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この映画が撮り終わる頃には


私は、もう過去を吹っ切ることができるのだろうか??


それとも――――――



もう一度君に恋をする  第八話



顔合わせも終わり、私はこの映画にかなりの不安を覚えていた。


記憶をなくした敦賀さんが、監督、というのはもちろんだけれども・・・・

本当の一番の不安は、この役。


主人公の”下條 紅子”は・・・・・

私に、最上キョーコに、似ているから・・・・・



両親に苛まれ、幼少の頃から十分に愛情を受けて育たなかった紅子は

一緒に育った従兄弟の十夜が好きで、いつも一緒に居た。

でも十夜は、紅子のとこは妹のようにしか思っていなかった。


両親が離婚をし、十夜と別れて尚、紅子はずっと十夜に思いを寄せる。

大きく成長をした頃に、十夜と偶然再会して、紅子はうれしかったのだが

十夜はもう・・・・他の女性と結婚をしていた。


どうして・・・・・???

どうして、私のこと、好きじゃないの???

誰も・・・・・私のこと、見てくれないの・・・・・・???


紅子の気持ちが・・・・・痛いほど、よくわかる。


傷心の紅子が旅先で出会ったのが・・・・・・・”小諸 瑛多”だった。

たった一日、一緒に過ごしただけなのに・・・・・

何故か忘れられなかった彼と、東京で再会する。


そして静かに・・・・・二人の恋の話が動いていく、という話。



どうして・・・・・・どうして、敦賀さんが監督をする、この話の主人公が

私とかぶって見えてしまうんだろう・・・・・・。

ただの偶然だと、そう・・・・・思いたかった―――――




*



映画のクランクインに入り、私は・・・・

毎日クオン監督と仕事で顔をあわせるようになった。


最初は、かなり緊張した。

記憶をなくしていても、もしかしたら―――――

なんて、淡い期待もあった、といったらうそじゃない。


でも、今目の前に居る、クオン監督は、本当に

人付き合いが苦手って感じで・・・・

演技の指示やらもほとんど助手のジョーさんが行っている。

クオン監督は、元々・・・・敦賀さんなわけだから

日本語も話せるのに、挨拶程度しかしない。

だから、私とも、挨拶しか交わさない。


それは、どのスタッフにもそうで、みんなかなりやりにくそう。

でも、間に入ってくれるジョーさんは、とても気さくで話しかけやすいから

何とか撮影も順調に進んでいく、と思われた・・・・・。


相手役の上田さんのシーンを撮り始めてから・・・・・・・・・・。




*




「カーーーーーーット」



大きな声で撮影を中断し、アシスタントのジョーさんが駆け寄っていく。



「・・・・・上田くん、そうじゃなくって、ここはもうちょっと・・・・・」



ジョーさんの指示を聞きながら、何度も上田さんは頷いていた。

もうこのシーンだけで、5回目の中断。


私には、何がいけないのかはわからないのだが・・・・・

この休憩の合間に、いつも、監督に見られているような気がするのは

私の・・・・気のせいなんだろうか。



周りがガヤガヤとし、動き回っている中で

いつも、監督だけはジッといすに座り・・・・・・こっちを見ている。

最初のことは感じられなかったのに・・・・・・どうして????



「・・・・・・キョーコちゃん??」



すぐ隣にきていた社さんに呼びかけられ

思わずビックリしてしまった。



「なっ・・・・・何ですか?社さん・・・・・・」



「いったん休憩だって。

今日はあまり撮影進まないかもしれない、ね・・・・・」



まだジョーさんと上田さんは台本を片手に話しこんでいたので

今日は、あまり進まないかもしれない、と私も思ってしまった。


ふと監督が座っていたほうへ目線を向けると

もう監督は席から立ち上がって歩いていってしまっていた。


そんな私を、社さんが心配そうに見つめているとは知らずに・・・・・・・




*




この日の撮影は、その後も思ったように進まずに別のシーンを撮影して

私は違う仕事へと移動した。


来週から、旅先でのシーンのロケが始まる。


しかも場所は・・・・・京都らしくて・・・・・・内心穏やかではないのだが

仕事だから、仕方がない。


ロケが長引くのは避けたいから、何とか上田さんが役をつかんでくれないと・・・・

そう思っていると、今日の仕事上がりに・・・・・

ある人が私を待っていた。


アシスタントの、ジョーさんだ。



「京子さん、こんばんは。

今から・・・・・ちょっとお時間いただけないですか??

少しだけ、お話したいんだ。

できれば・・・・マネージャーさんも一緒に。

ただ・・・・・内密な話なんで、あまり人に聞かれたくないから

ボクのホテルの部屋まで、来てもらってもいいかな??」



その言葉に、私は思わず隣に居た社さんと顔を見合わせた。


社さんは、小さく頷いたのを確認すると



「・・・・わかりました。社さんもご一緒なら・・・・・大丈夫です。」



そういって、私は社さんと一緒に、ジョーさんのホテルの部屋まで行くことになった・・・・




*




ホテルの部屋に案内され、私と社さんは、大きなソファに腰をかけた。

すると、ジョーさんはコーヒーを入れてくれて、私たちの前のテーブルにおいてくれた。


自分のコーヒーを用意して、違ういすに腰掛けると、話し始めた。



「話というのは、他でもない・・・・・

クオンのこと、何だけど。

確か・・・・・・マネージャーの社、さんは、以前は日本に居た頃の

クオンの・・・・確か敦賀蓮って名前で活動してた俳優、だったかな?

それの、マネージャーをしていたんだよね?」



「・・・・・・そうですが・・・・・??」



社さんは、何を今更、と言ったような顔で答える。

すると、ジョーさんはあまり気にせず、私のほうへ向きを変えた。



「そして、京子さん。貴女は・・・・・

その敦賀蓮、と共演をしたことがあり、親しかった、とお見受けしますが・・・・・

日本に居た頃のアイツと、どこまで親しかったのかは、わかりません。

しかし・・・・・・・・

よろしければ、教えていただけますか??


このままじゃ・・・・・撮影が進むことは、ないと思いますから。


あなたに・・・・・彼の心を、解きほぐして欲しいのです。」



―――――――――――えっ???





第九話へ、つづく・・・・・・







今回は少し、話が短めになってしまいました。申し訳ありません。


映画の話になるにつれ、映画の内容まで・・・・・全然考えていませんでして

こじつけのように考えてしまいました。



そして、ここで出てきました、記憶をなくしてしまった蓮=クオンなんですが

やっぱり性格は変わってもらってたほうが楽しいので

今回、彼の性格は・・・・・寡黙で、人嫌い、みたいな感じです。


最近のスキビの話はちゃんとよくは知らないのですが

(私の情報源は、実はネタバレサイト様)

カインから怖さを取り払ったような感じだと思っていただくとわかりやすいかな?


でも、セツカにべた甘設定なんですよね。

・・・・・カイン、というより、役のB.Jのほうかしら??


ただ、どっちにしても、怖さはなしでお願いします。


おっかない人、書けないだけです。


一応そう思って書いてるのですが・・・・・

これから、クオンとキョーコが絡んでくるので

二人が絡むとどうなるのか・・・・・楽しみですね。


(私が書くと、頭の中で考えていたことから暴走することがあるので・・・・

書いてみて、面白い限りですね)