ったまりあの元に、つぐみから遺書めいた手紙が届く。つぐみのことを心配するまりあ、そんな彼女のバイト先に電話が掛かってきた。不安そうに電話に出るまりあに受話器の向こうから、「よう、ブス!」とつぐみが明るく語りかけてくるのだった―。

▼予告編



私感
初鑑賞の作品だったが、つぐみに扮した牧瀬里穂(1971~)がなかなか良かった!
つぐみ⇒牧瀬は容姿端麗で外面は良く異性にも人気があるが、素顔は粗暴かつ毒舌で、家では地を見せていつも家族を振り回す…。彼女は“生命力”に溢れた、その青春の輝きと痛みを生き生きと演じていました!

私が牧瀬の出演作で初めて出会ったのが、『幕末純情伝』(薬師寺光幸監督、1991年)。つかこうへいの同名小説の映画化で、“新選組の沖田総司は女だった”との奇抜な設定を基に美麗の総司を巡る坂本竜馬(渡辺謙)と土方歳三(杉本哲太)の三角関係を描く時代劇コメディー。総司に扮した牧瀬は、何とも溌溂として魅力的で、今から30年近く前の私に対して、鮮明な好ましい印象を呼び起こしたものでした!

クリップ cf. 『幕末純情伝』 :
2019年11月24日(日)目黒シネマ(東京都品川区上大崎2-24-15 目黒西口ビルB1、JR山手線目黒駅西口から徒歩3分)で、14:30~鑑賞。『つぐみ』16:00~と2本立て上映。

tonytakitani

作品データ
製作年 2005年
製作国 日本
配給 東京テアトル
上映時間 76分


村上春樹の短編小説集『レキシントンの幽霊』(文藝春秋、1996年)に収められた同名短編小説を、『竜馬の妻とその夫と愛人』の市川準監督が映画化。孤独に生きてきた男が知った人を愛する喜びと人を失う切なさを描いたシンプルなラブストーリー。主演は、『みすゞ』のイッセー尾形と『父と暮せば』の宮沢りえ。主演ふたりが一人二役に挑戦し、音楽は坂本龍一が担当する。

ストーリー
トニー滝谷(イッセー尾形)の名前は、本当にトニー滝谷だった。太平洋戦争当時、上海のナイトクラブでジャズマンをしていた滝谷省三郎(イッセー尾形)は、終戦後、息子が生まれるとトニーと名づけたのだ。彼が生まれて3日で母が死に、孤独な幼少期を送ったトニーは、やがて美大に進む。細部まで正確に写し取る彼の絵はどこまでも無機的だった。ずっと孤独に生きてきたトニーは、孤独を苦にしなかった。しかし、デザイン会社に就職後、独立してイラストレーターとなったトニーは、彼の家に出入りする編集者の一人、小沼英子(宮沢りえ)に恋をする。そして、彼女のいない人生を思い、恐怖した…。

▼予告編



私感
JR目黒駅に立ち寄ったついでに、目黒シネマで何となくフラリと観た~初鑑賞~映画だった。
安普請ながら、最愛の人を失う切なさと人を愛する喜びを映し出す映画だけに、それなりに我が心の琴線に触れるものがあった。
ただし、キャストの点で、宮沢りえ(1973~)はよかったが、イッセー尾形(1952~)はどうか…。私の見るところ、彼の人相風体では“おっさんずラブ”は似つかわしいが、最愛の妻を亡くした男の深い悲しみと喪失感を、せつなく繊細に紡ぎ出すには、ちょっと無理なんじゃないかネー。