映画『つぐみ』 | 普通人の映画体験―虚心な出会い

普通人の映画体験―虚心な出会い

私という普通の生活人は、ある一本の映画 とたまたま巡り合い、一回性の出会いを生きる。暗がりの中、ひととき何事かをその一本の映画作品と共有する。何事かを胸の内に響かせ、ひとときを終えて、明るい街に出、現実の暮らしに帰っていく…。

2019年11月24日(日)目黒シネマ(東京都品川区上大崎2-24-15 目黒西口ビルB1、JR山手線目黒駅西口から徒歩3分)で、16:00~鑑賞。『トニー滝谷』14:30~と2本立て上映。
「つぐみ」
作品データ
製作年 1990年
製作国 日本
配給 松竹
上映時間 105分


吉本ばななのベストセラー小説『TUGUMI』(中央公論社、1989年)を、『BU・SU』 の市川準監督が『東京上空いらっしゃいませ』の牧瀬里穂主演で映画化。生まれつき体が弱いわがままな少女つぐみと彼女を囲む人々とのひと夏の出来事を描く。静岡県賀茂郡松崎町で撮影が行なわれた。

「いつ消えてしまうかわからない、かけがえのないものがあって、それが発する、強い「生命力」というものがあるような気がした。いろんな不可能にいらだち、いろんなことに命がけであるような女の子のきらめきと、そのきらめきに心を動かされるものたちの、視線が描けたら、と思った」(市川準/プレスシートより) 。

ストーリー
西伊豆の小さな港町。旅館を営む両親の娘のつぐみ(牧瀬里穂)は、生まれつき体が弱く甘やかされて育った、わがままな18歳の少女。いつも死の恐怖と背中会わせの日常を送っているせいか、その不思議な生命力に従姉妹のまりあ(中嶋朋子)は心を惹きつけられていた。東京で大学生活を送るまりあは、つぐみとその姉の陽子(白島靖代)に誘われ、高校まで過ごした西伊豆へ渡る。懐かしい思い出さながらに穏やかな日々を送る彼女らの前に、美術館に勤める恭一(真田広之)という青年が現われる。運命の出会いのように巡り会ったつぐみと恭一は自然に惹かれ合うが、つぐみに横恋慕する不良少年たちは、恭一に暴行を加え、さらにつぐみの愛犬を殺してしまう。不良たちに復讐を考えるつぐみは、すべての力を振り絞って大きな落とし穴を掘った。しかし、その骨の折れる作業ゆえに、つぐみは倒れてしまう。こうして夏も終わり、東京に戻ったまりあの元に、つぐみから遺書めいた手紙が届く。つぐみのことを心配するまりあ、そんな彼女のバイト先に電話が掛かってきた。不安そうに電話に出るまりあに受話器の向こうから、「よう、ブス!」とつぐみが明るく語りかけてくるのだった―。

▼予告編



私感
初鑑賞の作品だったが、つぐみに扮した牧瀬里穂(1971~)がなかなか良かった!
つぐみ⇒牧瀬は容姿端麗で外面は良く異性にも人気があるが、素顔は粗暴かつ毒舌で、家では地を見せていつも家族を振り回す…。彼女は“生命力”に溢れた、その青春の輝きと痛みを生き生きと演じていました!

私が牧瀬の出演作で初めて出会ったのが、『幕末純情伝』(薬師寺光幸監督、1991年)。つかこうへいの同名小説の映画化で、“新選組の沖田総司は女だった”との奇抜な設定を基に美麗の総司を巡る坂本竜馬(渡辺謙)と土方歳三(杉本哲太)の三角関係を描く時代劇コメディー。総司に扮した牧瀬は、何とも溌溂として魅力的で、今から30年近く前の私に対して、鮮明な好ましい印象を呼び起こしたものでした!

クリップ cf. 『幕末純情伝』 :