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キミの寝顔に、すべて癒される。


たとえ、キミが想う人は、オレじゃなくても――――――



オレがキミを愛せば、それでいい・・・・・・




もう一度君に恋をする  第六話

<尚side>



昔の話を泣きながら、ひとつずつしていたキョーコは

話が終わると、少し胸のつかえが取れたのか・・・・・

そのまま眠ってしまった。


俺が一緒に居るようになって見る、初めての安らかな寝顔・・・・



お前は、今でもそんなに―――――アイツに囚われていたのか――――???




*




世間が、敦賀蓮の突然の無期限の休業宣言を受け

にぎわっていた頃、オレはそんなことはお構いなしに

いつもどおりに仕事をしていた―――――


・・・・・・もちろん、建前上は、だが・・・・・・


そんなある日に、ふと目にしたテレビに・・・・・

キョーコが映っていた。



―――――――――――アイツ、なんて顔、してんだ???



それは、誰が見てもわかるような、タレント京子、としての顔ではなく

素の・・・・・オレが一番良く知っているはずの、最上キョーコ、の顔。


何か、足元から崩れていくような感覚が、広がった・・・・・


・・・・・只の、事務所の先輩だけだと思っていたのに

アイツが居なくなって・・・・・・

お前は、そんな顔をしているのか・・・・・・????



言い知れぬ、不安と、嫉妬――――――


心の中に、どす黒い感情が広がっていく―――――――――


オレは、歌手不破尚の仮面をかぶりながら

心の中では、キョーコのことでいっぱいだった・・・・・




*




それから数日して、オレはアイツが出ているドラマの収録時間を調べ

アイツの楽屋までやってきた。



「っ!!!!な・・・・何よ、アンタっ!!!!!!

何しに来たのよっ!!!!!!!!」



ノックをして、楽屋の扉が開いたのだが、

楽屋の中にはキョーコ一人ではなく、もう一人、オトコが居た。


―――――――――って、コイツ・・・・・・



「・・・・・・なんで、敦賀蓮のマネージャーが、ここに???」



「・・・・・・・・今、社さんは、私のマネージャーになったの・・・・・」



下を向き、ボソッと言ったその言葉に、オレは思ったことを迷わず口にした。



「ッてことは、アノヤロー・・・・・・

もう、復帰しないって、事だな?!」



「っ!!!!!!!」



オレの言葉に、キョーコは驚き思わずオレをにらみつけた。



「ち・・・・・・違うわよっ!!!!!!

敦賀さんが復帰されるまでの間、私のマネージャーをして下さるだけで・・・・・」



「何が違うだよ。そもそも急病っていうのも、病名も何も

全部非公開にしているから、怪しいもんだろ???

・・・・・・最初から復帰させる気があるんだったら、

事務所も、この人他の担当につけないだろうし・・・・なぁ。」



オレの言葉に、いつもならすぐ返してくるキョーコが・・・・・

顔面蒼白のまま・・・・・・立ち尽くしている。

その、今までとは違う様子に、思わず戸惑っていると・・・・



「・・・・・・不破君、京子は、まだこれから番組の撮りが残ってるんだ。

これ以上・・・・・京子の情緒を乱すようなことは・・・・・謹んでもらえるかな???」



「っ!!!!」



オレは思わず、社とかいうマネージャーを睨みつけた。

すると、向こうもオレを睨み返してくる。


・・・・・・上等じゃねぇかっ!!!!!


アノヤローのマネージャーをしているころは、そんな感じじゃなかったのに・・・・・・・

・・・・・・キョーコだから、か???


そんな考えをめぐらせていると、いつの間にか

社って奴がさえぎっていたキョーコの様子が・・・・・おかしくなった。



「・・・・・う・・・・ぐすっ・・・・・うう・・・・・」



って・・・・・泣いているのか???



「・・・・・キョーコちゃん???大丈夫だから、ね・・・・・

蓮は、きっと元気になって、もう一度キョーコちゃんとも会えるから・・・・・」



社ってヤローは、オレの存在を無視して、泣き出したキョーコを慰めていた。


オレは、ただ・・・・・・・

アイツが、もう復帰しないかもって、言っただけなのに・・・・・

どうしてそれだけで・・・・・・・泣き出すんだ????


オレは、その二人の光景を、立ち尽くしたまま眺めるしか出来なかった―――――




*




その後、オレも自分の歌番組の収録があったから、何もいえないまま

キョーコの楽屋を出て、収録に臨んだ。


―――――だが、さっきのキョーコの泣き顔が、離れない。


収録は、今までにないような散々な出来になってしまった。



「・・・・・ッ・・・・・・、クッソォーーーーーッ!!!!!」



楽屋に戻った早々、オレは壁を殴りつけた。


今でも、キョーコの泣き顔がちらつく。

・・・・・・どうして、そんな顔、するんだよっ!!!!!

そんなにも・・・・・・アイツが、居ないと・・・・・・つらいのかよっ!!!!!!


いつもとは違うオレの態度に、祥子さんも何も言えずにたじろいでいた。


そんな時、ノックの音がして、祥子さんが確認していると・・・・・



「・・・・・ショー、お客さん、よ??」



やってきたのは、さっきキョーコと居た、マネージャーだっていう社って男だけだった。



「・・・・・何か用かよっ!!!!」



オレは不機嫌なままに問いかけた。



「さっきのことだけど、キョーコちゃんに今はあまり蓮のことを

言わないであげてくれないか???」



「ぁあッ!?どういうことだよ!!!!」



「キョーコちゃんは・・・・・・

理由はいえないんだが、蓮が病気になったことを

自分も関係あるって・・・・・責めているんだ。


だから、蓮が復帰してくれることを望んでいる。

たぶん、誰よりも一番。


だから・・・・・・今、業界内やワイドショーでの話も、

全く耳にしていないわけじゃないのに・・・・・信じていない。


最近やっと・・・・・京子に戻れるようになってきたんだ。

だから・・・・・あまりキョーコちゃんに不安になるようなことを

言わないで欲しい。」



「・・・・・・敦賀蓮は、本当はもう復帰する気がないっていうネタ・・・・・

じゃあ、あれは本当って・・・・・ことだな???」



そう。

最近、この業界内で微かに流れている噂。

それが―――――

敦賀蓮はもう・・・・・復帰しないだろう、ということ。


その噂はもちろん、ワイドショーや芸能雑誌にも大きく取り上げられている。


オレは今日、キョーコにアノヤローのマネージャーがついたっていうのを見たから

それを、確信した言ったのに・・・・・

アイツはそれすら、気づいていないのか???


奴は、返事をしない変わりに、違う話をしだした。



「・・・・・・不破君は・・・・・・

キョーコちゃんのこと、本当は、どう思ってるの??

只の、幼馴染っていう感覚じゃなく、キョーコちゃんに近づくんだったら・・・・・


これからはオレが、徹底的にガードするけど・・・・???」



その奴の言葉と挑戦的な目に・・・・・・

アノヤローと重なった。


でも・・・・・・アノヤローは、そんなこと、一度も口にはしなかった、な。



「・・・・・・蓮はきっと、ちゃんとこう言いたかったんだと思う。

でも・・・・・アイツは基本的に紳士だし・・・・・

面と向かっては言えなかった。

だけど、オレはキョーコちゃんのマネージャーだからね。


彼女にとって害のある人間は、徹底的にガードする、よ???」



コイツ、オレの考えてること、わかるんじゃないのか??と思ってしまった。


フッと小さく笑って息を吐き出した後



「・・・・・・アイツは・・・・・・オレ様のもんなんだよっ!!!!

だから、マネージャーだろうがなんだろうが、

このオレに指図すんじゃねぇっ!!!!!」



オレの大きな怒鳴り声に、奴は若干驚いていたが

何もなかったように、平静になると・・・・・・



「・・・・・・・キョーコちゃんは、もの、じゃない。

それに・・・・・・・誰のものでもないんだよ・・・・・・」



ボソリと言ったその言葉に、オレは若干不安に感じた。



「・・・・・・・もし不破君が、本当にキョーコちゃんのことを

想って言ってるんだったら・・・・・・・

キョーコちゃんを、女優京子に戻すことが、できる、かな???」



「――――――――っ!!!!!

いったい、どういうことだ????


アイツ、最近はちゃんと仕事してるんだろ???」



すると奴は、フゥと息を吐き出すと、暗い顔をした。



「・・・・・・トーク番組や、バラエティなら・・・・・

何とか京子になって、明るい笑顔を取り戻すことが出来た。

でも・・・・・女優としては・・・・・まだ・・・・・・・・。」



「・・・・・・まだ???」



「前までのような演技は・・・・・出来ていない。

しかも、今のこのドラマでは、恋愛ドラマのライバル役で・・・・・

彼女にはいろいろ、つらいみたいなんだ・・・・・・

俺が何とかできるなら、してあげたいけど・・・・・

何も出来なくて、ね・・・・・・


きっと蓮なら、相談にのったり出来たんだろうけど・・・・・・」



「チッ!!!!!何やってんだよっ、アイツっ!!!!!!

このオレ様を追い抜いてやるって言ってたのにっ!!!!!!!


・・・・・・オレでよかったら・・・・・・

相談でも何でも、のってやるよっ!!!!

それで、アイツの気が済むなら、なっ!!!!!」



オレはこういうと、今日のキョーコの撮影が終わったら会わせてもらう約束をした。





第七話へ、つづく・・・・・








どうして社さん、ショーちゃんに頼っちゃったんだろう・・・・??

他にも相談できる人がいたのに、ね。


でもきっと・・・・・・それが一番よかったんだよ、ね???



そして何気に次回も尚視点。

ううん・・・・・彼はいじりやすいから書きやすいのですが

相変わらず、口が悪くて素直じゃないね。