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今のあなたの中で


私はいったい、どんな存在なんだろう・・・・・

少しだけ言ってくれたあの言葉は・・・・・


あなたの、本当の気持ち、なの???



もう一度君に恋をする  第十二話




クオン監督に見せるというDVDが届けられ

私は、ジョーさんの後を社さんと共に続いていった。


同じホテル内に、別の部屋をとってあるらしい・・・・


”クオンは、いつも一人で居たいようだから・・・・”と

寂しげな顔をしながら言ったジョーさんの顔が忘れられない。


敦賀さんは、記憶を無くして、アメリカで帰った後、

いったい、どんな生活をしていたんだろう・・・・


誰かを・・・・・必要としていたのだろうか・・・・・???


すごく・・・・・気になってしまう。

私はまだ・・・・・・彼のことを・・・・・・????




*



ホテルにあるチャイムを鳴らすと、すぐに扉が開いた。



「・・・・・・用事って・・・・・何??」



実は、部屋を出る前、ジョーさんは電話で今から伺うことを連絡していた。

だから、監督もすぐに出てきてくれたのだが、あまりにも不機嫌そう。

・・・・・・・以前の敦賀さんなら、ありえないような態度だ。



「クオン・・・・・客人も居るのに、そんな態度でいいわけ??」



ジョーさんのこの言葉に、初めて監督はあたりを見回し、

社さんと私に気づくと、少しだけ驚いた顔をしたかと思うと

元の不機嫌そうな顔に戻った。



「・・・・・とりあえず、中へどうぞ。」



こういうなり、扉を大きく開いて、私たちを中へいざなってくれた。


私たちは部屋の中へ入り、大きなソファに座ると、

監督はそのまま飲み物を用意してくれた。


・・・・・・不機嫌そうにしている割に、気は利くんだ。



「・・・・・コーヒーしかないから、これで。」



全員分のコーヒーを入れて、それぞれの前に並べてくれる。



「・・・・・ありがとうございます。」



私の前においてもらったときにお礼を言うと、

一瞬目が合った。


感情を表に出さないような眼で、まっすぐ見つめられると

そのまま吸い込まれそうになる・・・・・


けど、その眼もすぐにそらされ、その後には

私の心臓の、いつもより高鳴る音が体に響くだけだった・・・・



「これを・・・・・・うちの社長から預かってきたのですが・・・・・」



社さんが監督に、持ってきたDVDを手渡そうとする。

すると・・・・・

監督は、ジッとそれを見つめたまま



「これは・・・・・・・なんですか??」



「えっ?!DVDですけど・・・・」



「内容を聞いているんです。」



まっすぐ射るような視線で社さんを見つめるクオン監督に

社さんも負けじと監督を見たまま



「昔の敦賀蓮が出ていたドラマのメイキングの映像です。

・・・・・・演技をしているときのじゃなく、休憩中の・・・・

普段の彼の様子が映っている、貴重な映像だと思うので・・・・・・

興味がおありなんじゃ、ないんですか――――??」



社さんの言葉に、クオン監督は全く表情を変えずに一言。



「・・・・・・興味ない。」



ポツリとこぼし



「・・・・皆さん飲んだら、早急にお帰りください。

私は・・・・・奥の部屋で休ませてもらいますから。

ジョーも・・・・お二人をお連れしてもらって、いいかな?」



監督のあまりの言葉に、社さんも私も何も言えないでいると・・・・



「・・・・・・クオン・・・・・・、お前、失礼にもほどがあるよなぁ~~。

今回、俺が無理言って頼んできてもらっているのに・・・・・」



ジョーさんの言葉を無視するように、監督はそのまま立ち上がり

奥の部屋へと歩いていくから・・・・・



「ちょ・・・・・ちょっと待ってくださいっ!!!!」



私は、何も考えなしに立ち上がって大声で呼び止めてしまった。


すると監督は立ち止まり、少しだけこちらに顔を向けると



「・・・・・・何???」



今までよりもかなり不機嫌そうな低い声で言った。



「あ・・・・・あの・・・・・・・・」



なんて言えばいいのか、頭の中で一生懸命考えるのだが

一向にいい言葉が浮かんでこない。

グルグルとまわる思考の渦に、飲み込まれそうになったそのとき・・・・・


(ハーーーーーーッ)


離れたところに居た、監督がため息をはいたのが聞こえてきて

頭が真っ白になりかけたところに



「・・・・・・君は・・・・・・どうしたいの・・・・・??」



頭上から声が聞こえてきて、思わず上を見上げると

いつの間にやら、離れたところに居たクオン監督が

すぐ目の前までやってきていた。


彼の表情は、今までの不機嫌そうな感じは一切なくなっていたのだが

感情を一切表にはあらわしていなかった。


ジッと見つめられ・・・・・・私は、そのまま彼の、その瞳に

魅せられてしまっていた。



「・・・・・・・君は・・・・・・・・いったい・・・・・・俺の・・・・・・・何??」



―――――――――――へっ??


今、なんて・・・・・・言った・・・の・・・・・・・・???



「・・・・・・・・俺は・・・・・・・・・」



こういうと、クオン監督は苦しそうな表情を少し浮かべると



「・・・・・・なくしてしまった記憶を・・・・・・

取り戻そうとは、一度も思ったことはない。

たとえ――――――仕事に支障をきたしても。

でも・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



・・・・・・・・・・でも???



「君が・・・・・・・・・・・・・・・」



・・・・・・・・・・私、が・・・・・・・・・????



「無くした、記憶の中に・・・・・・・・居るような・・・・・・気がする。」



―――――――――――あっ・・・・・・・

監督の、一言一言に・・・・・・

私の心が、震える・・・・・・



「・・・・・・・・どう・・・・・して???

どうして・・・・・・君は、泣いている・・・・・・・?????」



私はいつの間にか、大粒の涙を、流していた―――――――――



「あ・・・・・あれっ・・・・・・??

いつの間に・・・・・・・・ご・・・・・ゴメンなさい。」



涙を拭おうとすると、隣でずっと見ていた社さんがそっと

私にハンカチを渡してくれた。

ハンカチを受け取り、涙を拭いていると



「・・・・・・・京子のためにも・・・・・・

一度だけでいいから、これを観てくれませんか??」



何も言えなかった私に変わり、社さんがお願いをしていた。

チラリと監督の顔を見ると、少しだけ困っているように感じられた。

ジッと様子を伺っていると、またも彼と目が合ってしまうと



「・・・・・・京子さんは、観て欲しい、ですか・・・・・??」



さっきまでとは、少し違うような、少しよそよそしい感じな言い方で、聞かれた。

私は、そのままコクンと軽く頷くと・・・・・



「・・・・・・・わかりました。

ただし・・・・・・一回だけ、ですよ??」



しぶしぶと言った感じで、クオン監督が言うと



「よしっ!!!じゃあ、今すぐ観ようっ!!!!!

お前がちゃんと観てるか、俺たちが全員見張っているから、なっ!!!!!」



ジョーさんは喜んで準備を始めた。


ジョーさんが準備をしている間、クオン監督は観やすいようにと

私たちが座っているソファに座ろうとしたのだが、

私と社さんが3人掛けのソファの真ん中に座っていたため、どうしようか迷っていたようなので



「・・・・社さん、そっち詰めてもらえますか?」



社さんに小声でお願いをしたら、社さんは



「キョーコちゃんが、あっちに寄ってもらえるかな?

俺の隣に座ってもらったほうが、いいでしょ???」



「えっ?!でも・・・・・・」



私は、本音で言うと、恥ずかしいけど隣に座って欲しいな、なんて

思ってるんです、が、ダメですか??


ここでチラリと監督のほうを見たら、なんと彼は・・・・・


ジョーさんが座っていた一人掛けのいすに座ってしまっていた。


・・・・・・・・あっ・・・・・・・


社さんと二人、顔を見合わせていると



「準備終わったよぉ~~、ってクオンっ!!!!

そこ、俺座ってたんだけど・・・・・・・。


じゃあ、申し訳ないけど、どちらかつめてもらえますか???」



結局、ジョーさんが社さんの隣に座ってもらうことになってしまった。


チラリとクオン監督のほうを見ると、彼は何にも気にしてないような様子だった。





第十三話へ、つづく・・・・・・









今日は、作者の旦那様と、長女がお休みの中、

こっそり自分の時間をいただいて、書きました。


・・・・・・急いで書き上げたため、今後の展開をいろいろ考えながらも

書いたため、ちょっと・・・・・

無理やり感があったのなら、申し訳ないです。



最近、私の拙いブログの訪問者数がまたも増えまして・・・・・

とある、私が前から大好きだったお方からアメンバー申請いただいたり

しましたものだから・・・・・・


本当に、ありがとうございます。


これからも、毎日更新を目指して

(きっともうすぐ無理になってしまいますが・・・・)

精進を続けようと考えている次第でございます。


今後とも、お付き合いのほど

よろしくお願いいたします。