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アイツが居なくなっただけで


どうしてそんなに、不安定になってしまったんだ・・・・??


―――――オレじゃあ・・・・・ダメなのか・・・・・??




もう一度君に恋をする  第七話


<尚side>



オレは、キョーコのドラマの撮影が終わるまで局の駐車場で待っていた。

車の中に隠れたまま・・・・・・


キョーコのマネージャーの社さんから

(ショーの中で、ちょっと頼られたから、呼び方変わりました)

撮影が終わったら、こっちに連れてきてくれる、という言葉を信じて・・・・・



すると、遠くから聞きなれた声が聞こえてきた・・・・・



「えっ?!今日は社さん、一緒に帰らなくていいんですか???」



「あぁ・・・・大丈夫だよ。ちょっとある人に帰り頼んでおいたから、

明日は最初朝事務所に一度よってね。」



キョーコは何がなんだかわかっていない様子でここまで連れてこられたようだ。


―――――大丈夫なのかよっ???


ガチャっと車の後部座席ののドアが開くと



「じゃあ、キョーコちゃんをよろしくねっ!!!!・・・・不破君」



「・・・・・・・・・・・・・・へっ????」



「・・・・・わかりました、社さん。お預かりします、ね。」



バタンと大きな音で車のドアが閉められると、オレはすぐにロックをかけた。

・・・・・・・キョーコが勝手に出て行かないように。


そしてオレはすぐに、アクセルを踏み込んだ。



「なっ!!!!い・・・・・いったい・・・・・・どういうことよっ!!!!!!」



無理やり後部座席に押し込められたキョーコは

いきなり発進された車に戸惑いながら

運転席のオレのほうまで身を乗り出して、大声を上げた。



「・・・・・あんま耳元でわめくなっ!!!!

オレは静かに運転したいタイプなんだよっ!!!!!

お前、事故ってもいいのか???」



少しだけ顔を後ろに向け、静かにさせる。



「ううう~~~・・・・・・・

いったい、どこ連れてくのよ・・・・・・」



「・・・・・・知らね・・・・・」



「なっ!!!!知らないって、アンタねぇ~~~~っ!!!!!!」



「・・・・・・とりあえず、落ち着けよ。


じゃあ、ちょっと、あそこにするか。

・・・・・・着くまで静かにしてろよ??」



「・・・・・・・・・わかった。」



ボソッと小さな声で言ったキョーコは、それ以降何も言わず

ずっと車内から、流れる景色を眺めていた。




*




着いたところは、横浜のみなとみらいの景色が眺められる埠頭。

こんな遅い時間じゃ、他に誰も居なかった。


お互いに一応、目深に帽子をかぶって、外を歩いた。


キョーコは車から降りても、何も言わない・・・・・


目の前に広がるのは、漆黒の海。



「・・・・・・・お前、さぁ・・・・・・」



オレのつぶやいたようなその一言に、少し離れて後ろに居たキョーコは

オレのほうを、不思議な顔をしたまま見つめた。



「・・・・・・・何、やってんだよ・・・・・・

お前は、オレを追い越して、見返すために

この業界に入ってきたんじゃないのかっ???


それなのに、今・・・・・・お前は

何でこんなところで、そんな風になっちまったんだよっ!!!!」



キョーコは大きく目を見開いたものの・・・・・

オレには何も言い返さない。



「お前は、このまま・・・・・・・

このままじゃダメだって事くらい、わからないのか???


・・・・・マネージャーにまで、心配かけて・・・・・


お前は、こんなところで終わりたいのかよっ。」



ずっと黙って聞いていたキョーコの目に

微かに涙がにじむ・・・・・



「・・・・・ショ・・ー・・・・・ちゃ・・・・、な・・・・に・・・・わ・・・・の・・・・・」



微かに口は動いているのだか、何を言っているのか・・・・・

オレにまでは届かない。



「・・・・・・キョーコ???」



キョーコの声を聞こうと、一歩二歩とキョーコに近づくと・・・・

キョーコはオレの顔を睨みつけた。



「・・・・・・ショーちゃんに、何がわかるのよっ!!!!!


私が、今までちゃんとやってこられたのはすべて・・・・・・・

敦賀さんが居たから・・・・・。


敦賀さんが・・・・・遠くからでも、ちゃんと私のこと見ててくれたから・・・・・

私は、役に入ることができたの・・・・・。


・・・・・・・私だって、気づかなかった。

敦賀さんが居なくなって・・・・・こんなに、こんなに・・・・・

仕事にまで支障をきたしてしまうなんて。


いつも、いつも・・・・・役作りで悩んだとき、ヒントをくれたのは

他でもない敦賀さんだったから・・・・・。


京子が女優としてやってこられたのは・・・・・・

敦賀さんのおかげだったんじゃないかって―――――――


毎日不安で、不安で・・・・・・・。」



キョーコは最後、消え入るようなか細い声でささやきながら

自分で自分の体を抱きしめる・・・・・

微かに、震えながら―――――


キョーコにとって、アイツがそんなに大事だったなんて、

本当に知らなかった。


―――――――――――でも、アイツは今、居ない。


オレが、キョーコにしてやれることは、何かないのか・・・・・??

目の前に居る、今のコイツは、今までの

オレを憎くて憎くてしょうがなかった、威勢のいいキョーコじゃない。


オレへの憎しみより、アイツが居なくなってしまった苦しみのほうが

キョーコの中では、大きいんだ・・・・・・


オレは目の前で震えるキョーコを、そっと抱きしめた。



「・・・・・・ショー??」



いきなり抱きしめられ、戸惑うのか腕の中で動いて何とか離れようとするキョーコ。

オレは抱きしめる腕の力を強めた。



「・・・・・・・オレはアイツじゃないから、アイツのようにはできない。

けど・・・・・お前の話くらい、聞いてやれる。

演技のヒントとか出すことはできなくても、こうして・・・・・

お前を慰めることくらいはできる。

だから――――――――――」



ずっとオレの胸を押し返していたキョーコの力が、弱まった。



「オレが、お前のそばに居るから・・・・・・」



オレのこの一言に、キョーコはオレの顔を見上げた。

その顔には明らかに、戸惑いの表情が浮かんでいる・・・・・



「・・・・・何を、言ってるの・・・・???」



「・・・・・お前が、アイツをずっと想っていても、オレは構わない。

お前が・・・・・・アイツが戻ってくるのを待っているなら、待てばいい。


只、今のお前は・・・・・一人にはしておけない。

いつまでも、アイツが居ない悲しみに囚われたままじゃ・・・・

この先、アイツが帰ってきたとき、笑われるぞ???


アイツが居ない間に・・・・・日本で一番の女優になって、

アイツを見返してやるくらいの気持ちじゃないと・・・・・・

お前らしく、ないだろ????」



キョーコは、目を何度もパチクリさせて、何かを考えていたようだった。


・・・・・しばらくして、フワッと・・・・・

オレには今まで見せたこともないような笑顔をして



「・・・・・・アンタでも、いいこと言うのね・・・・・」



前のように、毒気のあるような言葉をはいた。



「・・・・ちょっとは、お前っぽくなったじゃねぇか・・・・・」



オレも負けじと嫌味たらしく言うが、キョーコはフフッと笑った後

何も言わずに、しばらくオレに抱かれていた。


オレも、何も言わず、そのままキョーコを抱きしめていると・・・・・・



「・・・・・・ショー・・・・・人のぬくもりって・・・・・温かいね。」



顔を胸に埋めたまま、ポツリとキョーコはつぶやいた。



「・・・・・そうかも、な・・・・・」



「私、ね・・・・・・・

ずっと、敦賀さんのニュースを聞いた日から・・・・・

あまり夜、眠れないの・・・・・・

眠るのが・・・・・・・怖いの・・・・・・・。


また目覚めたら・・・・・・悪いニュースが飛び込んできそうで・・・・・」



キョーコの中で、アイツのことはこんなにも深い傷になっていたんだ。

オレは、抱きしめる力を少し強め・・・・・



「・・・・・怖いなら、一人で寝るな。

オレが・・・・・ついてるから・・・・・な・・・・・」



キョーコは、俺の腕の中で、微かに頷いた。




*




その日からキョーコはずっと・・・・・・毎晩オレの部屋で寝泊りをするようになった。

最初は、一緒のベットではなく、キョーコが寝静まるまでずっと

オレがそばで手を握っていた。


だが・・・・ある日から、アイツの様子が変わっていった。


眠れるようになったら、今度は夢にうなされ、朝起きたときには

顔面蒼白で、かなりの脂汗をかく毎日。


キョーコに、どんな夢を見ているのか聞いたら・・・・・

アイツが居なくなる夢で・・・・何度追いかけても、届かないんだそうだ・・・・・・

キョーコの心労は・・・・ピークに達してきていた・・・・・・


オレは、この先どうすればいいのか思いあぐねていたそのとき・・・・・

キョーコから、言い出したんだ。



「ねぇ・・・・・ショー・・・・・・・・

お願いが・・・・・あるの・・・・・・・・」



もう寝るだけ、というようなときに、キョーコはオレの前にやってきた。

どんなにつらい時だって、いつもは大体人の顔を見て話すやつが

今回は・・・・・下を向いたまま、モゴモゴしている・・・・・


―――――いったい、どうしたんだ???



「・・・・・お願いって・・・・・???」



動揺した心を抑えるように、思ったよりも低い声で答えていた。



「私のこと・・・・・・・抱いて欲しいの・・・・・・・」



・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ハァ~~~~~~~っ????????


キョーコらしからぬその言葉に、オレは思わず固まってしまっていた。


キョーコは、何も言わないオレに、不思議に思いそっとオレの様子を伺うと

あわてたように、こう言い出した。



「あ・・・・あのね・・・・・

他の女優さんが言ってたんだけど・・・・・

その・・・・そういうことをした後って・・・・夢を見ないことが多いって言うから・・・・」



・・・・・・・・・・・・・お前、バカか????



「・・・・・・そんなこと、あるかよ。

それに大体、お前、アイツのこと好きなんだろ??

好きな奴以外にお前は触れられたくないんだろ????

無理すんなっ!!!!・・・・・・お前らしく、ないだろ?????」



オレのこの言葉に、キョーコは明らかに落ち込んでいた。

そして・・・・・・



「だって・・・・・・もうすぐ、ベットシーンもあるし・・・・・・

多少の勉強になるかな、とも思ったし・・・・・

他に・・・・・誰にもお願いできないし・・・・・・」



っ!!!!!!



「お前、それ、オレに喧嘩売ってんのかぁ~~~?????

大体、お前、ちょっと勘違いしてんじゃないのか???

・・・・・オレが、慈善事業でお前のこと、面倒見てるわけじゃないんだぞ???」



オレが怒り出しても・・・・・キョーコは案外冷静だった。



「・・・・・・・わかってる。

ショーの気持ち、わかってる・・・・・・・

わかってて、甘えてるの。

私だって、もうそんなに、バカじゃない。」



「じゃあ、どうして――――――――」



「もう・・・・・・つらいの・・・・・・・

ただ、敦賀さんを・・・・・・待ってるのが・・・・・・・・・・

私を・・・・・・・・・・・楽にして???」



目の前のキョーコの目には、涙が溢れ・・・・・

ゆがんだ表情のまま・・・・・・笑っていた。



「・・・・・・・・・・お前は、それで・・・・・・・

本当に、いいのか???」



キョーコは涙を流しながら、微かに頷くと



「・・・・・・敦賀さんのことを・・・・・忘れさせて????」



この言葉を最後に・・・・・・オレはキョーコをきつく抱きしめ

口を封じた――――――――





第八話へ、つづく・・・・・・









こんな話になってしまいました(てへへ)


ショーが理性の塊になってます。

(おかしいですね)


ちなみに二人のラブシーンは、除外します。

只単に、私が書きたくないんです。


でも、自分が好きな女を、他の人のことを思っていることを知ってて

抱くのって・・・・・・・

かなりの苦痛だと思うのって、私だけでしょうか・・・・???


そして、こんなこだわりがあるのですが

今回、ショーちゃんはキョーコちゃんに”好き”とは言わせてません。

それは、4年後になっても、変わってないんです。

彼は、決して、キョーコちゃんには言わないんです。


これから、クオンの蓮が出てきて、進んでいく中で

ショーも、変わるんでしょうかね??



次回からやっと、進むのかな・・・・???

よし、がんばろうっ!!!!!