映画『アンドレア・ボチェッリ 奇跡のテノール』 | 普通人の映画体験―虚心な出会い

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私という普通の生活人は、ある一本の映画 とたまたま巡り合い、一回性の出会いを生きる。暗がりの中、ひととき何事かをその一本の映画作品と共有する。何事かを胸の内に響かせ、ひとときを終えて、明るい街に出、現実の暮らしに帰っていく…。

2019年11月15日(金)新宿ピカデリー(東京都新宿区新宿3-15-15、JR新宿駅東口より徒歩5分)で、14:55~鑑賞。

「アンドレア・ボチェッリ 奇跡のテノール」

作品データ
原題 La musica del silenzio
英題 The Music of Silence
製作年 2017年
製作国 イタリア
配給 プレシディオ/彩プロ
上映時間 115分


イタリア出身の世界的テノール歌手アンドレア・ボチェッリ(Andrea Bocelli、1958~)の波瀾万丈の半生を、本人が執筆した自伝的小説“The Music of Silence”(1999)を基に映画化。少年時代に失明しながらも、歌手としての才能を開花させていく過程が描かれるボチェッリの役どころであるアモスをTVシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』の新鋭トビー・セバスチャンが演じ、アモスを導くマエストロ役を『デスペラード』のアントニオ・バンデラスが演じる。監督は『イル・ポスティーノ』のマイケル・ラドフォード。なお、主人公アモスの歌唱シーンは、すべてボチェッリ本人が吹き替えている。1996年に世界中で大ヒットした「CON TE PARTIRÓ/Time to Say Goodbye」をはじめ「 AVE MARIA/アヴェ・マリア」、「NESSUN DORMA/誰も寝てはならぬ」(オペラ「トゥーランドット」のアリア)などを披露している。

ストーリー
イタリア・トスカーナ地方の小さな村。アモスは眼球に血液異常を持って生まれ、幼い頃から弱視に悩まされていながらも、明るく過ごしていた。ところが12歳の時、学校の授業でサッカーボールが頭に当たり持病が悪化、失明してしまう。不自由な暮らしに鬱憤を抑えきれず、両親を困らせるアモス。その様子を見かねた叔父(エンニオ・ファンタスティキーニ)が、元来歌が上手なアモスを音楽コンクールに連れていく。すると、その美しい歌声が評価されたアモスは、見事に優勝を果たす。しかし喜びも束の間、すぐに声変わりが始まり、持ち前の美声が出なくなってしまう。これを機に、歌手になる夢を断念し、親友とともに猛勉強に励み、弁護士を目指すことに。
大人になったアモス(トビー・セバスチャン)は、大学に進んだ後、ピアニストとして音楽を嗜んでいた。バーでの生演奏をするアルバイト中、客からのリクエストで歌声を披露。その歌声に感激した友人が数々の有名オペラ歌手を育てたスペイン人の歌唱指導者、マエストロ(アントニオ・バンデラス)を紹介する。マエストロとの出会いがアモスの人生を一変する。改めて歌手の道を目指すことを決意した彼は、マエストロの徹底した厳しい特訓に臨み、実力を伸ばしていく。気まぐれな音楽業界に振り回されながらも、順調にキャリアを積んでいくアモスだったが…。

▼予告編 :



▼特別インタビュー映像(EPK) :



マイケル・ラドフォード監督(Michael Radford、1946~) インタビュー本作公式サイト - Interview) :

Q.アンドレア・ボチェッリの自伝が原案ですが、どの程度脚本に反映させたのですか?
A.原案にほぼ忠実に書きました。彼は生まれた時に部分的に視覚障害がありました。その後回復の兆しを見せ、そして手術によってさらに少しだけ視野を取り戻しました。盲学校に通っているときサッカーボールが目に直撃して、それが原因で再度視覚を失ってしまいます…。本作は彼が有名な歌手になるまでの人生を描いています。転換点は有名歌手のズッケロと共演したコンサートです。ズッケロはこのデュオで「ミゼレーレ」を披露しました。元々はルチアーノ・パヴァロッティとツアーを回っていましたが、彼の体調が悪くなったためボチェッリに話が来て、ここからキャリアがスタートします。ここに来るまで彼はとても長い間待たされました。名が知られるようになったのは40歳になろうかという時でした。

Q.映画製作においてボチェッリとは密に連絡を取り合っていたのですか?
A.ある部分ではね、よく連絡していました。友人になりましたよ。脚本は『イル・ポスティーノ』(94)でも参加してくれたアンナ・パヴィニャーノと共同で作りました。また一緒に仕事ができて素晴らしい時間を共有できました。存命の人の伝記映画は多くの困難が付きまといます。その人の私生活のリズムと映画で描くべきリズムは別物なので、そこを変えなくてはならない。本当のことを偽るのではなくて映画的にするのです。存命であればその部分に口出ししてきますから。目は見えなくても聞くことはできますしね。「いや、そこはそうではなかったな」とかね。でもボチェッリは映画をとても気に入ってくれました。

Q.「この人にボチェッリを演じてほしい」とあなたに思わせたトビー・セバスチャンはどうでしたか?
A.私だけではなく、みんながそう思っていました。初めてトビーと会った時、とても良い俳優でボチェッリに似ていなくもない、そっくりというわけでもないがきっと彼はボチェッリになれると思いました。ボチェッリの家族も含めてスタッフ全員がそう思ったのです。

Q.アントニオ・バンデラスがボチェッリのマエストロとして出演していますが、キャスティングの決め手は何ですか?
A.映画を撮るときは名前のある俳優を起用しようとするものです。その方が売れますから。アントニオ・バンデラスはイタリアで大スターです。もちろん世界的スターですが特にイタリアで大人気なのです。実際仕事をしてみて、彼は絶対的に、圧倒的に、素晴らしい俳優でした。完全に役に入り込み、たくさんのアイデアを出してくれました。

Q.この映画を観る人は涙を流すでしょうか?
A.もちろん(笑)。私は本作をとても気に入っているし、感動ポイントもありますから!

音符 cf. Andrea BocelliSarah BrightmanTime To Say Goodbye” → Sarah Brightman “Time To Say Goodbye”(English Version) :



【「Con Te Partirò」(コン・テ・パルティロ/君と旅立とう)は、アンドレア・ボチェッリの代表的オペラティック・ポップ楽曲。作詞(全編イタリア語)はルーチョ・クアラントット、作曲はフランチェスコ・サルトーリ。1995年2月にサンレモ音楽祭で初めて歌われ、同年春発売のセカンド・アルバム「Bocelli」の1曲目に初収録されたが、この時点では必ずしも大ヒットと言えない状況であった。この曲の知名度を高めたのが、96年にイギリス人ソプラノ歌手サラ・ブライトマン(Sarah Brightman、1960~)がボチェッリにデュエットを申し出て、曲名及び歌詞の一部をイタリア語から英語の「Time To Say Goodbye」(タイム・トゥ・セイ・グッバイ)に変更し、共演したことである。これがヨーロッパを中心に爆発的にヒットし、結果的にシングルが1500万枚、アルバムを含めて2500万枚という世界的大ヒットを記録。その後、ボチェッリはこの曲の全編スペイン語歌詞による「Por ti volaré」(ポル・ティ・ヴォラーレ)を発売し、前掲のオリジナル曲「Con Te Partirò」及び「Time To Say Goodbye」と並んでこれら3バージョンはボチェッリの代表曲となっている。サラ・ブライトマンもこの曲のソロバージョン、全編英語詞の「Time To Say Goodbye」をリリースしている。】