前回までの話→第一話第二話第三話第四話第五話第六話第七話第八話第九話第十話 第十一話 第十二話第十三話第十四話第十五話第十六話第十七話第十八話第十九話第二十話第二十一話第二十二話第二十三話第二十四話第二十五話第二十六話第二十七話 (限定)※読まなくても話は切れません

第二十八話第二十九話











どうしても、言わなければならないと思った

俺一人だけじゃ、どうすることもできなかったから・・・・


全ては、俺のせいなのだから―――――




もう一度君に恋をする  第三十話



<クオンside>



社さんにお願いをして、彼を呼んでもらった。


―――――不破 尚


俺の想い人である、最上キョーコの幼馴染で、恋人。


彼女が今、俺を好きでいてくれても

俺が彼女を好きでも・・・・・


彼が今現在の、キョーコの恋人なのだとしたら、話をしなくては。


何よりも俺は、どうしても、言わなければならないことがあったから・・・・



ホテルの自分の部屋へと案内し、ソファにかけてもらった。


そして二人分のコーヒーを煎れると、彼の目の前にひとつ、置いた。



「・・・・・どうぞ?」



コーヒーには全く手をつけず、固まったように座っているから声をかけたのだが

いまだに固まったまま動こうとしない。


コーヒーを一口含み、彼がどうするのか観察していた。

一向に動き出す気配がないので、



「・・・・・わざわざ来てもらって、すまなかった。」



とりあえず来てもらったことに礼を述べると、

バッと顔を上げたが、あまり面白くなさそうな顔をしていた。



「・・・・・話が、あるんだろう??」



「そうだけど・・・・・」



「・・・・・俺も忙しいんだ。早く言えよっ!!!」



「・・・・・・・・」



「何なんだよっ!!!!!」



「・・・・・ありがとう」



「・・・・・・・なっ??」



俺はまず、率直に言いたかった一言を伝えると、

彼は思ってもいなかったのか、かなり驚いていた。



「アンタに礼なんて言われる覚えなんて、ないんだけど・・・・??」



すぐに気を取り直して、悪態をついてくるとことは

4年前となんら変わらないな、と微かに苦笑した。



「・・・・何笑ってんだよ??」



「・・・・いや??」



ムッとした顔でこちらをジーッと見つめてくる。



「・・・・・金髪だと何か、調子狂うな・・・・・」



ボソリとつぶやいた言葉は、そのままにしておいて、話を始めることにした。



「とりあえず、礼だけは言いたかった。

俺が、記憶をなくしてからずっと・・・・・

最上さんの支えになってくれてた、と聞いたから。」



「ただ、キョーコのそばに居たかったんだよ、俺が・・・・・

別に、キョーコのためって訳じゃないし、ましてや

そのことでアンタに礼を言われる筋合いも無いねっ。」



「でも、おかげで最上さんは”京子”として活動ができた。」



「・・・・・・・」



不破は、特に何も言わなかった。

そのまま俺は、話を続けた。



「俺は、記憶をなくした4年間のことは、誰からも特には聞いていない。

だから、君には君の、最上さんには最上さんの思いやきづながあるんだと思う。

俺は、それを壊したい、とは言わない。

でも・・・・・・俺は最上さんのことを、今でも好きだし、

誰よりも、愛している。

だから・・・・・」



「・・・・・別れろってか??」



「・・・・・・そこまでは、言うつもりは無い。

ただ・・・・・・俺の気持ちを覚えていて欲しいし

俺も、遠慮はしない。」



「・・・・・・戦線布告って、訳か??」



「そういうことに・・・・・なるかな?」



俺がこういうと、不破は少し考えた後、話し出した。



「・・・・・・・アンタは・・・・・・・

キョーコの気持ちを知ってるのか??」



「・・・・・・・・・・・知ってる」


俺はそのまま事実を伝えると、不破は声を荒げた。


「なっ!!!!!

じゃあ、何でお前は、俺に別れろって言わないんだ???

アイツは・・・・・・お前のこと好きなんだぞ???

4年も前からずっと・・・・・・・・

アイツは、ずっとずっと苦しんでたんだっ!!!!!

キョーコはいつだって、俺なんか見てなかった。

忘れさせることなんて・・・・・・・できなかったんだよ・・・・・・・」



俺の居なかった4年間は、最上さんにとっても苦しい4年間だと

思っていたのだが、彼にとっても・・・・・・

つらく苦しい4年間だったんだと・・・・・

この言葉を聞いて思った。



「・・・・・・言えるわけ、ないだろう??

もし、俺が君の立場だとしたら・・・・・

決して離れたくない、と思うから・・・・・・・」



不破も本気で、キョーコのことを好きだから

それがわかるから、別れろという言葉は、とてもじゃないが言えない。



「俺は、アイツを幸せにしてやりたい、とずっと思ってたよ。

アンタのこと忘れさせれたらきっと、キョーコは幸せになると思ってた。


でも・・・・・・そうじゃなかった。

俺じゃあ・・・・・・・・キョーコを幸せにすることなんて・・・・・

できないんだな。」



そういうと、不破は目の前の冷めたコーヒーを一気に飲み干すと

そのまま立ち上がった。



「・・・・・・別れてやるよ。」



「えっ・・・・・???」



「俺のほうが、アイツと付き合い長いんだ。

アイツが・・・・・キョーコが一度これといったら

全く気持ちを変えることなんて無いんだからなっ!!!!

キョーコがアンタのことが好きで、俺には一生気が向かないんだったら

そばに置いておいても、仕方ないだろう???」



「・・・・・・不破」



「でも、これだけは言っておく。

俺は、キョーコの事、好きなのは変わりないからな。

ずっと一生、アイツのことを思いつづける。

たとえ・・・・・キョーコがお前のことずっと好きだったとしても。


少しでもお前がキョーコのことをないがしろにしたら

そのときは、俺がキョーコをさらっていくからなっ!!!!」



「・・・・・・わかった。」



「・・・・・・・・・・幸せに、してやってくれよ・・・・・?」



そう最後の一言を残して、不破はその場を立ち去った。


俺は、居なくなったそのドアに向かって、深々と礼をした。



・・・・・・・・・ありがとう・・・・・・・・・

言われなくても、キョーコは俺が、幸せにする。


いや、違うな。


二人で、幸せになろう、だな。





第三十一話へ、つづく・・・・





実はこの話。

何気にクオン(=蓮)よりも、ショーちゃんのほうが

かっこいい男に仕上がっていると私は思います。


こんないい男だったら良かったのにね、ショーちゃん。