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もう一度、あなたのそばに近づけれるのなら


私はいったい、どうなるだろう。


無くしかけた想いが、もう一度・・・・・・


呼び起こされる――――――――




もう一度君に恋をする  第十話




私は今、社さんと共に、クオン監督のアシスタントであるジョーさんの

ホテルの部屋に来ていた。


そこで彼は、私に・・・・・

敦賀さんとの過去の関係を聞かれていた。



「・・・・・・どうして、そのことが今の撮影に関係あるんですか??

私には・・・・・わからないので、もう少しわかりやすく説明していただけますか???」



本当に、どうしてそのことが今後の撮影に必要なのか、

私にはわからなかったから、思いのままにそう問いかけた。

すると――――――――



「・・・・・彼が、今、撮影で悩んでいるんですよ。

あの・・・・・あなたの相手役、の演技について、ね。」



私は、それでもまだ訳がわからなかったので

そのまま、ジョーさんの話の続きを聞こうと身を乗り出した。



「実は今回、この映画を撮るにあたって、

最初は京子さんを撮りたいというだけで始まったので

相手役まで全く考えていなかったんです。


それで、日本のあらゆる俳優の演技を見て比較したのですが

クオンの目に留まる人は居なかった。


――――――――ただ一人を覗いて。


それが・・・・・・あなたたちの関係している、”敦賀蓮”なんです。」



「「えっ・・・・・・・・・・」」



私と社さんは、その意外な言葉に驚いてしまった。



「クオンは、それが昔の自分だってすぐにわかったようです。

・・・・見た目があんなですしね。

でも・・・・・演技は食い入るように見ていたし、何より

自分の中でのイメージに、今までのどんな俳優を見てきた中で

一番近かったんじゃないかな??


・・・・・きっと、記憶を無くしていても、微かに残っていたのかも知れない。

自分の演じていた演技を・・・・・・


でも、もうアイツは演技をしたいとは思っていないようで、

何とか上田くんを引っ張ってきたんだけど

彼じゃ、クオンのイメージからは程遠いみたいでね。


なかなかOK出なかったでしょ??

アイツは・・・・・妥協する気は一切ないから・・・・・

このままじゃ、映画はどれだけでも時間がかかってしまう。


だから・・・・・・アイツの意識を変えさせようと思って、お願いしたんだ。」



「・・・・・・意識を変えさせるって、どうすれば・・・・・???」



ジョーさんは、そこでひとつ息を吐き出すと



「アイツ、自分の演技は一回しか見ていないんだ。

だから・・・・・・他の、出ていたものを見せてやりたいんだけど

俺の言うことは聞かないから・・・・・

きっと・・・・京子さんなら聞くような気がして。


あいつに会って、一言”敦賀蓮の演技を、もっと見てください”って

言ってやってくれないかな???」



ジョーさんの言葉を聞いて、あまりのことだったので

思わず反論した。




「そ・・・・・そんなっ!!!!!!

ジョーさんが言って聞かないのに、私から言ったって何も聞いてくれないんじゃ??

それに私たち・・・・挨拶くらいしか交わしたことないのに・・・・・」



「・・・・・・でもクオンは、いつも君を見てるよね??」



「っ!!!!!!」



あれって・・・・・・気のせいじゃなかったの???



「記憶を無くしていたって・・・・・アイツはキミの事、かなり気にしているよ??

日本に来る前だって・・・・・京子に会うのをとても楽しみにしていたようだし・・・・


アイツ、ああやって何も言わないし表情にも出さないようにしてるけど

多少付き合っていると、なんとなく感情が表に出ることがあるんだよね。


・・・・・・かなり注意深く見てないとわからないけど・・・・・・


・・・・・・・そんなに、うれしいことなの???」



ジョーさんにこういわれて、初めて私がにやけていることに気がついた。


だって・・・・・・記憶を無くしていても、私に会うのが楽しみだったって――――

普通、うれしいでしょ???


私は何も言わずに、頷いた。

それを見て、ジョーさんは



「・・・・そういうもんか、ね・・・・・

やっぱり、あなたとクオンは・・・・元は恋人同士だった、のかな??」



「えっ????」



あまりにもストレートな問いかけに、思わず何もいえないでいると

社さんがフォローしてくれた。



「・・・・・それは、違います。

記憶を無くす前、ずっと蓮と一緒にいたのは、マネージャーの俺です。

蓮は・・・・・・確かに京子のこと、好きでした。

でも、彼女は蓮の告白を断ってます。

そして、そのままアイツは記憶を無くしたんです・・・・・・。

蓮の、片思いだったんですよ・・・・・。」



・・・・・・・・社さん??

私が、敦賀さんのこと想っているの知ってるのに、どうして???

私は社さんに話しかけようとした。



「や――――――――――」



「それに彼女には、今付き合っている彼もいる。

あまり彼女をこれ以上不安がらせることは、避けてもらえますか??」



・・・・・・・か・・れ・・・・・・・


社さんから言われた、その一言に、私は何故か足元から崩れ去っていくような

感覚に陥った。


確かに、ショーとの関係は・・・・・

傍目から見たら、恋人同士だと思う。

ショーもきっと・・・・・私のことは彼女だと思っている、はず。


でも、私は・・・・・・・・???

いつだって、ショーのこと、彼なんて・・・・・思ったこと、ない。


顔を青くして考え込んでしまっていた私に・・・・・



「・・・・・・・京子さん・・・・・、それ、ホント、ですか??」



ジョーさんは覗き込んで聞いていた。


私は呆然として、何も答えられないでいると



「・・・・社さんからではなく、私はあなたの言葉が聞きたいんです。

クオンは、あなたが好きだったが、あなたはクオンのこと何とも思っていなくて

今は・・・・付き合っている彼がいる、それであってますか??」



もう一度、言葉を選んで問いかけてきた。


私が、敦賀さんのこと、何とも思っていないわけ・・・・・

そんなわけないのに・・・・・・


思わず涙がにじんできて、違う、と一言言おうとしたとき・・・・・



「キョーコちゃんっ!!!!!」



社さんの、私を呼ぶ声を聞いて、思わず社さんを見ると

社さんは、本当のことは言うな、というように、静かに横に首を振っていた。


・・・・・・・・どう、して・・・・・???



「・・・・・そ・・・う・・・・・で・す・・・・・・・・・・・」



「そう、か・・・・・・・」



目の前には、残念そうな顔をするジョーさんがいた。


私の胸の中には・・・・・・

大きな不安と、戸惑いが広がっていた。


・・・・・・・・・・どうして??

どうして、本当のことを言ってはいけなかったの???


社さん―――――――――???





第十一話へ、つづく・・・・・・








あっれぇ~~~~????


社さん・・・・どうしちゃったんだろう???

何故か、でしゃばって、うそ教えちゃいました。


・・・・・どうして???