私はいつも後悔している。


何故あの時、あんな事を言ってしまったのか。

貴方を拒絶してしまったのか―――――――


・・・・・もう一度、貴方に会いたい



もう一度君に恋をする  第一話




「キョーコちゃんっ!!!大変だよっ!!!!」


今は私のマネージャーになった社さんが、事務所に寄って仕事の確認に戻ってくるなり、こう叫んだ。


「ハリウッドの新鋭監督から、映画の出演依頼が来てるんだっ!!!!
キョーコちゃん指名で、しかも、主演だって!!!!!
すごいっ!!!すごいよっ!!!!!

これも全て、カンヌ映画祭で主演女優賞をとったから、だよねっ!!!!!」



興奮したまま、笑顔で話してくれる社さんに相槌をうちながら、私の心はいつもと同じように、上の空。

そう、最後に貴方に会った、あの日から―――――――

私はいつまでも、貴方の面影を探し続けている。




*




最上キョーコ、23歳。
女優を中心に活動しているマルチタレントの京子でもある。

マネージャーは・・・・・私の最も尊敬してやまない俳優、敦賀蓮の元マネージャーだった、社さん。

敦賀さんは、日本の芸能界から姿を消した。
勿論、私の前からも・・・・・。

私は、敦賀さんが居なくなって初めて、貴方がどれだけ私にとって、大事な人なのかを知った。

貴方が居ない毎日は、何をしていても、全てがモノクロにみえてくる・・・・。

貴方は今、何処にいるのですか?――――――――



「・・・・い・・ま・・・・
ってオイッ!!!!ただいまって言ってんだよっ!!!!!」


耳元で大きな声を出され、慌てて振り返ると・・・・・・
そこには同棲中の歌手、不破尚が不機嫌そうな顔で立っていた。


「・・・・・・おかえり」


「ん・・・・・ってか、相変わらず今日も、しけた面してんなよっ」


ポンポンと頭に手を載せる尚は・・・・
口が悪いのに、優しい。

尚と同棲をしているのは他でもない。
尚に頼まれたからだ。

敦賀さんにもう会えないと知った私は、抜け殻のようになってしまい、

何もできない、空っぽな人間になってしまった。

そんな私にそっと抱きしめ、毎日のように愛の言葉を囁いて、ここまでにしてくれたのは他でもない。

尚のおかげだ・・・・・

彼は、私が今でもずっと敦賀さんを想い続けていると知っていても、毎日耳元で愛の言葉を囁く。

ほら、今日も・・・・・

フワッと後ろから優しく抱きしめると


「キョーコ・・・・・・愛してるよ。」


優しく言ってくれる。


「ん・・・・・わかってる・・・・・でも・・・・・・」


「・・・・・・オレはいつまでも待つから。
お前がいつか、オレだけを見てくれるときがくるまで・・・・・」


その言葉に、胸がチクんと痛くなった。

・・・・・・ショー、それは無理だよ。
私の心は一生、あの人に捕われたままなの・・・・・
例え、何度この身を捧げようと、心はいつも・・・・・
あの人を求めてしまう。

私達は今日も・・・・・・体を繋げた。




*




次の日、ドラマ撮影も終わり、事務所に用事がある社さんに付き添っていたら、こう聞かれた。


「キョーコちゃん。ハリウッドの仕事、うけておいたからね。
で、その監督さんの作品は、あまり日本じゃ公開されてないから、

このDVDでヒマなときに観て予習しておいてね。」


渡されたDVDは、わずかに2枚。


「えっ!?2枚だけ・・・・・ですか???」


「そうっ。でも・・・・・・
観てみたらわかると思うけど、かなり良いモノ作ってるんだよ。
向こうでもかなり評判よくてね~~~~。
一回観てみてね!!!」


「はいっ。ちなみに、何て言う監督さんなんですか!?」


「ああっ、そういえば教えていなかったね。
クオン・ヒズリって言うんだよ??」


「・・・・・・・クオン・・・・・ヒズリ・・・・・・・」


・・・・・・あれっ?!どこかで聞いたことがあるような・・・・・・・

あっ!!!!!!!


「ヒズリってもしかして、先生の息子さんじゃあっ!!!!!!」


「正解っ!!!!って、良く知ってたね~~~~~、キョーコちゃん」


「はいっ!!!!前に先生が日本にいらしたときに、伺った事があるんですっ!!!!
あれっ!?でも・・・・・・・息子さん、亡くなったんじゃ・・・・・」


「・・・・・・・・そっか」


小さく呟いた社さんの言葉の意味も、社さんが微妙に顔色が悪かったのも、

この時の私には、全く気づかなかった。



「じゃあ俺、この後社長に呼ばれているから、キョーコちゃんは先に帰って

ゆっくり休んでいてねっ!!!!お疲れ様ぁ~~~。」



「あっ、はいっ!!!!!!お疲れ様でしたぁ~~~~!!!!!!」



私は知らなかった。


この後、社長室でどんな会話をしていたのか――――――




*




キョーコちゃんと別れ、俺、社倖一は社長室で社長に会っていた。



「そう、か・・・・・・・・。クオンの名前は、知っていたのか・・・・・・・」



「キョーコちゃんは何も知らないので、このまま会えばかなり困惑すると思いますが・・・・・」



「うう~~~ん・・・・・・・確かにそうなんだが・・・・・・・

だが、アイツがどうしても京子で映画を撮りたいって言ったんだ。

・・・・・・・・・・こんなこと、初めてなんだぞ?!

今まで全く、他人に興味を示さなかったアイツが・・・・・・・・」



「・・・・・・・蓮は、向こうで元気にしてるんですか???」



「まぁ、すぐに会えるだろうが・・・・・・

とりあえず、歩くことも、話すこともできるようにはなった。

ただ・・・・・・・・・・」



「・・・・・・・・・ずっと、記憶は戻らない、と・・・・・・・・」



「・・・・・・・そうだ。そればかりは、仕方がない。

だから、アイツはアメリカへ帰ったんじゃないのか???」



「・・・・・・・ハイ・・・・・・・」



「・・・・・・・こればかりは、誰のせいでもないんだから、仕方ないんだ。

敦賀蓮はもう・・・・・・・戻ってこないのだから、な。」



「それはわかっています。

でも、このままじゃいけないですよ、ね・・・・・・。」



「・・・・・・・お前も、京子のそばに居ればわかるだろう???

彼女が、今いかに危ないところに居るのか・・・・・・

彼女の演技は、まだ完璧ではない。

これを乗り切れればきっと・・・・・・・

京子はトップスターになれるだろう。


そして・・・・・・・・・それは、クオンのためにもなると思う。

アイツは・・・・・・・今、人を恐れているから、な。」



「・・・・・・・恐れる、ですか???」



「あぁ・・・・・・・。

アイツは何も知らない、赤ん坊なような状態からいきなり

大人の社会にもう一度飛び込んだようなもの。

・・・・・・・・・・すべてを信用できなくなるのは、当然じゃないか??」



「ですが・・・・・・・」



「だから・・・・・・だから、あんな画が撮れるんだよ。

アイツの今の繊細なところが、かなり出ている。

アイツの腕は・・・・・・本物だ。」



「・・・・・・・それは、俺もそう思いました。」



「・・・・・・クオンは、今回日本で撮影するに当たって

敦賀蓮のことを、一応父親であるクーから聞いてくるとは思うが

十分ではないと思う。

・・・・・・・社。アイツを、うまくフォローしてやってくれないか??」



「・・・・・・わかりました。」




そう、今回のクオン・ヒズリの映画は、全編日本で撮影する。

女優京子を撮りたいと希望をした蓮(クオン)に、

社長は同意し、許可を降ろす変わりに、

撮影は日本で、という条件をつけた。


日本で、金髪碧眼姿の敦賀蓮のそっくりさんが現れたら・・・・・

きっとかなりの騒動になるだろう。


・・・・・・・慎重に行動しないと、な・・・・・・






第二章へ、つづく。







まさか、もうひとつ新作書いちゃうとは・・・・・

私も、無謀ですね。


今回のテーマはずばりっ!!!!

「大人っぽく」です。


切ない感じが出ればいいんですが・・・・・


とりあえずほのぼの、ではないですね。



そして、いきなり蓮様、出ません。

今回彼は、クオンで出てきます。


今回は、前書き、補足等なしですので

わかりにくかったらお気軽に教えてください。



蓮がなぜ日本から居なくなったのか、などは

ちゃんと話の中でアップするのでお待ちくださいね。


ではでは。