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第二十八話第二十九話第三十話










忘れない。

貴方が私を想っていてくれた事。


ずっとそばに居てくれて、ありがとう―――――




もう一度君に恋をする  第三十一話




クオン監督の映画のクランクアップが間近に迫ったある日。


ショーに呼び出された。


場所は、よくショーが出演する歌番組があるテレビ局。

そこで今日、丁度収録があるから、と楽屋に呼ばれたのだ。



「話って、何??」



前に、マンションの部屋で別れ話を切り出して以来

久々に顔をあわせるから、緊張する。


するとショーは、一枚のCDを私に手渡した。



「これ・・・・・やる。」



「えっ??」



「これ、実は新曲にしようと思ったんだが、ボツになったんだ。

ミルキちゃんは、ショーには合わないって言われて、さ。

でも、これが今の俺の気持ちだから・・・・・

キョーコに持ってて欲しいと思ったんだ。」



ショーの手にあるCDは確かに、何も印字されておらず

真っ白のままだった。



「・・・・・・私に?」



戸惑いながら私が言うと、ショーは微かに頷いた後



「いつまでも俺は・・・・・・

お前への気持ちは変わらない。

たとえ他に、どんないい女が現れても、な。」



「・・・・・ショー??」



言っている意味が、わからなかった。

私の表情で、ショーもそれに気づいたらしく



「・・・・・アイツのとこ、行くんだろ??」



「えっ???」



「敦賀蓮のとこ・・・・・・行くんだろう???」



っ!!!!!!


ショーは苦しげな表情で私にこういった。


確かに、私はクオンのことを好きだし、

クオンも私のことを好きだといってくれた。


あの日、私たちは結ばれたのだけれど・・・・・・

クオンはその先の話を一切、してくれない。


クオン監督に戻ってからは一度も・・・・・愛の言葉をささやくことも

互いのぬくもりを感じさせることも、一切していないから・・・・・・



「・・・・・・わからない」



私は、今の私たちの状況をそのまま、その一言にのせた。

すると・・・・・・



「お前は・・・・・アイツが何も言わないからって、そのままでいいのか??」



「・・・・・えっ??」



「映画の撮影、もうすぐ終わるんだろ??

今後のこと、ちゃんと話しておかないと、アイツ・・・・

アメリカに帰って、戻ってこないんじゃないのか???」



っ!!!!!!


ずっと自分の心に引っかかっていたことを、ずばりと言われて

私はいつの間にか、涙を流していた。



「・・・・・好きなんだろ??

それならちゃんと、捕まえとけよ。なっ??」



「で・・・・・・でも・・・・・・・」



「・・・・・・・俺のことはいいから。

俺は、他に適当な女見つけるからさ。」



ポンポンと背中を叩きながら、私をあやしてくれるショーは

とても優しかった。



「アイツも、お前のこと好きなんだろ??

だから、もう・・・・・・離すなよ??」



「・・・・・・・・うん・・・・・・」



「俺はいつでも、キョーコの味方だから、なっ!!!」



グリグリと頭を撫でられ、髪の毛がグシャグシャになった。



「もうっ!!!!こんなんじゃ、この後の撮影に差し障るじゃないっ!!!!!」



この後は、同じ局でトーク番組の撮影があったのだ。



「そんなもんで、大丈夫だよっ!!!!」



ニカッと笑いながら言われて、ちょっとだけ悔しくなった。

少しだけ間をおいてから私は



「・・・・・ショーちゃん・・・・・・ありがとう。」



「・・・・おう」



私がお礼を言うと、ショーは体ごと向こうを向いてしまった。



「私・・・・・ショーちゃんのこと、大好きだよ??

敦賀さんの、次、だけど・・・・・・」



「・・・・・わぁ~ってるってっ!!!!」



照れているのか、一向に私のほうを向いてくれない。



「部屋出てくの・・・・今度のオフの日で、いいかな??」



「・・・・・・行く先、あるのか??」



向こうをむきながら、私の心配をしてくれた。



「・・・・・・探すから、大丈夫。心配、しないで??」



「・・・・・・・・・そっか・・・・・・・・」



「また、出てく日にちが決まったら教えるね。」



「・・・・・・ああ」



「ありがとう、ショーちゃん。

・・・・・・・・・・・さようなら」



パタン



私はショーの楽屋の扉を閉めると、その場にしゃがみこんだ。


中から、ショーの声が聞こえてきた。




「・・・・・・キョーコ・・・・・・」



切ない声で、私を呼んでいる。


少し前の私だったら、もう一度扉を開いて、ショーの胸に飛び込んでいったんだと思う。

でも、今の私にはクオンが居る。


クオンが・・・・・好きなんだから・・・・・・


もう一度溢れそうになる涙を堪えて、私は自分の楽屋へと戻っていった。




クオン監督の映画は、後数日でクランクアップ。

その後彼はどうするのか、何も聞いていない。



アメリカ、ハリウッドでこのまま、クオン・ヒズリ監督として続けるのか


それとも―――――――


日本でもう一度、敦賀蓮として俳優をするのか



前に、記憶が戻ってすぐのときには、迷っているそぶりをみせた。


でも、今の彼は・・・・・???

もう、答えは出ているの????


聞くのが怖い。

でも――――――――――――

聞かなくちゃ。


私たちの、未来のことだから―――――――





第三十二話へ、つづく・・・・・





前回、別れるといったショーちゃん。

今回、キョーコと話をさせましたが結局、きちんと別れようとは言ってませんね。


でも、そもそもこの二人、付き合おうとも言ってないので・・・・

こんなあいまいなままでもいいのではないのでしょうか??


前回のあとがきにも書いたのですが

何気にショーちゃん、かっこよすぎです。


今回も。


どうしちゃったんだろう、と自分でも思ってしまいました。